キーワード:
バイオ医薬品/がん/自己免疫疾患/次世代抗体/抗体―薬物複合体/コンパニオン診断薬/生産技術/培養用培地・添加剤/精製技術/コンパラビリティ/特性・品質評価/承認審査・申請/バイオシミラー/バイオベター/希少疾患薬/市場動向/メーカー動向
刊行にあたって
これまで製薬メーカーは、化学合成技術を使った低分子医薬品で新薬開発を進めてきた。しかし、開発競争が激化し、新薬開発が困難な状況となっている。このような状況の中で次の創薬技術として注目されているのがバイオ医薬品、特に抗体医薬品である。
2010年における世界の医薬品売上高上位10品目のうち、5品目が抗体医薬品を中心とするバイオ医薬品であった。抗体医薬品の国内市場規模は2010年で約2,900億円、2015年には約6,400億円に拡大すると予測されている。2015年頃には抗体医薬品の特許が相次ぎ切れるため、バイオシミラーなどの後続品の参入が可能になり、市場拡大が加速すると見られている。バイオ後続品の国内市場は現在数百億円にとどまるものの、2015年頃には数千億円に拡大するとの予測である。
急成長する抗体医薬品市場を前に、製薬メーカー各社は新たな技術を得るために国内外問わずベンチャー企業の買収や提携を盛んに進めている。
このように大きく動き出した抗体医薬品の開発・市場動向を分かりやすく纏めた書籍を発行したいと考え、本書は誕生した。
【開発編】では、研究開発の最前線で活躍されている専門家の方々にお願いし、抗体医薬品開発のおさえておくべき主要テーマの最新動向を執筆して頂いた。抗体作製技術、生産技術、細胞培養用培地・添加剤、精製技術、コンパラビリティ、特性・品質評価などの最新技術から規格試験と承認審査・申請の留意点、そして注目のバイオシミラー・バイオベター開発までを詳細に解説している。
【市場編】では、まず抗体医薬品の市場を分析し、がんや自己免疫疾患における抗体医薬品、ブロックバスターとなった主要抗体医薬品、海外・国内メーカー、ベンチャーの動向などに関して、独自取材に基づいた最新の情報を掲載している。また、その市場規模が大きくなりつつある受託製造や材料・培養装置などの関連機器分野の動向も詳述。抗体試薬の動向についても調べ上げた。
本書一冊で抗体医薬品の開発・市場動向について理解して頂けるものと自負している。抗体医薬品に関心をお持ちの方々の情報収集の一助となれば幸いである。
著者一覧
浜窪隆雄 東京大学
大政健史 徳島大学
小川亜希子 鈴鹿工業高等専門学校
本田真也 (独)産業技術総合研究所;東京大学大学院
岡村元義 (株)ファーマトリエ
新見伸吾 国立医薬品食品衛生研究所
橋井則貴 国立医薬品食品衛生研究所
石井明子 国立医薬品食品衛生研究所
川崎ナナ 国立医薬品食品衛生研究所
荒戸照世 (独)医薬品医療機器総合機
村上康文 東京理科大学
目次 + クリックで目次を表示
第1章 抗体医薬の開発動向
1 はじめに
2 抗体医薬の現状分析
2.1 抗体医薬品はバイオ医薬品の主流となる
2.2 製薬会社による抗体医薬技術の囲い込みが進む
2.3 抗体医薬品のターゲット抗原不足
2.4 初期投資コストが大きい
3 課題解決に向けた取り組み
3.1 初期投資コストを下げる
3.2 製造コストを下げる
3.2.1 微生物による生産
3.2.2 トランスジェニック動植物による生産
3.3 薬効を上昇させる
3.3.1 ADCC活性を上昇させる
3.3.2 複数抗体による相乗効果
4 今後の課題
5 今後の医薬の方向性とは
6 おわりに
第2章 機能性抗体の作製と医薬探索への応用技術
1 はじめに
2 機能性抗体
3 がん微小環境とがん免疫療法
4 アンタゴニスト抗体―機能阻害抗体
5 膜タンパク質に対する阻害抗体の作製
6 バイスペシフィック抗体
7 放射線抗体療法(Radio-immunotherapy; RIT)
8 トキシンコンジュゲート・ドラッグデリバリーシステム(DDS)
9 抗体を用いたコンパニオン診断と医薬探索への応用技術〜ターゲテドプロテオミクス
10 おわりに
第3章 抗体医薬品生産技術の基礎〜動物細胞生産株の樹立,培養,スケールアップからダウンストリームまで〜
1 はじめに
1.1 動物細胞株の樹立
1.2 実際に産業に用いられる細胞とは―工業動物細胞
1.3 現在の蛋白質医薬品生産における細胞株樹立から培養,スケールアップ,ダウンストリームまで
2 動物細胞生産株の樹立
2.1 生産株構築法の概略
2.2 遺伝子増幅現象とその利用
2.3 遺伝子増幅を用いた細胞構築と今後の方向性
2.4 動物細胞における糖鎖修飾とは
3 動物細胞培養プロセスの構築とスケールアップ
3.1 細胞培養培地中の栄養源と老廃物蓄積
3.2 細胞培養における培養方法:流加培養,固定化,灌流培養
4 細胞培養における酸素供給の重要性
5 スケールアップ:酸素供給と溶存炭酸ガス脱離
6 ダウンストリームプロセス
7 おわりに
第4章 抗体医薬品製造における細胞培養用培地・添加剤の動向
1 はじめに
2 哺乳動物細胞の培養用培地について
2.1 FBS使用の問題点
2.1.1 不確定成分や未知物質の存在
2.1.2 batch-to-batchバリエーション(製造ロット毎の成分変動)
2.1.3 動物愛護と倫理問題
2.1.4 FBS供給量
2.1.5 人畜共通病原体混入のリスク
2.2 抗体医薬品製造用のための培養用培地
2.3 抗体製造に必要な細胞培養の条件
3 抗体医薬製造用の無血清培地の構築について
3.1 無血清培地の主成分とその役割
3.1.1 グルコース
3.1.2 アミノ酸
3.1.3 ビタミン類
3.1.4 脂質類
3.2 血清含有培地から無血清培地への馴化について
4 抗体産生細胞に対する血清成分の役割
4.1 血清アルブミン(Serum albumin)
4.2 インスリン(Insulin)
4.3 トランスフェリン(Transferrin)
4.4 セレン(Selenium)
5 添加剤について
5.1 酵母および植物由来タンパク質加水分解物
5.2 Pluronic F-68(PF68)
5.3 セリシン加水分解物
5.4 魚血清
5.5 カツオ加水分解物Hy-fish
5.6 抗体精製後廃液の利用
5.7 ラッキョウ由来フルクタン
第5章 抗体医薬品の精製技術
1 はじめに
2 バイオ医薬品の特殊性
3 抗体医薬品の精製プロセス
4 プロテインAアフィニティークロマトグラフィー
4.1 プロテインA
4.2 プロテインAアフィニティ担体
4.3 プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのプロセス開発
4.3.1 抗体結合容量とスループット
4.3.2 溶出条件
4.3.3 不純物の洗浄除去
4.3.4 プロテインA漏出
4.3.5 担体の寿命
4.3.6 緩衝液
5 その他のクロマトグラフィー
5.1 アニオン交換クロマトグラフィー
5.2 カチオン交換クロマトグラフィー
5.3 疎水性相互作用クロマトグラフィー
5.4 ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
6 ウイルスの不活化と除去
6.1 ウイルスクリアランス試験
6.1.1 ウイルスクリアランス工程評価試験
6.1.2 ウイルスクリアランス工程特性解析試験
6.1.3 ウイルスの不活化/除去技術
7 おわりに
第6章 コンパラビリティ・品質恒常性のための製造方法
1 はじめに
2 抗体医薬品製造の特殊性にどう取り組むか
2.1 抗体医薬品のプラットフォーム製造技術
2.2 抗体の構造・物理的化学的性質でみるべきコンパラビリティ
2.3 ヒト型を目指すことの意味とコンパラビリティ証明について
2.4 薬効・薬理についてのコンパラビリティ評価
2.5 工程由来不純物の除去についてのコンパラビリティ
3 コンパラビリティ(同等性/同質性)・品質恒常性を追求した製造方法
3.1 QbD手法を用いた恒常的製造管理
3.2 スケールアップ時の留意点
3.3 製造変更時の規制上の取り扱いについて
3.4 コンパラビリティ評価の時期とリスクアセスメント
3.5 バイオシミラー抗体医薬品の先行品に対するコンパラビリティの考え方
4 おわりに
第7章 抗体医薬品の特性・品質などの評価
1 はじめに
2 構造および物理化学的特性
2.1 IgG抗体の基本骨格
2.2 アミノ酸組成
2.3 N末端アミノ酸配列およびN末端ピログルタミン酸形成
2.4 C末端アミノ酸配列およびC末端アミノ酸
2.5 ジスルフィド結合の数と位置およびスルフヒドリル基の測定
2.5.1 ジスルフィド結合の数と位置およびその測定
2.5.2 スルフヒドリル基の量および部位の測定
2.5.3 ジスルフィド結合およびフリーのスルフヒドリル基がIgGの構造,安定性,生物機能に及ぼす影響
2.6 全一次構造解析
2.7 糖鎖解析
2.7.1 動物細胞で産生される抗体医薬品の糖鎖構造
2.7.2 グライコフォーム解析
2.7.3 糖鎖プロファイル解析
2.7.4 抗体医薬品における糖鎖の結合部位および結合率の測定
2.7.5 単糖組成分析
2.7.6 糖鎖が抗体医薬品のクロマトグラフィーにおける挙動に及ぼす影響
2.7.7 糖鎖が抗体医薬品の安定性および機能に及ぼす影響
2.8 分子量
2.9 単量体
2.10 等電点
2.11 分光学的性質
2.12 高次構造
3 生物学的性質
3.1 バイオアッセイ
3.2 結合アッセイ
3.2.1 表面プラズモン共鳴
3.2.2 ELISAを用いた直接法
3.2.3 抗原発現細胞を用いた競合法
3.2.4 抗原発現細胞を用いた結合測定法
3.2.5 膜タンパク質抗原に対する特異性の解析方法
3.2.6 抗原発現細胞を用いた解離速度測定法
4 目的物質関連物質および目的物質由来不純物
4.1 メチオニンおよびトリプトファン残基の酸化
4.2 ヒンジ領域およびその他の領域の断片化
4.3 非還元のクロスリンキング
4.4 変異,挿入および欠失体
4.5 糖化
4.6 アスパラギンの脱アミド化およびアスパラギン酸の異性化
4.7 凝集体
5 抗体薬物コンジュゲート
5.1 抗体にコンジュゲートした薬物の比
5.2 抗体にコンジュゲートした薬物の分布
5.2.1 抗体にコンジュゲートした薬物の分布のMS解析
5.2.2 抗体にコンジュゲートした薬物の分布のクロマトグラフィー解析
5.3 凝集体の解析
5.4 フリーの薬物の解析
5.5 抗体薬物コンジュゲートのペプチドマッピング解析
第8章 抗体医薬品における規格試験と承認審査・申請の留意事項
1 はじめに
2 規格及び試験方法の考え方
3 モノクローナル抗体原薬の規格及び試験方法
3.1 確認試験
3.2 純度試験
3.2.1 不均一性
3.2.2 糖鎖
3.2.3 不純物
3.3 力価
4 モノクローナル抗体が医薬品原薬の中間体である場合
5 モノクローナル抗体製剤の規格及び試験方法
6 標準物質
第9章 バイオベター抗体の開発戦略
1 はじめに
2 抗体医薬開発の現状
3 抗体医薬分野におけるバイオベター開発戦略
3.1 突然変異導入とディスプレイ法による抗体の最適化
3.2 抗体分子の改変による生理活性の増大
3.3 バイスペシフィック抗体
3.4 抗体分子の低分子化・多価抗体開発のアプローチ
4 標的分子の拡大による抗体医薬のさらなる展開―バイオベターから新薬開発に向けて
5 医療費高騰への対策・治療と診断の融合戦略
5.1 個別化医療を念頭に医薬品の開発を行うこと
5.2 稀少疾患治療を視野に入れた開発を行うこと
6 おわりに
【市場編】
第1章 抗体医薬品の市場概況
1 概要
2 市場動向
2.1 世界市場
2.2 国内市場
2.3 市場成長の背景
3 製品動向
3.1 概況
3.2 製品・技術開発の動向
第2章 抗体医薬品の市場分析
1 世界市場
2 国内市場
第3章 領域別開発・市場動向
1 がん領域における抗体医薬品の動向
2 自己免疫領域における抗体医薬品の動向
3 その他疾患領域の抗体医薬品の動向
第4章 主要抗体医薬品の動向
1 アバスチン(一般名ベバシズマブ)
2 ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)
3 リツキサン(一般名リツキシマブ)
4 レミケード(一般名インフリキシマブ)
5 ヒュミラ(一般名アダリムマブ)
第5章 海外メーカーの動向
1 ロシュ(ジェネンテック)
2 ノバルティス
3 アムジェン
4 アボット・ラボラトリーズ
5 メルクセローノ
6 米国メルク(Merck & Co.)
7 ブリストル・マイヤーズ スクイブ
8 ジョンソン・エンド・ジョンソン
9 イーライリリー
10 バイオジェン・アイデック
11 ファイザー
12 グラクソ・スミスクライン
13 アストラゼネカ
第6章 国内メーカーの動向
1 エーザイ
2 協和発酵キリン
3 第一三共
4 武田薬品工業
5 田辺三菱製薬
6 中外製薬
7 アステラス製薬
8 その他メーカーの動向
第7章 国内バイオベンチャー企業の動向
1 免疫生物研究所
2 ペルセウスプロテオミクス
3 ジーンテクノサイエンス
4 イーベック
5 バイオマトリックス研究所
6 カイオム・バイオサイエンス
第8章 抗体医薬品関連市場の動向
1 概要
2 市場動向
第9章 バイオ医薬品受託製造企業の動向
1 海外のバイオ医薬品受託製造企業
2 国内のバイオ医薬品受託製造企業
2.1 旭硝子
2.2 東洋紡バイオロジックス
2.3 その他受託製造企業
第10章 バイオ医薬品関連機器メーカーの動向
1 メルク(メルクミリポア事業本部)
2 JNC
3 ワイエムシィ(YMC)
4 旭化成メディカル
5 藤森工業
6 マツボー
7 アイエスジャパン
8 プロテノバ
9 アジレント・テクノロジー
第11章 抗体試薬関連企業の動向
1 抗体医薬研究支援受託サービス
1.1 ジーンフロンティア
1.2 ディナベック
1.3 広島バイオメディカル
1.4 トランスジェニック
1.5 コスモ・バイオ
1.6 ユー・メディコ
1.7 創晶
1.8 AMBiS
1.9 その他の研究支援サービス受託企業
2 コンパニオン診断薬メーカーの動向
2.1 ロシュ・ダイアグノスティックス
2.2 ダコ・ジャパン
2.3 ニチレイバイオサイエンス
2.4 医学生物学研究所
2.5 協和メデックス
2.6 キアゲン
2.7 プロトセラ
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