キーワード:
e-テキスタイル/ウェアラブルエレクトロニクス/プリンテッドエレクトロニクス/快適性/感性工学/導電性繊維/導電性接着剤/導電性ペースト/紡績糸/圧力センサー/圧電センサー/触覚センサー/集積回路/太陽電池/熱電変換素子/自立型電源/生体センシング/ヘルスケア/冷温感応/健康管理/介護補助/防護服
刊行にあたって
スマートテキスタイルとは「一般の繊維素材では得られない新しい機能を備えたテキスタイル素材または既存の機能を新規の技術で得るテキスタイル素材の総称」であり、また、少し狭い意味では、「周囲の環境の変化に対応して、着用者の好ましい環境に動的に修整・対応していく機能を持つテキスタイル素材を呼ぶ」こともある。その他に、LEDランプ を組み込んだテキスタイル、自立型電源や電池を搭載したテキスタイル、導電性繊維を交編または交織し、その基布に集積回路を構築するものづくりも対象となる。スマートテキスタイル分野の大きな部分を担う電子テキスタイル(e-テキスタイル)分野は電子部品を搭載したテキスタイルで生体情報をモニタリングするなどの目的で、世界各国で開発・販売が進んでいる。
一方、電気・電子分野とは無関係に、冷温感対応機能繊維(夏は涼しく、冬は暖かく感じられる繊維素材)、遠赤外線を発生させて保温性を向上させた繊維素材の開発などは別途進められていて商品化も進んでいるが、今後はもっと高機能な機能を備えたものが期待できる。さらには、高い機能を有する新規繊維の製造や高分子アクチュエータを利用するテキスタイルの開発なども期待できる。また、小型のロボットとの組み合わせによる展開などもスマートテキスタイルの展開として考えられる。
スマートテキスタイルが安全にまた互換性をもって世界に普及するには世界共通の規格化が必要となるが、これらについては日本・韓国やヨーロッパなどではIECやISO化を目指しすでに文書作成に入っている。
本書ではスマートテキスタイル開発に必要な材料開発、要素技術をはじめ、スマートテキスタイルがどこまで実用化などについて開発の最先端を行く研究者および技術者に執筆いただいた。これからのスマートテキスタイル分野の参考になることを大いに期待している。
(「はじめに」より一部抜粋)
著者一覧
牛島洋史 産業技術総合研究所
才脇直樹 奈良女子大学
清水祐輔 東洋紡㈱
上條正義 信州大学
赤石良一 大阪有機化学工業㈱
三寺秀幸 ミツフジ㈱
井上 翼 静岡大学
間瀬健二 名古屋大学
榎堀 優 名古屋大学
島上祐樹 名古屋学芸大学
田中利幸 あいち産業科学技術総合センター
水野寛隆 ㈱槌屋
鈴木陽久 ㈱槌屋
髙橋秀也 大阪市立大学
山崎 貢 ㈱SHINDO
藤岡 潤 石川工業高等専門学校
森山信宏 ㈱クレハ
平井慎一 立命館大学
ホアンヴァン 北陸先端科学技術大学院大学
松野孝博 立命館大学
田實佳郎 関西大学
中村雅一 奈良先端科学技術大学院大学
杉野和義 住江織物㈱
陸田秀実 広島大学
板生 清 NPO法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構
清野 健 大阪大学
鳥光慶一 東北大学
小野瀬良佑 名古屋大学
間瀬健二 名古屋大学
島崎仁司 京都工芸繊維大学
小野千晶 東北大学病院
富田博秋 東北大学
吉田 学 産業技術総合研究所
木村 睦 信州大学
辻 創 (一財)カケンテストセンター
目次 + クリックで目次を表示
第1章 スマートテキスタイルの研究動向
1 繊維産業の背景とスマートテキスタイルへの展開
1.1 繊維産業の変遷
1.2 初期のスマートテキスタイル研究
2 新時代のスマートテキスタイル研究
2.1 欧米からの提案とアジアへの普及
2.2 日本のスマートテキスタイル研究
3 スマートテキスタイル開発の要素技術
3.1 導電性繊維
3.2 導電性ペーストおよびインキ
3.3 絶縁ペースト
3.4 伸縮性ロープ・テキスタイル
3.5 各種センサー
3.6 自立型バッテリー
3.7 接続技術
4 スマートテキスタイルの開発と実用化
4.1 シャツ型スマートテキスタイル
5 今後の課題
第2章 スマートテキスタイル用プリンテッドエレクトロニクス
1 はじめに
2 ウェアラブルとフレキシブルハイブリッドエレクトロニクス
3 ストレッチャブルエレクトロニクス
4 布帛上への配線や電極の直接印刷形成
5 ウェアラブルデバイスのスマート化
6 スマートテキスタイルを目指して
第3章 生活工学におけるスマートテキスタイル研究
1 はじめに
2 スマートテキスタイル登場前夜における被服学と情報処理の先端融合的取り組み
3 スマートテキスタイルとウェアラブル・エレクトロニクス
4 生活工学におけるスマートテキスタイルの応用研究例
4.1 タッチ・コミュニケーション服
4.2 筋電計測服
4.3 冷え性予防温度制御服“Thermal Clothes”
4.4 購買支援システム
4.5 胎児と妊婦の心拍測定が可能な健康管理腹帯
4.6 呼吸計測のためのセンシングウェア
4.7 ファッショナブルIoT
5 未来に向けて
第4章 快適性評価技術
1 はじめに
2 「心地良さ」の評価方法構築
3 熱・水分率特性に関する心地良さの評価
3.1 熱・水分率特性に関する評価法
3.2 衣服の「涼しさ」の評価
4 圧力特性に関する心地良さの評価
5 肌触りに関する心地良さの評価
6 おわりに
第5章 繊維製品における感性計測評価
1 はじめに
2 感性計測評価
3 意識できない身体への影響を計測評価する
3.1 腹部圧迫は脳活動を抑制する
3.2 視覚からの情報が腹部圧迫に伴う心身への影響を亢進する
4 まとめ
【第2編 スマートテキスタイル用材料の開発と応用技術】
第6章 伸縮性アクリル導電材料
1 はじめに
2 伸縮性導電材料の世界の特許出願動向
3 当社の技術背景と伸縮性アクリル導電材料「Suave-EL」シリーズの開発
4 伸縮性アクリル導電材料の特性と用途展開
5 伸縮性アクリル導電材料の耐性試験
6 今後の課題と展望
第7章 銀めっき導電性繊維 AGposs®
1 はじめに
2 銀めっき導電性繊維「AGposs®」ついて
2.1 導電性繊維の分類
2.2 AGposs®の概要
2.3 AGposs®の用途例
2.4 AGposs®の洗濯耐久性
2.5 AGposs®の安全性
2.6 AGposs®の新規開発
3 着衣型ウェアラブルデバイス「hamon®」について
3.1 hamon®の構成要素
3.2 hamon®の洗濯耐久性
3.3 hamon®によるソルーション
3.4 hamon®の新しい試み
4 おわりに
第8章 カーボンナノチューブ紡績糸
1 はじめに
2 乾式紡績
3 CNT紡績糸の力学特性および電気特性
4 おわりに
第9章 導電性織物による布センサの開発
1 はじめに
2 静電容量型圧力センシング織物の原理
3 圧力を検知する織物の作製
3.1 カバリング糸の作製
3.2 圧力センシング織物の作製
3.3 試作した布の特性
4 キャパシタンス読み出し用ドライバ回路と引き出し線
4.1 引き出し線の接続
4.2 ドライバ回路
5 応用事例
5.1 さまざまな形状,サイズのセンサ
5.2 適用例
6 他の素材との比較と使用上の注意
7 おわりに
第10章 RFIDファイバー
1 はじめに
2 RFIDファイバー
3 RFIDファイバーの応用例
3.1 手術用ガーゼ管理システム
3.2 ネームタグ(偽造防止)
3.3 消防ホース管理
3.4 行動検知システム
3.5 水分検知システム
4 あとがき
第11章 導電ストレッチテープ「e-Strech」について
1 背景
2 開発
3 素材選定
4 組織
5 試験データ
6 防水性能を付与したイーストレッチ
第12章 感圧導電性編物を用いたセンサデバイス
1 はじめに
2 感圧導電性編物
2.1 感圧導電性編物の概要
2.2 感圧導電性編物の電気特性
3 手指のセンシング
3.1 導電性グローブ
3.2 把持動作の計測と動作認識
4 生活動作のセンシング
4.1 導電性ウェア
4.2 導電性ウェアによる生活行動の測定と判別
5 体圧分布計測デバイス
6 おわりに
第13章 フィルム状ピエゾセンサー
1 はじめに
2 フィルム状ピエゾセンサー用材料
2.1 圧電性について
2.2 各種材料の紹介と概略
3 応用例の紹介(PVDF系を中心に)
4 PVDF圧電体の物性定数
5 応用に際しての技術的な留意点
5.1 圧電気を捉える
5.2 等価回路
5.3 実施例(加速度センサー)
6 おわりに
第14章 布地触覚センサ
1 はじめに
2 抵抗ベース布地触覚センサ
3 キャパシタンスベース布地触覚・近接センサ
3.1 センサ構造
3.2 触覚センシング
3.3 近接センシング
4 キャパシタンスベース近接センシングにおける基準値の更新
4.1 センシング原理
4.2 センサ固定時における基準静電容量の更新方法
4.3 センサ移動時における基準静電容量の更新方法
5 おわりに
第15章 圧電素材を用いたスマートテキスタイル
1 はじめに
2 キラル高分子の圧電性
3 圧電ファブリック
4 まとめ
第16章 カーボンナノチューブ紡績糸を用いた布状熱電変換素子
1 はじめに
2 布状熱電変換素子の構造
3 ウェットスピニング法によるCNT紡糸法概要
4 CNT分散法の検討
5 バインダーポリマー量の検討
6 CNT紡績糸のn型ドーピング
7 CNT紡績糸への縞状ドーピングによる布状熱電変換素子の試作と評価
8 おわりに
第17章 繊維/布帛型太陽電池
1 はじめに
2 繊維型太陽電池開発
2.1 電池構成について
2.2 繊維型太陽電池特性評価
3 布帛型太陽電池開発
3.1 布帛型太陽電池の構成開発について
3.2 布帛型太陽電池の発電性能について
4 まとめ
第18章 柔軟発電素材による海洋エネルギー・ハーベスティング技術
1 はじめに
2 柔軟発電素材
3 発電理論計算法
4 水中加振試験による基本的発電特性
5 波エネルギー利用への応用事例
6 まとめ
【第3編 スマートテキスタイルの実用化】
第19章 人間情報に基づいた冷暖房制御による快適衣服の実現
1 安心・快適な“衣服空間”とは
2 ウェアラブル機器の現状
3 環境ウェアラブルの時代へ
4 快適とは
5 快適服の展望
第20章 暑熱労働環境の安心・安全を守るスマート衣服の開発
1 はじめに
2 熱中症予防のための暑熱労働環境のリスク評価
3 生体情報の活用
4 サイバーフィジカルシステムの活用
5 おわりに
第21章 シルク電極による医療機器開発
1 はじめに
2 医療機器としてのシルク電極
3 シルク電極の特徴,バイタル計測
4 今後の展開
第22章 布圧力センサを用いた衣類型褥瘡予防介護補助システム
1 はじめに
2 パジャマ型布圧力センサ
2.1 パジャマ型布圧力センサの詳細
2.2 パジャマ型布圧力センサの性能評価
3 甚平型布圧力センサ
4 まとめ
第23章 導電性織物の無線応用
1 無線端末としてのウェアラブル機器と導電性織物
2 導電性織物の高周波における表面抵抗率の測定
3 導電性織物を用いたアンテナ
3.1 キャビティ付きスロットアンテナ
3.2 曲げた場合の反射および放射特性
3.3 ウェアラブルアンテナへの応用
4 むすび
第24章 「産後うつ」研究向け妊婦用スマートテキスタイルの開発
1 はじめに
2 産後うつ対策の重要性
3 産後うつのスクリーニングおよび予測
4 産後うつと自律神経活動
5 妊婦用スマートテキスタイルの開発
6 産後うつ予防のための技術開発に向けて
第25章 高伸縮性配線材料とそれを活用した圧力・伸びセンサー
1 はじめに
2 高耐久・高伸縮配線の実現
3 高伸縮性短繊維配向型電極
4 高伸縮性マトリクス状圧力センサーシート
5 圧力を伸びを同時に検出するセンサー
6 まとめ
第26章 有機導電性繊維を用いたテキスタイルデバイス
1 はじめに
2 有機導電性繊維の開発
3 有機導電性繊維の布帛化
4 有機導電性繊維を電極とした生体信号センシング
5 まとめ
第27章 スマート防護服
1 はじめに
2 防護服とは
3 労働災害事例と防護服
4 熱中症と防護服
5 防護服×スマート
6 スマート防護服の今後の展望
7 おわりに
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