刊行にあたって
私たちの日常生活において、プラスチックは無くてはならない材料となった。その影で、元来プラスチックが有する耐擦傷性の低さを高めるべく、ハードコート処理がなされて来た。近年では、耐擦傷性はもとより、耐候性、耐薬品性、防曇性等、様々な特性が付与されている。基材としてのプラスチックと比して、重量的に見ると大きくは無く、市場として非常に捉えにくいが、その必要性は多大である。
2000年5月に前書『プラスチックハードコート材料』が発行され、約4年間が経とうとしている中、本書はその空隙を埋める書籍として、材料編、応用編を二大主軸とした構成を、第一線の執筆陣に御執筆頂いた成書である。
最後に本書が少しでも斯界の発展に寄与することを願ってやまない。
著者一覧
栢木 實 新中村化学工業(株) 研究開発部 次長
佐々木 裕 東亞合成(株) 新製品開発研究所 研究員
山谷 正明 信越化学工業(株) シリコーン電子材料技術研究所 第1部 開発室 室長
市川 好男 (株)日板研究所 代表取締役社長
石居 太郎 三菱レイヨン(株) 機能化学品開発センター 主任研究員
本間 精一 本間技術士事務所 所長
大原 昇 藤倉化成(株) コーティング事業部 技術部 部長
阿久津幹夫 カシュー(株) 技術開発部 部長
竹下 克義 セイコーエプソン(株) 光学開発部 課長
下口 睦弘 大日本インキ化学工業(株) グラビアインキ技術本部 グラビアインキ技術4グループ 研究主任
藤本 寿一 三菱レイヨン(株) 機能化学品開発センター 主任研究員
目次 + クリックで目次を表示
プラスチックハードコート材料(総論)
1.プラスチック材料の表面特性とバルク特性
2.ハードコート材の技術とその展開
2.1 ハードコート材の種類
2.2 ハードコート層に必要な特性
2.2.1 耐擦傷性
2.2.2 密着性
2.2.3 膜厚
2.3 シリコーン系と多官能アクリル系
2.4 熱硬化型から紫外線硬化型,そして有機・無機ハイブリッドへ
2.5 重合技術の広がり-紫外線カチオン重合系の登場
2.6 単機能から複合機能付与へ
2.7 環境対応型の展開
3.ハードコートの市場
第2編 材料と特性
第1章 有機系
1.アクリレート系
1.1 はじめに
1.2 アクリレート系ハードコート材料の構成
1.3 アクリル酸エステルモノマー
1.3.1 単官能アクリレート
1.3.2 2官能アクリレート
1.3.3 3官能以上のアクリレート
1.4 オリゴマー
1.4.1 ウレタンアクリレート
1.4.2 エポキシアクリレート
1.4.3 ポリエステルアクリレート
1.4.4 共重合系アクリレート
1.5 光開始剤
1.6 ハードコートの機能化
1.7 おわりに
2.オキセタン系
2.1 はじめに
2.2 光カチオン硬化型材料
2.2.1 光カチオン硬化型材料の特性
2.2.2 環状エーテルのカチオン重合
2.2.3 ハードコーティング剤への応用
2.3 オキセタン系材料
2.3.1 オキセタン系材料の特徴
2.3.2 オキセタン材料の特徴的な配合例
2.3.3 多官能オキセタンモノマー
2.4 おわりに
3.シリコーン系ハードコート剤
3.1 はじめに
3.2 ゾル-ゲル法の原理
3.3 シロキサン結合
3.4 シリコーンレジンの形態
3.5 シリコーンハードコート剤の原料
3.5.1 シラン化合物
3.5.2 有機金属化合物
3.5.3 無機酸化物微粒子
3.5.4 硬化用触媒
3.5.5 その他の材料
3.6 シラノール基の特徴とその制御
3.6.1 加水分解
3.6.2 シラノール基の特徴とその制御
3.7 硬化被膜特性及び用途
3.8 プライマー
3.9 新規展開
3.9.1 保存安定性良好な新規な材料
3.9.2 UV硬化性ハードコート剤
3.10 おわりに
第2章 無機系プラスチックハードコート剤
1.はじめに
2.無機系ハードコート剤
2.1 オルガノアルコキシシラン系
2.2 アルコキシシラン・ジルコネート系
2.3 水系シリケート
2.4 水性アルミナ系
2.5 オルガノアルコキシシラン・樹脂ハイブリッド
2.6 アルコキシシラン・ジルコネート・樹脂ハイブリッド
2.7 水系シリケート・樹脂ハイブリッド
3.プラスチックへのハードコート
3.1 プラスチックの表面処理
3.1.1 表面の酸化処理
3.1.2 表面の凸凹化
3.1.3 プライマー
4.塗装
5.硬化
6.無機系ハードコート膜の物性
7.おわりに
第3章 有機無機ハイブリッド系
1.有機無機ハイブリッド型ハードコート材料の展開
1.1 はじめに
1.2 ハードコート材料の分類と構成
1.3 有機無機ハイブリッド材料
1.3.1 ハードコート用有機無機ハイブリッド材料(代表例と製法)
1.3.2 有機無機ハイブリッド材料の効果と性能
1.4 有機無機ハイブリッド材料の応用展開
1.4.1 フィルム,光学部品用,成形品用途
1.4.2 自動車部品用
1.4.3 その他用途展開(有機無機ハイブリッド材料の今後の期待材料)
1.5 おわりに
2.有機無機ハイブリッドの新規展開
2.1 はじめに
2.2 光カチオン硬化型有機・無機ハイブリッド材料
2.2.1 サブナノサイズ無機ユニットと有機重合性基を有するモノマー
2.2.2 ナノサイズ無機微粒子と重合性材料とのハイブリッド化
2.3 おわりに
第3編 応用技術
第4章 自動車用部品
1.自動車用途への応用
-ヘッドランプレンズ及び窓ガラスへの応用を中心に-
1.1 はじめに
1.2 ハードコート技術
1.3 塗工法と特徴
1.4 応用例
1.4.1 自動車ヘッドランプレンズ
1.4.2 車両のグレージング
2.その他の自動車部品
2.1 はじめに
2.1.1 外装部品
2.1.2 内装部品
2.1.3 電装部品ほか
第5章 携帯電話向けUV硬化型ハードコート剤の特徴と設計上の留意点
1.はじめに
2.UV硬化型ハードコート剤が広範に採用された理由
3.携帯電話向け塗装の概略
3.1 塗装システムの各国の現状と変遷
3.1.1 日本国内
3.1.2 中国
3.1.3 東南アジア(特にマレーシア,シンガポール)
3.1.4 北米
3.1.5 ヨーロッパ
3.2 使用素材の現状
3.2.1 フロントとリアーケース
3.2.2 バッテリーケース
3.2.3 その他
3.3 携帯電話用UV硬化型ハードコート剤の一般的な塗装工程とライン構成
4.携帯電話向けUV硬化型ハードコート剤の設計上の留意点107
4.1 携帯電話向けUV硬化型ハードコートに要求される物性
4.2 要求される物性(耐擦傷性と耐熱性を両立)を達成する困難性
4.3 高い耐摩耗性と耐熱性を併せ持つUV系ハードコート開発のコンセプト
4.4 UV硬化型ハードコート剤の開発手法
4.5 各種モノマー・オリゴマーの特徴
5.携帯電話向け下塗り塗料の特徴と開発のポイント
5.1 下塗り塗料に使用される色材の特徴と物性に与える影響
5.2 下塗り塗料に要求される性能と開発のポイント
5.2.1 物性上のポイント
5.2.2 外観上の問題
6.携帯電話向け下塗り塗料とUV硬化型ハードコート剤の種類
6.1 下塗り塗料の種類と特徴
6.2 UV硬化型ハードコート剤の種類と特徴
7.まとめと今後の開発動向について
第6章 眼鏡レンズ
1 はじめに
2 眼鏡レンズのハードコートとは
3 ハードコートの塗布・硬化
4 ハードコート膜の高屈折率化
5 ハードコート膜の密着性
6 ハイインパクト加工とは
7 今後の展開
第7章 建築材料
1.建材化粧シートの現状
1.1 建材材料の動向 天然木,木質建材からシート化への動き
1.2 環境問題
1.2.1 シックハウス
1.2.2 溶剤の大気への放出:塗料の水性あるいは無溶剤化
1.2.3 廃棄物焼却時に発生する有毒物質:非塩素系原料への転換
2.フィルム
3.要求物性,評価方法
4.ハードコート剤
4.1 熱硬化型トップコート剤
4.1.1 主剤
4.1.2 硬化剤
4.1.3 添加剤
4.2 UV・EB硬化型トップコート剤
4.2.1 UV・EB化のメリット・デメリット
4.2.2 モノマー,オリゴマー
4.2.3 光開始剤
4.2.4 添加剤
5.今後の展開
第8章 光ディスク
1.はじめに
2.光ディスクの製造とハードコート
3.光ディスク用ハードコート剤への要求性能
3.1 液特性
3.2 硬化膜特性
4.光ディスク用ハードコート材への特性付与
4.1 帯電防止
4.2 対擦傷性
4.3 防汚性
4.4 リサイクル性
5.おわりに
第4編 市場動向
第1章 PVC床コーティング
1.はじめに
2.UV硬化型PVC床コーティング
第2章 フィルムコーティング
1.用途市場
2.UVフィルムコーティング
第3章 樹脂ハードコート
1.携帯電話
2.自動車用部品
3.眼鏡レンズ
4.メーカー
第4章 光ディスクコート
1.光ディスクの種類
2.用途別の動向
2.1 CD
2.2 MO,MD
2.3 PD
2.4 DVD
3.コーティング市場
4.メーカーと製品
第5章 ディスプレイ材料へのコーティング
1.LCD(液晶ディスプレイ)
1.1 LCD業界のメーカー動向
1.1.1 国内外の液晶メーカー
1.1.2 会社名 予想投資額
1.2 製造装置の開発
2.プラズマディスプレイ材料へのコート
2.1 PDP市場
2.2 PDPで使用されているUV硬化技術
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