キーワード:
プラスチック/軽量化/複合材料/炭素繊維強化プラスチック(CFRP)/ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)/成形技術/セルロースナノファイバー強化プラスチック/エンジニアリングプラスチック/ポリプロピレン/次世代自動車/ポリカーボネート/内外装/樹脂グレージング/ポリアミド/配管/エラストマー/アロイ材/外板/高級感/快適性/加飾技術/PVC(ポリ塩化ビニル)/ニオイ評価/バイオプラスチック/樹脂リサイクル材/マルチマテリアル
刊行にあたって
若い人の自動車離れ、東京モーターショーには以前ほど活気がなくなったとはいえ多くの人を集める。相変わらずかっこいい高性能車には人が群がる。
また日本の産業の中でも継続的に発展を遂げ状況の変化の中では適切に対応してきた。そしてすそ野の広い産業として多くの産業と結びつき、多くの雇用も生み出しているということでは今も、そしてこれからも最も期待できる産業になっている。
しかし、自動車産業は平穏な産業ではない。多くの最新技術を生み出し、高い信頼性技術をもとに、リーズナブルな価格で提供していかなければクルマは陳腐な乗りものとして市場から消えてゆくことになる。今はその技術競争の中の真っただ中にいる。技術的には自動車誕生から130年間、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンはパワートレーンとして進歩してきたが、今その技術ともいよいよ別れなければならない時期が近付いている。人間のおごりか、思うがままに化石燃料を使っての発展の陰に地球温暖化という負の側面が顕在化してきたことでもうガソリンで走る時代ではないというのが流れであろう。
これまでの安定したガソリンエンジンはより早く、より省燃費でと、目指した技術はもう不要なのか、電気によりモーターで走る電動化が今後の主流になってくると考えられており、自動車産業は経験のない大革命時代に入ってきている。自動車会社もビッグ3といわれた会社よりガソリンと別れた電気自動車に特化した新興の会社テスラが会社としての価値を大きく上げた時代である。
この大改革期にプラスチックの位置づけも大きく変化してくるだろうか。
自動車は最初は鉄の塊であった。しかし、車をより快適にということ、複雑な意匠の実現のために作りやすいプラスチックは欠かせない材料になっていった。内装は言うに及ばず、車としてのフロントマスクのバンパー、ラジエータグリルでもプラスチックとなってきた。
さらにプラスチック工業の技術の進展は著しいものがある。航空機で使われて来たCFRPだったり、耐熱性が高いスーパーエンプラだったり、また先端技術として比強度では鉄より高いというようなCNFも新しい素材となりうるのではないかとなると、発展していくためには自動車での用途を常に考えていくようになってきている。
自動車が変わる、プラスチックが進歩する、ということではどのような適用が、あるいは素材側からどんな特徴の材料を提供してくれるのか、多くの専門家の立場から技術をベースに情報を提供いただき、皆様の今後の業務に少しでも参考にしていただければ嬉しく思います。
2020年10月
大庭塾 大庭敏之
著者一覧
影山裕史 金沢工業大学
石川隆司 名古屋大学
長岡 猛 ㈱PPIテクノリサーチ
馬場俊一 サンワトレーディング㈱
内藤公喜 (国研)物質・材料研究機構
吉田 透 ㈱キャップ
高山哲生 山形大学
仙波 健 (地独)京都市産業技術研究所
附木貴行 金沢工業大学
板倉啓太 ㈱プライムポリマー
今泉洋行 三菱エンジニアリングプラスチックス㈱
金井詩門 ㈱クラレ
知野圭介 ENEOS㈱
林 伸治 ディーアイシーコベストロポリマー㈱
三枝一範 ㈱カネカ
有浦芙美 アルケマ㈱
西 一朗 TPEテクノロジー㈱
榎本真久 大洋塩ビ㈱
杉本大介 ㈱MCエバテック
中井隆志 アジレント・テクノロジー㈱
加藤 亨 トヨタ自動車㈱
矢野 徹 近畿大学
白石浩平 近畿大学
三井淳一 ユニチカ㈱
宮内啓行 住友ベークライト㈱
乾 将行 (公財)地球環境産業技術研究機構;グリーンケミカルズ㈱
尾形慎太郎 アルケマ㈱
六田充輝 ダイセル・エボニック㈱
矢野慎吾 セメダイン㈱
目次 + クリックで目次を表示
1 自動車産業の動向
2 自動車に使われるプラスチックの推移
3 温暖化防止への対応と電動化
4 電動化への動きと共通課題
5 プラスチックによる軽量化
6 高級感を追求する内装材
7 今後の方向
第2章 複合材料
1 自動車におけるCFRPの現状と動向
1.1 はじめに
1.2 自動車を取り巻く環境
1.3 自動車用CFRPの必要性
1.4 自動車用CFRPの動向
1.5 自動車用CFRPの課題
1.6 自動車用CFRPの今後(普及のためには)
1.6.1 将来ニーズに対しCFRPの課題を解消
1.6.2 これからの電動車やCASEとコラボする
1.6.3 金属では出せない特徴を活かす
1.6.4 CFRPの本質を整理し,狙うべき自動車構造要素を再考する
1.6.5 CFRPの本質から無駄のない生産方式を再考する
1.6.6 将来モビリティに対しダントツの面白さを提供
1.6.7 他材とのコラボ
1.7 まとめ
2 CFRPを用いた自動車シャシーの開発
2.1 はじめに
2.2 自動車の軽量化を加速する背景
2.3 欧州と我が国での自動車へのCFRP適用事例
2.4 自動車に適用されるCFRP成形技術の展望
2.5 名古屋大学NCCの自動車用CFRTPへの取組み
2.6 まとめ
3 自動車軽量化への取り組み―炭素繊維強化プラスチックコンポジットの最新動向
3.1 はじめに
3.2 自動車(主として乗用車)軽量化の背景
3.2.1 プラスチックコンポジットの採用による軽量化
3.2.2 CF強化プラスチック採用における問題点
3.3 さらなる軽量化対策
3.3.1 炭素繊維の生産状況
3.3.2 炭素繊維(CFRP,CFRTP)の自動車への展開状況
3.3.3 マルチマテリアル化
3.3.4 さらなる軽量化と形状賦形
3.4 海外における最近のCFRP,CFRTPの採用動向
3.4.1 ヨーロッパ
3.4.2 米国
3.4.3 中国
3.4.4 日本
3.5 終わりに
4 連続繊維熱可塑性複合材料の自動車部品への適用
4.1 はじめに
4.2 連続繊維熱可塑性複合材料(CFRTP/GFRTP)
4.3 成形
4.3.1 繊維の動き
4.3.2 成形温度
4.4 ハイブリッド成形
4.5 自動車部品への適用
4.5.1 フロントエンド
4.5.2 ドアモジュール
4.5.3 シートパン
4.5.4 ヒンジ
4.5.5 ブレーキペダル
4.6 今後の課題
5 界面制御型炭素繊維強化複合材料の開発
5.1 はじめに
5.2 材料および実験方法
5.2.1 材料
5.2.2 CNTシート
5.2.3 複合材料での引張試験
5.2.4 複合材料でのせん断試験
5.3 実験結果および考察
5.3.1 複合材料での引張試験
5.3.2 複合材料でのせん断試験
5.4 まとめ
6 TAM成形法によるCFRTPの成形
6.1 はじめに
6.2 CFRTPのプレス成形技術の概要
6.3 通電抵抗加熱金型の原理
6.4 TAM成形システムの構成
6.5 通電抵抗加熱金型の温度予測
6.6 ヒートアンドクール金型による熱プレスの利点
6.6.1 材料を予備加熱する方式
6.6.2 TAM成形法
6.7 TAM成形法によるCFRTPのプレス成形プロセス
6.7.1 急速加熱
6.7.2 型開きと材料投入
6.7.3 成形材料の圧縮と樹脂含浸
6.7.4 急速冷却
6.7.5 型開きと取出し
6.8 TAM成形法で成形できるCFRTP材料
6.9 ランダムコンプレッション成形
6.10 熱可塑性UDテープ
6.11 おわりに
7 ガラス繊維分散熱可塑性プラスチック射出成形品の力学特性
7.1 はじめに
7.2 強さ発現機構
7.2.1 界面はく離により降伏する場合
7.2.2 繊維の引抜けにより降伏する場合
7.2.3 繊維の破断により降伏する場合
7.2.4 繊維の配向と降伏開始応力の関係
7.3 高強度化手法
7.3.1 ポリマーブレンド化による界面相互作用力改善
7.3.2 ナノフィラー分散による界面相互作用力改善
7.4 まとめ
8 セルロースナノファイバー強化樹脂の製造技術・基本特性と自動車部品への応用
8.1 セルロースナノファイバー強化プラスチック製造プロセス―京都プロセスについて
8.2 京都プロセスによるCNF強化ポリプロピレンの作製
8.3 ナノセルロースビークル
8.4 まとめ
9 RTM成形によるCNF製大型自動車部材への挑戦
9.1 はじめに
9.2 RTMによるCNF大型自動車部材の成形
9.3 大型自動車部材の評価
9.3.1 剛性試験評価
9.3.2 燃焼試験
9.3.3 VOC発生量測定
9.4 VaRTMフロア試作による更なるCNF大型成形の可能性
9.5 まとめ
第3章 エンジニアリングプラスチック・エラストマー
1 自動車用ポリプロピレンコンパウンドの高性能化
1.1 はじめに
1.2 PPコンパウンド材料開発の基礎技術
1.2.1 バンパー材開発の歴史
1.2.2 バンパー材開発の要素技術
1.3 次世代自動車ニーズに対応した高性能コンパウンド材開発
1.3.1 更なる軽量化材料
1.3.2 快適性材料の開発
1.4 今後の展望
2 ポリカーボネート樹脂の自動車部品への適用
2.1 はじめに
2.2 自動車外装部品
2.3 自動車照明部品
2.3.1 ヘッドランプレンズ
2.3.2 ライトガイド
2.4 車載ディスプレイ
2.5 プラスチックグレージング
2.6 車載アンテナ
2.7 ADAS部品
2.8 おわりに
3 高耐熱ポリアミドの自動車用材料への応用
3.1 はじめに
3.2 耐熱性ポリアミドの歴史
3.3 耐熱性ポリアミド〈ジェネスタ〉について
3.4 車載電子部品
3.5 燃料配管部品
3.6 構造部品
3.7 新規ポリアミド樹脂New PA
3.8 おわりに
4 低硬度で低圧縮永久歪性を有するオレフィン系エラストマー
4.1 はじめに
4.2 “ジェラティック®”について
4.2.1 特徴
4.2.2 ラインナップ
4.2.3 低圧縮永久歪グレード
4.2.4 加硫ゴムへの配合
4.2.5 性能発現メカニズムについて
4.2.6 成形方法
4.3 用途展開と今後の展望
5 熱可塑性ポリウレタンエラストマー
5.1 はじめに
5.2 TPUの基本特性
5.2.1 製法と構造
5.2.2 TPUの原料と特性
5.2.3 ウレタン基濃度
5.3 成形方法とTPUの用途
5.4 TPUの高機能化
5.4.1 低硬度TPU
5.4.2 高耐熱性TPU
5.4.3 高透湿性TPU
5.4.4 耐光変色性TPU
5.4.5 ノンハロゲン難燃性TPU
5.4.6 非石油由来TPU
5.5 今後の展開
6 ポリカーボネートアロイ材の自動車外装・外板用途への適用
6.1 はじめに
6.2 ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートアロイ材の特徴
6.2.1 特徴と性質
6.2.2 流動性の改良
6.2.3 耐熱性の改良
6.2.4 評価技術
6.3 おわりに
7 ナノ構造を利用した超耐衝撃性アクリル板の樹脂グレージング用途展開
7.1 はじめに
7.2 アルケマのブロックコポリマー重合技術
7.3 ナノ構造アクリル板
7.4 欧州自動車用樹脂グレージング規格(ECE R43)への適合性
7.5 まとめ
第4章 内装用プラスチックの高級化
1 最近の加飾技術の進歩
1.1 はじめに
1.2 インパネの変化
1.3 加飾の種類
1.4 外装
1.5 おわりに
2 PVC(ポリ塩化ビニル)の自動車内装材,座席シートレザーへの展開
2.1 PVC(ポリ塩化ビニル)とは
2.1.1 PVCの産業連関
2.1.2 PVCの化学組成から見た特徴
2.1.3 PVCの製造(重合)方法
2.2 PVCの高耐久化と自動車内装材,座席シートレザーへの応用
2.2.1 可塑剤によるPVCの可塑化による高耐久化
2.2.2 PVC分子鎖構造制御による高耐久化(低温屈曲疲労特性)
3 「ニオイ評価手法の紹介」―車室空間のニオイ低減を目指して―
3.1 なぜニオイの評価が必要か
3.2 ニオイはどこから
3.3 ニオイ分析
3.3.1 ニオイ分析の難しさ
3.3.2 ニオイ分析のワークフロー
3.4 官能評価
3.5 まとめ
第5章 バイオプラスチック・樹脂リサイクル材
1 エコプラスチック,樹脂リサイクル材の自動車への採用―「SAI」における循環型社会構築に向けた環境素材開発―
1.1 はじめに
1.2 ハイブリッド専用セダン「SAI」―時代が求める「小さな高級車」―
1.3 「SAI」とエコプラスチック
1.3.1 開発概要
1.3.2 射出成形部品(スカッフプレート,ツールボックスなど)
1.3.3 ニット繊維部品(天井表皮,ピラー表皮,サンバイザー表皮)
1.3.4 不織布部品(ラゲージトリム表皮など)
1.3.5 ボード部品(ドアトリム基材)
1.3.6 ウレタン部品(フロントシートクッション)
1.3.7 バイオPET(シート表皮,フロアカーペット,パッケージトレイトリム表皮)
1.4 樹脂リサイクル材
1.4.1 材料開発
1.4.2 材料製造工程
1.4.3 環境技術の柱
1.5 エコプラスチック・リサイクル材とお客様・社会
1.6 エコプラスチック・リサイクル材の今後…循環型社会の構築に向けて
1.6.1 行政への期待
1.7 おわりに
2 植物由来のバイオプラスチックの自動車内装材への応用
2.1 はじめに
2.2 結晶化促進剤配合による耐熱性の改善
2.3 軟質化剤と相溶化剤配合による耐衝撃性の改善と加工条件の最適化
2.4 耐加水分解性の改善と成形条件の最適化
2.5 おわりに
3 バイオマス由来スーパーエンプラの開発と自動車部材への展開
3.1 はじめに
3.2 「XecoT」の特徴・バイオマス度
3.3 「XecoT」の物性
3.4 「XecoT」の成形性
3.5 エンジン周辺部材・摺動部材への応用展開
3.6 車載カメラ部材への応用展開
3.7 おわりに
4 植物由来フェノール樹脂
4.1 はじめに
4.2 自動車部品向け用途例
4.2.1 成形材料
4.2.2 摩擦材
4.3 植物由来フェノールの量産化技術
4.3.1 フェノールの植物由来化の重要性
4.3.2 バイオプロセスの生産性向上
4.3.3 濃縮精製プロセスの開発
4.3.4 パイロット設備での実証
4.3.5 植物由来フェノール樹脂の特性
4.4 おわりに
5 ヒマシ油由来ポリアミドの自動車用途への展開
5.1 はじめに
5.2 ポリアミドとは
5.3 ヒマシ油からモノマー
5.4 ヒマシ油由来脂肪族ポリアミド
5.4.1 ポリアミド11
5.4.2 ポリアミド610
5.4.3 ポリアミド1010,ポリアミド1012
5.4.4 ポリアミド410
5.5 ヒマシ油由来半芳香族ポリアミド
5.5.1 PA10T
5.5.2 ポリアミド10T/11
5.6 ヒマシ油由来特殊ポリアミド
5.6.1 植物由来透明ポリアミド
5.6.2 植物由来ポリアミドエラストマー
5.7 おわりに
第6章 マルチマテリアル
1 高機能高分子材料と複合化技術が拓く新しい可能性
1.1 はじめに
1.2 環境/車体の軽量化~粉体塗装技術を利用した,金属とナイロン類の複合化
1.3 環境/配管
1.3.1 プラスチック配管による軽量化と,低燃費化による溶出の問題
1.3.2 EV車における冷却配管のプラスチック化
1.4 快適性/音~プラスチックギアによる静音化
1.5 おわりに
2 自動車軽量化に向けた異種材構造用接着剤の開発
2.1 はじめに
2.2 多相化技術によるエポキシ樹脂系構造用接着剤の設計
2.3 弾性接着剤とは
2.4 異種材構造用接着剤としての適用検討
2.4.1 エポキシ樹脂,シリコーン樹脂の比率を変えることにより相構造を変化させる。
2.4.2 変成シリコーン樹脂の構造を変えることによりマトリックスの物性を変化させる。
2.5 おわりに
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