キーワード:
溶射/成膜/非溶融固相粒子/コールド/ウォームスプレー基本原理/プロセス/固体粒子積層メカニズム
刊行にあたって
昨今のナノテクノロジーの恩恵を受け、固有機能の発現可能なナノ組織材料など、各種機能性材料の開発が盛んである。また、サステイナブル人類社会の構築へと繋がる材料創製技術や、温暖化防止に向けた輸送機器軽量化のための各種複合材料開発の進展が著しい。このような新しい材料の開発は、その加工を可能とする新しい加工法を必要とすることから、同時に加工法の進展をももたらす。
一方、膜創成の基本構成単位をμmサイズの粉末粒子とし、高い成膜速度や厚膜形成能を特長とする表面技術分野が存在する。この技術は特に、数μm以上の厚膜の創成を守備範囲とし、原子を基本構成単位とし数μm以下の薄膜を創成するCVD法やPVD法などとは異なる、独自の膜創成領域を形成する。このような厚膜創成における既存技術の代表格が「溶射法」であり、各種産業分野における基幹技術として重要な役割を担っている。
ここで、次々と開発される新規機能性材料の厚膜創成を考える場合に、既存の溶射法における粒子の溶融は、設計調質されたナノ組織や材料の有する機能性を劣化、消失させる可能性が極めて高い。そこで、その克服を目指し本技術分野では、非溶融固相粒子の積層による新しい膜創成の方向性が模索されつつある。その代表が、コールドスプレー法、ウォームスプレー法およびエアロゾルデポジション法である。特に、我が国オリジナルとも言えるウォームスプレー法および非加熱常温でセラミックス材料の高密度成膜を可能とするエアロゾルデポジション法は、世界に誇る技術として頼もしい存在である。
溶射法を含むこれら新旧プロセスは、総じて膜創成の基本構成単位をμmサイズの粉末粒子とする点で共通であることから、本書では、これらプロセスの全体を俯瞰し、粒子積層による膜創成のための新コーティング技術の学理解明、および技術確立に向けた取り組みの現状、課題、将来に向けた展望を纏めた。
本書の発刊に向け、ご多忙の中、執筆をお引受けくださった著者の皆様、日夜を分かたず編集作業に尽力された榊、小川、片野田先生、ならびに本書の企画立案から最終の取纏めに当たられたシーエムシー出版社池田様に敬意を表すとともに、ここに改めて厚く御礼申し上げます。
2013年10月
豊橋技術科学大学 福本昌宏
本書は2013年に『未来を拓く粒子積層新コーティング技術 ―コールド/ウォームスプレー,エアロゾルデポジションのすべて―』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
福本昌宏 豊橋技術科学大学 榊 和彦 信州大学 小川和洋 東北大学 片野田 洋 鹿児島大学 黒田聖治 (独)物質・材料研究機構 明渡 純 (独)産業技術総合研究所 渡邊 誠 (独)物質・材料研究機構 和田哲義 スルザーメテコジャパン㈱ 鬼澤光一郎 Sulzer Metco AG(Switzerland)CSC Europe Mechanical Engineer Spray 市川裕士 東北大学 | 佐藤和人 ㈱フジミインコーポレーテッド 山田基宏 豊橋技術科学大学 深沼博隆 プラズマ技研工業 桑嶋孝幸 (地独)岩手県工業技術センター 成田 章 スタータック㈱ 大野直行 プラズマ技研工業㈱ 森 正和 龍谷大学 馬場 創 (独)産業技術総合研究所 伊藤義康 トーカロ㈱ 鳩野広典 TOTO㈱ |
執筆者の所属表記は、2013年当時のものを使用しております。
目次 + クリックで目次を表示
第1章 粒子積層新コーティング技術
1 はじめに
1.1 はじめに
1.2 既存溶射プロセスにおける制御化への取り組み
1.2.1 粒子偏平挙動における特異点およびプロセス制御指針としての3次元遷移曲面
1.2.2 偏平形態遷移機構の本質解明
1.3 非溶融固相粒子の積層による新規膜創成プロセス
1.3.1 コールドスプレー&ウォームスプレー法
1.3.2 エアロゾルデポジション法
1.3.3 コールドスプレーによるセラミックス皮膜の創製
1.4 まとめ
2 コールドスプレー法の概要
2.1 はじめに
2.2 コールドスプレーとは
2.2.1 コールドスプレー法の概略
2.2.2 コールドスプレー装置の概要
2.2.3 コールドスプレーの成膜の概要と特徴
2.3 コールドスプレーの開発の歴史
3 ウォームスプレー法の概要
3.1 ウォームスプレー法開発の経緯
3.1.1 ウォームスプレー法の作動原理
3.1.2 皮膜組織の代表例(チタン)と他の材料への適用実績
4 エアロゾルデポジション法の概要
4.1 はじめに
4.2 エアロゾルデポジション法
4.3 粒子衝突現象を利用した成膜手法の研究開発経緯
4.4 類似成膜技術との関係
4.5 エアロゾルデポジション法・海外動向の現状
5 パウダージェットデポジション法(Powder Jet Deposition:PJD)
【コールドスプレー法,ウォームスプレー法の基礎】
第2章 コールドスプレー法,ウォームスプレー法の基本原理と特徴
1 コールドスプレー法の基本原理と特徴(ノズル設計含む)
1.1 コールドスプレー法の基本原理
1.1.1 コールドスプレープロセスの概要
1.1.2 作動ガスの超音速プロセス
1.1.3 粒子の加速・加熱プロセスとノズル形状
1.1.4 粒子の基材との衝突・変形・密着プロセス
1.1.5 粒子の堆積・成膜(粒子間の接合)プロセス
1.2 コールドスプレーの特徴
2 ウォームスプレー法の原理と特徴
2.1 はじめに
2.2 固体金属粒子の衝突現象に及ぼす温度の影響
2.3 ウォームスプレー皮膜組織の特徴
第3章 固体粒子積層のメカニズム
1 ガス流動と粒子飛行挙動
1.1 一次元流れの基礎式
1.2 コールドスプレー法
1.3 ウォームスプレー法
1.3.1 混合室の温度と圧力
1.3.2 溶射ガン内外の流れと粒子挙動の計算
2 単一粒子の衝突・付着機構
2.1 固相粒子の密着メカニズム
2.2 せん断不安定性
2.3 有限要素法による単一粒子の衝突解析
2.4 粒子の堆積と南極問題
3 分子シミュレーションを用いた粒子付着挙動の検討
4 粒子付着に影響する諸因子(粉末形状,粒径,および粒度分布の影響)
4.1 はじめに
4.2 粒子形状および粒径の影響
4.3 粒度分布の影響
5 プロセスの特徴
5.1 はじめに
5.2 プロセスの因子
5.3 プロセスの特徴
5.3.1 プロセスの特徴
5.3.2 皮膜特性
第4章 コーティング材料と形成被膜の特性
1 コーティング材料全般
1.1 はじめに
1.2 金属材料コーティング
1.3 合金材料コーティング
1.4 酸化物材料コーティング
2 皮膜の特徴
2.1 はじめに
2.2 皮膜組織
2.3 機械的特性など
2.4 電気的特性
3 各種材料と皮膜の特徴
3.1 銅および銅合金
3.1.1 銅および銅合金の特性
3.1.2 コールドスプレー法の適用
3.1.3 皮膜特性
3.2 アルミおよびアルミ合金
3.3 鉄鋼材料
3.4 ステンレス鋼
3.5 チタンおよびチタン合金
3.5.1 はじめに
3.5.2 成膜条件と皮膜組織
3.5.3 皮膜特性と応用
3.6 超合金
3.7 MCrAlY
3.8 タンタル
3.9 アモルファス合金,準結晶粒子分散合金
3.9.1 アモルファス合金,準結晶粒子分散合金の特徴
3.9.2 コールドスプレーで作製した準結晶粒子分散アルミニウム合金皮膜
3.10 コールドスプレー法におけるWCサーメットの成膜例
3.10.1 WCサーメット溶射技術の動向
3.10.2 コールドスプレー(CS)法によるWC系サーメット粉末の成膜例
3.11 TiO2
3.12 その他のセラミックス
3.13 複合皮膜
3.13.1 複合皮膜について
3.13.2 複合皮膜の作製方法
4 前処理・後処理の効果
4.1 はじめに
4.2 スプレー前処理
4.2.1 ブラスト処理の効果
4.2.2 基材温度制御の効果
4.3 スプレー後処理
4.3.1 低圧型CSアルミニウム皮膜に対するスプレー後熱処理の効果
4.3.2 高圧型CS Ni基超合金皮膜に対するスプレー後熱処理の効果
4.4 まとめ
第5章 装置
1 はじめに
2 高圧高温型コールドスプレー装置
2.1 プラズマ技研製 PCS-1000コールドスプレーシステム
2.1.1 はじめに
2.1.2 PCS-1000ガンユニット
2.1.3 パウダーフィダー
2.2 Sulzer Metco KINETIKSシリーズ
3 低圧携帯型および低圧音速型コールドスプレー装置
3.1 Kinetic Metallization System
3.2 低圧高温型コールドスプレー装置 ACGS
3.2.1 はじめに
3.2.2 ACGS(Advanced Cold Gas System)
3.2.3 低圧高温型コールドスプレーによる低コスト被膜の生成のポイント
3.2.4 粉末のサイズと粉末供給装置の将来構想
3.2.5 ACGSによる弊社での実績
3.2.6 おわりに
3.3 DYMET
3.3.1 はじめに
3.3.2 DYMET低圧コールドスプレーの原理
3.3.3 DYMET423
3.3.4 DYMET412k
3.3.5 DYMET用低圧コールドスプレーの粉末と被膜の特徴
3.3.6 DYMETコールドスプレー被膜の密度,密着強度
3.3.7 DYMET施工の特徴
3.3.8 適応例
3.3.9 おわりに
4 ウォームスプレー装置
4.1 はじめに
4.2 数値シミュレーションに基づくトーチ設計
4.3 装置の開発・試作
4.4 実測
4.5 まとめ
第6章 課題解決に向けた技術開発と技術の将来展望
1 はじめに
2 プロセスの課題解決に向けた技術開発
2.1 プロセスの課題
2.2 プロセスの課題解決に向けた研究・技術開発の現状
2.2.1 不十分な基礎的な成膜メカニズムの理解と皮膜特性の解明
2.2.2 粒子の状態計測技術とその制御
2.2.3 後処理
3 技術の将来展望
4 おわりに
【エアロゾルデポジション法の基礎】
第7章 AD法の基本原理と特徴
1 研究開発の背景
2 AD法の原理と常温衝撃固化現象
2.1 装置構成
2.2 常温衝撃固化現象によるセラミックスコーティング
2.3 常温衝撃固化された成膜体の微細組織
3 AD法成膜条件の特徴と成膜メカニズム
3.1 基板加熱の影響
3.2 原料粉末の影響
3.3 搬送ガス種と膜の透明化
3.4 粒子流の基板入射角度の影響と表面平滑化
3.5 粒子衝突速度の測定
3.6 粒子飛行,基板衝突のシミュレーション
3.7 常温衝撃固化と成膜メカニズムに関する検討
4 原料粒子の強度評価
4.1 原料粒子圧縮破壊試験装置
4.2 アルミナ粒子の圧縮試験
4.3 粒子強度と粒径の関係
4.4 粒子強度とAD法における成膜性
5 従来薄膜プロセスとの比較
6 膜の電気・機械特性と熱処理による特性回復
7 微細パターニング技術
7.1 マスクデポジション法による微細パターンニング
7.2 リフトオフ法による微細パターンニング
第8章 プロセスの高度化
1 プラズマ援用AD法
1.1 はじめに
1.2 プラズマ援用AD成膜法のシステム
1.3 誘導結合プラズマ援用AD法によるPZT膜の形成
1.4 高速イオンビームおよび直流プラズマ援用AD成膜法によるPZTの形成
1.5 誘導結合型プラズマ援用AD法によるPZTの形成
1.6 まとめ
2 レーザー援用AD法
2.1 はじめに
2.2 学会における圧電膜の研究状況
2.3 エアロゾルデポジション法
2.4 エネルギー援用の必要性
2.5 従来の微粒子を用いた膜形成法とレーザー援用
2.6 レーザーを用いたエネルギー援用の効果
2.7 レーザーアニールしたPZT膜/ステンレス基板の特徴
2.8 インクジェットヘッドへの応用
2.8.1 インクジェットヘッドの開発の重要性
2.8.2 インクジェットヘッドの開発状況
2.8.3 レーザー援用AD法のインクジェットヘッドへの適用
2.9 今後の展開
2.10 まとめ
第9章 装置
1 膜厚制御・表面平坦化プロセス技術
2 インチウエハ用均一成膜の検討
3 ロールツーロールによる大面積成膜
4 オンデマンド・省エネプロセスへの展開
4.1 はじめに
4.2 メタルベースMEMSスキャナーへの展開
4.3 多品種・変量製造システムへの適用に向けて
4.4 まとめと将来展望
【応用】
第10章 コールドスプレー,ウォームスプレーによる成膜の事例
1 ヒートシンク(Heat sink)
2 発電と送変電システム
3 スパッタリングターゲット
3.1 はじめに
3.2 スパッター材料
3.3 ターゲットの再生
4 航空機産業
5 自動車産業
6 薄膜型リチウムイオン電池
6.1 はじめに
6.2 CS法によるシリコン負極の作製方法と評価方法
6.3 CS法によるシリコン負極による銅箔の変形状況
6.4 まとめ
7 その他
第11章 エアロゾルデポジション法の応用展開
1 耐プラズマコーティング製品
1.1 はじめに
1.2 AD法によるイットリアコーティング
1.3 イットリア膜の諸特性
1.4 イットリア膜の耐プラズマ性
1.5 まとめ
2 AD法による各種応用開発
2.1 高絶縁性セラミックス膜としての実用化への試み
2.2 圧電デバイス応用
2.3 高周波デバイス応用
2.4 電気・磁気光学デバイス応用
2.5 ハードコーティングとしての応用
2.6 全固体・薄膜型リチウムイオン電池への応用
2.7 その他エネルギーデバイス応用
2.8 医療部材応用
リチウムイオン二次電池用シリコン系負極材の開発動向
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