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海底鉱物資源の産業利用《普及版》 ―日本EEZ内の新資源―

Seafloor Mineral Resources for Industrial Use(Popular Edition)

2013年刊「海底鉱物資源の産業利用-日本EEZ内の新資源-」の普及版!
実用化に向けての調査・開発が進む海底鉱物資源について、 日本の海研究の各分野をリードする叡智を結集し、有効利用と開発に向けた成果や課題を解説!!

商品コード:
B1311
監修:
飯笹幸吉
発行日:
2020年2月10日
体裁:
B5判・237頁
ISBNコード:
978-4-7813-1394-8
価格(税込):
4,730
ポイント: 43 Pt
関連カテゴリ:
地球環境
テクニカルライブラリシリーズ(普及版)
地球環境 > 未利用資源活用・リサイクル

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キーワード:

海底熱水鉱床/コバルトリッチマンガンクラスト/マンガン団塊/レアメタル/レアアース/EEZ/大陸棚/資源開発/環境影響評価/海中ロボット/AUV/ROV/鉱業法/海洋法

刊行にあたって

 平成25年4月、日本政府は新たな海洋基本計画を閣議決定した。この計画の中で、海底鉱物資源開発に向けた研究開発を積極的に推進することを謳っている。開発対象となる資源の有力候補として挙げられているのは、いわゆる海底熱水鉱床とコバルトリッチマンガンクラストである。
 これら海底鉱物資源は最先端産業に欠かせないレアメタルを豊富に含んでいる。しかしながら、商業開発を考えるにはその潜在鉱物資源量はじめ、環境、採鉱、揚鉱などに関して解決すべき課題が山積している。それらの方策について、本書では理学、工学、資源経済学、法学などの諸分野を代表する専門家が、科学的調査・研究、技術開発などによる成果を基に、学際的観点から考察を行っている。
 海洋基本計画の冒頭に記されているように、日本の海底鉱物資源ポテンシャルに対する期待は、資源小国からの脱却をめざすことにあるとされる。それは何より、海底鉱物資源に関する開発システムの日本版を世界に先駆けて構築し、この分野の発展をより一層促すことに貢献することでもある。そのためには、広大な海域に眠る鉱物資源の実態とそれを取り巻く環境についての、迅速かつ、より的確な把握が不可欠である。
 ところで、日本はほんとうに「資源小国」なのだろうか。かつて、陸域の金属資源を採掘していた時代は、決して資源小国ではなかった。さらに、陸域ではなく海域に着目するならば、日本が置かれている地球科学的特徴は大きな可能性を秘めている。海域にはプレート収束域もあれば、海底がまさに作られつつある背弧リフトも存在しており、そのような周辺海域に豊富な資源が眠っていることは、科学的研究によって明らかになりつつある。この恵まれたフィールドにおける科学調査・研究を、より一層加速すべき時である。すでに未踏海域・領域へフロントランナーとして挑んでいる西欧諸国の海洋研究者の後塵を拝するような愚は、避けなければならない。
 日本の海研究の各分野をリードする叡智を結集し、海底鉱物資源の開発に向けた法的整備をはじめ、最先端の研究・技術開発の成果や取り組みについて論じた本書が、今後の調査・研究・開発の一助となり、海洋の適切な管理および持続可能な有効利用に寄与できることを、執筆者一同、心より願っている。

本書は2013年に『海底鉱物資源の産業利用-日本EEZ内の新資源-』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。

著者一覧


飯笹幸吉   東京大学
小島茂明   東京大学
砂村倫成   東京大学
岡村 慶   高知大学
岸本清行   (独)産業技術総合研究所
丸茂克美   富山大学
篠原雅尚   東京大学
金沢敏彦   (独)防災科学技術研究所
新谷昌人   東京大学
藤本博己   東北大学
山田知朗   東京大学
石原丈実   (独)産業技術総合研究所
月岡 哲   (独)海洋研究開発機構
徳山英一   高知大学
市川 大   早稲田大学
多良賢二   東京大学
伊藤 譲   ㈱海洋工学研究所
芦寿一郎   東京大学
亀尾 桂   東京大学

斎藤 章   早稲田大学
秋山義夫   三菱マテリアルテクノ㈱
中村 崇   東北大学
大木達也   (独)産業技術総合研究所
伊藤真由美  北海道大学
柴田悦郎   東北大学
臼井 朗   高知大学
福島朋彦   東京大学
高川真一   東京大学
浅田 昭   東京大学
巻 俊宏   東京大学
白山義久   (独)海洋研究開発機構
高島正之   (社)日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)
澤田賢治   東京大学
織田洋一   ㈱三井物産戦略研究所
安永裕幸   経済産業省 資源エネルギー庁
中谷和弘   東京大学
谷 伸    内閣官房 総合海洋政策本部事務局

執筆者の所属表記は、2013年当時のものを使用しております。

目次 +   クリックで目次を表示

第1編:海底熱水鉱床の実態とその探査・評価・回収技術
第1章 海底熱水鉱床
1 海底における塊状硫化物の特徴
 1.1 はじめに
 1.2 世界の海底熱水活動域の分布
 1.3 海底熱水活動の時代変遷
 1.4 熱源と塊状硫化物の分布
  1.4.1 東太平洋の中央海嶺
  1.4.2 大西洋中央海嶺
  1.4.3 島弧-背弧系
 1.5 熱水溶液の特徴
 1.6 プルームの存在
 1.7 島弧-背弧リフトにおける熱水活動域の出現数
 1.8 現世海底熱水活動域のチムニーとマウンド形成機構
 1.9 塊状硫化物の化学組成
 1.10 塊状硫化物の潜在鉱物資源量
 1.11 結び
2 海底熱水活動域の生物群集
 2.1 はじめに
 2.2 化学合成生物群集
 2.3 主要な動物群
 2.4 幼生生態
 2.5 集団構造
 2.6 生物群集の遷移
3 海底熱水活動域の微生物群集
 3.1 はじめに
 3.2 生物のエネルギー源と炭素源
 3.3 熱水孔下地下生物圏
 3.4 チムニー、硫化物マウンド
 3.5 熱水-海水混合域と熱水プルーム
 3.6 鉱床開発と微生物生態系の保全

第2章 海底熱水鉱床の探査法
1 海底熱水活動域(海底熱水鉱床)の地質・鉱物学的探査手法
 1.1 はじめに
 1.2 地質・鉱物学的探査手法の意義
 1.3 現世海底熱水活動域における粒子状物質の特徴
  1.3.1 マウンド表層の構成要素
 1.4 粒子状物質のスモーカー
  1.4.1 明神礁カルデラ
  1.4.2 明神海丘カルデラ
 1.5 調査海域の選定と海底堆積物試料の採取
  1.5.1 地質試料採取のための地形・地質構造の特徴による海域選定
  1.5.2 海底堆積物の採取方法
  1.5.3 採取試料の重鉱物分析
 1.6 海底堆積物から分離・濃集した熱水起源重鉱物
  1.6.1 柱状地質試料の地質・鉱物学的意義
 1.7 結び
2 化学センサによる探査
 2.1 海底熱水鉱床に関する海水の化学
 2.2 熱水の活動段階に応じた探査
 2.3 熱水プルーム探査のプラットフォーム
 2.4 プラットフォームに搭載する化学センサについて
 2.5 採水器について
3 音波によるプルームの検出
 3.1 はじめに
 3.2 海水中のプルームを音響的に観測した最近の事例
 3.3 音波によるプルーム観測/検知の最近の展開
4 水銀同位体による探査
 4.1 水銀同位体の概要
 4.2 水銀同位体を用いた鉱床探査の原理
 4.3 黒鉱鉱床での水銀同位体探査技術の検証

第3章 海底熱水鉱床の潜在資源量評価手法
1 移動体搭載型重力計システムの開発と実証試験観測
 1.1 海底熱水鉱床探査のための移動体搭載型重力計システム
 1.2 海中重力計システム
 1.3 重力鉛直偏差計システム
 1.4 実証試験観測
2 海底熱水鉱床の内部構造をイメージングする―新しい音波探査システムの開発―
 2.1 はじめに
 2.2 海底接地型音波探査システムの開発
 2.3 接地型高周波発震器
  2.3.1 接地型発震器の技術開発
  2.3.2 油圧式と動電式の併用について
 2.4 実海域テスト
 2.5 取得データの処理と解釈
3 電磁気
 3.1 はじめに
 3.2 電磁探査法の原理
 3.3 IP効果
 3.4 海底熱水鉱床の電気的性質
 3.5 海底での電磁探査の問題点
 3.6 海底電磁探査技術の現状
  3.6.1 OFG社のシステム
  3.6.2 早稲田大学のシステム
  3.6.3 京都大学のシステム
 3.7 早稲田大学のIP測定システム
 3.8 今後の海底電磁探査技術

第4章 海底熱水鉱床の回収技術
1 採掘・揚鉱と脱水・排水
 1.1 はじめに
 1.2 技術開発の現状
  1.2.1 採掘・集鉱システム
  1.2.2 揚鉱システム
  1.2.3 脱水・排水システム
 1.3 実操業で予想される課題
2 選鉱・製錬
 2.1 はじめに
 2.2 試料の概要
  2.2.1 鉱物組成
  2.2.2 鉱物粒子サイズと単体分離性
 2.3 選鉱試験
  2.3.1 試料
  2.3.2 試薬
  2.3.3 実験方法
  2.3.4 結果および考察
  2.3.5 処理フロー
 2.4 製錬に関する基礎試験
  2.4.1 実験方法
  2.4.2 実験結果および考察
 2.5 まとめ

第2編:マンガン酸化物の実態とその探査・評価・回収技術
第5章 マンガン団塊とマンガンクラストの実態
1 はじめに
2 開発の動機と経緯
3 分布・産状
4 組成と起源
5 鉱床としての評価
6 わが国周辺海域の鉱床
7 開発を巡る法的整備
8 科学研究の必要性

第6章 環境影響調査
1 はじめに
2 環境調査の歴史
 2.1 基礎環境調査
 2.2 影響要因の絞り込み
 2.3 影響実証実験
3 マンガン団塊の分布する海域の環境
 3.1 実験海域の概略
 3.2 実験の要約
4 制度について
5 おわりに

第3編:海底鉱物資源探査のプラットフォームとその利用―海中ロボット―
第7章 海中ロボットの開発
1 海中ロボットに求められる基本的な機能
 1.1 耐圧・均圧・浮力
 1.2 位置の認識
2 海中ロボットの特徴
 2.1 有人潜水艇
 2.2 ROV
 2.3 AUV
3 AUVと人工知能
4 AUVの開発状況
5 AUVの利用状況

第8章 海中ロボット搭載の3次元合成開口インターフェロメトリソーナー
1 はじめに
2 音響精密測位システムの開発
 2.1 ミラートランスポンダ方式LBL測位システム
 2.2 DVL/光ジャイロ測位システム
 2.3 ミラートランスポンダ式SSBL測位システム
3 3次元合成開口インターフェロメトリーソーナーの開発
4 重複する2次元アレイエコー信号による高精度位置補正
5 海底鉱物資源探査解析ソフトウェアの開発

第9章 海中ロボットによる海底の3次元画像マッピング
1 はじめに
2 背景
3 AUV Tri-Dog 1
4 AUV Tri-TON

第4編:海底鉱物資源の産業利用に向けての課題と展望
第10章 海洋鉱物資源の開発と海洋環境保全
1 はじめに
2 海洋環境の保全にかかわる国際的枠組み
 2.1 ロンドン条約
 2.2 国際海底機構
 2.3 生物多様性条約(CBD)
3 海洋保護区(MPA)
 3.1 海洋保護区と生態・生物学的重要海域
 3.2 ネットワークに関する考え方
4 深海鉱物資源の開発にあたって
 4.1 マンガン団塊の事例
 4.2 MPAはだれが設定するのか
 4.3 熱水鉱床やコバルトリッチクラストの開発について
5 おわりに

第11章 海底鉱物資源の産業利用に向けて
1 はじめに
2 海底熱水鉱床開発の必要性
3 開発の現状
4 当面の課題とその対応策

第12章 陸上資源と深海底鉱物資源
1 はじめに
2 銅を中心とした資源の発見推移
3 資源の探鉱から生産にいたるコスト
 3.1 探鉱コスト
 3.2 鉱山開発コスト
 3.3 銅の生産コスト
4 資源制約下における今後の動向

第13章 海底鉱物資源ビジネスの動き
1 海外企業の動向
2 海底熱水鉱床の商業開発計画
3 マンガン団塊を巡る最近の動向
4 ノーチラス社の特徴
5 ノーチラスの最近の動向
6 おわりに

第14章 海底鉱物資源政策の現状と改正鉱業法
1 はじめに
2 海底熱水鉱床に関する取組み
 2.1 総論
 2.2 資源量調査
 2.3 採鉱・揚鉱等の資源生産技術
 2.4 製錬技術
 2.5 環境影響評価および環境保全
3 コバルトリッチクラストおよびマンガン団塊に関する取組み
4 海のレアアース泥に関する取組み
5 改正鉱業法と今後の海底鉱物資源開発について
6 おわりに

第15章 海底鉱物資源開発に関する国際法
1 国際法における海底の区分
2 大陸棚における鉱物資源開発に関する国際法
 2.1 大陸棚に対する主権的権利
 2.2 大陸棚境界画定
 2.3 境界未画定の大陸棚における一方的鉱物資源開発
 2.4 大陸棚をめぐる中国、韓国との関係
 2.5 大陸棚における海洋科学調査
 2.6 大陸棚における鉱物資源開発と鉱業法
3 延伸大陸棚における鉱物資源開発に関する国際法
 3.1 大陸棚限界委員会における日本の延伸大陸棚に関する勧告
 3.2 延伸大陸棚における鉱物資源開発の果実の拠出
4 深海底における鉱物資源開発に関する国際法
 4.1 「人類の共同の財産」としての深海底
 4.2 深海底における鉱物資源開発の果実の拠出
 4.3 深海底における海洋科学調査

第16章 国連海洋法条約の「大陸棚」
1 大陸棚とは
2 国連海洋法条約の大陸棚
3 我が国の申請
4 CLCSの勧告
5 大陸棚と資源
6 大陸棚延伸に関する諸外国の動向
7 今後の課題…資源大国への道

第17章 海底鉱物資源開発の戦略
1 はじめに
2 日本の海底鉱物資源と現状
3 潜在鉱物資源量の把握
4 海域における探査・評価の手法
5 古い海山域における海底熱水活動の可能性
6 海底熱水活動域の環境モニタリング
7 海底熱水鉱床開発に向けた協同体制
8 結び