キーワード:
マイコプラズマ/培地/血清/培養上清/エンドトキシン/HBV/HCV/HIV/iPS細胞/自家細胞/他家細胞/免疫/抗生物質/細胞剥離液/スキャフォールド/製品保存液/製造モニタリング/分化能/未分化マーカー/クロスコンタミネーション/miRNA/非臨床試験
刊行にあたって
平成25年成立の『再生医療推進法』を受け、『薬事法』を改正・改称する形で成立した『薬機法』では、再生医療・細胞治療に使用することを目的とした加工細胞を含む製品(細胞加工製品)が、遺伝子治療用製品とともに、医薬品からも医療機器からも独立した新規カテゴリーの「再生医療等製品」として分類されることになった。一方、医療として提供される再生医療・細胞治療に関しても、患者の安全性を確保するための法律として『再生医療等安全性確保法』が成立し、細胞培養加工については、医療機関から企業への外部委託が可能となるとともに、リスクに応じた審議を行うことなどが制度化された。このような再生医療・細胞治療の実用化促進に向けた法制度の整備により、今後多くの先端的再生医療・細胞治療及び細胞加工製品がわが国で実用化されることが期待されており、その開発動向や関連規制動向は海外からも注目を浴びている。
これらの法整備に加えて実際に再生医療・細胞治療、およびそこで用いられる細胞加工製品の実用化と持続的発展を推進するために重要なのは、加工細胞の安全性・有効性・品質の確保のための評価技術と基準の整備である。すなわち、安全性・有効性・品質の面で信頼性の高い細胞加工製品を迅速に実用化するために、「何を」「どこまで」「どのように」明らかにすればよいかという点について、関係者が認識を共有することが必須となる。ただし、細胞加工製品は、動的で複雑な生きた細胞を構成要素とし、滅菌・精製が不可能に近いなど、これまでの医薬品・医療機器にはない特徴をもつ先端的(すなわち経験の乏しい)製品であるため、安全性・品質関連リスクを評価するための技術が確立されていない、あるいは既存の評価技術をそのまま適用することが適切ではない場合が多いという点が問題となっている。そこで今回、細胞加工物の評価技術に焦点を当て、この分野の第一線で活躍されている先生方に現在の状況や課題などについてご執筆いただいた。本書が再生医療・細胞治療の実用化を目指す関係者の皆様のコンセンサス作りに役立てば幸いである。
(「はじめに」より一部抜粋)
著者一覧
佐藤陽治 国立医薬品食品衛生研究所 内田恵理子 国立医薬品食品衛生研究所 古田美玲 国立医薬品食品衛生研究所 山口照英 金沢工業大学 蓜島由二 国立医薬品食品衛生研究所 清水則夫 東京医科歯科大学 外丸靖浩 東京医科歯科大学 渡邊 健 東京医科歯科大学 森尾友宏 東京医科歯科大学 宮川 繁 大阪大学 安田 智 国立医薬品食品衛生研究所 小原有弘 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所 羽室淳爾 京都府立医科大学 井家益和 ㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 斉藤大助 九州大学 須山幹太 九州大学 小原 收 (公財)かずさDNA研究所 加藤竜司 名古屋大学 蟹江 慧 名古屋大学 水谷 学 大阪大学 | 紀ノ岡正博 大阪大学 高橋 匠 東海大学 豊田恵利子 東海大学 佐藤正人 東海大学 大島勇人 新潟大学 本田雅規 愛知学院大学 齋藤充弘 大阪大学 澤 芳樹 大阪大学 馬場耕一 大阪大学 西田幸二 大阪大学 舘野浩章 (国研)産業技術総合研究所 佐俣文平 京都大学 土井大輔 京都大学 髙橋 淳 京都大学 廣瀬志弘 (国研)産業技術総合研究所 竹内朋代 筑波大学 嶽北和宏 (独)医薬品医療機器総合機構 尾山和信 (独)医薬品医療機器総合機構 大迫洋平 京都大学 金子 新 京都大学 |
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第1章 再生医療・細胞治療製品のマイコプラズマ検査
1 はじめに
2 培養細胞を汚染するマイコプラズマの性質
3 日局17のマイコプラズマ否定試験の概要
4 培養法
4.1 原理と特徴
4.2 操作法と注意点
5 DNA染色法
5.1 原理と特徴
5.2 操作法と注意点
6 核酸増幅法(Nucleic Acid Amplificatio Test:NAT)
6.1 原理と特徴
6.2 操作法と注意点
6.3 NATのバリデーション
7 再生医療製品にマイコプラズマ否定試験を適用する場合の考え方
7.1 試験結果が被験者への投与後にしか得られない場合
7.2 検体量が少ない場合
7.3 接着細胞の場合
7.4 培養上清を検体とする場合
7.5 最終製品にNATを適用することが困難な場合
8 おわりに
第2章 エンドトキシン規格値と検査法
1 はじめに
2 in vitro LPS規格値の設定:培養細胞に対するLPSの影響
2.1 細胞増殖に及ぼす影響
2.2 分化能に及ぼす影響
3 in vivo LPS規格値の設定:LPSの生体影響
4 エンドトキシン試験
4.1 測定法
4.2 スキャホールド等の医用材料・実験器具等の測定
4.3 培地,血清,培養上清および細胞等の測定
4.4 HCPT
5 おわりに
第3章 ウイルス検査
1 はじめに
2 検査対象ウイルス
3 ドナー検査
3.1 血清学的検査
3.2 核酸増幅検査
3.3 ウインドウピリオドを勘案した検査
4 生物由来原料の検査
5 細胞加工物のウイルス検査
6 ウイルスの迅速検査系の開発
6.1 網羅的ウイルス検査
6.2 ウイルスの迅速定量法
7 データ収集
8 おわりに
第4章 重症心不全治療に用いられる移植細胞に関する免疫学的考察
1 はじめに
2 自己細胞による細胞治療の利点と欠点
3 アロ体性幹細胞の心不全に対する有効性,免疫原性
3.1 他家骨髄間葉系幹細胞
3.2 他家筋芽細胞
4 iPS細胞由来心筋細胞の免疫原生
4.1 移植急性期における宿主移植片反応
4.2 移植慢性期における宿主移植片反応
4.3 他家iPS細胞由来移植片の生着と寿命
4.4 iPS細胞の免疫原性に関する基盤研究
5 免疫学的メカニズムを用いた細胞治療の有効性向上
第5章 造腫瘍性評価
1 はじめに
2 ヒト細胞加工製品の造腫瘍性試験における考え方
3 ヒト細胞加工製品における造腫瘍性関連試験
3.1 in vivo造腫瘍性試験
3.2 フローサイトメトリー
3.3 定量的逆転写PCR(qRT-PCR)
3.4 ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)
3.5 GlycoStem法
3.6 Essential-8/LN521培養増幅法
3.7 (デジタル)軟寒天コロニー形成試験
3.8 細胞増殖特性解析
4 おわりに
第6章 生細胞数・生細胞率検査と細胞同一性検査
1 はじめに
2 生細胞数・生細胞率検査
2.1 細胞計数の方法
2.2 生死の判定
2.3 自動計数機器
2.4 細胞計数のタイミング
2.5 計数結果の記録
3 細胞同一性検査
3.1 STR-PCR法によるヒト細胞認証試験
3.2 その他の方法
第7章 培養細胞の均質性検査
1 はじめに
2 培養ヒト角膜内皮細胞の移入による角膜組織の再建
3 細胞の品質規格の重要性
4 臨床の安全性と有効性の再現性を支える品質
4.1 培養ヒト角膜内皮細胞の形態・細胞特性は不均質である
5 移植に適した目的細胞の選定と効能試験
6 培養ロット・条件による不均質な細胞亜集団組成の変動
7 移植目的細胞の確認試験法
7.1 細胞密度,FACS,産生産物
7.2 目的細胞の純度試験法(FACSによる目的細胞の純度検定)
8 移植に用いる目的細胞の同質性の検証試験
8.1 目的細胞の同質性確認試験法(細胞の機能性指標を用いる試験法)
9 目的細胞・非目的細胞の生体機能確認試験法
10 おわりに
第8章 非細胞成分由来不純物検査
1 はじめに
2 非細胞成分と製造工程由来不純物
2.1 非細胞成分の安全性評価
2.2 製造工程由来不純物の安全性評価
3 非細胞成分由来不純物
3.1 原料および材料の品質
3.2 製造工程由来不純物
4 実例
4.1 培地と添加物
4.2 ウシ血清
4.3 抗生物質
4.4 細胞剥離液
4.5 スキャフォールド
4.6 製品保存液
5 おわりに
第9章 次世代シーケンシングによる細胞のゲノム安定性評価
1 はじめに
2 巨視的レベルのゲノム構造変化の次世代シーケンシングによる検出
3 微視的レベルのゲノム構造変化の次世代シーケンシングによる検出
4 エピゲノム変異の検出法
5 RNAプロファイリングによるゲノム構造変化の検出
6 現在の課題と今後の展望
第10章 画像を用いた細胞加工物および培養工程の評価
1 序論:細胞評価としての細胞観察
2 細胞画像を用いた細胞評価(細胞形態情報解析)
2.1 細胞評価に細胞画像を用いるためには
2.2 細胞画像から得られる情報とは
2.3 細胞画像を用いた細胞評価適応例
2.4 細胞画像を用いた細胞評価の生物学的考察
3 細胞形態情報解析の展開
4 細胞形態情報解析を支える細胞加工工程情報
5 最後に
第11章 製造のモニタリング評価
1 はじめに
2 再生医療等における製品形態の多様性と製造モニタリングの考え方
3 再生医療等製品の製造で生じる現状の課題
4 製造モニタリングについて
4.1 環境モニタリング
4.2 工程モニタリング
5 加速度センサーを用いた動作キャリブレータの可能性
6 おわりに
【第2編 治療部位・疾患別の評価技術】
第12章 関節軟骨再生の細胞加工物(製品)評価技術
1 はじめに
2 膝関節軟骨再生の原材料と最終製品の分類
3 ヒト体細胞由来製品の評価項目
4 自己軟骨細胞シートにおける評価技術
5 同種軟骨細胞シートにおける評価技術
6 ヒト人工多能性幹(iPS)細胞由来製品の評価項目
7 おわりに
第13章 歯
1 はじめに
2 歯髄の発生と構造
2.1 歯髄の発生
2.2 歯髄の構造
3 歯髄の特徴と分化能
4 永久歯,乳歯および過剰歯の歯髄幹細胞
5 歯髄幹細胞の評価技術
5.1 歯髄幹細胞の未分化性を評価する技術
5.2 in vitroにおける硬組織形成細胞への分化能を評価する技術
5.3 in vivo実験を用いた硬組織形成能の機能評価技術
5.4 表面抗原解析による歯髄幹細胞の機能評価技術
6 iPS細胞の樹立
7 おわりに
第14章 心臓・血管系
1 はじめに
2 移植細胞シートの機能評価
3 非臨床試験での評価
3.1 有効性を示唆するために必要な実験
3.2 非侵襲的評価方法(心エコー,CT,MRI)
3.3 侵襲的評価(組織学的評価,遺伝子・タンパク質発現解析)
3.4 移植細胞の残存評価
3.5 動物実験モデル
4 臨床試験での評価
4.1 筋芽細胞シート移植における細胞機能評価
4.2 「ハートシート」における臨床評価
5 おわりに
第15章 培養細胞シートを用いた角膜再生治療への取り組み
1 はじめに
2 角膜上皮疾患と再生治療の背景
3 自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植による角膜再生治療
4 ヒトiPS細胞由来培養上皮細胞シートを用いた角膜再生治療の開発
5 自家培養角膜上皮細胞シートを用いた企業主導治験
6 角膜内皮の再生治療
7 おわりに
第16章 糖鎖を標的としたヒト間葉系幹細胞の品質管理技術の開発
1 背景
2 糖鎖は「細胞の顔」?
3 細胞表層糖鎖を迅速高感度に解析する技術:レクチンアレイ
4 ヒト多能性幹細胞の糖鎖
5 ヒト間葉系幹細胞の糖鎖
6 α2-6シアリルN型糖鎖の機能
7 まとめ
第17章 神経
1 はじめに
2 神経細胞の評価技術
2.1 qPCR法
2.2 免疫細胞化学
2.3 フローサイトメトリー
2.4 神経突起の評価
2.5 電気生理学的手法による評価
3 ドパミン神経細胞の評価技術
3.1 核型分析
3.2 SNP分析
3.3 CNV分析
3.4 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
3.5 パーキンソン病ラットモデル
4 おわりに
【第3編 評価技術についての動向】
第18章 国際標準化の状況
1 はじめに
2 再生医療等製品に関する試験法・評価法の国際標準化の状況
3 細胞加工装置に関する国際標準化の状況
4 再生医療用途の足場材料に関する国際標準化の状況
5 再生医療分野の国際標準化の展望
6 おわりに
第19章 研究用組織試料の収集と分譲
1 はじめに
2 組織試料の収集にあたって
2.1 インフォームド・コンセント
2.2 組織試料採取の準備
3 凍結組織試料の収集・保管
3.1 組織の採取
3.2 組織の処理・組織片試料(dry sample)の調整
3.3 包埋組織試料(OCT sample)の調整
4 凍結組織試料の搬送
5 感染性試料の扱い,試料の廃棄
6 ホルマリン固定パラフィン包埋試料の作製・保管
7 試料の分譲
7.1 倫理審査
7.2 共同研究契約,試料分譲同意書
7.3 分譲手数料
8 おわりに
第20章 ヒト細胞加工製品の品質及び非臨床安全性の確保に関する各種指針を踏まえた私見
1 はじめに
2 ヒト細胞加工製品の品質確保
2.1 一般的な品質確保の考え方について
2.2 ヒト細胞加工製品の特徴
2.3 ヒト細胞加工製品の品質確保を適正かつ合理的に行うための留意事項
2.4 品質確保のまとめ
3 ヒト細胞加工製品の非臨床開発時点における品質からみたin vivo試験や評価の考え方
3.1 一般的留意事項
3.2 造腫瘍性評価について
4 おわりに
第21章 再生医療等製品の製造管理及び品質管理
1 はじめに
2 再生医療を取り巻く新たな規制の枠組み
3 再生医療等製品の特徴と品質設計における課題
4 再生医療等製品の品質における基本の考え方
5 技術移管に向けた製品品質の理解と知識管理の重要性
6 再生医療等製品の製造管理及び品質管理における要点と課題
7 品質リスクマネジメントの考え方
8 ベリフィケーションによる品質保証のアプローチ
9 治験製品の製造管理及び品質管理の要点
10 再生医療等製品のCMC開発研究での留意点
11 おわりに
第22章 臨床用原材料細胞のセルバンク
1 はじめに
2 再生医療用HLA-ホモiPS細胞ストックプロジェクト
3 「臨床用原材料細胞のセルバンク」としてのiPS細胞ストック
4 FiTにおける臨床用iPS細胞の製造・品質管理
4.1 ドナー適格性の判定
4.2 製造に使用する原料等・工程資材
4.3 製造方法
4.4 品質管理方法
5 おわりに
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