キーワード:
代謝工学/遺伝子配列/タンパク質配列/酵素反応/代謝物/トランスクリプトーム/プロテオーム/メタボローム/代謝経路設計/ 分子動力学シミュレーション/遺伝子発現ネットワーク解析/長鎖DNA合成技術/ピンポイント・マルチターゲットゲノム編集/AI/大腸菌/酵母/コリネ型細菌/放線菌/糸状菌
刊行にあたって
NEDOにおいては「エネルギー・地球環境問題の解決」及び「産業技術力の強化」といった観点からバイオテクノロジーの技術開発に取り組んでいる。特に、バイオ分野への戦略的投資が必要との認識から、バイオ産業の新たな市場形成を目指した戦略として『スマートセルインダストリーの構築』を中心に位置づけたプロジェクトを開始した。
その第一弾として、プロジェクト「植物等を用いた高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」を立ち上げ、急速に進化した次世代シークエンサーをはじめとする各種解析装置による遺伝子情報や生産物情報の正確かつ高速な取得と、これらのビッグデータにAI/IT技術を適用することで生物機能のデザインを可能とする基盤技術を開発し、その技術を活用したスマートセル創出プラットフォームの構築と実証研究を行なっている。
本書で紹介する微生物の生産性制御に関わる技術開発では、多様な産業生物株を利用してゲノム情報等の大規模データベースを取得し、DNA、mRNA、タンパク質、代謝物の階層内・階層間の制御ネットワークを推定する計算手法を開発、さらに収量が最大となる遺伝子配列を提供するシミュレーションシステムを構築する。また、長鎖DNA合成技術やメタボローム分析装置等の開発によりスマートセル創出に関連する各種技術を整備し、さらに微生物に関するスマートセル創出プラットフォームを一層強化するためAI基盤技術等の開発にも力を入れている。本事業で開発するスマートセル創出プラットフォームを活用し、特定の生産ターゲットを設定した上で目的物質の生産性向上を狙うとともに、量産化を見据えて宿主となる微生物の培養条件等の最適化を行う研究開発への着手も予定している。
バイオテクノロジーは急速な技術革新が進んでいる分野であり、人々や社会が抱える問題の解決、新市場創出の実現に大きな可能性を有する技術領域であり、Society5.0で実現する社会にも貢献するものと考えられる。そのためには、本領域における研究開発から市場投入までの一連の流れを、複数の関係機関が有機的に連携しながら進める必要があり、スマートセルインダストリー構築においても、これまで以上に、産学官連携や異分野融合等を促進しなければいけない。
久原 哲
(「はじめに」より一部抜粋)
著者一覧
久原 哲 九州大学 蓮沼誠久 神戸大学 田村具博 産業技術総合研究所 近藤昭彦 神戸大学 森 良仁 日本テクノサービス㈱ 柘植謙爾 神戸大学 高橋俊介 神戸大学 板谷光泰 慶應義塾大学 谷内江望 東京大学;慶應義塾大学 石黒 宗 慶應義塾大学;東京大学 石井 純 神戸大学 西 晶子 神戸大学 北野美保 神戸大学 中村朋美 神戸大学 庄司信一郎 神戸大学 秀瀬涼太 神戸大学 木村友紀 千葉大学 関 貴洋 千葉大学 大谷悠介 千葉大学 栗原健人 千葉大学 梅野太輔 千葉大学 八幡 穣 筑波大学 野村暢彦 筑波大学 三谷恭雄 産業技術総合研究所 野田尚宏 産業技術総合研究所 菅野 学 産業技術総合研究所 松田史生 大阪大学 光山統泰 産業技術総合研究所 荒木通啓 京都大学;神戸大学 白井智量 理化学研究所 厨 祐喜 神戸大学 川﨑浩子 製品評価技術基盤機構 細山 哲 製品評価技術基盤機構 寺尾拓馬 製品評価技術基盤機構 亀田倫史 産業技術総合研究所 池部仁善 産業技術総合研究所 油谷幸代 産業技術総合研究所 齋藤 裕 産業技術総合研究所 田島直幸 産業技術総合研究所 西宮佳志 産業技術総合研究所 玉野孝一 産業技術総合研究所 北川 航 産業技術総合研究所 安武義晃 産業技術総合研究所 守屋央朗 岡山大学 寺井悟朗 東京大学 伊藤潔人 ㈱日立製作所 武田志津 ㈱日立製作所 広川安孝 九州大学 花井泰三 九州大学 酒瀬川信一 旭化成ファーマ㈱ | 小西健司 旭化成ファーマ㈱ 村田里美 旭化成ファーマ㈱ 吉田圭太朗 産業技術総合研究所 小笠原 渉 長岡技術科学大学 志田洋介 長岡技術科学大学 鈴木義之 長岡技術科学大学 掛下大視 花王㈱ 五十嵐一暁 花王㈱ 小林良則 (一財)バイオインダストリー協会 田代康介 九州大学 矢追克郎 産業技術総合研究所 吉田エリカ 味の素㈱ 大貫朗子 味の素㈱ 臼田佳弘 味の素㈱ 小森 彩 神戸天然物化学㈱ 小島 基 神戸天然物化学㈱ 鈴木宗典 神戸天然物化学㈱ 仲谷 豪 長瀬産業㈱ 山本省吾 長瀬産業㈱ 石井伸佳 長瀬産業㈱ 曽田匡洋 長瀬産業㈱ 阪本 剛 三菱ケミカル㈱ 山田明生 三菱ケミカル㈱ 豊田晃一 地球環境産業技術研究機構 久保田健 地球環境産業技術研究機構 小暮高久 地球環境産業技術研究機構 乾 将行 地球環境産業技術研究機構 片山直也 江崎グリコ㈱ 大段光司 江崎グリコ㈱ 塚原正俊 ㈱バイオジェット 熊谷俊高 ㈱ファームラボ 藤森一浩 産業技術総合研究所 久保亜希子 江崎グリコ㈱ 佐原健彦 産業技術総合研究所 竹村美保 石川県立大学 三沢典彦 石川県立大学 高久洋暁 新潟薬科大学 荒木秀雄 不二製油グループ本社㈱ 中川 明 石川県立大学 南 博道 石川県立大学 宮田 健 鹿児島大学 新川 武 琉球大学 玉城志博 琉球大学 梅津光央 東北大学 新井亮一 信州大学 七谷 圭 東北大学 中山真由美 東北大学 新谷尚弘 東北大学 阿部敬悦 東北大学 |
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1 はじめに
2 先端バイオ技術の国際動向
3 我が国独自のスマートセルインダストリーの構築へ
4 微生物開発に資する情報解析技術
5 バイオ×デジタルによる「スマートセル創出プラットフォーム」の開発
6 将来展開
【第1編 ハイスループット合成・分析・評価技術】
第1章 ハイスループット長鎖DNA合成技術
1 ハイスループットDNA化学合成技術の開発
1.1 はじめに
1.2 長鎖DNA合成に特化したDNA合成機の試作
1.3 ハイスループットDNA合成機の試作
1.4 おわりに
2 OGAB法による長鎖DNA合成技術
2.1 はじめに
2.2 枯草菌を用いた遺伝子集積法のOGAB法
2.3 自動化を意識した遺伝子集積法の第二世代OGAB法
2.4 おわりに
3 枯草菌ゲノムベクターを利用する長鎖DNAの(超)長鎖化技術
3.1 ゲノム合成とは
3.2 ゲノム合成に必須な枯草菌ゲノムベクターシステム
3.3 第3世代ドミノ法,接合伝達システム開発
3.4 第2世代のドミノ法が示した,合成対象ゲノムのGC含量制限
3.5 まとめ
4 全ゲノム合成時代における長鎖DNA合成の考え方
4.1 全ゲノム合成時代のための生物学小史
4.2 DNAアセンブリ技術群
4.3 次世代のDNAアセンブリ
4.4 共通の課題
第2章 ハイスループット微生物構築・評価技術
1 微生物を用いた物質生産とハイスループット微生物構築技術
1.1 はじめに
1.2 微生物によるバイオ化学品の発酵生産
1.3 微生物構築の自動化システム―AmyrisやZymergenを例に―
1.4 自動化システムを取り巻く状況
1.5 おわりに
2 バイオセンサー利用したハイスループット評価技術
2.1 はじめに
2.2 見える代謝物を見る戦略の限界
2.3 代謝物センサーを用いる細胞工学
2.4 見えない代謝物を見る
2.5 展望
3 非破壊イメージングによるハイスループット評価技術
3.1 はじめに
3.2 細胞形態や空間配置の非破壊・低侵襲3次元評価技術
3.3 細胞の種類や代謝状態の非破壊評価技術
3.4 おわりに
第3章 オミクス解析技術
1 トランスクリプトーム解析技術
1.1 RNA-seqのサンプル調製の概要
1.2 RNA-Seqデータの品質管理
1.3 スマートセルの遺伝子発現情報の取得の際に求められる技術展望
2 スマートセル設計に資するメタボローム解析
2.1 はじめに
2.2 メタボローム解析の概要
2.3 動的メタボロミクスの開発と微生物育種への応用
2.4 スマートセル設計に資するメタボローム解析
3 高精度定量ターゲットプロテオーム解析技術
3.1 はじめに
3.2 スマートセル評価におけるタンパク質定量技術の必要性
3.3 ターゲットプロテオミクス法の有用性
3.4 ターゲットプロテオミクスの実際1:サンプル前処理とデータ取得
3.5 ターゲットプロテオミクスの実際2:MRMアッセイメソッドの構築
3.6 MRMアッセイメソッド構築の高速化に向けて
3.7 ターゲットプロテオミクスを用いた出芽酵母1遺伝子破壊株の解析
3.8 人工タンパク質を用いた定量の高精度化
第4章 測定データのクオリティコントロール,標準化データベースの構築
1 はじめに
2 本研究課題の役割
3 本データベースの独自性
4 測定データのクオリティコントロール
5 標準化データベースの構築
6 スマートセルデータベースの将来像
7 最後に
【第2編 情報解析技術】
第1章 代謝系を設計する情報解析技術
1 新規代謝経路の設計
1.1 はじめに
1.2 代謝経路設計ツール(1):M-path
1.3 代謝経路設計ツール(2):BioProV
1.4 おわりに
2 代謝モデル構築と代謝経路設計
2.1 はじめに
2.2 代謝モデル構築
2.3 代謝経路設計:HyMeP
2.4 今後の課題
3 微生物資源の有効活用
3.1 スマートセル構築のための生物資源の活用概略
3.2 人工代謝経路設計ツールの機能向上への生物資源の活用
3.3 微生物資源の入手方法
4 代謝設計に向けた酵素選択
4.1 はじめに
4.2 代謝設計ツール:M-pathの利用
4.3 クラスタリング法の利用
4.4 機械学習法の利用
4.5 おわりに
5 酵素の機能改変
第2章 遺伝子発現制御ネットワークモデルの構築
1 はじめに
2 遺伝子発現制御と物質生産理由
3 遺伝子選択手法の開発
4 ネットワーク構造推定
5 実証課題への適用に向けて
第3章 遺伝子配列設計技術
1 情報解析に基づく遺伝子配列改変による発現量調節
1.1 放線菌生産データに基づく,遺伝子配列設計法の開発
1.2 DNA-ヒストン結合能を変化させる配列改変
2 コドン(超)最適化という設計戦略
2.1 はじめに―コドン(超)最適化という設計戦略
2.2 コドンの最適化の基礎
2.3 コドン最適化の実際
2.4 発現量を最大化するためのコドン超最適化
2.5 おわりに―コドン置換による更なる配列設計
3 大量データに基づく遺伝子配列設計
3.1 はじめに
3.2 コドンとタンパク質発現の関係
3.3 翻訳開始との関係
3.4 翻訳伸長との関係
3.5 タンパク質フォールディングとの関係
3.6 翻訳終結との関係
3.7 mRNA分解との関係
3.8 分泌との関係
3.9 Codon Adaptation Index
3.10 我々のアプローチ
3.11 OGAB法によるキメラCDSライブラリの構築
3.12 おわりに
第4章 統合オミクス解析技術
1 はじめに
2 生体細胞における複層的制御システム
3 生物階層と情報解析技術
4 統合モデルの構築
5 実証課題への適用に向けて
第5章 知識整理技術
1 バイオ生産に資するAI基盤技術
1.1 はじめに
1.2 AI技術の現状
1.3 バイオ分野におけるAI技術適用の課題
1.4 スマートセル開発支援知識ベース
1.5 おわりに
2 合成代謝経路を導入したシアノバクテリアによる有用物質生産
2.1 はじめに
2.2 合成代謝経路を導入したシアノバクテリアによるイソプロパノール生産
2.3 合成代謝経路を導入したシアノバクテリアによる1,3-PDOの生産
2.4 おわりに
【第3編 産業応用へのアプローチ】
第1章 診断薬用酵素コレステロールエステラーゼ(CEN)生産への応用
第2章 セルラーゼ生産糸状菌の複数酵素同時生産制御に向けた技術開発
1 バイオリファイナリーとセルロース系バイオマス分解糸状菌Trichoderma reesei
1.1 セルロース系バイオマスを原料としたバイオリファイナリー
1.2 セルロース系バイオマスの分解
1.3 既知の調節因子
2 Trichoderma reesei糖質加水分解酵素生産制御
2.1 糖質加水分解酵素の生産比率制御の意義
2.2 糖質加水分解酵素生産比率制御とDBTLサイクル
第3章 カルボンの生産性向上による代謝解析・酵素設計技術の有効性検証
1 酵素設計技術を用いたP450の改変とリモネンからカルボンへの変換
2 リモネン発酵生産菌の構築
第4章 Streptomyces属放線菌を用いた物質生産技術:N-STePP(R)
1 はじめに
2 N-STePP(R)
3 応用例1:天然紫外線吸収アミノ酸「シノリン」の生産
4 応用例2:多機能アミノ酸「エルゴチオネイン」の生産
5 おわりに
第5章 スマートセルシステムによる有用イソプレノイド生産微生物の構築の取組み
1 はじめに
2 イソプレノイド生合成経路に関わる研究の概要
2.1 メバロン酸経路
2.2 非メバロン酸経路
3 イソプレノイド生産微生物構築におけるスマートセルシステムの活用
3.1 有用イソプレノイド生産微生物の構築
3.2 今後の展望
第6章 網羅的解析を利用した高生産コリネ型細菌の育種戦略
1 トランスクリプトーム解析を用いた乳酸生産濃度向上戦略
2 メタボローム解析を用いたアラニン生産濃度向上戦略
3 メタボローム解析を用いたシキミ酸生産濃度向上戦略
4 計算機およびトランスポゾンライブラリーを用いたタンパク質分泌生産量の向上戦略
第7章 紅麹色素生産の新展開
1 はじめに
2 紅麹菌と産業利用の変遷
3 紅麹菌の分類学的な位置づけと二次代謝経路
4 紅麹色素に関する従来の研究と遺伝子組換え技術
5 紅麹菌GB-01株の全ゲノム塩基配列の取得
6 スマートセル実現にむけた新規数理モデル開発と遺伝子改変
7 さいごに
第8章 植物由来カロテノイドの微生物生産
1 はじめに
2 植物由来カロテノイドの市場性と機能性
3 大腸菌による植物由来カロテノイドの生産研究
3.1 大腸菌で生産可能な植物由来カロテノイド
3.2 大腸菌を用いたカロテノイド生産の生産性向上の試み
4 酵母による植物由来カロテノイドの生産研究
4.1 カロテノイド生産酵母における生産性向上の試み
4.2 カロテノイド非生産酵母での代謝経路の導入によるカロテノイド生産
4.3 出芽酵母を宿主として用いた新たな取り組み
5 おわりに
第9章 油脂酵母による油脂発酵生産性改善へ向けた技術開発
1 油脂産業の現状と油脂酵母
2 油脂蓄積変異株の取得とその油脂蓄積性
3 油脂酵母のTAG合成・分解
4 油脂蓄積変異株のTAG合成・分解経路関連遺伝子の発現挙動
5 油脂酵母L.starkeyiの遺伝子組換え技術
6 今後の開発
第10章 情報解析技術を活用したアルカロイド発酵生産プラットフォームの最適化
第11章 計算化学によるコンポーネントワクチン開発のための分子デザイン
1 はじめに
2 ワクチンの種類と特徴
3 ワクチン抗原における分子デザインについて
4 分子の安定性:耐熱性付与
5 計算化学とライブラリー法を融合したコンポーネントワクチン開発
6 まとめ
第12章 微生物の膜輸送体探索と産業利用―輸送工学の幕開け―
1 微生物の膜輸送体研究の現状
2 膜輸送体の産業利用
3 結言
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