キーワード:
光学材料/ガラス代替/屈折率制御/複屈折制御/高透明化/高耐熱化/エイジング/低熱膨張性/高屈折率ポリマー/ゾル―ゲル法/セルロースナノファイバー/透明樹脂各種/フレキシブル液晶・有機ELディスプレイ/タッチパネルディスプレイ/有機太陽電池
刊行にあたって
透明ポリマーが、ディスプレイ用光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、タッチパネルなど各種光学部材に用いられ、先端技術分野を支える重要な材料となっている。さらに、環境・エネルギー的観点、ユーザビリティといった点から期待が高まる次世代照明、フレキシブル有機太陽電池、フレキシブルディスプレイなど次世代技術の実用化においても、透明ポリマー材料の果たす役割は大きい。各種光学部材の機能を高め、次世代技術を実用化させるには、屈折率制御、複屈折制御、高透明化などポリマーの光学特性を高性能化するとともに、耐熱性や熱膨張性などの特性を向上させていくことが必要となる。
透明ポリマーの光学特性を制御し、高性能化を実現するためには、ポリマーの化学構造、高次構造と光学特性の関係を理解していく必要がある。ポリマーの構造と光学特性の関係を理解することにより、効率的な高性能透明ポリマーの分子設計、材料開発が可能となる。また、次世代革新技術を担う材料として透明ポリマーを成長させてやるためには、用途展開についての議論、そこで要求される性能の明確化なども必要である。
光学用透明ポリマーの研究・開発を進めるためには「高分子」という材料・物質についての理解と、「光」についての理解が必要である。それも、その2つがどのように関わり合いを持っているのかを追及していくことが大切で、化学、物理,電子など専門を超えた、そして、材料、電器、光学機器など業種を超えた交流、議論が不可欠である。また、産業の現場で要求される性能を知り、それをどう実現していくかを模索することで透明ポリマーの基礎科学が深まっていく。
本書は透明ポリマーの基礎から最新の材料開発技術、さらに今後の応用展開について網羅している。本書の著者は、いずれも第一線で活躍されており、多忙にもかかわらず、執筆を快諾していただいた。第1編は基礎編であり、光学特性制御の基礎など、高性能透明ポリマー材料の開発、設計に必要な基礎知識について述べられている。第2編では、屈折率や複屈折を制御した、また耐熱性や低熱膨張性を実現した、最新の高性能透明ポリマーの材料開発技術について解説していただいた。第3編では、樹脂別の開発動向が紹介されている。そして、第4編は応用編とし、透明ポリマーを用いた次世代技術について展望していただいた。
本書が、次世代技術を担う透明ポリマー材料の開発、発展に貢献することができれば幸いである。
2015年1月
千歳科学技術大学 谷尾宣久
著者一覧
谷尾宣久 千歳科学技術大学 井上正志 大阪大学 松本章一 大阪府立大学 工藤宏人 関西大学 松川公洋 (地独)大阪市立工業研究所 榎本航之 山形大学 菊地守也 山形大学 川口正剛 山形大学 田中一生 京都大学 中條善樹 京都大学 越智光一 関西大学 多加谷明広 慶應義塾大学 斎藤 拓 東京農工大学 山口政之 北陸先端科学技術大学院大学 荒川優樹 東京工業大学 小西玄一 東京工業大学 長谷川匡俊 東邦大学 能木雅也 大阪大学 | 広野正樹 三菱エンジニアリングプラスチックス㈱ 加藤宣之 三菱ガス化学㈱ 魚津吉弘 三菱レイヨン㈱ 田中 徹 三井化学㈱ 青崎 耕 旭硝子㈱ 坂根好彦 旭硝子㈱ 岡本 敏 住友化学㈱ 後藤幸平 後藤技術事務所 榊原 誠 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社 高野祐輔 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社 井上 梓 慶應義塾大学 小池康博 慶應義塾大学 武本博之 日東電工㈱ 田宮崇光 旭硝子㈱ 藤掛英夫 東北大学 清水貴央 NHK放送技術研究所 関谷 毅 大阪大学 池上和志 桐蔭横浜大学 |
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第1章 屈折率制御
1 はじめに
2 屈折率と分子構造
2.1 屈折率の定義
2.2 屈折率と分子構造
3 屈折率の波長依存性
4 屈折率の温度依存性
5 屈折率の制御
5.1 Lorentz-Lorenz式に基づいた屈折率の制御
5.2 高屈折率化
5.3 低屈折率化
6 屈折率の精密測定
7 透明ポリマーの屈折率予測
7.1 屈折率予測システム
7.2 屈折率予測における課題
8 おわりに
第2章 複屈折制御
1 複屈折の微視的起源と配向複屈折
2 ゴム状物質の複屈折:応力光学則
3 高分子固体の複屈折
4 修正応力光学則とその分子論的解釈
5 光弾性係数
6 分子構造と複屈折
7 共重合による複屈折制御
8 複屈折の波長依存性
第3章 高透明化
1 はじめに
2 高透明化のための高次構造制御
2.1 光散乱法による高次構造解析と透明性の評価
2.2 透明ポリマー固体の屈折率不均一構造
2.3 高透明化のための高次構造制御
3 高透明化のための分子設計
3.1 光散乱損失と分子構造
3.2 光吸収損失と分子構造
3.2.1 電子遷移吸収
3.2.2 原子振動吸収
3.3 高透明化のための分子設計
4 透明ポリマーの透明性予測
5 おわりに
第4章 高耐熱化
1 はじめに
2 耐熱性の評価方法
3 高耐熱・高透明アクリル系ポリマーの開発
3.1 ポリメタクリル酸エステル
3.2 ポリフマル酸エステル
3.3 マレイミドコポリマー
第5章 エイジング
1 はじめに
2 エイジングに伴うエンタルピー変化
3 エイジングに伴う屈折率変化
4 エイジングに伴う複屈折変化
5 エイジングと透明性
6 おわりに
【第2編 材料開発技術】
第6章 屈折率制御材料
1 高屈折・含硫黄スターポリマー
1.1 はじめに
1.2 t-ブチルカリックス[8]アレーン(BCA[8])をコアに有する含硫黄スターポリマーの合成と屈折率特性
1.3 C-メチルカリックレゾルシンアレーン,C-ヒドロキシベンズカリックスレゾルシンアレーンをコアに有する含硫黄スターポリマーの合成と屈折率特性
1.4 4本腕含硫黄スターポリマーの合成と屈折率特性
1.5 含硫黄スターポリマーの構造と屈折率の関係
1.6 まとめ
2 高屈折率有機無機ハイブリッド材料
2.1 はじめに
2.2 チオール基含有シルセスキオキサンによる有機無機ハイブリッド
2.3 エン―チオール/ゾル―ゲル同時反応による有機無機ハイブリッド
2.4 ジルコニアナノ粒子を含んだ高屈折率有機無機ハイブリッド
2.4.1 2段階法によるジルコニアナノ粒子分散体の調製
2.4.2 デュアルサイト型シランカップリング剤によるジルコニアナノ粒子分散体の調製
2.5 おわりに
3 ZrO2ナノ微粒子を用いた高屈折率透明材料
3.1 はじめに
3.2 ZrO2ナノ微粒子の水相からトルエン相への相移動とその場疎水化技術
3.3 ZrO2ナノ微粒子含有高屈折率透明材料の合成
3.4 おわりに
4 かご型シルセスキオキサンを用いたポリマーの屈折率制御技術
4.1 はじめに
4.2 樹脂の低屈折率化のためのPOSSフィラー
4.3 硫黄含有POSSネットワークポリマーを用いた高分子の高屈折率化
4.4 おわりに
5 高屈折率エポキシハイブリッド材料
5.1 はじめに
5.2 化学構造の制御によるエポキシ樹脂の高屈折率化
5.3 遷移金属酸化物ナノ粒子とのハイブリッドによるエポキシ樹脂の高屈折率化
5.4 ジルコニアナノ粒子による高屈折率化とエポキシ樹脂の硬化機構
5.5 おわりに
第7章 複屈折制御材料
1 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマー
1.1 はじめに
1.2 光学ポリマーの複屈折
1.2.1 配向複屈折
1.2.2 光弾性複屈折
1.3 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーの設計・合成
1.3.1 ランダム共重合法
1.3.2 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーの設計
1.3.3 射出成形におけるゼロ・ゼロ複屈折ポリマーの有効性
1.3.4 ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーの応用
1.4 おわりに
2 ポリマーブレンドによる複屈折制御
2.1 はじめに
2.2 ポリマーの複屈折
2.3 ポリマーブレンド法による複屈折の低減化
2.4 ポリマー/ポリマー系の複屈折挙動
2.5 ポリマー/低分子系の複屈折挙動
2.6 ブロック共重合体の複屈折挙動
2.7 おわりに
3 低分子添加剤による複屈折制御
3.1 緒言
3.2 面内複屈折の制御
3.3 面外複屈折の制御
3.4 形態複屈折の制御
4 大きな複屈折を有する液晶高分子
4.1 はじめに
4.2 可視光に吸収を示さない高複屈折性材料
4.3 低分子系から高分子系へ
4.4 幅広いN相を示すチオフェン系液晶の開発
4.5 おわりに
第8章 耐熱性・低熱膨張性材料
1 溶液加工性と低熱膨張特性を併せ持つ透明耐熱性ポリマー
1.1 透明耐熱性高分子材料の必要性
1.2 耐熱性高分子系の候補
1.3 PIフィルムを透明化するための方策
1.3.1 透明性に及ぼす因子
1.3.2 脂環式ジアミンより得られる透明PI系と製造上の問題点
1.3.3 脂環式テトラカルボン酸二無水物より得られるPI系
1.4 PBOフィルムを透明化するための方策
1.5 熱イミド化によって得られる低熱膨張性透明ポリイミド
1.6 溶液キャスト製膜するだけで低CTEを発現する透明PI系
1.6.1 核水素化PMDAの立体構造制御によるアプローチ
1.6.2 脂環式モノマーに頼らずに高透明性・低CTE・高Tg・溶液加工性を実現するための方策
1.7 おわりに
2 セルロースナノファイバーを用いた低熱膨張性透明材料
2.1 はじめに
2.2 セルロースナノファイバーの製造方法
2.2.1 セルロースパルプへの化学変成処理
2.2.2 セルロースパルプへの機械的解繊処理
2.3 セルロースナノファイバーを用いた低熱膨張性透明材料
2.3.1 ナノペーパーが透明になる理由
2.3.2 ナノペーパーの透明性
2.3.3 加熱しても高い透明性を保つナノペーパー
2.4 ナノペーパーの機械的特性
2.5 まとめ ペーパーエレクトロニクスの実現に向けて
【第3編 樹脂別開発動向】
第9章 PC樹脂
1 PC
1.1 PC樹脂の歴史と技術動向
1.2 材料開発動向
1.2.1 電気・電子・OA
1.2.2 自動車
1.2.3 光学用
1.2.4 アミューズ・雑貨
1.3 今後の材料開発動向
2 光学用特殊ポリカーボネート―Iupizeta EP―
2.1 緒言
2.2 PCの製法
2.3 高屈折・低複屈折特殊PC Iupizeta EPの概略
2.4 Iupizeta EPシリーズのレンズ成形について
2.5 今後のIupizeta EP材料
第10章 アクリル樹脂
1 はじめに
2 PMMAの生産量
3 PMMAの製造方法
3.1 シート
3.1.1 セルキャスト
3.1.2 連続キャスト法
3.1.3 押出し法
3.2 成形材料
3.2.1 懸濁重合法
3.2.2 乳化重合法
3.2.3 連続塊状重合法
3.2.4 連続溶液重合法
4 PMMAの物性
4.1 光学特性
4.1.1 透明性
4.1.2 屈折率
4.1.3 複屈折
4.2 一般物性
4.3 表面硬化PMMAシート
5 透明性を活用したPMMAの用途
5.1 液晶バックライト用導光板
5.1.1 液晶バックライト
5.1.2 エッジライティング
5.1.3 導光板の要求性能
5.2 プラスチック光ファイバー
6 環境への対応
6.1 サーマルリサイクル
6.2 サステイナブルMMAの開発
第11章 環状オレフィン系樹脂
1 環状オレフィン共重合体
2 構造と物性
2.1 構造
2.2 アペル®光学銘柄について
2.3 その他の物性
3 アペル®各銘柄の用途,特長について
4 今後の開発について
第12章 フッ素樹脂
1 フッ素樹脂の特長
2 透明フッ素樹脂「サイトップ」
2.1 反射防止コーティング
2.2 光ファイバー
2.3 紫外LED封止・周辺部材
2.4 ペリクル
第13章 ガラス代替透明樹脂シート・フィルム
1 はじめに
2 カバーレンズの市場と樹脂比率
3 カバーレンズの樹脂化の課題と開発動向
3.1 カバーレンズに用いる場合の樹脂とガラスの比較
3.2 樹脂シートの高感度化(高誘電率化)
4 フレキシブルデバイスにおけるガラス代替の取り組み
4.1 ガラス代替ハイバリアフィルム
4.2 カバーガラス代替フィルム
第14章 ポリイミドを中心とした耐熱透明材料の開発動向
1 はじめに
2 透明ポリイミドの開発経緯
3 最近の開発動向
3.1 新しいモノマーからの機能化を意図した透明ポリイミド
3.1.1 屈折率の制御
3.1.2 低線膨張係数化
3.2 耐熱透明ポリイミドの開発品,製品化例
3.3 ポリイミド以外の耐熱透明ポリマーの開発品,製品化例
第15章 シリコーン樹脂
1 まえがき
2 シリコーンの化学
3 液状シリコーンゴム製品の硬化反応
3.1 縮合反応型
3.2 付加反応型
3.3 紫外線硬化型
3.4 複合硬化型
4 光学用途への展開(オプティカルボンディング)
4.1 InvisiSil OPシリーズ
4.2 自動車ディスプレイ向けオプティカルボンディング
5 おわりに
【第4編 応用展開】
第16章 プラスチック光ファイバー
1 はじめに
2 世界最速GI型POF
2.1 GI型POFの高帯域化
2.2 全フッ素化GI型POF
3 4K/8Kの時代に向けたインターコネクト技術と放送伝送技術
3.1 8K非圧縮伝送用GI型POFケーブル
3.2 Radio-over-Fiber伝送技術
4 おわりに
第17章 ディスプレイ用光学フィルム
1 はじめに
2 LCD用光学フィルム
2.1 偏光板
2.2 輝度向上フィルム
2.3 光学補償板
2.4 表面処理
3 タッチパネル用透明導電フィルム
4 光学用透明粘着フィルム(OCA)
5 最後に
第18章 タッチパネル用透明導電膜基材向け低位相差ポリカーボネートフィルム
1 はじめに
2 抵抗膜方式と静電容量方式の構造
2.1 抵抗膜方式
2.2 静電容量方式
2.3 カバー材料
2.4 透明導電膜
2.5 透明導電膜基材
3 AGCにおけるポリカーボネート事業について
第19章 フレキシブル液晶ディスプレイ
1 情報化社会からの要請
2 フレキシブル液晶の特徴と用途
3 フレキシブル液晶のデバイス構成と動作原理
4 技術課題と克服方法
4.1 基板間隔を安定化する接着スペーサ
4.2 プラスチック基板の光学補償
4.3 薄膜トランジスタを含む画素形成
4.4 フレキシブルなバックライト
4.5 液晶動作モードの選択
5 今後の発展性
第20章 フレキシブル有機ELディスプレイ
1 はじめに
2 有機ELディスプレイの特徴とフレキシブル化への課題
3 フレキシブル有機ELディスプレイの構造と作製方法
4 フレキシブル有機ELディスプレイのさらなる高性能化に向けた要素技術開発
4.1 塗布型透明ポリイミド基板
4.2 大気安定な逆構造有機EL素子
5 おわりに
第21章 フレキシブルエレクトロニクス
1 はじめに
2 研究背景
3 フレキシブルエレクトロニクス
4 フレキシブルトランジスタ
4.1 有用性
4.2 性能比較と特性の変遷
5 応用研究
5.1 フレキシブルディスプレイ
5.2 フレキシブルRFID
5.3 フレキシブルセンサ
6 将来展望とまとめ
第22章 フレキシブル有機系太陽電池
1 はじめに
2 有機系太陽電池の構造と透明導電性基板
3 フレキシブル有機系太陽電池の期待される用途
4 有機系太陽電池の製造プロセス開発
5 おわりに
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