キーワード:
界面活性剤/抵抗低減(DR)効果/会合体構造/超臨界流体/自己組織化/マイクロエマルション/耐塩性/泡沫安定化/泡質改善/増粘/乳化/分散/低泡性/撥水撥油/精練剤/難燃剤/混和剤/医薬品/化粧品/食品/繊維/塗料/身体洗浄/衣料洗浄/金属洗浄
刊行にあたって
界面活性剤は気-液、液-液、固-液等の界面に吸着し、界面状態を変化させることや、分子集合体(ミセル、ベシクル、リオトロピック液晶、単分子膜等)を形成することで機能を発揮する。これらの特性は起泡、消泡、乳化、可溶化、濡れ、潤滑、帯電防止、分散、凝集などの機能と直接関係している。界面活性剤の機能に関する研究は古くから行われているため、アカデミックな研究では従来型界面活性剤のみの研究は少なく、ポリマーや生体分子などを利用して界面活性剤と同等、あるいは上回る機能性を発揮させる研究が盛んになっている。しかし一方、産業界においては従来型界面活性剤も変わらず多用されており、先端的な研究との解離が大きくなってきている。また、環境問題、資源・エネルギー問題の観点からのプレッシャーも大きく、生体への安全性、生分解性、使用量の削減、再生可能原料の利用などにより従来型の石油系界面活性剤を代替する必要性が産業界では高まっている。そのため、本書では界面活性剤を廻る諸情勢を反映して、最新の機能性開発研究から産業界での利用の現状について幅広く読者の興味を惹く話題を集めた。
第1章〜第8章ではアカデミックな最新研究を紹介した。機能性や環境適合性の観点から界面活性剤分子を構成するビルディングブロックや分子構造を適切に選択した研究、応用を見据え機能化を図った研究などについて述べられている。第9章〜第15章では企業における界面活性剤の機能性開発研究例について述べられている。最後に第16章〜第25章では界面活性剤が利用されている用途別に利用動向、実例などを挙げて解説頂いている。
その他にもたくさんの最新研究、産業分野での利用があるが、紙面の制約で全ては紹介しきれない。本書をきっかけとして、今回執筆いただいた産業分野だけでなく、材料、医薬品、バイオ、環境対応技術などの研究者に、古くて新しい界面活性剤に関して理解が進めば幸いである。
2016年8月
横浜国立大学
荒牧賢治
著者一覧
荒牧賢治 横浜国立大学 鯉谷紗智 横浜国立大学 酒井健一 東京理科大学 懸橋理枝 (地独)大阪市立工業研究所 東海直治 (地独)大阪市立工業研究所 遊佐真一 兵庫県立大学 井村知弘 (国研)産業技術総合研究所 佐伯 隆 山口大学 吉村倫一 奈良女子大学 鷺坂将伸 弘前大学 中村武嗣 太陽化学㈱ ビスワス・シュヴェンドゥ 味の素㈱ 脇田和晃 日油㈱ 村上亮輔 住友精化㈱ | 斉藤大輔 第一工業製薬㈱ 田中佳祐 ニッコールグループ㈱コスモステクニカルセンター 高野 啓 DIC㈱ 川上亘作 (国研)物質・材料研究機構 小川晃弘 三菱化学フーズ 山口俊介 ニッコールグループ㈱コスモステクニカルセンター 坂井隆也 花王㈱ 金子行裕 ライオン㈱ 中川和典 第一工業製薬㈱ 三橋雅人 AGCセイミケミカル㈱ 齋藤嘉孝 日華化学㈱ 岡田和寿 竹本油脂㈱ 久司美登 日本ペイント・オートモーティブコーティングス㈱ |
目次 + クリックで目次を表示
第1章 再生可能原料を用いた合成界面活性剤の機能
1 はじめに
2 ひも状ミセルによる水,油の増粘効果
2.1 ひも状ミセル
2.2 アシルアミノ酸エステルによるひも状ミセルの形成
2.3 ショ糖脂肪酸エステルによるひも状ミセルの形成
2.4 逆ひも状ミセル形成による油の増粘
3 モノおよびポリグリセリン脂肪酸エステルの結晶・液晶微粒子による泡沫安定化
4 ポリグリセリン型界面活性剤水溶液系の相挙動とニオソーム形成
5 おわりに
第2章 ジェミニ型両親媒性物質の実用化も意識した研究展開
1 はじめに
2 アミノ酸系ジェミニ型界面活性剤
3 アルキルアミン・アルキルカルボン酸による複合体(擬似ジェミニ型両親媒性物質)
4 ホスホリルコリン類似基を有する両性ジェミニ型両親媒性物質による乳化
5 おわりに
第3章 長鎖アルキルアミンオキシド誘導体の水溶液挙動-水素結合部位導入の効果
1 はじめに
2 ピリジルアミンオキシド型界面活性剤
3 アミドアミンオキシド型界面活性剤
4 おわりに
第4章 pH応答性を有するジブロック共重合体の会合によるミセル形成
1 はじめに
2 PAMPS-PAaUの合成
3 pHに応答した会合挙動
4 pHに応答したゲスト分子の取り込みと放出
5 まとめ
第5章 ペプチドベース界面活性剤の特性とその応用
1 はじめに
2 化学合成・ペプチド界面活性剤
2.1 構造と特徴
2.2 Surfpep22の合成と界面活性
2.3 Surfpep22による脂質ナノディスク形成
3 バイオ合成(発酵法)・ペプチド界面活性剤
3.1 構造と特徴
3.2 サーファクチン(SF)
3.3 ライケンシン(Lch)
3.4 アルスロファクチン(AF)
4 おわりに
第6章 界面活性剤の棒状ミセルによる抵抗低減効果
1 はじめに
2 DR効果を示す界面活性剤
3 DR効果を示す界面活性剤のレオロジー特性
4 DR効果を示す流れの特徴
5 界面活性剤によるDR効果の実用化
5.1 配管抵抗低減剤の商品化
5.2 DR効果による空調設備の省エネルギー
5.3 DR効果の普及
5.4 実用化の問題点
6 おわりに
第7章 トリメリック型界面活性剤の合成・物性・ミセル形成
1 はじめに
2 トリメリック型界面活性剤
3 カチオンタイプの合成例
4 臨界ミセル濃度
5 表面張力
6 水溶液中でのミセル形成
7 おわりに
第8章 超臨界CO2利用技術に向けたCO2-philic界面活性剤の開発
1 超臨界CO2
2 CO2-philic界面活性剤の設計
2.1 分子形状
2.2 親水性-親CO2性バランス(HCB)
2.3 Winsor R理論
2.4 CO2-philic界面活性剤の親CO2基と親水基
3 CO2-philic界面活性剤の開発の歴史
4 界面活性剤/W/CO2混合系の相挙動と物性研究
5 界面活性剤/W/CO2混合系の応用研究
6 おわりに
【第2編 界面活性剤の高機能化】
第9章 ポリグリセリン脂肪酸エステルの特性と高機能化
1 ポリグリセリン脂肪酸エステルの現状
1.1 非イオン性界面活性剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル
1.2 ポリグリセリン
1.3 ポリグリセリンのエステル化
2 ポリグリセリン脂肪酸エステルの高機能化
2.1 ジグリセリン・トリグリセリンのエステル
2.2 組成を変えたポリグリセリンのエステル
2.3 ポリグリセリンアルキルエーテル
3 おわりに
第10章 アシルアミノ酸エステル系両親媒性油剤
1 はじめに
2 化粧品用油剤とは
3 アシルアミノ酸エステル系油剤とは
3.1 油剤骨格にアミノ酸があることの意義
4 油剤の両親媒性とは
5 アシルアミノ酸エステル系両親媒性油剤
5.1 アシルグルタミン酸誘導体
5.2 アシルサルコシン誘導体
5.3 アシル-N-メチルβアラニン誘導体
6 おわりに
第11章 長鎖PEGを有する非イオン性活性剤
1 はじめに
2 ラウリン酸PEG-80ソルビタン(PSL)の泡質改善効果
3 ポリオキシエチレンアルキルエーテル(PAE)を用いた泡物性評価
3.1 使用したPAEとそれらの物性
3.2 泡弾性のひずみ依存性測定
3.3 泡の粘弾性測定
3.4 IRによる泡膜測定
4 泡質改善メカニズム関する考察
5 おわりに
第12章 化学架橋を工夫したアクリル酸アルキルコポリマー
1 はじめに
2 一般的なアクリル酸アルキルコポリマーの増粘,乳化のメカニズム
2.1 水溶液の増粘機構
2.2 耐塩性
2.3 乳化のメカニズム
3 化学架橋を工夫したアクリル酸アルキルコポリマー『アクペックSER』
3.1 アクペックSERとは
3.2 アクペックSER水溶液の増粘挙動
3.3 アクペックSERの耐塩性
3.4 乳化能力
3.5 顔料の分散
4 アクペックSERと界面活性剤の相乗効果
4.1 高分子界面活性剤と低分子界面活性剤の相互作用
4.2 アクペックSERとアニオン系界面活性剤の相互作用
4.3 アクペックSERと両性界面活性剤の相互作用
4.4 アクペックSERとノニオン系界面活性剤の相互作用
5 おわりに
第13章 低泡性かつ界面活性能に優れた界面活性剤
1 低泡性かつ界面活性能に優れた界面活性剤が要求される背景
2 泡立ちのメカニズム
3 泡立ちと界面活性剤構造の相関
4 低泡性かつ界面活性能に優れたノイゲン(R)LF-Xシリーズ
4.1 ノイゲンLF-Xシリーズ構造の特徴
5 おわりに
第14章 高純度モノアルキルリン酸塩の会合挙動
1 はじめに
2 直鎖型モノセチルリン酸(NIKKOLピュアフォスα)
2.1 αゲルとは
2.2 直鎖型モノセチルリン酸(NIKKOLピュアフォスα)の自己組織化挙動
3 β分岐型モノヘキサデシルリン酸アルギニン(NIKKOLピュアフォスLC)の自己組織化挙動
4 おわりに
第15章 熱分解型フッ素系界面活性剤の開発
1 はじめに
2 熱分解型フッ素系界面活性剤
2.1 レべリング性とリコート性の両立のための設計コンセプト
2.2 当社のフッ素系活性剤“メガファック”シリーズにおけるDS-21の位置づけ
2.3 メガファックDS-21の性状および基本物性
2.4 メガファックDS-21のレベリング性能
2.5 メガファックDS-21の熱分解挙動
2.6 塗膜表面の評価
2.7 まとめ
3 熱分解型フッ素系界面活性剤の応用事例
3.1 ディスプレイ材料用各種レジストへの応用
3.2 低誘電材料として用いるPTFEの分散剤
3.3 機能性表面の創生
4 今後の展望
【第3編 界面活性剤の応用分野】
第16章 医薬品分野における界面活性剤利用技術
1 医薬品用途に利用される界面活性剤
2 経口剤への利用
3 注射剤への利用
4 その他の投与経路への利用
5 リン脂質の利用
6 おわりに
第17章 食品用界面活性剤
1 はじめに
2 乳化剤について
3 乳化剤の種類と性質
3.1 グリセリン脂肪酸エステル
3.2 レシチン
3.3 ショ糖脂肪酸エステル
3.4 その他の乳化剤
4 乳化剤の機能と食品への応用
4.1 界面活性能に基づく機能
4.2 油脂との相互作用
4.3 澱粉との相互作用
4.4 タンパク質との相互作用
5 食品における乳化剤の使い方
6 おわりに
第18章 化粧品用の界面活性剤
1 はじめに
2 化粧品における界面化学
3 化粧品に使用される非イオン界面活性剤
3.1 ポリオキシエチレン脂肪酸
3.2 ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
3.3 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
3.4 ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル
3.5 グリセリン脂肪酸エステル
3.6 ソルビタン脂肪酸エステル
3.7 ポリグリセリン脂肪酸エステル
3.8 ショ糖脂肪酸エステル
3.9 アルキルポリグルコシド
4 おわりに
第19章 身体洗浄用界面活性剤
1 はじめに~身体用洗浄剤と界面活性剤~
2 身体洗浄用界面活性剤の使い方
2.1 第一界面活性剤
2.2 補助界面活性剤
3 固形石けん
3.1 固形石けんの第一界面活性剤
3.1.1 脂肪酸石けん
3.1.2 脂肪酸イセチオン酸エステルNa塩
3.1.3 アシル化グルタミン酸塩
3.2 固形石けんの補助界面活性剤
3.2.1 長鎖アルキルアルコール、長鎖脂肪酸
3.2.2 脂肪酸アミドプロピルベタイン
4 液体全身洗浄料(ボディーシャンプー)・洗顔料
4.1 液体全身洗浄料・洗顔料の第一界面活性剤
4.1.1 脂肪酸石けん
4.1.2 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩
4.1.3 モノアルキルリン酸塩
4.1.4 アシル化グルタミン酸塩
4.1.5 ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
4.2 液体全身洗浄料・洗顔料の補助界面活性剤
4.2.1 長鎖アルコール・長鎖脂肪酸
4.2.2 脂肪酸アミドプロピルジメチルベタイン
4.2.3 脂肪酸アルカノールアミド
5 シャンプー
5.1 シャンプーの第一界面活性剤
5.1.1 アルキル硫酸塩
5.1.2 ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩
5.2 シャンプーに用いられる補助界面活性剤
5.2.1 脂肪酸アミドプロピルジメチルベタイン
5.2.2 脂肪酸アルカノールアミド
5.2.3 ポリオキシエチレンアルキルエーテル
5.2.4 アルキルポリグルコシド
6 ヘアコンディショナー
6.1 ヘアコンディショナーの第一界面活性剤
6.1.1 アルキルジメチルアミン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩
6.1.2 脂肪酸アミドプロピルジメチルアミン酸塩
6.2 ヘアコンディショナーの補助界面活性剤
6.2.1 長鎖アルコール
7 おわりに
第20章 快適で環境にやさしい洗剤のための界面活性剤
1 はじめに
2 台所用洗浄剤における効率洗浄の実現
3 衣料用液体洗剤における植物由来の界面活性剤の活用
3.1 α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩
3.2 脂肪酸メチルエステルエトキシレート
4 おわりに
第21章 工業用洗浄剤への界面活性剤応用技術
1 はじめに
2 界面活性剤の分類と性能について
3 洗浄のメカニズムと界面活性剤の役割について
3.1 油性汚れの除去機構
3.2 固体微粒子汚れの除去機構
3.3 留意すべきポイント(再付着防止,泡立ち,すすぎ)
4 おわりに
第22章 樹脂添加用フッ素系界面活性剤
1 はじめに
2 ヤングの式
3 樹脂表面のエネルギー
4 パーフルオロアルキル化合物の特徴
4.1 パーフルオロアルキル基
4.2 パーフルオロアルキル構造の合成
4.3 パーフルオロアルキル基の表面エネルギー
5 樹脂への適用
5.1 撥水撥油性の付与
5.2 親水性の付与
6 おわりに
第23章 繊維用界面活性剤と界面化学
1 はじめに
1.1 繊維加工業界における界面活性剤の用途
2 精練剤
3 ポリエステル用分散均染剤
4 オリゴマー除去剤
5 綿用フィックス剤
6 難燃剤
6.1 カーテンの耐久難燃加工
7 撥水剤
8 耐久吸水加工剤
9 おわりに
第24章 コンクリート用界面活性剤
1 はじめに
2 混和剤の減水性
2.1 空気連行による減水効果
2.2 静電反発力によるセメント分散効果
2.3 立体反発力によるセメント分散効果
3 混和剤への機能付与
3.1 増粘させる
3.2 乾燥収縮を低減させる
3.3 CO2排出削減への取組み
4 おわりに
第25章 塗料用界面活性剤
1 はじめに
2 塗料に用いられる界面活性剤の種類
2.1 消泡剤
2.2 リべリング剤
2.3 ハジキ防止剤
2.4 増粘剤・粘性制御剤
2.5 色別れ防止剤
3 顔料分散剤
3.1 顔料分散剤とは
3.2 分散剤の構造とはたらき
3.2.1 ぬれ・吸着・安定化と分散剤の分子構造
3.3 分散剤の適用事例
3.3.1 非水系の分散
3.3.2 水系の分散
3.3.3 水系における適当な疎水基の選択
3.3.4 構造制御による高分子分散剤の高機能化
4 高分子乳化剤
関連商品
ブロック共重合体の自己組織化技術の基礎と応用《普及版》
価格(税込): 4,620 円
超臨界流体を用いる合成と加工
価格(税込): 83,600 円
ぬれの科学と技術そして応用《普及版》
価格(税込): 6,930 円