キーワード:
π共役系/ヘテロ元素/超分子/配位結合/水素結合/芳香族化合物/有機エレクトロニクス/BODIPY/希土類/シルセスキオキサン/有機-無機ナノハイブリッド/液晶/自己組織化
刊行にあたって
有機ポリマーなどの有機材料とガラスなどに代表される無機材料をナノレベルあるいは分子レベルで融合させた物質を「有機-無機ハイブリッド材料」と呼び、プラスチックスの機能性や軽量性、易成型性と、セラミックスの耐久性や機械的特性など、各々の成分の長所を併せ持った材料を得ることができる。この有機-無機ハイブリッド材料をさらに進化させた概念として提案されたのが「元素ブロック材料」である。有機化学の手法と無機元素ブロック作製技術を巧みに利用した革新的合成プロセスにより、多彩な元素群で構成される「元素ブロック」を開拓し、その精密結合法の開発によって「元素ブロック高分子」を合成する。さらに、非共有結合による相互作用や異種高分子成分のナノ相分離などを利用した固体状態での材料の高次構造の制御を行う。このようにして、独創的なアイデアに基づく「元素ブロック材料」を創出することができる。すなわち、無機元素から成る機能単位ユニットを抽出し、機能性高分子と「混合」する各種の手法を見出すことでハイブリッド材料とし、「新しいハイブリッド」でしか実現できない新奇機能の導出を目指すことが提案された。これが「元素ブロック材料」の概念である。
このような考え方を基礎に、平成24年度から文部科学省科学研究費の新学術領域研究として「元素ブロック高分子材料の創出」が採択され、すでに大きな成果が次々と生み出されてきている。この元素ブロックの概念と実例、その合成法と特性について、これまでの領域の研究成果を中心にまとめたものが、平成27年12月に「元素ブロック高分子:有機-無機ハイブリッド材料の新概念」と題してシーエムシー出版から書籍化されている。
本書は、それに続く第2弾として、元素ブロック材料の光学材料や電子材料、さらには生医学材料としての応用展開についてまとめたものである。具体的には、元素ブロック材料を用いた発光材料、光電変換材料、感光性材料、電子・磁性材料、そしてスマート機能材料と呼ぶべき生医学分野への応用例について、領域内のそれぞれの専門家に、得られた成果を中心に解説してもらっている。これらの成果は、「元素ブロック材料」という新しい学術領域の拡がりを示しているのと同時に、今後の産業的利用が強く期待されているものばかりである。日本発の「元素ブロック材料」によって、人類の未来が明るく元気になることを強く願っている。
中條善樹
(本書「はじめに」より)
著者一覧
田中一生 京都大学
小野利和 九州大学
久枝良雄 九州大学
小泉武昭 東京工業大学
八木繁幸 大阪府立大学
清水宗治 九州大学
森末光彦 京都工芸繊維大学
梅山有和 京都大学
長谷川靖哉 北海道大学
渡瀬星児 大阪市立工業研究所
内藤裕義 大阪府立大学
佐伯昭紀 大阪大学
郡司天博 東京理科大学
塚田 学 東京理科大学
五十嵐隆浩 東京理科大学
大山俊幸 横浜国立大学
榎本航之 山形大学
菊地守也 山形大学
川口正剛 山形大学
伊藤彰浩 京都大学
渡辺 明 東北大学
磯田恭佑 香川大学
山岡龍太郎 香川大学
舟橋正浩 香川大学
松井 淳 山形大学
宮田隆志 関西大学
浦上 忠 関西大学
木田敏之 大阪大学
小野田晃 大阪大学
林 高史 大阪大学
三木康嗣 京都大学
大江浩一 京都大学
目次 + クリックで目次を表示
1 凝集誘起型発光特性を有するホウ素元素ブロック材料の創出
1.1 はじめに
1.2 発光性元素ブロック高分子
1.3 光吸収性元素ブロック高分子
1.4 電子輸送材料となる元素ブロック高分子
1.5 カルボランを含む元素ブロック高分子
1.6 AIE性ホウ素元素ブロックの設計とAIE性共役系高分子
1.7 バイオセンサーとしての応用
1.8 おわりに
2 ヘテロ分子集積化技術を利用した有機固体発光材料の開発
2.1 はじめに
2.2 多成分結晶と包接結晶
2.3 包接現象を用いた有機固体発光材料の創製
2.3.1 包接結晶の調製と構造特性
2.3.2 多成分結晶の光化学特性
2.4 まとめ
3 複数の相互作用部位を持つ元素ブロックを用いた超分子ポリマーの創製
3.1 はじめに
3.2 複数のOthogonalな非共有結合性相互作用を含む超分子ポリマー
3.3 水素結合とπスタッキングによる超分子ポリマーの創製
3.4 今後の展望
4 有機エレクトロニクスを指向した有機金属元素ブロック材料の創出
4.1 はじめに
4.2 芳香族系補助配位子によるシクロメタル化白金錯体の発光特性制御
4.3 芳香族系補助配位子によるビスシクロメタル化イリジウム錯体の発光特性制御
4.4 共役鎖をシクロメタル化配位子に組み込んだりん光性有機金属錯体
4.5 ジピリドフェナジン骨格を用いた新規りん光性有機金属錯体の創出
4.6 おわりに
5 ラクタム分子を基盤とした元素ブロック材料の創出
5.1 はじめに
5.2 ラクタム分子と含窒素芳香族アミンを用いたSchiff塩基形成反応
5.3 ベンゾ[c、d]インドール骨格を有するaza-BODIPYの合成および発光特性
5.4 ジケトピロロピロールを基体としたaza-BODIPY類縁体の合成と発光特性
5.5 おわりに
6 積層π電子構造の階層的配列化に基づく形状・機能制御
6.1 はじめに
6.2 二重鎖形成型ポルフィリンアレー
6.3 形状制御した一次元直線構造の構築
6.4 固体薄膜中における特異機能の発現
6.5 おわりに
7 炭素で構成された一次元および二次元ナノ元素ブロックの化学修飾と光機能
7.1 はじめに
7.2 ポルフィリン-SWNT連結系
7.3 ポルフィリン-C60@SWNT連結系
7.4 ポルフィリン-グラフェン連結系
7.5 ピレンダイマー-SWNT連結系
7.5.1 合成
7.5.2 吸収スペクトル
7.5.3 直接観察
7.5.4 光ダイナミクス
7.6 おわりに
8 新型発光体創成を目指した希土類元素ブロックの三次元空間配列
8.1 希土類錯体を元素ブロックとするポリマー材料
8.2 熱耐久性を有する希土類元素ブロック高分子
8.3 温度センシングが可能な希土類元素ブロック高分子
8.4 希土類元素ブロックナノ粒子
8.5 ガラス形成能を示す希土類元素ブロック高分子
8.6 さいごに
9 元素ブロックのハイブリッド化による発光材料の創出とデバイスへの応用
9.1 はじめに
9.2 元素ブロックとしてのポリシルセスキオキサン
9.3 ポリシルセスキオキサンへの発光特性の付与
9.3.1 ポリシルセスキオキサンへのカルバゾール基の導入
9.3.2 ポリシルセスキオキサンと金属錯体のハイブリッド化
9.3.3 ハイブリッド薄膜の発光特性
9.4 ポリシルセスキオキサンへの半導体特性の付与
9.5 電流注入発光素子への応用
9.6 おわりに
第2章 光電変換材料
1 有機太陽電池の太陽電池特性と電子物性
1.1 はじめに
1.2 太陽電池特性
1.2.2 太陽電池特性評価
1.2.3 太陽電池等価回路解析
1.3 有機太陽電池の物性予測
1.4 電子物性評価
1.5 インピーダンス分光によるドリフト移動度評価
2 有機無機ハイブリッド・ペロブスカイト太陽電池の光電気特性評価
2.1 はじめに
2.2 ペロブスカイト膜中の電荷キャリア移動度
2.3 結晶サイズと電荷キャリア移動度の相関
2.4 電荷再結合ダイナミクス
2.5 周波数変調と電荷輸送メカニズム
2.6 有機無機・異種界面ホール輸送材料の探索
2.7 おわりに
第3章 感光性材料
1 有機-無機ハイブリッドを用いるポリシルセスキオキサンの機能化とその特性評価
1.1 はじめに
1.2 実験
1.2.1 水ガラスを用いるQ8DMSの合成
1.2.2 かご型オクタシリケートポリマーの合成
1.2.3 二段階反応によるDPS-OSの合成
1.2.4 かご型オクタシリケートポリマーからの自立膜の調製
1.3 結果および考察
1.3.1 水ガラスからのQ8DMSの合成
1.3.2 Q8DMSと水の反応によるかご型オクタシリケートポリマーの合成結果
1.3.3 かご型オクタシリケートポリマーからの自立膜の調製結果
1.4 おわりに
2 反応現像画像形成を利用したエンプラ/元素ブロック系への感光性付与
2.1 はじめに
2.2 ポリイミド-シリコーン共重合体へのRDP適用によるネガ型微細パターン形成
2.3 ポジ型RDPとゾル-ゲル反応を利用したハイブリッド微細パターンの形成
2.4 おわりに
3 ZrO2ナノ微粒子を用いた高透明光学樹脂の設計
3.1 はじめに
3.2 ZrO2ナノ微粒子の水相からトルエン相への相移動とその場疎水化技術
3.3 カルボン酸修飾ZrO2ナノ微粒子含有高屈折率透明材料の合成
3.4 表面処理剤フリーハイブリッド化
3.5 おわりに
第4章 電子・磁性材料
1 カルボランを基盤とする機能性分子材料の展開
1.1 はじめに
1.2 磁性材料への応用
1.3 発光材料への応用
1.4 おわりに
2 金属および無機半導体系元素ブロックを用いた光・電子材料
2.1 はじめに
2.2 POSS-金属ナノ粒子ハイブリッド系における階層構造形成とSERSセンサーへの応用
2.3 酸化チタンのミスト堆積による特異な表面テキスチャ形成
2.4 金属ナノ粒子を用いた透明導電膜形成
2.5 おわりに
3 N-Heteroaceneを基盤とした機能性材料
3.1 はじめに
3.2 N-Heteroaceneの性質
3.3 様々なN-heteroacene誘導体の構造およびその物性
3.3.1 単純な基幹骨格からなるN-heteroacene誘導体
3.2.2 化学修飾を施されたN-heteroacene誘導体
3.3.3 自己組織性N-Heteroacene誘導体
3.4 結言
4 オリゴシロキサン鎖を活用した重合性ナノ相分離型液晶性半導体
4.1 はじめに
4.2 オリゴシロキサン部位を導入したナノ相分離型液晶
4.3 摩擦転写法による液晶材料の分子配向制御とデバイス応用
4.4 環状シロキサン部位を利用した開環重合
4.5 低分子液晶の高分子化による構造安定化とその機能性
4.6 まとめ
5 元素ブロックポリマーの階層化と電気化学機能発現
5.1 はじめに
5.2 高分子ナノシート積層体における2次元プロトン伝導材料
5.3 アクリル酸を導入した高分子ナノシート積層体の構造解析
5.4 エレクトロクロミック高分子ナノシートの階層構造化による多色エレクトロクロミズム
5.5 bilayer electrodeとは
5.6 3層構造を用いた多色エレクトロクロミズム
5.7 まとめ
第5章 スマート機能材料
1 シロキサン系元素ブロック高分子膜の構造制御と透過分離特性
1.1 はじめに
1.2 シロキサン系元素ブロック高分子のミクロ相分離構造と透過分離特性
1.2.1 ミクロ相分離構造と選択透過性
1.2.2 共重合体構造の影響
1.2.3 熱処理効果
1.3 シロキサン系元素ブロック高分子を用いた膜の表面改質と透過分離特性
1.3.1 PDMS膜の表面改質
1.3.2 PTMSP膜の表面改質
1.3.3 ミクロ相分離膜の表面改質
1.4 分子認識素子を導入したシロキサン系元素ブロック高分子膜の透過分離特性
1.5 液晶性を示すシロキサン系元素ブロック高分子膜の構造と透過分離特性
1.6 イオン液体含有シロキサン系元素ブロック高分子膜の透過分離特性
2 高分子カプセルの一次元融合を利用した新規高分子チューブの作製
2.1 はじめに
2.2 ポリ乳酸(PLA)ステレオコンプレックス積層膜からなるナノカプセルの一次元融合によるナノチューブ創製
2.3 ポリビニルアルコール(PVA)積層膜からなるナノカプセルの一次元融合挙動
2.4 異なる表面組成をもつポリ乳酸(PLA)カプセル間の一次元融合による元素ブロック高分子チューブの作製
2.5 おわりに
3 ヘムタンパク質の自己組織化機能を介したハイブリッド材料の構築
3.1 はじめに
3.2 ヘムタンパク質超分子ポリマー
3.3 ヘムタンパク質と金ナノ粒子とのハイブリッド形成
3.4 ヘムタンパク質とCdTe半導体ナノ粒子とのハイブリッド形成
3.5 超分子相互作用を介したヘムタンパク質とCdTe半導体ナノ粒子とのハイブリッド形成
3.6 まとめ
4 元素ブロック高分子材料を用いる光腫瘍イメージング
4.1 はじめに
4.2 アルキル鎖を持つ多糖類縁高分子を用いる光腫瘍イメージング
4.3 ポリメタクリレートを側鎖に持つ多糖類縁高分子を用いる光腫瘍イメージング
4.4 Janus型多糖類縁高分子を用いる光腫瘍イメージング
4.5 おわりに
第6章 元素ブロック材料の将来展望
1 はじめに
2 有機-無機ナノハイブリッド材料
3 元素ブロック材料の考え方
4 元素ブロック材料への期待
5 未来を元気にする「元素ブロック材料」
元素ブロック高分子
価格(税込): 74,800 円
超分子材料の設計と応用展開
価格(税込): 72,600 円
シルセスキオキサン材料の最新技術と応用
価格(税込): 74,800 円
高次π空間の創発と機能開発《普及版》
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