キーワード:
大型藻類 / 微細藻類 / 珪藻 / ブルーカーボン / ゲノム編集 / バイオリファイナリー / ユーグレナ / ナンノクロロプシス / ボツリオコッカス / スピルリナ / 二酸化炭素固定化 / 二酸化炭素吸収 / カーボンクレジット / 海洋センシング / バイオエタノール / バイオジェット燃料 / 低分子化合物 / 育種 / 品種改良 / カーボンクレジット / 油脂 / 希少糖 / 好冷菌
刊行にあたって
2023年12月初め、ドバイで開催されたCOP28(国連気候変動枠組条約締約国会議)で、日本はアンモニア混焼の石炭発電によりまたもや「化石賞」を授与されたが、一方で、地球規模でなされた大きな提案についてはあまり話題になったように思えない。それは、翌年度から、「日本は海洋へのCO2吸収を環境政策への道標として導入する」という世界初の提言であり、グローバルで画期的な環境政策方針であった。パンデミックのコロナ禍からの脱出に伴う大きな転換点にもなりそうな提言となった。
過去には、「バイオ燃料」の象徴として、バイオディーゼルが地産地消の大きな柱として活用されてきたが、海外では、デンプンを原料とする「バイオガソリン」などでバイオエタノールが注目を集めたが、世界的には、人口増に対する食糧との競合のため、アメリカやブラジルなど一部の国でのみ活用されているにすぎない。イネ、麦、トウモロコシからの廃棄セルロースとしてのソフトバイオマスや間伐材のハードバイオマスなどからのバイオエタノールは、コスト面などから普及拡大には至らなかった。しかし最近、ゲノム編集や合成生物学の技術進歩により、再びバイオエネルギーが脚光を浴びつつある。また航空業界などではバイオジェット燃料(SAF)の活用に注目が高まっている。
本書のシリーズでは、「エコバイオエネルギーの最前線(2005年)」、「第二世代バイオ燃料の開発と応用展開(2009年)」、「エコバイオリファイナリー(2010年)」、「リサイクルバイオテクノロジーの最前線(2013年)」「バイオ水素とキャリア開発の最前線(2015年)」、「バイオエネルギー再燃(2021年)」とバイオエネルギーに関する話題をとりあげてきたが、上記のような世界情勢により、急激に変動する地球環境の保全へ“Nature Positive”な政策や技術の向上が提唱されている。その一つの研究対象が海洋大型藻類に代表される『藻類』である。本書では、上記のような、藻類を利活用して先進的で創造的な研究内容を展開しておられる研究を紹介する。
最後に、ご多忙の中、ご執筆いただきました先生方に、感謝いたしますとともに、本著での研究分野でのさらなるご活躍を祈念いたします。
2025年1月 (刊行にあたってより抜粋)
著者一覧
植田充美 京都大学 橋口昌道 カーボンリサイクルファンド 松井啓晃 関西学院大学 豊島正和 関西学院大学 辻 敬典 関西学院大学 松田祐介 関西学院大学 田中 剛 東京農工大学 安井零音 東京農工大学 吉村 萌 京都工芸繊維大学 森西容子 京都工芸繊維大学 黒田浩一 京都工芸繊維大学 柴田敏行 三重大学 山本康介 三重大学 高部祐剛 鳥取大学 堀野太郎 メタウォーター㈱ 野口基治 メタウォーター㈱ 田中礼士 三重大学 林 雅弘 宮崎大学 松﨑巧実 ㈱ちとせ研究所 星野孝仁 ㈱ちとせ研究所 井上(菓子野)名津子 兵庫県立大学 伊福健太郎 京都大学 菓子野康浩 兵庫県立大学 増田正夫 高砂熱学工業㈱ | 大嶋 寛 関西化学機械製作㈱ 野田秀夫 関西化学機械製作㈱ 髙寄章宏 関西化学機械製作㈱ 髙木裕太 関西化学機械製作㈱ 田中 浩 ㈱IHI;田中技術士事務所 榎本 平 ㈱GGT;神戸大学 千田浩隆 ㈱IHI 鈴木健吾 ㈱ユーグレナ 白岩善博 筑波大学 秋月 信 東京大学 尾﨑達郎 花王㈱ 三宅英雄 三重大学 山本啓介 GreenEarthInstitute㈱ 楠田 啓 京都大学 上田雄輝 京都大学 大谷知行 理化学研究所;東北大学 彌田智一 同志社大学;理化学研究所 小倉 淳 長浜バイオ大学;㈱ノベルジェン 菊地 淳 理化学研究所;名古屋大学;横浜市立大学 高橋 幹 KDDI㈱ 杉山浩平 KDDI㈱ |
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1 はじめに
2 従来のバイオマスエネルギー研究
3 食糧とエネルギーの非競合共役増産
4 前処理法の開発―バイオマスの完全糖化システムの合成生物学的創製
5 新しいバイオマスの価値
6 おわりに
第2章 カーボンリサイクルファンド活動概要とブルーカーボンに係る取組の推進
1 設立の趣旨
2 CRFが考えるカーボンリサイクル
3 活動の概要
4 カーボンリサイクルファンドのブルーカーボンについての取組実績
5 まとめと展望
第3章 効率的なCO2固定化・有用物質生産に向けた藻類の品種改良・育種技術
1 微細藻類のCO2固定能の強化
1.1 はじめに
1.2 CCMにおける溶存無機炭素(DIC)輸送について
1.3 ピレノイド構造と機能
1.4 炭素蓄積と二次代謝産物
1.5 応用エンジニアリングについて
1.6 将来の展望
2 効率的なCO2固定化・有用物質生産に向けた海洋微細藻類の分子育種技術
2.1 はじめに
2.2 中温性珪藻と耐冷性珪藻の併用による四季を通じたバイオマス生産
2.3 分子育種に向けた海洋微細藻類の分子基盤の構築
2.4 海洋微細藻類の分子育種による有用物質生産
2.5 おわりに
3 ゲノム編集の開拓とそれによる大型藻類のCO2固定能強化の可能性
3.1 はじめに
3.2 大型藻類への遺伝子・タンパク質導入
3.3 CO2固定能の強化に向けた改変
3.4 オフターゲット変異を軽減するゲノム編集
3.5 おわりに
4 カーボンリサイクルからみた大型藻類の特性と養殖によるバイオマス生産
4.1 はじめに
4.2 大型藻類のCO2吸収・固定能
4.3 大型藻類を構成する成分
4.4 ホンダワラ類の種苗生産技術と海面養殖への展開
4.5 天然のアカモク母藻からの幼胚の採取
4.6 室内水槽での種苗生産
4.7 アカモクの海面養殖と技術的課題
4.8 アカモクの養殖例
4.9 おわりに
5 土着藻類を含む混合微生物を利用した下水処理技術
5.1 現行の下水処理の課題
5.2 微細藻類の下水処理への利用
5.3 流動担体を利用した混合微生物の付着培養による下水処理
5.4 結語
6 バイオリファイナリーのための新しい微生物群の探索
6.1 はじめに
6.2 海洋環境中からのウルバン分解細菌の探索
6.3 Vibrio sp. 10N株を用いた緑藻由来多糖ウルバンの単糖化の試み
6.4 おわりに
第4章 藻類産業の実現に向けた大量培養技術
1 従属栄養培養方式によるユーグレナの高密度培養
1.1 ユーグレナの生物学
1.2 ユーグレナの産業利用における課題
1.3 ユーグレナによる脱炭素化の実現に向けて
2 フラットパネル型フォトバイオリアクターによる持続可能な微細藻類バイオマスの生産に向けて
2.1 持続可能な化石資源代替への期待
2.2 持続可能な原料におけるGHG排出量
2.3 微細藻類の生産におけるGHG排出の主要因
2.4 曝気動力の削減によるCO2排出削減効果
2.5 曝気動力の削減の実現に向けた各種検証
2.6 持続可能な微細藻類バイオマスの生産・消費に向けて
3 珪藻の大量培養へのマイクロバブルの利用
3.1 はじめに
3.2 ツノケイソウの野外大量培養
3.3 有用物質の回収方法の開発
3.4 今後の展望
4 工場等の廃熱を利用した微細藻類の培養技術の開発
4.1 はじめに
4.2 藻類培養への廃熱の利用
4.3 培養池の加温・冷却による藻類培養への影響
4.4.吸着材を用いた藻類培養への廃熱利用
4.5 おわりに
5 大型藻類養殖のための装置開発
5.1 はじめに
5.2 海水へのCO2の積極的供給による大型藻類成長への影響
5.3 藻場の環境改善を目的とした海水の縦循環装置の開発
第5章 藻類による有用物質生産に向けた取り組み
1 高速増殖型ボツリオコッカスの大量培養とバイオジェット燃料への応用
1.1 はじめに
1.2 ボツリオコッカスとは
1.3 高速増殖型ボツリオコッカスの開発経緯と特長
1.4 培養の拡大と実証
1.5 ジェット燃料化
1.6 実際のフライト
1.7 まとめと今後の展望
2 ユーグレナによるオイル生産
2.1 まえがき
2.2 ユーグレナによるオイル生産構想
2.3 生産性向上に向けた研究開発のテーマ紹介
2.4 社会実装のための取り組み
2.5 おわりに
3 微細藻類を用いたオイル生産の多様性と技術開発の現状
3.1 微細藻類が生産する貯蔵物質の多様性
3.2 微細藻類が生産する油脂の多様性
3.3 長鎖不飽和ケトン分子の有用物質・バイオ燃料生産への活用
3.4 ハプト藻による再生可能エネルギー生産への技術開発
3.5 アルケノンの化学的改質による有用物質生産
3.6 遺伝子工学的形質転換によるアルケノンの量的及び質的改変の技術開発
4 水熱技術による微細藻類からの燃料・化学品回収
4.1 はじめに
4.2 水熱技術の特徴
4.3 微細藻類の水熱液化
4.4 微細藻類の油脂回収残渣への水熱技術の適用
4.5 おわりに
5 ナンノクロロプシスによるラウリン系油脂生産に向けた取り組み
5.1 背景および藻類株の選定
5.2 油糧藻類ナンノクロロプシスの分子育種
5.3 SCラウリン系油脂高生産株の培養と藻油石鹸の作製・評価
5.4 総括と今後の展望
6 希少糖(DEH)の生産
6.1 はじめに
6.2 AlyFRAとAlyFRBの調製と反応生成物
6.3 固定化酵素
6.4 おわりに
7 大型藻類を原料としたバイオエタノール生産へ向けた取り組み
8 海水条件下における海洋系大型藻類のメタン発酵
8.1 はじめに
8.2 浸透圧保護剤を添加した海水条件下での大型藻類のメタン発酵
8.3 実験方法と測定項目
8.4 結果
8.5 考察
8.6 おわりに
9 金属マイクロコイルを用いた300 GHz帯における位相を乱雑化する電波吸収材料
9.1 はじめに
9.2 藻類由来金属マイクロコイルを用いたミリ波・テラヘルツ波吸収体
9.3 位相乱雑化の効果について
9.4 今後の課題と展望
10 微細藻類を利用したマイクロプラスチック除去・水浄化技術
10.1 水質汚濁問題の概要と現状
10.2 マイクロプラスチック汚染の実態
10.3 水質浄化技術の現状と課題
10.4 微細藻類を用いたマイクロプラスチック除去および水質浄化ソリューション
10.5 今後の展望と課題
11 ブルーカーボンの生育環境要因解析と構成成分複雑系のデータサイエンス
11.1 はじめに
11.2 ブルーカーボン繁茂域における海草底泥の環境要因・因果分析
11.3 時系列モデリングによる赤潮時の同調因子可視化
11.4 海藻類の金属吸着能に対しての超分子複雑系解析
11.5 13C標識海藻の構成成分解析における理論計算の活用
11.6 今後の期待
12 ブルーカーボンクレジットに関する海洋センシング技術の開拓
12.1 はじめに
12.2 ブルーカーボン概要
12.3 CO2吸収量の算出に必要なセンシング
12.4 クレジット価格に関連するセンシング
12.5 まとめ
藻類応用の技術と市場
価格(税込): 88,000 円
微生物を活用した有用物質の製造技術
価格(税込): 71,500 円
バイオエネルギー再燃
価格(税込): 63,800 円
独立栄養微生物によるCO2資源化技術
価格(税込): 67,100 円
藻類由来バイオ燃料と有用物質《普及版》
価格(税込): 3,960 円