キーワード:
ユビキタスエレクトロニクス/材料技術と物性/ナノ粒子/発光素子/フィルムと加工/PVA/PEN/スパッタ装置/低温成膜/真空蒸着/CVD/ナノインプリント/機能性フィルム/ガスバリア膜/光学フィルム
刊行にあたって
21世紀のエレクトロニクスに求められているコンセプトを一言で述べると、ユビキタス(ubiquitous)という言葉に集約できる。ユビキタスとは、神学に関係するラテン語の“ubiquitas”を基にした「(神のごとく)遍在する(any time, any place)」という意味で使われている英語である。
ユビキタスのコンセプトを真に実現するためには、デバイス媒体そのものが、どのような形態にも適応できる(溶け込むことができる)フレキシブルなものであることが求められる。その基幹技術となるものが、柔らかなフィルムを基板としたデバイス創成を目指す「フィルムベースエレクトロニクス」であると言える。
フィルムベースエレクトロニクスの対象は多岐にわたるが、デバイスを構築するためには、デバイスの基板となるポリマー(プラスチック)フィルムの作製と加工、フレキシブルな機能性材料(発光、偏光、ダイオード、トランジスター機能など)、フィルム上へのプロセス(製膜、配線、表面処理など)が要素技術として求められる。
本書は、フレキシブル機能性材料、フィルム開発とその加工技術、低温製膜とプロセス技術、及び、フィルム応用技術に焦点を絞り、フィルムベースエレクトロニクスの最新要素技術をまとめたものである。執筆陣は、「おおさかナレッジ・フロンティア推進機構」に事務局を置く「フィルムベースエレクトロニクス・プラットホーム」の参画者が母体となり、それに当該分野の第一人者が加わった構成となっている。本書で解説されている要素技術をベースとして、柔らかな発想に基づくブレークスルーが生まれることを期待する。
<普及版の刊行にあたって>
本書は2008年に『フィルムベースエレクトロニクスの最新要素技術』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
シーエムシー出版 編集部
著者一覧
中山正昭 大阪市立大学
小川倉一 小川創造技術研究所;(財)大阪産業振興機構;三容真空工業(株
和倉慎治 (株)アサヒ電子研究所
長谷川新 (財)大阪市都市型産業振興センター
黒野 剛 (株)テクノ・エージェンツ
金 大貴 大阪市立大学
松本章一 大阪市立大学
柳 久雄 奈良先端科学技術大学院大学
福田常男 大阪市立大学
松村竹子 (有)ミネルバライトラボ
田中克典 ヤマナカヒューテック(株
松井 務 三菱樹脂(株
久保耕司 帝人デュポンフィルム(株)
渡邊知行(株)クラレ
前田郷司 東洋紡績(株)
土谷章嘉 ヒラノ光音(株)
菊池 清 セン特殊光源(株)
小谷浩三 (株)麗光
植田吉彦 (株)大阪真空機器製作所
垣内弘章 大阪大学
大参宏昌 大阪大学
安武 潔 大阪大学
佐伯 登 パール工業(株)
大久保雅章 大阪府立大学
平井義彦 大阪府立大学
松本祐司 日立造船(株
伊達剣治 三容真空工業(株)
吉見裕之 日東電工(株)
中野信夫 理研計器(株)
水谷好孝 理研計器(株)
大岩恒美 (株)ホーピット
近藤匡俊 (株)表面処理システム
執筆者の所属表記は、2008年当時のものを使用しております。
目次 + クリックで目次を表示
1.ユビキタスエレクトロニクスの夢と課題
1.1 はじめに
1.2 予測 フィルムベースエレクトロニクス商品が進歩した2015年の日本の生活の一こま
1.3 ユビキタス、ウェアラブルコンピューターの時代
1.4 今後の課題
2.フィルムベースエレクトロニクス関連技術動向と市場
2.1 全体の動向
2.2 フレキシブルディスプレイ
2.2.1 電子ペーパー
2.2.2 フレキシブル有機ELディスプレイ
2.2.3 フレキシブルPDPディスプレイ
2.3 フレキシブル有機EL照明
2.4 フレキシブル電池
2.4.1 アモルファスシリコン系太陽電池
2.4.2 CIGS系太陽電池
2.4.3 色素増感型太陽電池
第2章 材料技術と物性
1.半導体ナノ粒子・量子ドット発光材料
1.1 はじめに
1.2 コロイド法
1.2.1 CdS量子ドットの作製とサイズ選択光エッチング
1.2.2 CdS量子ドットの表面改質と発光特性の向上
1.3 逆ミセル法
1.4 ホットソープ法
1.5 量子ドット分散フィルム試料の作製と光学特性の温度依存性
1.6 おわりに
2.エレクトロニクス用機能性高分子
2.1 はじめに
2.2 ポリマーの繰り返し構造と特性
2.3 ポリマーの耐熱性と力学特性
2.4 ポリマーの光学特性
2.5 耐熱性透明ビニル系ポリマーの設計
2.5.1 ポリ置換メチレン
2.5.2 ポリマレイミド共重合体
2.5.3 ポリメタクリル酸シクロアルキルエステル
2.6 おわりに
3.有機発光材料柳久雄
3.1 はじめに
3.2 ビススチリルベンゼン誘導体マイクロドットのASE
3.3 ビススチリルベンゼン誘導体ドープ薄膜のSRRS
3.4 ポリフェニレンビニレン薄膜のSRRS
3.5 おわりに
4.有機トランジスタ材料
4.1 はじめに
4.2 有機トランジスタのデバイス構造
4.3 有機トランジスタの材料
4.4 有機トランジスタのデバイス作成技術
4.5 まとめ
5.発光素子材料の高速・高効率マイクロ波合成の開発
5.1 はじめに
5.2 錯体発光材料
5.3 発光素子の課題と展望
5.4 発光性錯体の高速・高効率マイクロ波合成
5.4.1 重元素高輝度発光錯体の特徴と合成上の問題点
5.4.2 マイクロ波化学の原理
5.4.3 マイクロ波合成による錯体の高速・高効率合成
5.4.4 有機EL発光素子材料のマイクロ波合成
5.5 高輝度化を目指した錯体の設計
5.6 おわりに
第3章 エレクトロニクス用プラスチックフィルムと加工技術
1.PVAフィルムの開発と応用松井務
1.1 はじめに
1.2 PVAフィルムについて
1.3 プラスチックフィルムへの薄膜コーティング
1.4 シリカ蒸着フィルム
1.5 ガス透過機構について
1.6 PVAベースシリカ蒸着フィルム
1.7 おわりに
2.テオネックス®(PEN)フィルムの開発
2.1 はじめに
2.2 耐熱フィルムとしての、テオネックスの位置づけ
2.3 テオネックスフィルムの製造工程と構造発現
2.4 テオネックスフィルムの市場と開発状況
2.4.1 電気絶縁用途
2.4.2 コンデンサー
2.4.3 磁気記録用テープ
2.4.4 ディスプレイ用高透明フィルム
2.4.5 新規用途
2.5 おわりに
3.『エバール®』フィルムの開発
3.1 はじめに
3.2 基本特性
3.2.1 ガスバリア性
3.2.2 耐油性・耐有機溶剤性
3.2.3 その他特性
3.3 加工適性
3.3.1 一次加工(押出成形)
3.3.2 二次加工
3.3.3 コンバーティング
3.4 『エバール®』の環境適性
3.4.1 焼却廃棄
3.4.2 有害物質
3.5 用途例
3.5.1 二次加工性の向上・・・『エバール®』SPシリーズ
3.5.2 アルミ蒸着『エバール®』フィルムVM-XL
3.5.3 壁紙用『エバール®』フィルム
3.6 エレクトロニクス材料としての展開可能性と今後の開発課題
4.高耐熱・低CTEポリイミドフィルムの開発と特性評価
4.1 はじめに
4.2 ポリイミドフィルム
4.3 XENOMAX®の特性
4.3.1 熱収縮率
4.3.2 CTE:線膨張係数
4.3.3 粘弾性特性
4.3.4 機械特性
4.3.5 吸放湿特性
4.3.6 電気特性
4.3.7 耐薬品性
4.3.8 ガス透過性
4.3.9 難燃性
4.4 XENOMAX®の応用分野
4.4.1 半導体パッケージ用サブストレート
4.4.2 無機薄膜形成用フレキシブル基板
4.5 まとめ
5.フィルム走行式スパッタ装置土谷章嘉
5.1 はじめに
5.2 フィルム走行式スパッタ装置に関わる要素技術
5.2.1 前処理技術
5.2.2 メンテナンス性の向上
5.2.3 テスト機の必要性
5.3 鉛直型フィルム走行式スパッタ装置
5.4 スパッタ方式が採用されている用途と将来の展望
6.UV処理菊池清
6.1 はじめに
6.2 接着力改質技術の概要
6.3 UV処理の特長
6.4 分子結合と紫外線のエネルギー
6.5 UV処理に使われる光源と装置
6.6 UVとオゾンによる親水性官能基の形成
6.7 ぬれ指数による改質効果の評価
6.8 改質効果は接着形態で変わる
6.9 UV処理の平滑面と従来法の腐食面
6.10 UV処理の洗浄効果
6.11 今後の展望
第4章 低温成膜およびデバイスプロセス技術
1. 真空蒸着小谷浩三
1.1 はじめに
1.2 蒸着技術の現状
1.3 蒸着膜の特性
1.3.1 金属反射性
1.3.2 電気特性
1.3.3 絶縁性金属光沢膜
1.3.4 光学特性
1.3.5 ガスバリア性
1.4 真空蒸着の課題と今後の展開
2. スパッタリング技術
2.1 はじめに
2.2 スパッタリング成膜の基礎
2.2.1 スパッタ現象
2.2.2 スパッタ率
2.2.3 スパッタ粒子のエネルギー
2.2.4 動作原理
2.3 スパッタ方式の分類と特徴
2.3.1 直流(DC)2極スパッタ法
2.3.2 3極・4極スパッタ法
2.3.3 マグネトロンスパッタ法
2.3.4 対向ターゲット式スパッタ法
2.4 反応性スパッタ法
2.4.1 パルススパッタ法
2.4.2 デュアルターゲットスパッタ法
2.5 金属膜成膜+反応ガスラジカル源による化合物作製
2.6 低温・低ダメージ成膜への各種アプローチ
2.6.1 検討項目
2.6.2 スパッタ粒子のエネルギー低減
2.6.3 ターゲット-基板の幾何配置
2.6.4 電子トラップ他
2.6.5 プロセス条件
2.7 おわりに
3. 大気圧プラズマCVD垣内弘章、
3.1 はじめに
3.2 大気圧プラズマCVD法
3.3 大気圧プラズマCVD装置
3.4 微結晶Si薄膜の低温・高速形成
3.4.1 微結晶Si薄膜の構造評価
3.4.2 微結晶Siの成膜速度
3.4.3 基板温度の影響
3.4.4 微結晶Si薄膜の電気的特性
3.5 おわりに
4. 有機Cat-CVD中山弘
4.1 低温成膜の必要性と有機Cat-CVD
4.2 低温成膜の引き起こす問題
4.3 有機触媒CVDの原理:「気相空間で物質の骨格をつくる」
4.4 プラズマCVDと触媒CVDとの併用によるハイブリッド材料の成膜
4.5 まとめ
5. 大気圧低温プラズマグラフト重合プロセスによる高分子フィルム表面改質技術
5.1 はじめに
5.2 大気圧グロー放電プラズマを用いた機能性ポリエステル繊維(PET布帛)の開発
5.2.1 グロー放電プラズマグラフト重合装置と実験方法
5.2.2 プラズマグラフト重合の反応プロセス
5.2.3 PET布帛の表面改質結果
5.3 コロナ放電プラズマグラフト重合法による高接着性フッ素樹脂フィルムの開発
5.3.1 フッ素樹脂(PTFE、PFA、PCTFEフィルム)の特徴
5.3.2 コロナ放電プラズマグラフト重合装置および実験方法
5.3.3 実験結果
5.4 まとめ
6. ナノインプリント
6.1 はじめに
6.2 ナノインプリント法の種類と方式
6.3 熱ナノインプリント法のメカニズム
6.4 ナノインプリント法の応用
6.4.1 多様な材料への適応
6.4.2 高アスペクト比構造の成型
6.4.3 曲面、変形形状(2.5次元形状)、マイクロ・ナノ混在構造の成型
6.4.4 三次元積層構造の作製
6.5 光(UV)ナノインプリント法
6.6 ローラーナノインプリント方式
6.7 まとめ
7. 大面積マスク成長技術松本祐司
7.1 はじめに
7.2 マスクの作製
7.3 マスクアライメント
7.4 成膜
7.5 面蒸発源
7.6 マスクパターニングの課題
第5章 エレクトロニクス用機能性フィルムの開発
1. プラスチックフィルムへのガスバリア膜の形成技術と要求性能
1.1 はじめに
1.2 ガスバリア性能と応用分野
1.3 ガスバリア膜の低温形成技術
1.3.1 真空を利用した薄膜形成法と特徴
1.3.2 バリアフィルム作製装置と形成例
1.4 FPD用ガスバリアフィルム
1.4.1 プラスチックLCD用バリアフィルム
1.4.2 有機EL用ガスバリアフィルム
1.5 ガスバリア膜の性能評価
1.6 今後の展望
2. 透明導電性フィルム
2.1 はじめに
2.2 透明導電膜材料の薄膜作製法
2.2.1 透明導電膜材料
2.2.2 透明伝導膜作製方法
2.3 低温プロセスによる透明導電薄膜作製例と諸特性
2.3.1 低電圧化マグネトロンスパッタ法による透明導電薄膜の作製例
2.3.2 ITO/Ag合金/ITO積層スパッタ膜の形成による低抵抗化
2.3.3 イオンアシスト蒸着法による透明導電膜
2.3.4 低エネルギーイオンプレーティングによる透明導電膜
2.3.5 パルスレーザーディポジション(PLD)法による透明導電膜
2.3.6 低温プロセスによるITO薄膜の比較
2.4 今後の課題とまとめ
3. プラスチックフィルムへの高性能ARコート技術の現状と応用例
3.1 はじめに
3.2 反射防止法
3.3 光学薄膜作製方法と膜材料
3.4 ARコート技術の適用例
3.4.1 CRT用反射防止膜
3.4.2 LCD用反射防止膜
3.4.3 PDP用反射防止膜
3.5 まとめめ
4. 液晶ディスプレイ用機能性光学フィルム吉見裕之
4.1 はじめに
4.2 LCDの表示性能向上
4.3 高輝度化のための機能性光学フィルム
4.3.1 偏光板
4.3.2 反射型偏光板
4.4 高コントラスト化のための機能性光学フィルム
4.4.1 偏光板の表面処理
4.4.2 広視野角化と正面コントラスト
4.5 広視野角化のための機能性光学フィルム
4.5.1 位相差フィルム
4.6 色再現性向上のために
4.7 表示均一性向上のために
4.8 おわりに
5 フィルム電極を用いたガスセンサー
5.1 緒言
5.2 定電位電解式センサー開発の経緯
5.2.1 定電位電解式センサーの原理・構造
5.3 環境モニタリングNO2センサー
5.3.1 実験方法
5.3.2 実験結果
5.4 結言
6. フレキシブル回路板
6.1 はじめに
6.2 構造と製造法
6.2.1 スパッタ・めっき法
6.2.2 キャスティング法
6.2.3 ラミネート法
6.3 現在の課題
6.3.1 高精細化
6.3.2 高周波信号伝送
6.3.3 耐屈曲性
6.4 電解銅箔の製造法
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