キーワード:
半導体製造 / 洗浄技術 / 洗浄液 / 機能性水 / 微粒子除去 / フッ化水素酸 / シリコンウェーハ / ドライ洗浄 / ウェット洗浄 / CMP後洗浄 / 物理的洗浄技術 / スピンドロップレット洗浄 / マイクロバブル / オゾン / レジスト / 超臨界流体 / 乾燥 / 枚葉式洗浄装置 / 超音波洗浄機 / 蒸気2流体洗浄 / ミニマルファブ / メカニズム / 汚染分析 / 不純物分析
刊行にあたって
現代の生活と産業は、半導体を大いに活用している。日用品から特殊な材料と機械に至るまで情報システムから資料を集め、比較して購入することが多い。スマートフォンとタブレットでパスポート申請などの諸手続きも済ませられるし、生成AIを活用すれば可能性は今後も広がりそうである。それらに加えて、再生可能エネルギー技術と電力制御技術を発展させることにより、CO2削減、気候変動抑制と持続的発展を実現する役割を担うことが半導体技術に期待されている。これらの期待を確実に実現していくためには、しっかりと電子デバイスを製造する技術が必要である。例えば、設計通りに細かな電子回路を作り込む技術であるが、その前提として、作り込むことが可能になるように表面を清浄化して整える技術が必須である。そこで、半導体洗浄技術を本書で取り扱うこととした。
半導体洗浄には永遠の課題が幾つも存在している。例えば、表面に露出している多種類の物質を同時に洗わなければならないし、微細化が進めば狭い溝の奥まで洗うことになり、課題が高度化する。その際、誘電率がさらに低い絶縁膜を採用したり、電子を素早く動かすために新たな元素を追加すれば、それに合わせた洗浄も考えなければならない。従来から、電子デバイスを作る際の洗浄回数は夥しく多いので、コストと時間を抑える課題に終わりはない。今後、電子デバイスの微細化・高機能化が進むにあたり、さらに多種類の元素・物質を使うようになると予想されることから、適切な洗浄技術を持つことが半導体技術の発展に直結すると考えるべきである。
洗浄技術を改善し発展させるためには、洗浄に用いるすべての物質について、それらの物理的・化学的性質を総合して検討することが望まれる。そこで本書においては、洗浄の先端を知る研究者・技術者それぞれの視点から洗浄技術をまとめていただくことにした。多方面に亘り紹介されている技術を事例として知ると共に、その技術を形作って行った際の研究者・技術者の視点を読み取ると、今後に大いに役立つはずである。特に経験の浅い研究者・技術者には大いに活用していただきたいし、経験豊富な研究者・技術者におかれては、新たな開発に導くきっかけになることを期待している。
さいごに、貴重な時間を割いて執筆して下さった研究者・技術者の皆様、本書の完成にご尽力いただいたシーエムシー出版の皆様に感謝申し上げます。
反応装置工学ラボラトリ
羽深 等
著者一覧
飯野秀章 栗田工業㈱
田中洋一 栗田工業㈱
篠村尚志 JSR㈱
山下耕司 ステラケミファ㈱
服部 毅 Hattori Consulting International
樋口鮎美 ㈱SCREENセミコンダクターソリューションズ
泉妻宏治 グローバルウエーハズ・ジャパン㈱
河瀬康弘 三菱ケミカル㈱
清家善之 愛知工業大学;la quaLab合同会社
根本一正 (国研)産業技術総合研究所
クンプアン ソマワン (国研)産業技術総合研究所
原 史朗 (国研)産業技術総合研究所;(一社)ミニマルファブ推進機構
宮崎紳介 ㈱ダン・タクマ
平井聖児 ものつくり大学
堀内 勉 ものつくり大学
髙橋常二郎 ㈱資源開発研究所
堀邊英夫 大阪公立大学
山内 守 ㈱レクザム
山崎克弘 Shibaura Technology International Corporation
長嶋裕次 芝浦メカトロニクス㈱
長谷川浩史 ㈱カイジョー
庄盛博文 ㈱ジェイ・イー・ティ
阿部文彦 HUGパワー㈱
谷島 孝 (一社)ミニマルファブ推進機構
中西基裕 ㈱リガク
太田雄規 ㈱リガク
川端克彦 ㈱イアス
目次 + クリックで目次を表示
1 大口径化と微細化
2 洗う理由
3 前工程と洗浄
4 装置,薬液と乾燥
5 洗う面積
6 地球環境への影響と貢献
7 まとめ
第2章 半導体洗浄液の動向
1 機能性洗浄水
1.1 はじめに
1.2 機能性水の定義と種類
1.3 水素水による微粒子除去性能
1.4 微粒子除去メカニズム
1.5 SC-1薬液との微粒子除去性能の比較
1.6 水素水の製造方法
1.7 希釈アンモニア水によるLa2O3溶解抑制
1.8 希釈アンモニア水によるCu溶解抑制
1.9 各種リンス水による帯電防止
1.10 まとめ
2 半導体向け機能性洗浄剤
2.1 JSRの半導体ウェットプロセス材料開発
2.2 機能性洗浄剤に求められる役割
2.2.1 エッチング剤,エッチング助剤
2.2.2 溶媒(水,有機溶剤)
2.2.3 pH調整剤
2.2.4 金属防食剤
2.3 JSRの機能性洗浄剤
2.4 機能性洗浄剤の技術動向
2.4.1 省液化
2.4.2 低温化
2.4.3 リサイクル性
2.4.4 高アスペクト比
2.4.5 低パーティクル
2.5 終わりに
3 超高純度フッ化水素酸
3.1 はじめに
3.2 フッ化水素の製造技術
3.2.1 フッ化水素の製造工程
3.2.2 フッ化水素の超精製技術
3.3 超高純度フッ化水素酸の品質
3.3.1 金属不純物濃度の要求基準
3.3.2 パーティクルの要求基準
3.4 フッ化水素酸を使用した洗浄技術
3.4.1 既存の洗浄技術
3.4.2 枚葉スピン式による洗浄技術
3.4.3 狭所空間の洗浄技術
3.5 フッ化水素酸を使用した洗浄液の省資源化
3.6 今後の課題
第3章 半導体製造プロセスを支える洗浄・クリーン化・乾燥技術
1 シリコンウェーハ洗浄技術の過去・現在・未来
1.1 半導体産業黎明期の洗浄技術
1.2 RCA洗浄登場以降の洗浄技術
1.3 半導体微細化に向けたウェーハ洗浄技術
1.3.1 バッチ浸漬式から枚葉スピン式への移行
1.3.2 異種新材料への対応
1.3.3 物理的補助手段によるダメージ
1.3.4 ウェーハ乾燥時のパターン倒壊対策
1.4 ドライ洗浄
1.5 将来に向けた洗浄の課題
1.6 おわりに
2 半導体ウェット洗浄技術の基礎と最先端技術
2.1 半導体洗浄プロセス
2.1.1 半導体洗浄方式
2.2 先端半導体デバイス製造における洗浄プロセスの課題
2.2.1 パーティクル制御
2.2.2 乾燥技術
2.3 シミュレーションの活用
2.3.1 液膜シミュレーション
2.3.2 分子シミュレーション
2.4 AIの活用
2.5 環境負荷低減に向けた取り組み
2.6 まとめ
3 シリコンウェーハにおける洗浄技術の重要性とその動向
3.1 はじめに
3.2 Siウェーハの洗浄技術
3.2.1 Siウェーハ洗浄の要素技術
3.2.2 Siウェーハ洗浄方式・装置の比較
3.2.3 枚葉式機能水洗浄技術とその効果
3.3 次世代のウェーハ洗浄技術についての提案
3.4 まとめ
4 先端半導体デバイスのCMP後洗浄技術と表面状態の評価
4.1 はじめに
4.2 CMPと洗浄ターゲット
4.3 洗浄原理とメカニズム
4.3.1 金属除去
4.3.2 パーティクル除去
4.3.3 有機残渣除去
4.4 機能設計と先端技術課題
4.5 CMP後洗浄と表面状態
4.5.1 金属,パーティクル
4.5.2 表面酸化膜
4.5.3 ガルバニック腐食
4.5.4 粒界腐食
4.5.5 有機残渣
4.6 おわりに
5 次世代半導体デバイスのための物理的洗浄技術:スプレー,超音波,そして次世代の洗浄技術
5.1 はじめに
5.2 半導体製造における洗浄プロセス
5.2.1 洗浄技術の分類
5.2.2 ウエット洗浄プロセス
5.2.3 物理的洗浄技術
5.2.4 ドライ洗浄プロセス
5.2.5 洗浄プロセスにおける課題と展望
5.3 ダメージを低減させるための超音波振動体による洗浄技術
5.3.1 開発した超音波振動体型洗浄装置
5.3.2 超音波振動体型洗浄装置の音圧特性
5.3.3 PSL粒子を用いた洗浄能力の確認
5.4 次世代の物理的な洗浄技術
5.4.1 インクジェット洗浄技術
5.4.2 超臨界洗浄技術
5.4.3 ソリッドフェーズクリーニング(Solid Phase Clean,SPC)法
5.4.4 ピンポイント洗浄
6 表面張力を利用するスピンドロップレット洗浄技術
6.1 イントロダクション
6.2 ミニマルファブの概要
6.3 スピンドロップレット洗浄
6.3.1 スピンドロップレット洗浄開発経緯
6.3.2 スピンドロップレット洗浄の洗浄機構と洗浄シーケンス
6.3.3 スピンドロップレット洗浄の課題
6.4 ウェハドロップレット洗浄
6.5 終わりに
7 マイクロバブルの半導体洗浄への応用
7.1 マイクロバブルの基本特性
7.2 半導体洗浄に供用し得るマイクロバブル発生装置
7.3 マイクロバブルを用いた半導体洗浄評価
7.4 パーティクル除去洗浄
7.5 リンス
7.6 有機物除去
7.7 マイクロバブルの半導体洗浄への応用試験結果まとめと展望
8 オゾンマイクロバブルによる半導体フォトレジストの除去メカニズム
8.1 フォトレジスト工程について
8.2 加圧溶解方式によるマイクロバブル発生装置
8.3 オゾンバブリングとオゾンマイクロバブルによるフォトレジスト除去速度に関する実験
8.4 オゾンマイクロバブルによるフォトレジスト除去メカニズム
8.5 まとめ
9 レジスト除去技術―湿潤オゾン装置を用いたレジスト除去―
9.1 はじめに
9.2 一般的なレジスト除去技術
9.2.1 薬液方式
9.2.2 アッシング方式
9.3 湿潤オゾンを用いた環境にやさしいレジスト除去技術
9.3.1 オゾン水と湿潤オゾンとの違い
9.3.2 実験装置の構成および実験条件
9.3.3 結果と考察
9.4 おわりに
10 レジスト除去技術―イオンビーム照射レジストに対する湿潤オゾンによる除去―
10.1 はじめに
10.2 イオン注入量を変えたレジストの湿潤オゾンによる除去性の実験方法
10.2.1 イオン注入レジスト
10.2.2 イオン注入レジストの湿潤オゾンによる除去
10.2.3 微小押し込み硬さ試験によるレジストの塑性変形硬さ測定
10.2.4 高濃度湿潤オゾンによるイオン注入レジストの除去
10.2.5 加速エネルギーの異なるイオン注入レジストの湿潤オゾンによる除去とレジスト変質層の評価
10.2.6 イオン注入PVPの湿潤オゾンによる除去
10.3 注入イオン種及びイオン注入量の異なるレジストの除去の結果
10.4 高濃度湿潤オゾンによるイオン注入レジストの除去
10.5 加速エネルギーの異なるイオン注入レジストの湿潤オゾンによる除去
10.6 イオン注入されたPVPの湿潤オゾンによる除去
10.7 SIMSによるイオン注入PVP変質層の膜厚測定
10.8 FT-IRによるイオン注入PVPの分光学的評価
10.9 おわりに
11 レジスト除去技術―水素ラジカル装置を用いたレジスト除去―
11.1 はじめに
11.2 実験
11.2.1 水素ラジカル照射条件
11.2.2 評価したPMMA系ポリマー
11.3 結果と考察
11.3.1 除去速度に影響するビニル型ポリマーの性質
11.3.2 除去速度に影響するベンゼン環の有無
11.4 おわりに
12 レジスト除去技術―酸素マイクロバブル水による芳香族分解―
12.1 はじめに
12.2 実験方法
12.2.1 MBの発生方式
12.2.2 酸素MB水による有機物処理
12.3 メチレンブルーを用いたヒドロキシラジカルの検知結果
12.4 酸素MB水によるサリチル酸分解結果
12.5 酸素MB水処理によるサリチル酸の化学構造変化
12.6 おわりに
13 超臨界二酸化炭素(SCCO2)を用いた次世代半導体洗浄技術
13.1 次世代半導体洗浄乾燥に超臨界流体を用いる背景
13.2 超臨界流体の半導体ウェーハ乾燥への適用
13.3 SCCO2の半導体ウェーハ洗浄への適用
13.3.1 トランジスタ形成工程への適用
13.3.2 多層配線工程への適用
13.4 大口径ウェーハ洗浄の実用化に向けた検討
13.5 おわりに
14 半導体ウェハの超臨界乾燥技術
14.1 はじめに
14.2 超臨界技術の概要
14.3 超臨界乾燥技術の開発
14.3.1 開発経緯
14.3.2 小型化
14.3.3 処理時間の短縮
14.3.4 ダメージレス
14.3.5 コンタミの削減
14.4 今後の展開
第4章 半導体製造プロセスを支える洗浄装置
1 高品質なシリコンウェーハ基板製造に寄与する枚葉式洗浄装置
1.1 はじめに
1.2 ウェーハ製造における洗浄工程
1.3 洗浄装置紹介
1.3.1 研磨後洗浄装置SC300-CCシリーズ
1.3.2 最終洗浄装置SC300-FCシリーズ
1.4 次世代向けウェーハ洗浄技術
1.5 おわりに
2 微細パーティクルを効率的に除去する超音波洗浄機
2.1 半導体洗浄における超音波洗浄機の役割
2.2 超音波洗浄の物理的効果,「キャビテーション」とは
2.3 超音波洗浄機の周波数による特徴
2.4 超音波洗浄の方式
2.4.1 バッチ式洗浄
2.4.2 枚葉式洗浄
2.4.3 バッチ式洗浄と枚葉式洗浄の特徴
3 高温処理ウエットステーションの現在地と未来~Batch式からHTSの系譜~
3.1 はじめに
3.2 HTS(High Temp Single Processor)-300Sの開発経緯
3.3 HTS-300Sのメカニズム
3.4 HTS-300Sの現在地と次ステップへの取り組み
3.5 洗浄機が進むべき未来
4 蒸気2流体洗浄と高温高濃度オゾン水洗浄について
4.1 はじめに
4.2 蒸気2流体洗浄
4.3 蒸気2流体洗浄装置構成
4.4 蒸気2流体洗浄原理
4.5 蒸気2流体洗浄用途
4.6 蒸気2流体洗浄まとめ
4.7 高温高濃度オゾン水洗浄
4.8 高温高濃度オゾン水生成装置構成
4.9 オゾン水によるレジストの除去効果
4.10 高温高濃度オゾン水洗浄用途
4.11 まとめ
5 ミニマルファブで用いる超小口径のハーフインチウェハ製造における洗浄技術
5.1 はじめに
5.2 ウェハ加工工程
5.3 洗浄工程
5.4 乾燥工程
5.4.1 IPA浸漬乾燥
5.4.2 IPAマランゴニ乾燥
5.4.3 ウェハカートリッジの改良
5.4.4 乾燥方式の比較
5.5 電気特性によるウェハ清浄度の評価
5.6 まとめ
第5章 半導体洗浄の評価・観察・解析
1 半導体洗浄における洗浄機内の流れとメカニズム
1.1 流れの役割
1.2 洗浄における流体の動き
1.3 流れの観察と計算の事例
1.3.1 バッチ式洗浄機
1.3.2 枚葉式洗浄機
1.4 まとめ
2 全反射蛍光X線分析による半導体ウェーハの汚染分析
2.1 はじめに
2.2 測定原理
2.3 定性分析と定量分析
2.3.1 定性分析
2.3.2 定量分析
2.4 定量下限
2.5 ウェーハ全面の汚染評価
2.5.1 ウェーハ全面マッピング
2.5.2 VPD-TXRF
2.6 TXRFを使用した半導体洗浄技術評価
2.6.1 CMP後洗浄技術の評価
2.6.2 RCA洗浄技術の評価
2.7 おわりに
3 ICP-MSを用いた半導体ウェーハ中の極微量金属不純物の分析方法
3.1 VPD-ICP-MS法
3.2 LA-GED-MSAG-ICP-MS法
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