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炭素繊維強化樹脂/炭素繊維/PAN系/ピッチ系/レギュラートウ/ラージトウ/マトリックス樹脂/熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂/耐熱性樹脂/中間基材/プリプレグ/織・編み物加工/成形加工技術/ハイサイクル成形/自動車/航空機/高圧容器/風力発電/リサイクル技術/市場動向/メーカー動向
刊行にあたって
炭素繊維は、鉄と比較すると比重で1/4、比強度で10倍、比弾性率が7倍と、「軽く」「強い」という特徴を持つ。炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)とは、強化材にその炭素繊維を用いた繊維強化プラスチックである。
近年、CFRP市場は航空機や自動車、スポーツ・レジャー用品、圧力容器、風力発電装置、高圧電線用途などでの需要が増加しており、本格的拡大期に突入したといわれている。世界市場規模は毎年20%程度の伸びが予想され、2020年には約4,500億円になると見込まれる。
特に最近の技術革新により、CFRP部品の価格を鋼板製部品並みに下げ量産車への搭載を目指した取り組みが現実のものになりつつあり、自動車分野での需要拡大に対する期待が高まっている。世界的に燃費規制が進む中、自動車メーカーの注目が車体軽量化に集まっており、金属からCFRPへの代替が急がれている。NEDO((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試算によると、鋼を主構造とすると車両重量は1,380kgであるが、CFRPを多用することにより410kgと約30%の軽量化が可能になる。その結果、22.5%の燃費改善が見込めるという。
一方、CFRPの課題として成形加工が難しい、成形時間が長いことが挙げられる。しかし成形加工では中小企業の成形加工技術を活かせるとあって、中小企業の参入が相次いでいる。また成形時間短縮に向けたハイサイクル成形技術の開発や熱可塑性樹脂を使ったCFRTPの開発が進められている。
本書では本格的拡大期に入ったCFRPの最新開発動向と市場動向についてまとめた。
【開発編】では、熱可塑性CFRPや様々な成形加工技術、自動車・航空機・高圧容器などへの応用展開、リサイクル技術などCFRP開発の主要テーマについて、開発の最前線で活躍されている専門家の方々に解説をお願いした。
【市場編】では、炭素繊維の市場動向、マトリックス樹脂の動向(熱硬化性樹脂/熱可塑性樹脂)、CFRPの市場動向、CFRPが使われる用途別市場動向、メーカー動向(炭素繊維メーカー/織・編み物加工メーカー/プリプレグ加工メーカー/成形加工メーカー)に関して、独自取材に基づいた最新の情報を掲載している。
繊維メーカー、樹脂メーカー、成形加工メーカー、自動車メーカーなどCFRPに関心をお持ちの方々の情報収集の一助となれば幸いである。
著者一覧
荒井豊 日本グラファイトファイバー(株)
井上隆 山形大学
石田雄一 (独)宇宙航空研究開発機構
有澤秀彰 三菱重工業(株)
木村南 東京工業高等専門学校
影山裕史 金沢工業大学
奥明栄 東レ・カーボンマジック(株)
平博仁 大同大学
高野俊夫 JFEコンテイナー(株)
杉山和夫 八戸工業高等専門学校;NPO法人リサイクル材料技術研究所
目次 + クリックで目次を表示
第1章 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の開発動向と応用展開
1 はじめに
2 炭素繊維の需要動向
3 用途別開発動向と用途展開
3.1 スポーツ用途
3.2 航空・宇宙用途
3.2.1 航空・宇宙分野でのCFRP適用状況
3.2.2 航空機用途での新規成形方法の開発
3.2.3 熱可塑性樹脂使いCFRP(CFRTP)の航空機部品開発
3.2.4 CFRP製飛行機使用上の課題に対する技術開発
3.3 一般産業用途
3.3.1 風力発電用風車(ブレード)
3.3.2 自動車用途の開発
3.3.3 圧力容器
3.3.4 その他の用途
4 まとめ
第2章 ピッチ系CFRPの特徴と用途展開
1 はじめに
2 ピッチ系炭素繊維の製法
3 ピッチ系炭素繊維の構造と特性
4 低弾性率領域におけるピッチ系炭素繊維CFRPの特徴と用途展開
5 高弾性率,高熱伝導率ピッチ系炭素繊維CFRPの特徴と用途展開
6 おわりに
第3章 熱可塑性CFRPに向けたマトリックス樹脂の開発
1 はじめに
2 短繊維CFトラスマットを用いたCFRTP
3 PPの高流動・高延性化
4 PPの無水マレイン酸修飾
5 PPへのナイロングラフト
6 反応性可塑剤を用いたPPE
7 PP系CFRTPの成形加工
7.1 CFRTP/PP/CFRTPサンドウィッチ成形
7.2 スタンピング成形
8 おわりに
第4章 耐熱性樹脂の開発
1 はじめに
2 プリプレグ用熱硬化性ポリイミド樹脂
2.1 PMR-15
2.2 PETI-5
2.3 TriA-PI
2.4 TriA-SI
2.5 TriA-X
2.6 PETI-365EおよびPETI-340M
3 レジントランスファーモールディング(RTM)用熱硬化性ポリイミド樹脂
3.1 耐熱性樹脂をRTM成形に適用するには
3.2 PETI-330
3.3 Skybond(R) 8000
4 熱可塑性ポリイミド樹脂
5 まとめ
第5章 CFRPの高能率加工技術
1 はじめに
2 トリミング加工の高能率化
2.1 現状の課題
2.2 解決方法
2.3 電着工具の課題
2.3.1 目詰まり対策
2.4 開発工具での加工結果
2.4.1 高速加工試験
2.4.2 寿命試験
2.5 ドライ加工用電着工具の開発
2.5.1 ドライ加工の課題
2.5.2 解決方法
2.5.3 加工試験結果
3 ドリル加工の高能率化
3.1 現状の課題
3.2 解決方法
3.3 加工試験結果
4 まとめ
第6章 CFRPの成形・加工技術の現状と展望
1 CFRPの成形方法の現状
1.1 ハンドレイアップ法
1.2 オートクレーブ法
1.3 RTM成形法
1.4 フィラメントワインディング法(FW法)
1.5 シートワインディング法(SW法)
1.6 熱プレス法
1.7 シリコーンゴム型法(SR法)
1.8 CFRTPの成形技術
2 CFRPの加工技術
2.1 ウォータージェット加工
2.2 ワイヤカット放電加工
2.3 穴周りの補強
3 CFRP成形・加工技術の展望
3.1 脱オートクレーブ成形
3.2 ハイブリッド成形法と熱プレス成形法
3.3 加工技術と接合技術
第7章 自動車におけるCFRPの現状と動向
1 CFRPへの期待
1.1 エコカーへの取り組み
1.2 エコカーと軽量化
1.3 軽量材料CFRPの特徴と期待
2 自動車用CFRPの現状
3 自動車用CFRPの今後
3.1 CFの需要と供給
3.2 技術開発
3.2.1 熱硬化性CFRP
3.2.2 熱可塑性CFRP
3.3 ポピュラー化
3.3.1 リサイクル
3.3.2 カーボンニュートラル(植物由来材料化)
3.3.3 CFRPならではの設計
4 まとめ
第8章 レーシングカーのCFRP技術とその応用
1 はじめに
2 コンポジット材料適用の歴史
3 現在の適用状況
4 コンポジット化が進んだ要因
5 コンポジット化がもたらせた効果
5.1 操縦性・安定性の大幅な改善
5.2 車両運動性能の飛躍的な向上
5.3 衝突安全性の顕著な改善
5.4 車体空力性能の改善
5.5 スペース効率の向上
6 適用の事例と基本構造
6.1 モノコック
6.2 ロールオーバー構造
6.3 サスペンション
6.4 クラッシュボックス
6.5 ギアボックス
6.6 ボディカウル
6.7 車載消火器ボトル
7 安全性向上への寄与
7.1 セフティコンセプト
7.2 衝突試験
7.3 強度試験
8 高級スポーツカーへの技術応用
9 他分野への応用事例
9.1 産業機械
9.2 特殊車両
9.3 鉄道車両
9.4 医療機器
9.5 介護・福祉器具
9.6 競技具
10 まとめ
第9章 航空機におけるCFRPの現状と動向
1 はじめに
2 CFRPの機体への全般的な適用動向
3 CFRPの課題と対応
3.1 複合材料としての基本的課題
3.1.1 従来の金属とは異なる機械的特性
4 最近の民間航空機における複合材料の具体的な適用例
4.1 B777
4.2 A380
4.3 床の支持構造など
4.4 B787
4.5 A350XWB
4.6 MRJ
5 今後の展望
第10章 CFRP製高圧複合容器の設計と製造
1 はじめに
2 天然ガス・水素の供給プロセス
3 各種の高圧水素容器
4 CFRP高圧複合容器の製造方法
4.1 アルミニュウム合金(A6061)ライナの製造方法
4.2 プラスティックライナ(PL)の製造方法
4.3 CFRP層の製造方法
5 搭載燃料としての天然ガスと水素の相違点
5.1 急速充填時の温度挙動
5.2 CNGVとFCVに搭載される燃料システムの相違点
6 CFRP複合容器への要求仕様
6.1 各種の試験項目とその目的・概念
6.2 CNGVおよびFCV搭載容器用技術基準の比較
7 CFRP複合容器の設計上の留意点
7.1 CFRP層の設計
7.2 Type 3 ライナ用 アルミニュウム合金(A6061-T6)
7.2.1 水素脆化
7.3 Type 4 ライナ用 プラスティック(PL)
7.3.1 低熱伝導率
7.3.2 水素透過性能
7.3.3 繰り返し高圧水素環境下でのPLの耐久性
8 今後の課題
8.1 CNGV関連
8.1.1 海外の技術基準の動向
8.2 FCV関連
8.2.1 海外の技術基準の動向
8.2.2 Type 4容器用PLの耐久性の検証と開発
9 まとめ
第11章 CFRPリサイクル技術の現状と展望
1 はじめに
2 CFRPの需要動向
3 CFRPリサイクルの必要性
4 リサイクル技術の現状
4.1 端材,廃材の排出状況
4.2 リサイクル技術の分類
4.2.1 気相法プロセス
4.2.2 液相法プロセス
5 リサイクル炭素繊維のビジネスモデル
5.1 端材や廃材の仕入れおよび運搬
5.2 CFRPから炭素繊維の回収
5.3 中間素材の製造
5.4 熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂との複合材料製造
6 おわりに
【市場編】
第1章 炭素繊維の市場動向
1 PAN系炭素繊維の市場概況
1.1 市場概況
1.2 メーカー別生産能力
1.3 地域別,繊維別生産能力
2 ピッチ系炭素繊維の市場概況
2.1 市場概況
2.2 メーカー別,繊維別生産能力
2.2.1 メソフェーズピッチ系炭素繊維
2.2.2 等方性ピッチ系炭素繊維
3 CFRP供給組織体制(サプライチェーン)
3.1 サプライチェーンの概況
3.2 中間材加工メーカー
3.2.1 織・編み物加工メーカー
3.2.2 中間材加工メーカー
第2章 マトリックス樹脂の動向
1 熱硬化性樹脂
1.1 エポキシ樹脂
1.2 フェノール樹脂
1.3 ポリイミド
1.4 不飽和ポリエステル
1.5 ビスマレイミド
1.6 ビニルエステル
1.7 シアネートエステル
2 熱可塑性樹脂
2.1 ポリアミド
2.2 ポリプロピレン
2.3 ポリフェニレンサルファイド
2.4 ポリエーテルイミド
2.5 ポリエチレンテレフタレート
2.6 ポリエーテルケトン
2.7 ポリカーボネート
2.8 ポリエーテルエーテルケトン
2.9 ポリブチレンテレフタレート
2.10 ポリエーテルサルホン
第3章 CFRPの市場動向
1 CFRPの市場概況
1.1 現在の需要実績
1.2 用途別需要実績と予測
1.3 炭素繊維の価格推移
2 CFRPの国内動向
3 CFRPの海外動向
第4章 CFRPの用途別市場動向
1 輸送分野
1.1 自動車
1.2 レーシングカー
1.3 鉄道車両
1.4 船舶
1.5 その他輸送
2 航空・宇宙分野
2.1 民間航空機
2.2 ロケット・人工衛星
2.3 ヘリコプター
3 スポーツ・レジャー分野
3.1 釣具
3.2 ゴルフシャフト・ヘッド
3.3 テニスラケット
3.4 その他のスポーツ用品
4 エネルギー分野
4.1 風力発電
4.2 燃料電池
4.3 リチウムイオン電池
4.4 高圧電線
4.5 高圧ガス容器
4.6 海底油田
5 一般産業用
5.1 コンポジットロール
5.2 家電機器筐体
5.3 医療機器
5.4 ロボットハンド
5.5 ブレーキディスク
5.6 断熱材
6 土木建築用途
6.1 補強材
6.2 建築資材
6.3 橋梁
第5章 メーカー動向
1 PAN系炭素繊維メーカーの動向
1.1 東レ
1.2 東邦テナックス
1.3 三菱レイヨン
1.4 Hexcel
1.5 Cytec
1.6 台湾プラスチック
1.7 SGL Group
1.8 その他
1.8.1 Aksa
1.8.2 泰光産業
1.8.3 暁星
1.8.4 SABIC
1.8.5 Kemrock
2 ピッチ系炭素繊維メーカーの動向
2.1 クレハ
2.2 三菱樹脂
2.3 日本グラファイトファイバー
2.4 大阪ガスケミカル
3 織・編み物加工メーカーの動向
3.1 サカイ産業
3.2 綾羽工業
3.3 松文産業
3.4 日東紡績
3.5 シキボウ
3.6 SHINDO
3.7 中国紡織
3.8 丸井織物
3.9 創和テキスタイル
4 プリプレグ加工メーカーの動向
4.1 JX日鉱日石エネルギー
4.2 日本ポリマー産業
4.3 ミズノテクニクス
4.4 一村産業
4.5 平松産業(テックワン)
4.6 サカイオーベックス
4.7 ミツヤ
4.8 丸八
4.9 日本カーボン
4.10 サンワトレーディング
5 成形加工メーカーの動向
5.1 横浜ゴム
5.2 日立化成
5.3 川崎重工業
5.4 ジーエイチクラフト
5.5 福井ファイバーテック
5.6 有沢製作所
5.7 新日鉄住金マテリアルズ
5.8 フドー
5.9 スーパーレジン工業
5.10 フジワラ
5.11 日機装
5.12 UCHIDA
5.13 エーシーエム
5.14 カドコーポレーション
5.15 東レ・カーボンマジック
5.16 チャレンヂ
5.17 茨木工業
5.18 スピック
5.19 三菱重工業
5.20 ジャムコ
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