刊行にあたって
21世紀に入り,一年を経過した。環境の時代の只中にあり,ISO14001に基づく環境マネージメントのもと,環境を配慮した企業のみが存続しえるといっても過言ではない。LCAに優れた製品・商品開発とエミッションを極力抑えることが企業にとって重要な課題ある。5つのRに加えLが今世紀のキーワードといわれる。Reduce(生産,使用量のレデュース),Reuse(可能な限りのリユース),Recycle(資源,エネルギー有効利用のリサイクル),Repair(リペア),Reject(不要不急物や有害物のリジェクト),そしてLonger servise Life(製品のロングサービス化)である。まさに,環境との共生,これを実現するための強力な技術革新が要求される時代である。
本書は色材という括りの中で,色材用ポリマーの章では基本ポリマー,RC用ポリマーに加え,新架橋システムを,また各種色材への応用の章では色材製品群の中から工業用途領域に属する塗料,インキ,接着,粘着剤を取り上げ,それぞれの専門家の方々にご協力を仰ぎ纏め上げたものである。接着・粘着剤は色材の範疇で取り上げることは少ないと思われるが,ポリマーの設計の面から見れば極めて共通する部分が多く,敢えて接着・粘着剤を色材の仲間として取り上げた。
また,近年のナノテクノロジーの進展の中で,合成,構造,物性,成形加工の三つをどのように関連付けて研究開発していくかがキーポイントになるといわれている。色材関連の製品開発においても同様の視点が必要なのではないだろうか。このような観点から本書ではキャラクタリゼーションの章をもうけた。キャラクタリゼーションとしての項目としては,多くを取り上げなかったが,物性評価には欠かせない解析・測定技術を掲載した。
きわめて多忙の中にあったにも拘らず,貴重な時間を費やして執筆にあたった執筆者の方々に感謝の意を表したい。最後に,本書の企画,刊行に際し,終始ご尽力をいただいた?潟Vーエムシー出版,編集部の吉倉広志氏,奈良美千子氏に深く感謝申し上げる。
2002年2月
星埜吉典
著者一覧
石倉慎一 日本ペイント(株) 参与 樹脂センター担当
村上俊夫 ジョンソンポリマー(株) 技術センター テクノロジートランスファーマネージャー
山本庸二郎 ジャパンエポキシレジン(株) 開発研究所 所長
八塚 剛志 東洋紡績(株) 機能材開発研究所 所長
押久保寿夫 日立化成工業(株) 山崎事業所 副事業所長
一戸 省二 信越化学工業(株) シリコーン電子材料技術研究所 第一部開発室 主席研究員
鵜木 正夫 旭硝子(株) 化学品事業本部 化学品開発研究所 加工技術センター 主幹
桐原 修 住化バイエルウレタン(株) 塗料原料・着色材事業本部 技術開発マネージャー
角岡 正弘 大阪府立大学大学院 工学研究科 物質系専攻応用化学分野 教授
大岡 正隆 大日本インキ化学工業(株) 樹脂第一技術本部 樹脂合成開発1グループ グループマネージャー
久保 眞治 日本ペイント(株) 汎用塗料事業本部 建設塗料部 技術マネージャー
柴藤 岸夫 日本油脂BASFコーティングス(株) 工業塗料本部 マネージャー
小島 瞬治 東洋製罐(株) 技術情報室 室長
橋本 康樹 神東塗料(株) 鉄構道路事業本部 防食塗料事業部
地畑 健吉 接着コンサルタント
村田 則夫 NTTアドバンステクノロジ(株) 先端技術事業本部 担当部長
柳原 榮一 神奈川県技術アドバイザー
松苗 薫 (株)ジーシー 研究所
前田 誠治 東洋モートン(株) 埼玉工場 技術部 部長
高野真主実 東洋インキ製造(株) グラビア事業部 統合技術部 技術1部
山岡新太郎 東洋インキ製造(株) オフセット事業部 技術部 部長
高尾 道生 東京インキ(株) 第一生産本部 取締役インキ技術部長
板東 孝晴 マツイカガク(株) 技術開発部 部長
三木 哲郎 帝人(株) 高分子研究センター 構造解析研究所
甘利 武司 千葉大学 工学部 情報画像工学科 教授
大久保信明 セイコーインスツルメンツ(株) 科学機器事業部 応用技術課 主任
中野 辰彦 サーモニコレー・ジャパン(株) マーケティング部 マネージャ
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1 色材用ポリマーの設計と応用
1.1 はじめに
1.2 環境問題への対応
1.3 塗料の概要
1.4 塗料・塗膜の物性評価
2 環境対応と樹脂
2.1 はじめに
2.2 水性塗料用樹脂
2.2.1 水性樹脂の形態
2.2.2 水性樹脂の安定化と架橋反応
2.2.3 水性樹脂の塗料への応用
2.2.4 自動車中上塗り塗料
2.2.5 その他の水性塗料
2.3 粉体塗料用樹脂
2.3.1 粉体塗料用樹脂の種類と架橋反応
2.3.2 開発の動向
2.4 ハイソリッド塗料用樹脂
2.4.1 自動車クリヤー塗料用樹脂
2.4.2 その他のハイソリッド塗料
2.5 塗膜と環境
第2章 色材用ポリマー
1 アクリル系ポリマー
1.1 はじめに
1.2 モノマーの種類
1.3 アクリルの重合方法
1.4 アクリルの特性と応用物性との関連
1.5 水性アクリル系ポリマー
1.5.1 水性アクリルの形態
1.5.2 水溶性アクリル
1.5.3 エマルジョン
1.6 低分子量アクリル
1.7 水性アクリルの架橋
1.8 アクリルと他の樹脂系ハイブリッドシステム
1.9 おわりに
2 エポキシ系ポリマー
2.1 はじめに
2.2 エポキシ樹脂の種類
2.3 硬化剤
2.4 副資材
2.5 エポキシ樹脂の開発動向
3 ポリエステル系ポリマー
3.1 はじめに
3.2 共重合ポリエステルの樹脂設計
3.2.1 製造法および原料
3.2.2 共重合による融点とガラス転移温度の変化
3.3 色材用ポリエステルの機能付与
3.3.1 顔料分散性
3.3.2 ポリエステル反応性の向上
3.4 おわりに
4 アミノ系ポリマー
4.1 はじめに
4.2 アミノ樹脂の製造方法と樹脂特性
4.3 水性塗料用アミノ樹脂
4.4 塗膜物性
4.5 最近の動向
5 シリコーン系ポリマー
5.1 はじめに
5.2 シラン
5.3 変性オイル
5.4 オイル,ゴム
5.5 レジン
5.6 おわりに
6 フッ素系ポリマー
6.1 塗料用フッ素系ポリマー
6.2 溶剤可溶型フッ素系ポリマーの設計
6.2.1 基本骨格構造の設計
6.2.2 側鎖構造の設計
6.2.3 架橋部位の設計
6.2.4 分子量制御
6.3 水性エマルション型フッ素系ポリマーの設計
6.4 新しい塗料用フッ素系ポリマー
7 ウレタン・イソシアネート系ポリマー
7.1 はじめに
7.2 本ポリマーの動向と色材分野
7.3 ウレタン・イソシアネート系ポリマー
7.4 基本ポリマー(ポリオール)の設計
7.4.1 溶剤型
7.4.2 水性
7.4.3 粉体
7.5 イソシアネート硬化剤
7.5.1 ポリイソシアネート
7.5.2 ブロックイソシアネート
7.5.3 湿気硬化型
7.6 その他
8 ラジエーションキュアリングシステム
8.1 はじめに
8.2 紫外線硬化システム
8.2.1 光開始ラジカル重合の利用
8.2.2 光開始カチオン重合
8.2.3 光開始アニオン重合
8.3 電子線硬化システム
8.4 おわりに
9 新架橋システムの概要
9.1 はじめに
9.2 既存の架橋システムの概要
9.3 溶剤系樹脂の新架橋システム
9.3.1 アミノ基-エポキシ架橋系
9.3.2 シリコーンを利用する架橋系
9.3.3 カルボキシル基とエポキシ基の反応を利用する架橋系
9.3.4 カルボン酸無水基を利用する架橋系
9.3.5 マイケル付加反応を利用する系
9.3.6 活性エステル基を利用する系
9.3.7 アセトアセキシ基利用する架橋系
9.3.8 官能基のブロック
9.3.9 各種の架橋系
9.3.10 ポリシロキサン複合系
9.4 水性樹脂の新架橋システム
9.5 おわりに
10 新架橋システムの最新動向
10.1 はじめに
10.2 耐酸性雨性塗料用架橋反応の開発
10.2.1 開発の概要
10.2.2 官能基のブロック
10.2.3 シラノール基,オキシラン基,水酸基からなる硬化系
10.2.4 耐酸性雨性塗料の開発状況
10.3 その他の架橋反応の開発
10.3.1 触媒のブロック
10.3.2 非脱離型の架橋反応系
10.4おわりに
第3章 各種塗料への応用
1 建築用塗料
1.1 はじめに
1.2 建築用塗料の分類
1.3 外装用塗料
1.3.1 新設用塗料
1.3.2 改修用塗料
1.4 内装用塗料
1.4.1 内装用塗料樹脂
1.4.2 環境配慮型塗料
2 自動車用塗料
2.1 はじめに
2.2 各種構成塗膜のポリマー設計
2.2.1 下塗(電着塗料)
2.2.2 中塗
2.2.3 上塗
2.3 自動車塗料の今後の取り組み
2.3.1 粉体塗料
2.4 おわりに
3 金属容器用塗料
3.1 金属缶の市場
3.2 水性塗料の製法
3.3 転相乳化型水性塗料とその接着性能
3.4缶内面塗料用エポキシ樹脂の設計
3.5 塗装性と湿潤塗膜のレベリング
4 重防食塗料
4.1 はじめに
4.2防食用塗料の変遷
4.3 防食用塗料の硬化機構と防食塗料の概要
4.3.1 無機ジンクリッチペイント
4.3.2 エポキシ樹脂塗料
4.3.3 ウレタン樹脂塗料,ふっ素樹脂塗料
4.4 防食塗料分野での市場の動向
4.4.1 臭気およびVOCの削減
4.4.2 一液化について
4.4.3 インターバルフリーエポキシ樹脂塗料
4.5 おわりに
第4章 接着剤・粘着材への応用
1 工業用粘着テープ
1.1 粘着剤と粘着テープ
1.2 粘着テープの構成材料
1.2.1 粘着剤
1.2.2 基材
1.3 粘着テープの機能
1.4 粘着テープの種類
1.4.1 両面粘着テープ
1.4.2 マスキング粘着テープ
1.4.3 表面保護用粘着テープ
1.4.4 電気絶遠用粘着テープ
1.4.5 包装用粘着テープ
1.4.6 特殊粘着テープ
1.5 おわりに
2 光部品用接着剤
2.1 はじめに
2.2 光部品組立におけるUV接着技術
2.3 光路結合用光学接着剤
2.4 UV硬化型光路用光学接着剤の主な特性
2.5 光路結合用光学接着剤の応用
2.5.1 光ファイバの結合
2.5.2 光経路と光ファイバの結合
2.5.3 光導電波路形成材料への応用
2.6 光部品固定用接着剤
2.7 精密接着剤の応用
2.8 高硬度・耐熱性接着剤
2.9 おわりに
3 エレクトロニクス用接着剤
3.1 はじめに
3.2 接着剤への要望
3.3 エレクトロニクス用接着剤の種類
3.4 接着剤の適用事例
3.4.1 プリント配線板(PCB)
3.4.2 半導体
3.4.3 小形トランス・コイル
3.4.4 音響部品
3.4.5 磁気ヘッド
3.4.6 光ヘッド
3.4.7 表示素子(LCD,ELなど)
3.4.8 その他
3.5 おわりに
4 医療用接着剤
4.1 はじめに
4.2 歯科医療の中の接着剤
4.3 歯の構造
4.4 歯科用接着剤が具備すべき条件
4.5 レジン系接着剤
4.6 グラスアイオノマー系接着剤
4.7 まとめ
5 ラミネート用接着剤
5.1 はじめに
5.2 ラミネートフィルムに要求される機能と諸性質
5.3 ラミネート包装用接着剤の市場
5.4ラミネート方式の分類
5.5 ポリウレタン系接着剤の反応機構および特徴
5.6 研究開発動向
5.6.1 環境対応型接着剤の開発
5.6.2 高機能化接着剤の開発
5.6.3 作業性の改善
5.7 おわりに
第5章 各種インキへの応用
1 グラビアインキ
1.1 はじめに
1.2グラビアインキとは
1.2.1 グラビアインキの需要
1.2.2 グラビア印刷システム
1.2.3 グラビアインキの組成
1.3グラビアインキの種類と用途
1.3.1 出版用グラビアインキ
1.3.2 包装用グラビアインキ
1.3.3 建材用グラビアインキ
1.4 グラビアインキに用いられる樹脂の種類
1.4.1 ニトロセルロース
1.4.2 ポリアミド樹脂
1.4.3 塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体
1.4.4 塩素化ポリプロピレン
1.4.5 アクリル樹脂
1.4.6 ポリウレタン樹脂
1.4.7 水溶性ポリウレタン樹脂
1.5 おわりに
2 オフセットインキ用樹脂
2.1 オフセット印刷
2.2 オフセット印刷の乾燥方式とインキの組成
2.3 油性インキ用樹脂について
2.3.1 油性インキ用樹脂に要求される性能
2.3.2 油性インキ用樹脂
2.3.3 UVインキ用樹脂
3 フレキソインキ
3.1 はじめに
3.2 日本におけるフレキソ印刷
3.3 フレキソインキ用水性樹脂
3.3.1 アクリル系樹脂
3.3.2 アクリルウレタン系樹脂
3.3.3 ウレタン樹脂
3.3.4 ポリエステル樹脂
3.3.5 ポリアミド樹脂
3.3.6 天然樹脂
3.3.7 その他の樹脂
3.4 水性架橋システム
3.5 フレキソインキへの応用
3.5.1 段ボール用フレキソインキ
3.5.2 紙包材用フレキソインキ
3.5.3 プラスチックフィルム方材用フレキソインキ
3.5.4 その他のフレキソインキ
3.6 水性フレキソインキ用樹脂の開発目標
3.7 おわりに
4 RCインキ
4.1 RCインキとは
4.2 RCインキの種類
4.3 RCインキ(ラジカル系UVインキ)の構成
4.4 その他のRCインキ
第6章 色材のキャラクタリゼーション
1 ポリマーの表面評価と表面解析
1.1 はじめに
1.2 表面塗れ性・極性評価
1.2.1 固体表面の塗れと接触角
1.2.2 高分子の表面極性と表面張力
1.2.3 高分子γcの同一分子内変化
1.2.4 表面自由エネルギーと接着の仕事
1.2.5 表面自由エネルギーと表面・界面組成
1.3 表面化学組成解析
1.3.1 高分子表面の組成分析法
1.3.2 表面の元素ESCA分析
1.3.3 深さ方向元素ESCA分析
1.3.4 表面官能基の同定・定量
1.3.5 SIMSイメージング解析
2 表面形態
2.1 はじめに
2.2 走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)
2.2.1 SEM像観察のポイント
2.2.2 SEMによる三次元測定
2.2.3 環境制御型SEM(Enviromental SEM)
2.3 走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)
2.3.1 AFMの概要
2.3.2 AFMの多機能化
2.3.3 その他のAFM
2.4 光学的測定法
2.4.1 共焦点法
2.4.2 光学干渉法
2.5 表面形状観察法の比較
3 レオロジー
3.1 はじめに
3.2 高分子レオロジー
3.2.1 高分子溶液のレオロジー
3.2.2 高分子の粘弾性と温度
3.3 粘弾性測定法の概要と分類
3.3.1 過渡的測定
3.3.2 定常流測定
3.3.3 動的測定
3.4 顔料分散系中の高分子の役割
3.4.1 顔料分散の促進
3.4.2 タック調製剤
3.5 乾燥硬化過程のレオロジー
3.6 乾燥皮膜のレオロジー
4 熱分析
4.1 はじめに
4.2 DSC(示差走査熱量測定)
4.2.1 DSCの原理
4.2.2 DSCの応用
4.2.3 DSCによる比熱容量測定
4.3 TG/DTA(熱重量測定/示差熱分析)
4.3.1 TG/DTAの原理
4.3.2 TG/DTAの応用
4.3.3 TG複合機
4.4 TMA(熱機械分析)
4.4.1 TMAの原理
4.4.2 TMAの応用
4.5 熱分析のJIS
4.6 おわりに
5 スペクトロスコピー
5.1 FT-IR
5.1.1 装置
5.1.2 サンプリングと測定手法
5.2 ラマン分光
5.2.1 分散型ラマンとFT-ラマン
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