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大容量リチウムイオン電池/大型/リチウムイオン/製造/コスト/規格/標準化/原材料/部材/Liイオン/EV/定置型/電気自動車/設備/原価/市場/安全性/試験
刊行にあたって
リチウムイオン電池の用途はモバイル用から車載用、そして定置型蓄電とその裾野を拡大している。1991年にソニーが世界に先駆けて実用化したリチウムイオン電池は、1980年代の旭化成・吉野彰氏の原理確立に端を発し、正に日本発の発明、日本発の量産と電池産業に大きなイノベーションをもたらした。
2000年代中盤までリチウムイオン電池を中核に揺るぎない地位を築いていた日本の電池産業であるが、以降、サムスンSDIやLG化学の躍進によって日本の世界シェアに陰りが見えることとなり、2010年第3四半期には世界シェアトップを維持していた三洋電機もサムスンSDIにトップの座を明け渡した。現在はオール韓国がオール日本のシェアを超えている。
一方、車載用は日本の自動車メーカーが電動化で世界をリードしている分、日本の電池業界が力強さを発揮している。しかし、この分野でも韓国勢が海外自動車メーカーと供給契約を交わしてビジネスを始めていることからも安閑としてはいられない。
定置用蓄電用途では各電池メーカーが車載用電池を蓄電用にシステム化するビジネスが主流になっているが、市場としては日本の住宅用が先行している。今後は太陽電池や風力発電の蓄電用としての期待も大きく、ますますリチウムイオン電池の市場が拡大していく様相である。
このような情勢を踏まえて本企画では、大容量リチウムイオン電池に特化して材料技術、コスト解析、規格と標準化、安全性にまつわる視点で整理した。今後の電池産業界において競争力を高めていくためには、性能開発、安全性確保、コスト低減が重要であるが、それに結びつけるためには、材料技術の研究開発、低コスト材料の実用化、安全性評価技術の確立など、多くのアプローチすべきことが残されている。
本書では長年、リチウムイオン電池のビジネスを担ってきた泉化研の菅原氏に、その全体像をまとめていただいた。製造プロセス、原材料コスト、製造コスト、規格および標準化、安全性試験とその規格、市場展望に関して体系的に記されている。
また、大容量リチウムイオン定置型電池については、市場動向の観点から野村総合研究所のエキスパートに執筆いただいた。
日本の電池業界が更なる強みを発揮する意味からも、材料とプロセス、研究から製造まで、性能とコスト等、あらゆる観点から見究める機会として本書は役立つものと確信する。
2013年10月
名古屋大学グリーンモビリティ連携研究センター客員教授兼非常勤講師
エスペック㈱ エグゼクティブアドバイザー, 前・サムスンSDI 常務
佐藤 登
本書は2013年に『大容量Liイオン電池の製造・コスト解析と安全性』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
菅原秀一 泉化研㈱
風間智英 ㈱野村総合研究所
藤田誠人 ㈱野村総合研究所
執筆者の所属表記は、2013年当時のものを使用しております。
目次 + クリックで目次を表示
1 はじめに
2 EV法規発効から車載用二次電池開発の歴史を振り返る
3 EVからHEVへのシフトと電池開発
4 自動車各社の開発状況
5 車載用電池の信頼性確保と安全性の確立
第2章 原材料,部材の概要と生産総量(MWh)との関係
1 総括表と動向(1995年~2020年)
1.1 総括表の設定と背景
1.2 原材料別の特徴(1)
1.3 原材料別の特徴(2)
1.4 その他の原材料
1.5 集電箔
1.6 外装材と端子類
2 正負極材と導電剤
2.1 正負極材の投入量
2.2 正極と負極のバランス
2.3 導電剤
3 電解液と電解質
4 セパレータ
5 バインダー
6 集電箔と外装材
6.1 集電箔
6.2 ラミネート外装材
7 原材料,部材の“10年モデル”
7.1 1,000~10,000 MWh/年と材料の所用量
7.2 モデルとしてのHV車
7.3 累積販売台数
8 文献・資料一覧
第3章 大容量Liイオンセルの製造プロセス――前工程,中間工程および後工程――
1 製造業務の流れと区分
1.1 前半と後半,大きく異なる工場環境
1.2 原料から製品まで
1.3 業界としての問題解決
1.4 セルメーカーの二面性
1.5 セル内蔵する化学物質
1.6 化学物質規制とトレーサビリティー
1.7 消防法危険物としての電解液
1.8 セルの集積と電解液の数量
1.9 海外の規制との関連
1.10 REACHの“成形品”
1.11 製造以外の業務
2 製造品目の設定
2.1 製造へのセルの諸元
2.2 Ah容量と関連事項
2.3 Ah容量設定(1)電極板の欠陥
2.4 Ah容量設定(2)不良品対応
2.5 量産段階での問題解決
2.6 Ah容量の測定方法
2.7 市場製品におけるAh表示
2.8 Ah容量の製品事例(1)
2.9 Ah容量の製品事例(2)
2.10 Ah容量の製品事例(3)
2.11 自動車用のAh容量の設定
2.12 定置型の蓄電池の容量
3 製造プロセス全体の流れと生産速度
3.1 全工程の流れ
3.2 製造設備と付帯設備
3.3 原料,部材と製造装置の関係
3.4 工程の操業パターン
3.5 セルのロット管理
3.6 一貫生産と区分・分業スタイル
3.7 区分生産の活用(1)電極板購入
3.8 区分生産の活用(2)乾セル輸出
4 前工程(粉体加工とスラリー調製)
4.1 混合,混練の諸問題
4.2 導電性賦与
4.3 関連(1)導電助剤とバインダーの“機能阻害”
4.4 関連(2)導電剤の不可逆容量
4.5 関連(3)粒子のモルフォロジー
4.6 メカノケミカル(1)分散と混合
4.7 メカノケミカル(2)装置
4.8 粉体のスラリー化
4.9 スラリー媒体の影響
4.10 スラリーの脱泡
4.11 まとめ,混練から粉砕まで
5 中間工程(塗工,乾燥,電極板評価)
5.1 塗工パターンと目付量,充填率
5.1.1 塗工パターン
5.1.2 集電箔と表面
5.1.3 電極板の目付量
5.1.4 電極の断面と厚み
5.1.5 電極板の密度と空隙率
5.2 塗工機と塗工,乾燥過程と塗工速度
5.2.1 塗工機の機構
5.2.2 逐次片面塗工
5.2.3 塗工ヘッド
5.2.4 臨界顔料体積濃度
5.2.5 塗工直後の流れとレベリング
5.2.6 塗工スラリーの媒体
5.2.7 乾燥ステップ
5.2.8 塗工速度と目付量
5.2.9 電極板のアニール
5.3 電極の断面,表面と粒子の結着,接着
5.3.1 模式とイメージ
5.3.2 電極板の表面
5.4 電極板の評価
5.4.1 測定と評価項目
5.4.2 電解液への浸漬試験
5.4.3 セルとしての評価
5.4.4 試作評価のステップ
5.4.5 電極板の試作
6 後工程(プレス,スリット,組立,封止,初充電と検査)
6.1 後工程全体の流れ
6.2 スリットとプレス
6.2.1 スリットとカット
6.2.2 粉落ちとバリ
6.2.3 プレス機のイメージ
6.2.4 プレスの効果(1)
6.2.5 プレスの効果(2)
6.3 セル組立(積層/捲回,電極付,封止)
6.3.1 セルの構造と電極付け
6.3.2 電極板と端子の関係
6.3.3 電極板とセパレータの位置関係
6.3.4 外装材と封止
6.3.5 セルの組立装置(1)
6.3.6 セルの組立装置(2)
6.3.7 端子の接続と溶着
6.3.8 ラミネート外装材の封止
6.3.9 組立セルの最終乾燥
6.3.10 電解液の充填
6.3.11 電解液の取り扱いと安全
6.4 初充電と検査
6.4.1 CC定電流とCV定電圧充電
6.4.2 電流密度と充放電レート
6.4.3 初充電工程における設定とデータ
6.4.4 自己放電量とACR,DCR
6.4.5 生産計画と原材料調達
6.5 類似の蓄電デバイス
6.5.1 リチウムイオンキャパシタ(LIC)とポリマーリチウムイオン
6.5.2 ポリマーリチウムイオン電池
7 製造プロセスの機器とメーカー(転用と新規開発)
7.1 小型と大型の工程機器
7.2 工程機器の海外移転と影響
7.3 この分野への新規参入
7.4 機器ごとの特徴
7.5 付帯設備
7.6 転用と新規開発
第4章 大容量Liイオン電池の原材料コスト
1 タイプ別のセル設計と原材料の投入量および工程ロス
1.1 セルのタイプと原材料
1.2 原材料コスト要因
1.3 標準1Ahセルの体積と重量
1.4 1~100Ahセルの重量
1.5 原材料のコスト例
1.6 工程ロスと影響
1.7 不良ロスの原因
1.8 正常なロスの範囲
1.9 工程ロスの合計
1.10 工程ロスと産業廃棄物
1.11 正負極材の品質保証項目
2 原材料の構成(1)正極材,負極材および導電剤
2.1 試算の過程
2.2 コストパフォーマンス
2.3 導電剤
3 原材料の構成(2)電解液,セパレータ,集電箔,バインダー,外装材
3.1 電解液
3.2 セパレータ
3.3 銅とアルミ集電箔
3.4 ラミネート外装材
3.5 金属函体の外装
4 原材料の試算単価レベルの設定
4.1 単価の設定とコスト試算
4.2 高価格レベルの正極材
4.3 負極材のコスト試算
5 正・負極材のコストレベル
5.1 まとめ,正極+負極のコスト
5.2 EV電池に換算した材料コスト
第5章 大容量Liイオン電池の製造コスト,設備投資と諸費用
1 コストの意味とコスト試算のベース
1.1 二次電池とコスト(容器と中身)
1.1.1 容器と中身
1.1.2 小型,中型のセル
1.1.3 自動車における燃費
1.1.4 系統電力における発電コスト
1.1.5 蓄電コスト
1.2 仮想工場の生産品目の設定とスケール
1.2.1 30Ahセルを100万個/年
1.2.2 市販車のkWh容量との対比
1.2.3 リチウムエナジージャパン㈱LEJの実例
1.2.4 セルの外装形式
2 本体設備
2.1 全体の問題点
2.2 本体製造設備
2.3 設備投資の総額
2.4 設備投資の参考事例
3 付帯設備
3.1 付帯設備の運転コスト
3.2 試験機器と測定
3.3 充放電装置の回生
4 セルの製造原価とコスト構成(原材料,設備償却,労務,用役ほか)
4.1 製造原価の試算
4.2 原材料コストの比率
5 販売価格と利益率
5.1 販売価格の想定
5.2 粗利で見た採算性
5.3 10年後の予測
6 コストダウンの可能性とシミュレーション
6.1 原材料費の影響
6.2 別の試算とシミュレーション
第6章 大容量Liイオン電池の規格と標準化
1 規格の定める内容と諸規格のマップ
1.1 規格の内容
1.2 規格などの拘束力
1.3 規格の対象と内容(1)
1.4 規格の対象と内容(2)
1.5 規格のマップ
1.6 自動車関連
1.7 自動車独自の問題
1.8 化学物質など広範囲の問題
1.9 輸送問題
1.10 試験コスト
2 充放電特性などの測定規格と実施条件
2.1 試験の性格,正常と破壊
2.2 規格などの存在
2.3 付加機器類のコスト
2.4 性能要求事項
2.5 単電池への要求事項(1)
2.6 単電池への要求事項(2)
2.7 単電池への要求事項(3)
2.8 充放電サイクル耐久性
2.9 性能要求事項の解説
3 規格の役割と効果
3.1 規格の役目と効果
3.2 単電池(セル)の規格
3.3 単電池の規格要求事項
3.4 組電池における規格要求事項
4 EU電池指令および海外の動向と国内の対応
4.1 EU指令などとの関連
4.2 日本国内の対応
4.3 電池への表示(マーキング)
5 規格における電圧,電流,充放電,充電率,サイクル特性(技術資料)
第7章 大容量Liイオン電池の安全性試験に関する規格
1 諸規格の一覧―電気的試験,機械的試験ほか―
1.1 安全性試験規格の一覧
1.2 アジアの安全性試験規格
1.3 安全性に関する経緯
1.4 ガイドラインとJISの制定
1.5 電気用品安全法
1.6 最新のJIS規格
1.7 試験条件などで一律に決め難い点
1.8 安全性規格の活用
1.9 電気的な安全性試験
1.10 外部短絡,内部短絡
1.11 過充電試験
1.12 セル,モジュール,ユニット
1.13 機械的・熱的な試験
1.14 セルの形状などの影響
2 製品の安全認証システムへの移行
2.1 90年代のISO化からの流れ
2.2 安全性の表示
2.3 TUVによる事例
3 JIS,電気用品安全法および諸規程
3.1 JIS C 8715-2安全性試験の内容と特徴(1)
3.1.1 JIS制定の経緯
3.1.2 産業用リチウムイオン電池への適用
3.2 JIS C 8715-2安全性試験の内容と特徴(2)
3.2.1 要求事項とは
3.2.2 試験の実施数
3.2.3 試験結果の扱い
3.3 JIS C 8715-2安全性試験の内容と特徴(3)
3.3.1 試験前の電池の状態
3.3.2 JIS C 8715-1,2における充電
3.3.3 機能安全性試験における充電停止
3.3.4 試験の求める内容
3.3.5 電池の特性のバラツキ
3.4 関連する技術情報
3.5 電気用品安全性法
4 UL,UNの安全性試験規格と運用
4.1 ULの安全性試験規格
4.2 ULのEVへの拡大
4.3 UN国連危険物輸送基準勧告
4.4 UNの安全試験
4.5 UNクラス9の運用
5 その他の安全性試験規格とハザードレベル
5.1 高速道路などでのEV規制
5.2 中国のEV用安全性規格と釘刺試験
5.3 釘刺試験の実例
5.4 ハザードとリスク
5.5 セルのハザードレベル
6 安全性に関する原材料とセル設計の対応(資料)
第8章 定置用Liイオン蓄電池市場の動向と展望
1 定置用Liイオン蓄電池市場が注目される背景
2 定置用Liイオン蓄電池の市場展望
3 定置用Liイオン蓄電池市場の種類と特徴
3.1 「A;既存市場」
3.2 「B;新規市場」
4 定置用市場の変化
4.1 系統安定化のため発電所/送電網へ設置(B-1)
4.2 送電網への投資延期を目的として配電所へ設置(B-2)
4.3 非常時バックアップや電気代削減のための住宅・建物など電力需要家へ設置(B-3)
5 定置用Liイオン蓄電池市場の動向と予測
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