キーワード:
ホスト-ゲスト相互作用/自己組織化・自己集合性/自己集合性/刺激応答性/STM,AFM/構造解析/タンパク質ナノチューブ/バイオトランジスタ/遺伝子スイッチ/DNA折紙/β-グルカン/ポリエチレングリコール/DDS/光応答性/フォトクロミック/センサ
刊行にあたって
「超分子化学」は数十年前にフランスのLehn教授が提唱されてからはじまった。当初は「分子を超えた化学」として、分子間相互作用により分子が集合してある特定の構造を形成した場合、超分子構造が形成されたとしてその構造や機能について詳細に検討された。当初はクラウンエーテルやシクロファン、カリックスアレンなどの環状分子がホスト分子としてその環内に様々なゲスト分子をとりこみ、いわゆる包接錯体を形成することがみいだされ報告された。その後、Calixarenes やCucurbiturilなど新たな環状ホスト分子が使われ、新たな超分子構造の形成が報告されるようになった。このようにホスト-ゲスト相互作用による超分子構造の形成に関する研究は膨大な数の報告がなされている。ほとんどはその構造形成とその構造の研究であった。
さて、分子間の相互作用で形成された超分子はどのような性質を示し、どのような機能を持つのだろうか。まず、超分子形成においては、通常の合成反応による共有結合の形成のように、加熱したり、触媒を用いたりすることなく、常温、常圧で両成分を混合するだけで構造が形成される。自己組織化や自己集合体形成と呼ばれるゆえんである。もちろん、このような超分子形成過程が、生体系などの構造形成とよく似ているため、効率の良い構造形成法として、関心がもたれたものと考えられる。超分子の特徴としては、分子間相互作用でできているので、室温付近でついたり離れたり、可逆的に変化することができることであろう。まさに生体系での物理的な変化の根源をなすものである。このような可逆的な性質は、触媒機能やエネルギー変換機能、さらには自己修復機能など、さまざまな機能に繋がるものである。近年ではさらに超分子構造は光や酸化還元など、刺激応答性の材料としても注目されている。
本書では、第1編として超分子化学の基礎として、その構造の構築法や機能、と評価について、その専門とする著者により紹介し、第2編では応用として、超分子形成が材料としてそのように設計され、応用展開されていくか紹介する。
(序章「超分子の研究開発動向」より)
著者一覧
原田 明 大阪大学 山口浩靖 大阪大学 高島義徳 大阪大学 重光 孟 京都大学 浜地 格 京都大学 國武雅司 熊本大学 上村 忍 香川大学 中川敦史 大阪大学 小松晃之 中央大学 秋山元英 中央大学 宮原裕二 東京医科歯科大学 松元 亮 東京医科歯科大学 合田達郎 東京医科歯科大学 前田康弘 東京医科歯科大学 田畑美幸 東京医科歯科大学 三條 舞 東京医科歯科大学 板東俊和 京都大学 杉山 弘 京都大学 遠藤政幸 京都大学 鈴木利雄 大阪市立大学 | 長崎 健 大阪市立大学 井戸垣秀聡 ダイソー㈱ 長崎幸夫 筑波大学 片山佳樹 九州大学 波多野 学 名古屋大学 石原一彰 名古屋大学 鈴木隆之 東京電機大学 遠藤亮介 東京電機大学 比氣靖大 東京電機大学 藤沢潤一 東京大学 橋爪章仁 大阪大学 田中一生 京都大学 中條善樹 京都大学 小林洋一 青山学院大学 阿部二朗 青山学院大学 込山英秋 JST-ERATO;東京工業大学 彌田智一 JST-ERATO;東京工業大学 生越友樹 金沢大学 山岸忠明 金沢大学 |
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【第1編 構築と機能,評価】
第1章 ホスト-ゲスト相互作用
1 はじめに
2 クラウンエーテル
3 シクロファン
4 カリックスアレーン
5 Cucurbiturils
6 シクロデキストリン
7 その他
8 おわりに
第2章 自己組織化・自己集合性
1 はじめに
2 自己集合と自己組織化
3 自己組織化超分子
4 金属種を介した自己組織化
5 分子認識
6 生体分子を利用したナノ構造体の創製
7 おわりに
第3章 自己修復
1 はじめに
2 修復剤徐放型自己修復材料
3 水素結合を利用した自己修復性エラストマー
4 シクロデキストリンとは
5 CDを用いた自己修復性超分子ヒドロゲルの作製
6 CD修飾ポリマーとフェロセン修飾ポリマーによる酸化還元応答性自己修復性超分子ヒドロゲル
7 包接錯体の重合により作製された自己修復性超分子ヒドロゲル
8 結言
第4章 刺激応答性超分子の分子設計指針と機能応用
1 はじめに
2 刺激応答性超分子材料の分子設計指針
2.1 刺激応答性超分子の分子設計指針
2.2 刺激応答性分子による超分子集合体
2.2.1 光応答性分子による超分子材料
2.2.2 酸化還元応答性分子による超分子材料
2.2.3 イオン,分子応答性の超分子材料
2.3 超分子集合体の非共有結合による構造制御
2.3.1 熱による超分子集合体の制御
2.3.2 分子による超分子集合体の制御
2.3.3 力学的刺激による超分子集合体の制御
3 刺激応答性超分子材料の応用展開
3.1 機能性材料への応用展開
3.2 バイオマテリアルへの応用展開
3.2.1 ヒドロゲル
3.2.2 超分子集合体によるイメージング
3.2.3 細胞および生体内での超分子集合体
4 おわりに
第5章 STM,AFMを用いた超分子構造の観察と評価
1 緒言
2 STMを用いた固体表面の超分子構造の観察
3 STMを用いた二次元超分子構造のサブ分子スケールでの観察
4 共有結合性二次元超分子構造の構築とSTM観察
5 AFMを用いた超分子会合構造の観察
6 SPMと超分子研究の将来
第6章 放射光を利用したX線結晶構造解析
1 はじめに
2 X線の発生
2.1 実験室系X線発生装置
2.2 放射光
3 超分子複合体の構造解析における困難さ
4 生体超分子複合体構造解析ビームライン
4.1 アンジュレータ光源と光学系
4.2 ゴニオメータ部
4.3 検出器
4.4 試料冷却装置
5 異常分散法
6 超高分解能構造解析
【第2編 応用】
第1章 医療用
1 タンパク質ナノチューブの合成と応用展開
1.1 はじめに
1.2 多孔性膜を鋳型としたナノチューブの合成
1.3 アルブミンからなるタンパク質ナノチューブの合成と分子捕捉
1.4 一次元内孔空間へのウイルス・細菌の捕捉
1.5 ナノチューブの酵素活性,触媒活性
1.6 おわりに
2 刺激応答性アクチュエータ
2.1 はじめに
2.2 能動カテーテル
2.3 血管塞栓材料
2.4 刺激応答性アクチュエータ
2.4.1 CDを用いた刺激応答性超分子ヒドロゲルの作製
2.4.2 CDを用いた光刺激応答性超分子アクチュエータの作製
2.4.3 CDを用いた酸化還元応答性超分子アクチュエータの作製
2.5 結言
3 機能性超分子界面を用いるバイオトランジスタ
3.1 はじめに
3.2 バイオトランジスタの原理
3.3 スマートゲルを用いたバイオトランジスタ
3.4 糖鎖-レクチン認識を検出するための新規界面材料の設計
3.5 直鎖ポリマーを検出界面とするバイオトランジスタ
3.6 ヘアピンアプタマーを用いるバイオトランジスタ
3.7 おわりに
4 遺伝子スイッチ
4.1 はじめに
4.2 二本鎖DNAに対する結合性
4.3 DNA塩基配列を特異的に認識する機能分子
4.4 機能性Py-Imポリアミド:DNA配列特異的アルキル化反応
4.5 機能性Py-Imポリアミド:エピジェネティクス制御
4.6 まとめ
5 DNAオリガミ構造体を利用した1分子イメージングシステムの開発
5.1 はじめに
5.2 酵素反応の1分子観察への応用
5.2.1 DNAメチル転移酵素の反応制御と1分子観察
5.2.2 DNA修復酵素の反応制御と1分子観察
5.2.3 DNA組み換え酵素の反応制御と1分子観察
5.2.4 RNAポリメラーゼのナノ構造上での1分子観察
5.3 DNA構造変化の1分子観察への応用
5.3.1 グアニン4重鎖構造の形成と解離の1分子観察
5.3.2 B-Z構造転移のナノ構造内での1分子観察
5.4 光応答性DNAを使った1分子観察
5.4.1 光応答性2本鎖DNAの形成と解離のナノ構造内での1分子観察
5.4.2 光応答性DNAナノ構造体の集合と解離の操作と1分子観察
5.5 DNA分子機械への応用
5.6 3次元DNA構造体の構造変化の直接観察
5.7 おわりに
6 機能性食品素材β-グルカンの開発―機能性食品素材から医療材料への応用―
6.1 はじめに
6.2 高純度β-グルカンの発酵生産法の開発
6.3 アクアβの生理機能
6.3.1 腸管免疫賦活効果について
6.3.2 抗I型アレルギー効果について
6.3.3 胃腸粘膜の保護効果について
6.4 β-1,3-グルカンの医用マテリアルへの応用
6.4.1 止血剤用ハイドロゲル材料としてのβ-1,3-グルカン
6.4.2 β-1,3-1,6-グルカンを用いたポリアルデヒド材料の合成
6.4.3 ポリリジンからの高分子ポリアミンの合成
6.4.4 ハイドロゲルの特徴
6.4.5 ハイドロゲルの止血効果および安全性について
6.5 疎水溶性物質可溶化剤としてのβ-1.3-グルカン
6.5.1 疎水性化合物の包接・複合化による可溶化
6.5.2 疎水性化合物の可溶化 薬理活性を有する化合物への応用
6.5.3 疎水性化合物の水溶化―カーボンクラスターC70を用いた光応答への応用―
6.6 おわりに
第2章 薬品関連
1 バイオマテリアル界面におけるポリエチレングリコールの役割
1.1 緒言
1.2 反応性PEG誘導体の合成
1.3 バイオインターフェースの構築
1.4 鎖長効果と埋め草処理
1.5 多点結合によるPEGブラシの構築
1.6 PEG/抗体ハイブリッド界面の構築
1.6.1 基材表面でのPEG密生層の構築と抗体固定法
1.7 PEG/オリゴDNAハイブリッド界面の構築
1.8 表層にメルカプト基を有するMixed-PEG修飾金表面の構築
1.9 終わりに
2 超分子ナノバイオデバイスによる薬物・遺伝子デリバリー
2.1 超分子と薬物・遺伝子送達
2.2 DDSに応用される種々の超分子構造体
2.2.1 環状超分子を用いるDDS
2.2.2 ナノゲル
2.2.3 ベシクル
2.2.4 高分子ミセル
2.3 超分子型DDS構造体の機能化
2.3.1 ナノメディスンの取り込み経路と,必要とされる機能
2.3.2 pH応答型超分子構造体
2.3.3 還元剤応答型超分子構造体
2.3.4 刺激により細胞への取り込みを促進する構造体
2.3.5 酵素応答型超分子ナノ構造体
2.4 おわりに
3 テーラーメイド型超分子触媒
3.1 はじめに
3.2 キラル超分子マグネシウム(Ⅱ)ビナフトラート触媒の開発
3.2.1 α,β-不飽和カルボニル化合物に対する有機リン化合物の付加反応
3.2.2 キラルマグネシウム(Ⅱ)ビナフトラート触媒の最適化
3.2.3 不斉1,4-ヒドロホスフィニル化反応と不斉1,2-ヒドロホスホニル化反応
3.2.4 キラルPN配位子及び光学活性環状オキサホスホラノールへの誘導
3.2.5 推定される触媒活性種と遷移状態
3.2.6 直截的不斉Mannich型反応への展開
3.2.7 不斉ヘテロDiels-Alder反応への展開
3.3 キラル超分子ホウ素(Ⅲ)ビナフトラート触媒の開発
3.3.1 Diels-Alder反応とは
3.3.2 キラル超分子ホウ素(Ⅲ)ビナフトラート触媒の創製
3.3.3 メタクロレインとの異常エンド選択的反応
3.3.4 α-ハロアクロレインとの異常エンド選択的反応
3.3.5 α-無置換アクロレインとの異常エキソ選択的反応
3.3.6 基質混在の競争条件下での基質選択的反応
3.4 おわりに
第3章 環境・エネルギー
1 光応答性高分子による環境モニタリング・制御大
1.1 はじめに
1.2 二酸化炭素モニタリング
1.3 表面環境の濡れ制御
1.4 反応環境の制御
1.5 水中における金属イオンのモニタリングと吸着制御
1.6 空気環境における酸素濃度の制御
2 界面電荷移動吸収を示す有機-無機複合材料の創製と太陽電池への応用
2.1 有機系太陽電池の研究背景
2.2 酸化チタンとジシアノメチレン化合物からなる有機-無機複合材料
2.2.1 新規有機-無機複合材料の発見
2.2.2 TiO2-TCNQにおける界面電荷移動遷移の発現機構
2.2.3 界面電荷移動遷移の化学制御
2.3 界面電荷移動遷移による光電変換
2.4 総括
3 エネルギー変換超分子材料
3.1 はじめに
3.2 エネルギーの基本概念とエネルギー変換
3.3 エネルギー変換超分子材料
3.3.1 光エネルギーから化学エネルギーへの変換(人工光合成)
3.3.2 光エネルギーから電気エネルギーへの変換(太陽電池)
3.3.3 化学エネルギー,または,光エネルギーから力学エネルギーへの変換
超分子アクチュエーター)
3.3.4 電気エネルギーから光エネルギーへの変換(有機発光ダイオード)
3.4 まとめと展望
第4章 機能材料への応用
1 有機-無機ポリマーハイブリッドを基盤としたソフトマテリアル
1.1 はじめに
1.2 有機-無機ポリマーハイブリッド合成
1.2.1 ゾル-ゲル法によるハイブリッド材料作成
1.2.2 白色発光ハイブリッドの合成
1.2.3 溶存酸素量に感応して強度が変わるりん光発光性ハイブリッド
1.3 POSSを用いたハイブリッド材料
1.3.1 POSSを架橋点としたネットワーク型ハイブリッド材料と分子内包
1.3.2 環境応答性アップコンバージョン色素
1.3.3 分子認識の足場材料としての利用
1.3.4 「ソフト」な金属キレーターとしてのPOSS核デンドリマー
1.4 おわりに
2 高速フォトクロミック分子の高性能化と新機能創成
2.1 はじめに
2.2 高速フォトクロミック分子の機能性の拡張
2.2.1 逆配置型イミダゾール二量体によるスペクトル先鋭化と高機能化
2.2.2 キラル高速フォトクロミック分子
2.2.3 ペンタアリールビイミダゾール
2.3 高速フォトクロミック分子の応用例
2.3.1 高速光応答蛍光プローブ
2.3.2 実時間ホログラムへの応用
2.4 近年の研究発展:逆フォトクロミズム
2.5 おわりに
3 ブロックコポリマーテンプレート電解重合による導電性高分子ナノワイヤの作製とナノ集積化プロセス
3.1 緒言
3.2 テンプレート重合法による導電性高分子ナノ構造体の作製
3.3 両親媒性液晶ブロックコポリマーを用いたテンプレート電解重合
3.4 ブロックコポリマーテンプレート電解重合の新展開
3.5 結論と展望
4 人工金属酵素の超分子的機能化
4.1 はじめに
4.2 バイオミメティックケミストリーに基づいた人工金属酵素システムの構築
4.2.1 ビタミンB12人工金属酵素
4.2.2 DNAポリメラーゼのような機能を持った人工金属触媒
4.2.3 シクロデキストリンを用いた人工金属触媒
4.3 生体高分子と金属錯体のハイブリッドシステム
4.3.1 DNAを用いた不斉合成
4.3.2 抗体に金属錯体を導入した触媒
4.3.3 既存のタンパク質に金属錯体を固定したシステム
4.4 おわりに
第5章 センサー
1 環状ホスト分子を基にした超分子センサー
1.1 はじめに
1.2 バケツ状環状ホスト分子シクロデキストリン(CD)を用いた超分子センサー
1.3 カボチャ状ホスト分子ククルビツリル(CB)を用いた超分子センサー
1.4 杯状ホスト分子カリックスアレーンを用いた超分子センサー
1.5 柱状ホスト分子ピラーアレーンを用いた超分子センサー
1.6 おわりに
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