キーワード:
医薬品製造プロセス/スケールアップ/設備設計/装置特性/品質リスク/結晶多形制御/反応/晶析/連続生産/フローケミストリー/技術移転/GDP/CTD/人材育成/規格試験/後発薬/バイオ医薬品/医薬品政策/薬事規制/CMO/CDMO/CRO/国内外企業・市場動向
刊行にあたって
国内の製薬業界は過渡期を迎えている。
2016年の国内医薬品生産金額は約6兆6,500億円(輸入品を除く)と推定され、2012年以降3年連続でマイナス成長が続き2015年にわずかな回復をみせたが、2016年には再びマイナスとなり今後も低成長が見込まれる。この背景には、ジェネリック医薬品(後発薬)の使用推進、薬価制度の抜本改革、国内製薬企業における新薬承認数の減少などが挙げられる。
一方で、好転の兆しをみせているのは医薬品原薬・中間体市場である。2016年度の原薬・中間体市場規模は4,240億円(製薬企業の自社生産分を除く)の見込みで、2011年度から年平均4.95%プラスで拡大基調が続いている。前述のとおり難局に直面している製薬企業は、収益向上に向け大幅な方針転換や組織再編、合併・買収(M&A)、業務提携といった事業構造改革に乗り出し、経営効率化のために製造部門の外部委託を進めている。このことから総合化学企業をはじめとする大手化学企業や海外企業の参入が原薬・中間体市場を底上げしたと考えられる。
ただし、今後は、参入企業の増加や海外企業の台頭などにより受注獲得競争は激化し、コスト競争力に加え生産管理や品質保証要求は厳しさを増し、委託企業による受託企業の選別が進むと予測される。よって、製薬業界の市場環境の変化は、原薬・中間体企業にとって追い風にも向かい風にもなり得るため、この拡大基調を安易に喜べない状況に置かれているのも事実である。
そこで本書では、原薬・中間体製造の開発現場の現状と今後の取り組み、そして、関連市場、企業動向をまとめ、原薬・中間体業界の全体像を把握できる一冊となっている。
【開発編】では、原薬・中間体製造の開発において第一線でご活躍の専門家の方々に執筆していただいた。原薬・中間体製造のスケールアップ、結晶多形制御、フローケミストリーなどの連続生産、技術移転と人材育成、さらにはバイオ医薬品のスケールアップ、規格試験について詳述されている。
【市場編】では、国内および海外の主な原薬・中間体企業別、医薬品原料専門商社別、医薬品製造受託市場、加えて原薬・中間体企業の動向を左右させる国内の医薬品政策、国内および海外の主な医薬品企業の動向などを収載した。
本書が今後の医薬品原薬・中間体業界、ひいては、製薬業界の動向を掴むための一助になれば幸いである。
シーエムシー出版 編集部
著者一覧
上田 廣 塩野義製薬㈱
増田勇紀 塩野義製薬㈱
大内 卓 Takeda Pharmaceuticals International Co.
古田雅士 Takeda Pharmaceuticals International Co.
池松康之 エーザイ㈱
岡村元義 ㈱ファーマトリエ
荒戸照世 北海道大学病院
目次 + クリックで目次を表示
第1章 医薬品原薬・中間体製造のスケールアップにおける品質リスク
1 はじめに
2 スケールアップにあたっての確認事項
3 設備設計でのポイント
4 装置特性把握のポイント
4.1 装置特性把握の重要性
4.2 装置特性を用いたスケールアップ予測の実際
4.3 装置特性の取得
4.3.1 伝熱特性
4.3.2 撹拌混合特性
5 冷却晶析のスケールアップによる品質リスク
5.1 冷却晶析のスケールアップに影響する諸要因
5.1.1 スケールアップに伴う液量あたりの伝熱面積低下
5.1.2 槽内温度分布
5.2 冷却晶析に関するトラブル事例
5.2.1 トラブル事例と原因究明
5.2.2 検証実験
6 固液分離のスケールアップによる品質リスク
6.1 ケーク洗浄の重要性
6.2 意図した品質が得られない原因
6.2.1 不純物の結晶化
6.2.2 不純物の巻き込み
6.2.3 ケーク洗浄不足
6.3 遠心分離におけるケーク洗浄不足の要因
6.3.1 ケーク内分級
6.3.2 晶析装置内分級
6.3.3 ケークの不均一形成
6.3.4 キャリーオーバーケーク形成
7 最後に
第2章 医薬品原薬の結晶多形制御
1 はじめに
2 結晶多形制御における晶析プロセスの重要性
3 安定形結晶の調製に及ぼすプロセス条件の影響
4 種晶を利用した結晶多形制御方法
4.1 医薬品原薬Xの結晶多形および物性
4.2 医薬品原薬Xの結晶多形制御プロセス
4.3 医薬品原薬Xの晶析プロセスのスケールアップ
5 溶媒媒介転移を利用した結晶多形制御方法
5.1 医薬品原薬Yの結晶多形および物性
5.2 医薬品原薬Y晶析プロセス
5.3 医薬品原薬Yの晶析プロセスの改良
5.4 溶媒媒介転移の様子
5.5 医薬品原薬Yの晶析プロセスのスケールアップ
6 おわりに
第3章 医薬品原薬の連続生産に向けた取り組み
1 はじめに
2 連続生産がもたらす利点
3 有機合成反応へのフローケミストリー技術の活用
4 連続不均一系触媒水素化反応
5 バッチ晶析における課題
6 連続晶析について
7 PFCによる連続晶析
8 おわりに
第4章 医薬品製造の技術移転の留意点と更なる人材育成(GDP及び後発品CTD対応を考慮して)
1 はじめに
2 日本における医薬品製造関連の最近の動向
3 医薬品製造の技術移転
3.1 技術移転の概要
3.2 技術移転プロジェクト体制の留意点
3.3 技術移転のプロジェクト体制(一例)
3.4 技術移転時に留意すべく医薬品の適正流通基準(GDP)への対応
3.4.1 世界各国でのGDPへの対応状況
3.4.2 医薬品の輸送条件の検証
3.5 技術移転時に留意すべくCTD対応
3.5.1 後発医薬品申請のCTD化に伴う承認事項一部変更承認申請(一変申請)内容の比較
3.5.2 CTD化に伴う申請資料の科学的一貫性の重要性
3.6 技術移転時に留意すべく技術移転書対応
4 技術移転にて獲得すべき能力(更なる人材育成対応への一助)
5 最後に
第5章 バイオ原薬製造におけるスケールアップ事例
1 はじめに
2 バイオ医薬品の開発段階における原薬の製造場所およびスケールアップの変更
3 スケールアップに伴う品質の同等性/同質性評価
4 培養工程におけるスケールアップ
5 精製工程におけるスケールアップ
6 品質の恒常性を第一に考えたスケールアップを行うために
7 おわりに
第6章 抗体医薬品原薬・中間体の規格試験
1 はじめに:規格及び試験方法の考え方
2 モノクローナル抗体の特性解析
2.1 構造
2.2 物理的化学的性質
2.3 糖鎖
2.4 生物学的性質
2.5 不純物
2.5.1 目的物質関連物質/目的物質由来不純物
2.5.2 製造工程由来不純物
3 原薬の規格及び試験方法
3.1 確認試験
3.2 糖鎖
3.3 純度試験
3.3.1 不均一性
3.3.2 目的物質由来不純物
3.3.3 製造工程由来不純物
3.4 力価
3.5 物理量
4 抗体薬物複合体の品質管理
5 標準物質
6 QbDの利用
【市場編】
第1章 医薬品原薬・中間体の市場動向
1 医薬品業界の構造
1.1 日本の医療制度の概要
1.2 医薬品原薬と医薬中間体
1.3 医薬品原薬・中間体の製造と調達
2 医薬品原薬および医薬品製造受託業界の動向
2.1 医薬品原薬および医薬品製造受託メーカーを取り巻く環境
2.2 医薬品原薬および医薬品製造受託メーカーの動向
3 医薬品原薬・中間体市場の推移
3.1 医薬品市場規模
3.2 医薬品原薬・中間体業界の課題
第2章 日本の医薬品政策の動向
1 医薬品産業強化施策の方向(医薬品産業強化総合戦略)
1.1 イノベーションの推進
1.1.1 臨床研究や治験の活性化
1.1.2 医薬品開発のための産学官連携の強化
1.1.3 イノベーションを適正に評価する仕組みの構築
1.2 質の高い効率的な医療の実現
1.2.1 基礎的医薬品の安定的な確保
1.2.2 後発医薬品の使用の加速化
1.3 グローバルな視点での政策の再構築
2 薬事規制の動向
2.1 医薬品医療機器等法(薬機法)
2.2 医薬品メーカーに対する主要な薬事規制
2.2.1 製造販売業許可の種類の増加と安全性の確保
2.2.2 審査期間の短縮と承認品目数の増加
2.2.3 低分子医薬品とバイオ医薬品製造における薬事規制の違い
2.3 薬事規制が医薬品産業に及ぼす影響
第3章 医薬品の製造技術と個別医薬品市場の動向
1 医薬品合成技術と実用化の動向
1.1 キラルテクノロジー
1.1.1 技術概要
1.1.2 実用化の動向
1.2 フローマイクロ合成
1.2.1 技術概要
1.2.2 実用化の動向
1.3 カップリング反応
1.3.1 技術概要
1.3.2 実用化動向
2 個別医薬品市場の動向
2.1 低分子医薬品市場
2.1.1 市場概要
2.1.2 国内市場および研究開発の動向
2.2 ジェネリック医薬品市場
2.2.1 市場概要
2.2.2 国内の市場および研究開発の動向
2.3 バイオシミラー市場
2.3.1 市場概要
2.3.2 国内の市場および研究開発の動向
2.4 抗体医薬品市場
2.4.1 市場概要
2.4.2 市場および研究開発の動向
2.5 核酸医薬品
2.5.1 市場概要
2.5.2 市場および研究開発動向
2.6 ペプチド医薬品
2.6.1 市場概要
2.6.2 市場および研究開発動向
第4章 医薬品製造受託市場の動向
1 医薬品および医薬品原薬製造のアウトソーシングの現状と課題
2 医薬製造受託機関(CMO)および医薬品開発製造受託機関(CDMO)市場の動向
3 医薬品開発業務受託機関(CRO)市場の動向
第5章 国内の主要医薬品企業の動向
1 武田薬品工業
2 アステラス製薬
3 第一三共
4 大塚製薬
5 エーザイ
6 中外製薬
7 田辺三菱製薬
8 大日本住友製薬
9 協和発酵キリン
10 塩野義製薬
第6章 海外の主要医薬品企業の動向
1 ファイザー
2 ノバルティスファーマ
3 メルク
4 サノフィ
5 ロシュ
6 グラクソ・スミスクライン(GSK)
7 アストラゼネカ
8 ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマシューティカ)
9 イーライリリー
10 アッヴィ
第7章 医薬品原料専門商社の動向
1 医薬品原料専門商社の機能
2 主な医薬品原料専門商社
2.1 イワキ
2.2 コーア商事
2.3 住友商事(住商ファーマインターナショナル)
2.4 中間物商事
2.5 ナミキ商事
2.6 CBC
2.7 伊藤忠ケミカルフロンティア
2.8 鍋林
第8章 国内の医薬品原薬・中間体企業の動向
1 旭化成ファインケム
2 旭硝子
3 味の素
4 宇部興産
5 エーピーアイコーポレーション
6 カネカ
7 神戸天然物化学
8 サンヨーファイン
9 住友化学
10 積水メディカル
11 セントラル硝子
12 東京化成工業
13 東洋紡
14 東レ・ファインケミカル
15 ナード研究所
16 日産化学工業
17 日本合成化学工業
18 日本触媒
19 浜理薬品工業
20 富士フイルムファインケミカルズ
21 藤本化学製品
22 金剛化学
23 ダイト
24 室町ケミカル
25 アルフレッサファーマ
第9章 海外の医薬品原薬・中間体企業の動向
1 AstaTech(Chebgdu)BioPharmaceutical
2 Almac Group
3 Autran Biotech
4 BASF
5 Dishman Pharmaceuticals and Chemicals
6 Evonik Industries
7 Korea United Pharm
8 Novasep
9 Sai Life Sciences
10 PCAS
11 PharmaBlock Sciences(Nanjing)
12 Royal DSM
13 Lonza Group
14 Luna Chemicals
15 Boehringer Ingelheim
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