キーワード:
化学構造/シリコーン/シラン/反応メカニズム/加水分解・重縮合反応/インテグラルブレンド法/反応に影響する諸因子/使用量・使用方法/表面処理/分析・評価/密着性解析/ゴム混練物/フィラー/濡れ性・付着制御/微粒子分散/ナノコンポジット/エポキシ樹脂/ナノインプリント/シリカ複合化/透明樹脂/セルロース繊維/細胞接着制御技術/歯科材料/文化財保存修復/シラノール/長鎖スペーサー型シランカップリング剤
刊行にあたって
私は,4400年前の古代エジプトの遺跡保存修復プロジェクトに参加していますが,多くの遺跡で目にする日干しレンガは,粘土にわらの繊維片を加えた複合材料の先駆けといつも感慨深く眺めています。時代が下ってガラス繊維強化複合材料でシランカップリング剤による界面の接着が検討され,1980年代にはケースウェスタンリザーブ大学の石田初男先生らのグループにより,界面におけるシランカップリング剤の反応や機能発現メカニズムについて,学問的な研究が精力的に行われました。私のシランカップリング剤との出会いもこの頃,企業での最初の仕事「半導体封止材料の開発」でした。エポキシ樹脂とシリカ粒子が主成分です。忘れられない思い出があります。シランカップリング剤は他の材料と一括で混合する「インテグラルブレンド法」で加えていましたので,当然予めシリカ粒子を表面処理して添加した方が高性能になると検討しましたが,インテグラルブレンド法の全勝でした。シランカップリング剤は訳の分らない,しかし奥の深い材料と感じました。私が大学に移って,この理由を学生さんが解明してくれたのは,約30年も後でした。
そして私の「あの頃」から現在へ,シランカップリング剤の化学は飛躍的な発展を遂げ,界面での姿が「見える」ようになってきました。分析機器の進歩と,研究者の解析技術の賜物です。様々な応用分野への展開も広がり,新規材料の開発にシランカップリング剤は不可欠になっています。基礎的なシランカップリング剤の化学と応用展開の進歩は,両者の相乗効果によるものです。応用分野の広がりには,新規な分子構造のオーダーメイドの合成も大きく寄与しており,さらなる高機能分子の研究も続いています。以上の連携が,現状,実にうまく回っていると痛感します。
このような最新のシランカップリング剤の化学の発展と応用展開の現状のすべてが分かる書籍があれば…そのような思いから本書籍は企画されました。そして,現時点での最新技術を知ることから,さらなる新規な技術や製品が生まれることを祈ってやみません。
2020年7月
大阪工業大学 中村吉伸
著者一覧
中村吉伸 大阪工業大学 中北一誠 ラテリアル事務所 平井智康 大阪工業大学 藤井秀司 大阪工業大学 佐藤正秀 宇都宮大学 山田保治 FAMテクノリサーチ 岩崎富生 ㈱日立製作所 渡邉詩織 ㈱神戸製鋼所 西田美佳 ㈱神戸製鋼所 三浦穂高 ㈱神戸製鋼所 平野 寛 (地独)大阪産業技術研究所 河合 晃 長岡技術科学大学 田淵 穣 DIC㈱ | 光石一太 倉敷ファッションセンター㈱ 平井義彦 大阪府立大学 伊掛浩輝 日本大学 松川公洋 京都工芸繊維大学 城 幸弘 ㈱大阪ソーダ 吉沢 武 ダウ・東レ㈱ 西野 孝 神戸大学 中路 正 富山大学 山田文一郎 YAMAKIN㈱ 松井敏也 筑波大学 海野雅史 群馬大学 山田哲郎 信越化学工業㈱ |
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1 シリコーンの基礎
2 シランの基礎
第2章 反応メカニズム
1 加水分解・重縮合反応
1.1 はじめに
1.2 液相での重縮合反応の影響
1.3 加水分解・重縮合反応に影響する因子
1.4 重縮合反応のコントロールの効果
1.5 無機粒子の種類の影響
1.6 インテグラルブレンドの場合
1.7 おわりに
2 反応に影響する諸因子
2.1 はじめに
2.2 シランカップリング反応に影響を及ぼす因子
2.2.1 基板前処理(洗浄および親水化)
2.2.2 加水分解・重縮合反応に及ぼすpHの影響
2.2.3 溶媒,反応物濃度の影響
2.2.4 反応環境(気相・液相)の影響
2.3 均質な膜を形成させるシランカップリング反応条件
第3章 効果的な使用量と使用方法
1 はじめに
2 シランカップリング剤の種類と構造
3 シランカップリング剤の使用量
3.1 無機材料の比表面積や水酸基数,有機材料の官能基数が不明の時
3.2 有機材料の官能基数が明らかな時
3.3 無機材料の水酸基数が明らかな時
3.4 無機材料の表面積(比表面積)が明らかな時
3.5 無機材料の粒径が明らかな時
4 シランカップリング剤の反応
4.1 有機材料との反応
4.2 無機材料との反応
5 シランカップリング剤による無機材料の表面処理
5.1 インテグラルブレンド法
5.2 プライマー法
5.3 前処理法(表面修飾法)
5.3.1 乾式(固相)法による表面処理
5.3.2 湿式(液相)法による表面処理
5.3.3 気相法による表面処理
6 おわりに
第4章 分析・評価
1 シランカップリング剤界面の密着性解析
1.1 材料選定および材料設計のための密着性解析の重要性
1.2 材料設計における高効率化の課題
1.3 カップリング剤との密着強度に優れた金属箔を設計する解析モデル
1.4 解析方法
1.4.1 分子動力学法による密着強度の解析手法
1.4.2 タグチメソッドによる直交表を用いた感度解析の方法
1.5 解析結果および考察
1.5.1 密着強度の感度についての解析結果
1.5.2 設計指針および結果の考察
1.6 実験との比較
1.7 おわりに
2 ゴム混練物のシランカップリング剤反応率評価手法
2.1 はじめに
2.2 シリカ配合ゴムの混練プロセスとシランカップリング剤反応機構
2.2.1 シリカの混練プロセス
2.2.2 シランカップリング剤の反応機構
2.2.3 混練プロセス中のシランカップリング剤反応
2.3 従来のシランカップリング剤の反応状態評価手法
2.4 ゴム混練物のシランカップリング剤反応率評価手法
2.4.1 測定の原理
2.4.2 評価方法
2.5 測定例
2.5.1 混練時間やシランカップリング剤添加量とシランカップリング剤反応率との関係
2.5.2 他物性との相関
2.6 結言
3 熱分解GCMSによるシランカップリング剤修飾粒子の反応状態評価
3.1 はじめに
3.2 シランカップリング剤の反応
3.3 フィラー表面のシランカップリング剤による修飾
3.4 シランカップリング剤修飾したフィラーの分析法
3.5 シランカップリング剤修飾粒子の反応状態評価
3.5.1 TGA分析による修飾量の推定
3.5.2 熱分解ガスクロマトグラフィー分析
3.5.3 修飾粒子の特性
3.6 おわりに
第5章 用途展開
1 シランカップリング剤による濡れ性・付着制御
1.1 電子産業におけるシランカップリング処理
1.2 濡れ性によるカップリング処理表面の評価
1.3 プロセス条件の最適化
1.4 処理装置の構成および最適化
1.5 HMDS処理による基板上の付着性コントロール
1.6 おわりに
2 ナノ粒子分散におけるシランカップリング剤の効果的使用法
2.1 はじめに
2.2 シランカップリング剤
2.3 シランカップリング剤を用いた表面化学修飾
2.4 シランカップリング剤のハンドリング
2.4.1 加水分解触媒およびpH
2.4.2 処理温度
2.4.3 撹拌速度(混合効率)・処理時間
2.4.4 種類および添加量
2.5 ナノコンポジットの作製
2.5.1 ナノコンポジット塗料の作製
2.5.2 溶融混練ナノコンポジットの作製
2.6 おわりに
3 シランカップリング剤による微粒子の分散性向上
3.1 はじめに
3.2 微粒子の表面処理技術
3.2.1 シラン剤
3.2.2 チタネート剤
3.2.3 その他のカップリング剤
3.3 微粒子形状が複合材料の特性に及ぼす影響
3.4 微粒子の表面処理手法
3.4.1 湿式加熱法
3.4.2 湿式濾過法,湿式粉砕法
3.4.3 乾式攪拌法
3.4.4 インテグラルブレンド法
3.4.5 スプレードライ法
3.5 微粒子と樹脂の混練分散技術
3.6 多変量解析を用いたPP系複合材料の耐衝撃性評価
4 エポキシ樹脂への応用
4.1 はじめに
4.2 吸水率低減の効果
4.3 力学特性向上の効果
4.4 おわりに
5 ナノインプリント用モールドへの表面処理
5.1 ナノインプリントにおける樹脂付着
5.2 シランカップリング剤によるモールド表面処理
5.3 表面エネルギーの制御
5.4 離型層の表面エネルギーと付着力
5.5 離型層の機械的耐久性
6 シリカ複合化による透明樹脂の高機能化とガラス代替樹脂への応用
6.1 はじめに
6.2 シリカ複合化による透明樹脂の高機能化
6.2.1 透明樹脂-シリカ複合材料の材料設計
6.2.2 シリカの複合化方法
6.2.3 複合材料の透明性
6.3 ガラス代替樹脂への応用
6.4 おわりに
7 ポリイミド/シリカハイブリッド材料の透明性とシリカナノ分散化技術
7.1 はじめに
7.2 ポリイミド/シリカハイブリッド材料の作製
7.2.1 本研究で使用する試薬
7.2.2 ポリアミド酸プレポリマーの合成
7.2.3 トリメトキシシリル修飾ポリアミド酸オリゴマーの合成
7.2.4 ポリイミド/シリカハイブリッドフィルムの作製
7.3 物性測定装置および測定条件
7.3.1 ハイブリッドのイミド化率と熱分解開始温度
7.3.2 シリカナノ分散と光学特性
7.3.3 マトリックス中へのシリカ分散性評価
7.4 ポリイミド/シリカハイブリッド材料の物性測定
7.4.1 ハイブリッドフィルムのイミド化率
7.4.2 ハイブリッドの熱分解開始温度
7.4.3 シリカナノ分散と光学特性
7.4.4 マトリックス中へのシリカ分散性評価
7.5 終わりに
8 金属酸化物ナノ粒子分散体の調製と有機無機ハイブリッド透明材料への応用
8.1 はじめに
8.2 シランカップリング剤によるジルコニアナノ粒子分散体の作製と問題点
8.3 2段階法によるジルコニアナノ粒子分散体の調製
8.4 デュアルサイト型シランカップリング剤によるジルコニアナノ粒子分散体の調製
8.4.1 ビスフェニルフルオレン系デュアルサイト型シランカップリング剤とその適用
8.4.2 DAP系デュアルサイト型シランカップリング剤とその適用
8.5 おわりに
9 ゴム用シランカップリング剤「カブラスTM」とそれを用いた表面処理シリカ
9.1 はじめに
9.2 ゴム用シランカップリング剤
9.2.1 フィラーとの反応
9.2.2 低燃費タイヤへの応用
9.3 カブラスTMの製造法とその特性
9.4 カブラスTMのゴム物性
9.4.1 混練温度の影響
9.4.2 CAと他の配合薬剤
9.4.3 配合手順の影響
9.4.4 各種ゴムへの応用
9.5 カブラスTM関連商品
9.5.1 表面処理シリカ カブラスTM NSW-134
9.5.2 シリカバッチ カブラスTM SW-504
9.6 おわりに
10 シラン・シリコーンと樹脂用添加剤
10.1 はじめに
10.2 樹脂とシランカップリング剤の組み合わせ
10.2.1 非反応性樹脂に適用する場合
10.2.2 反応性樹脂に適用する場合
10.2.3 フィラー
10.3 代表的シランカップリング剤の用途例
10.3.1 アミン系シランカップリング剤
10.3.2 エポキシ系シランカップリング剤
10.3.3 含硫黄シランカップリング剤
10.3.4 ビニルおよびメタ(アクリル)系シランカップリング剤
10.3.5 その他シラン
10.4 シリコーンポリマー
10.5 おわりに
11 セルロース繊維を利用した複合材料におけるシランカップリング剤の効果
11.1 はじめに
11.2 シランカップリング剤によるセルロース系複合材料界面の補強
11.3 全セルロースナノ複合材料と表面処理剤としてのシランカップリング剤処理効果
11.4 おわりに
12 シランカップリングによるポリマー表面修飾と細胞接着制御技術
12.1 緒言
12.2 シランカップリング基を有する双性イオン型高分子を用いた生体物質非応答性表面の構築
12.2.1 シランカップリング基を有する双性イオン型ポリマーの合成
12.2.2 S-PCMBxおよびTMS-PCMBによりコーティングした表面の分析
12.2.3 各種ポリマー修飾表面上への生体物質(タンパク質および線維芽細胞)の吸着・接着挙動
12.3 PCMBの表面修飾を応用したチタン合金へのアパタイト結晶の高密度被覆
12.3.1 チタン合金への双性イオン型ポリマーコーティング
12.3.2 ポリマー修飾チタン合金表面の特性評価
12.3.3 チタン合金表面の生体物質非応答性およびヒドロキシアパタイト沈着促進
12.4 結言
13 歯科材料のシランカップリング
13.1 はじめに
13.2 コンポジットレジンのフィラーカップリング
13.3 金属接着のプライマー
13.4 セラミック接着のプライマー
13.5 トライボケミストリーによるシリカコーティングとシランカップリング
13.6 おわりに
14 文化財保存修復用のシランカップリング剤
14.1 文化財の保存修理
14.2 石造文化財の保存修復
14.3 文化財への事例
14.3.1 カンボジアバイヨン寺院の事例
14.3.2 いちき串木野市の地蔵菩薩の事例
14 .3.3 狛江市猪方小川塚古墳整備の事例
14.4 これからの文化財シランカップリング剤にむけて
第6章 今後の展開
1 次世代シランカップリング剤
1.1 はじめに
1.2 シラノール
1.2.1 シラントリオール
1.2.2 ジシロキサンテトラオール
1.2.3 環状シラノール
1.2.4 かご型シラノール
1.2.5 ヤヌスキューブ
1.2.6 はしご型シラノール
1.3 ハロシラン
1.4 おわりに
2 新規シランカップリング剤の開発と応用事例
2.1 はじめに
2.2 長鎖スペーサー型シランカップリング剤の種類と構造
2.3 各種長鎖スペーサー型シランカップリング剤の応用データ
2.3.1 ビニル基含有長鎖シランカップリング剤(KBM-1083)の応用データ
2.3.2 エポキシ基含有長鎖シランカップリング剤(KBM-4803)の応用データ
2.3.3 メタクリル基含有長鎖シランカップリング剤(KBM-5803)の応用データ
2.3.4 アミノ基含有長鎖シランカップリング剤(KBM-6803)の応用データ
2.4 おわりに
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