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難燃機構/海外難燃性規格/評価試験/臭素系/新規リン系/イントメッセント系/フォスフィン酸金属塩系/窒素系/無機系/ドリップ防止/ナノコンポジット/樹脂/ケーブル/難燃触媒/不燃木材/フィルム/LiB
刊行にあたって
近年の科学技術の進歩は、各種産業分野で新しい技術や製品を我々にもたらし、人類に多くの夢と希望を与えてきた。その中で高分子材料が果たした役割と貢献度は極めて高いものがある。
一方、高分子材料の唯一の欠点である燃え易さは、火災事故の大きな原因の一つとなっている。世界的に難燃性規格が制定されており、クリアしなければ製品の製造販売ができないため、広範囲の産業分野で難燃材料の研究開発、実用化が進んできた。この技術は、分子内の難燃性を発揮する難燃性元素を含む難燃剤を高分子材料に添加分散して複合化したり、化学的に反応させて行われている。最近の難燃化技術の研究レベルは確実に進歩を遂げており、難燃剤の使用量も増加してきている。世界の難燃剤の需要量は、年間約160万トン、日本だけで約16万トンと言われている。
難燃材料の新しい研究としては、ナノコンポジット難燃材料、難燃性生分解性ポリマー、Liイオン2次電池用難燃性電解質、透明性難燃材料、難燃耐熱エンプラ材料、耐環境安全性難燃材料、薄厚難燃フィルム等の研究開発が挙げられ、難燃化技術としては、難燃機構の研究、高難燃効率を示す難燃剤および難燃系の研究が進められている。
今回は、このような現状を鑑みて規制の動向、難燃化機構、新しい難燃剤と難燃材料の動向、難燃性評価試験等について最新の動向を知るためにこの分野の第一線で活躍されている方々にご執筆をお願いしてまとめることにした。皆様方の今後の研究開発、各種業務の推進にお役立ていただければ幸いである。
本書は2015年に『難燃剤・難燃化材料の最前線』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
西澤 仁 西澤技術研究所 青木正光 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 大越雅之 京都工芸繊維大学 藤岡博明 ㈱ケミトックス 宮野信孝 大八化学工業㈱ 米澤 豊 ㈱ADEKA 山中克浩 帝人㈱ 小林淳一 丸菱油化工業㈱ 石塚智也 クラリアントジャパン㈱ 新川桂太郎 クラリアントジャパン㈱ | 侯 瀟 クラリアントジャパン㈱ 齊藤雅人 日産化学工業㈱ 西谷崇昭 日本精鉱㈱ 松井誠二 神島化学工業㈱ 岩田典己 ダイキン工業㈱ 露本伊佐男 金沢工業大学 位地正年 日本電気㈱ 五島一也 ポリプラスチックス㈱ 山下武彦 パナソニック㈱ 坪川紀夫 新潟大学 |
執筆者の所属表記は、2015年当時のものを使用しております。
目次 + クリックで目次を表示
第1章 環境規制の最新動向と難燃化への影響
1 はじめに
2 難燃化の重要性
3 難燃剤規制の潮流
3.1 欧州の難燃剤規制
3.2 アメリカの難燃剤規制
3.3 日本の難燃剤規制
4 環境対策のための規制・規格
4.1 欧州のRoHS指令
4.2 改正RoHS指令
4.3 欧州のREACH規則
4.4 米国のEPEAT
5 「難燃化」と「環境」の両立と課題
5.1 難燃化
5.2 環境の時代
5.3 課題
第2章 難燃剤評価試験法の進歩
1 電子機器に用いられる部材とその燃焼性
2 材料としての難燃性評価
3 部材の難燃規格
3.1 電線ケーブル
3.2 事務機器
3.3 半導体封止材料
3.4 規制の現状
4 新しい難燃試験方法
4.1 ブラックボックスのホワイト化
4.2 マルチレイヤーテスト
5 まとめ
第3章 海外難燃性規格の最新動向(ULおよび鉄道車両規格)
1 はじめに
2 UL規格の最新動向
2.1 UL94水平燃焼性(HB)試験
2.2 UL94垂直燃焼性(V)試験
2.3 UL94フィルムの垂直燃焼性(VTM)試験
2.4 UL94 5V燃焼性試験
2.5 UL94発泡材の水平燃焼性(HF/HBF)試験
2.6 Microcombustion Calorimeter(MCC)試験
3 海外鉄道車両規格における火災試験要求
4 おわりに
【第二編 難燃機構】
第1章 難燃機構の研究動向と進歩および難燃剤開発のコンセプト
1 はじめに
2 ポリマーの燃焼機構
3 高分子難燃化の技術と難燃剤の開発動向
3.1 気相での難燃機構
3.1.1 ラジカルトラップ効果
3.1.2 酸素希釈効果、酸素遮断効果
3.1.3 吸熱反応(燃焼残渣による酸素遮断、断熱効果が同時に起こる)
3.2 固相での難燃機構
3.3 相乗効果の研究
3.4 気相と固相の難燃機構の比較試験法
3.4.1 CO発生量を比較する方法
3.4.2 発生ラジカルの測定方法(ESRによるスピットラッピング法)
3.4.3 酸素指数法を用いて雰囲気を酸素から他の雰囲気(例N2O)に変更して適用雰囲気ガス指数を比較する方法
3.5 高分子構造と難燃性の関係
3.6 難燃機構に関係する注目される難燃化技術
3.6.1 水和金属化合物、臭素系難燃剤の難燃効果を促進するアゾアルカン化合物、ヒンダートアミン化合物
3.6.2 気相における効果の高い環状化合物
3.6.3 反応型難燃剤と添加型難燃剤の効果の比較
3.6.4 リン酸化合物のP含有量とCH3P(O)の側鎖と難燃性との関係
3.6.5 IFR難燃系の難燃効果を促進する難燃助剤の研究
3.6.6 水和金属化合物の難燃助剤の研究
3.6.7 100%固相における難燃機構を示すナノコンポジット難燃系
3.6.8 難燃触媒による難燃化技術
3.6.9 IFR系難燃PPの固相におけるバリヤー層損傷(チャー+リン酸Mg複合層)
3.6.10 ドリップ性、残じん性
4 難燃剤開発のコンセプト
【第三編 難燃剤】
第1章 臭素系難燃剤の概要と最新動向
1 はじめに
2 臭素系難燃剤の種類と特徴および難燃効果
3 臭素系難燃剤による難燃化技術
4 臭素系難燃剤の今後と高難燃効率を目指す難燃系の開発
第2章 リン酸エステル系難燃剤の環境問題と開発動向
1 はじめに
2 リン酸エステル系難燃剤の環境問題
3 リン酸エステル系難燃剤の難燃化機構および諸物性
4 リン酸エステル系難燃剤の開発動向
4.1 家電、OA用途
4.2 ポリウレタンフォーム用途
4.3 ポリエステル繊維用途
5 おわりに
第3章 イントメッセント系難燃剤の進歩
1 はじめに
2 難燃剤の種類とメカニズム
3 イントメッセント系難燃剤とは
4 FP-2100JC、FP-2200Sの難燃性能
5 力学的特性
6 フィラー充填系での性能について
7 FP-2100JC、FP-2200Sの使用方法について
8 おわりに
第4章 新規リン系難燃剤ファイヤガード®FCX-210
1 はじめに
2 リン系難燃剤の種類
3 高分子材料の燃焼機構と難燃機構
4 ファイヤガード®FCX-210の特徴
5 ファイヤガード®FCX-210の難燃効果
6 今後の展開
第5章 新規ホスホン酸エステル難燃剤の開発と特性
1 はじめに
2 リン系難燃剤の難燃化機構
2.1 一般的なリン系難燃剤の難燃化機構と問題点
2.2 リン酸エステル類のドリップ促進による難燃化機構
3 新規ホスホン酸エステル難燃剤 ノンネン73の特徴
3.1 ノンネン73の設計コンセプト
3.2 一般性状および溶解度・相溶性
3.3 揮発性
3.4 耐熱性
4 適用例
4.1 種々の合成樹脂への適用
4.2 ポリオレフィンへの適用
5 おわりに
第6章 フォスフィン酸金属塩系難燃剤の進歩-高難燃効率・環境適応型難燃剤の応用-
1 はじめに
2 クラリアント社Exolit OPシリーズの特徴
3 ポリアミド樹脂への応用
4 ポリエステル樹脂への応用
5 フォスフィン酸金属塩系難燃剤の環境特性
6 プリント回路基板への応用
7 Exolit OP新規グレードの紹介
8 次世代材料への展開
9 おわりに
第7章 窒素系難燃剤の進歩(ホスメル-メラミンシアヌレート)
1 メラミンシアヌレートおよびホスメル
2 メラミンシアヌレート(MC)
2.1 メラミンシアヌレートの性質
2.2 メラミンシアヌレートの難燃機構
2.3 ポリアミド樹脂(PA樹脂)の難燃
2.4 ポリアミド樹脂以外の難燃
2.5 MCの特徴を生かした今後の利用法
3 ホスメル(PHOSMEL)
3.1 ホスメルの性質
3.2 ホスメルの難燃機構
3.3 ホスメルによる難燃
第8章 無機系複合難燃助剤STOX-501の開発について
1 はじめに
2 STOX-501の開発について
2.1 STOX-501の原材料について
2.2 STOX-501の特徴
2.2.1 品質
2.2.2 難燃効果
2.2.3 樹脂物性
2.2.4 色調
2.2.5 STOX-501の価格
3 おわりに
第9章 水酸化マグネシウムの進歩
1 はじめに
2 物理的性質
2.1 一般的性質
2.2 水酸化マグネシウムの熱的性質とプラスチック難燃化機構
2.3 水酸化マグネシウムの低発煙性
3 用途および応用例
4 表面処理状態の評価方法
4.1 電位差滴定
4.2 プラスチック物性との関係
5 おわりに
第10章 ドリップ防止剤としてのPTFE
1 ドリップ防止剤
2 PTFEとは
3 PTFEドリップ防止剤
4 今後の課題
第11章 新規ホウ素化合物
1 はじめに
2 新しいホウ酸系難燃剤「ポリホウ酸ナトリウム」
2.1 特長
2.2 難燃剤としての使用法
3 新しい難燃塗布剤「デンプン・ポリホウ酸ナトリウム混合液」
3.1 開発の背景
3.2 デンプン・ポリホウ酸ナトリウム混合液の調製法
3.3 塗布方法
3.4 硬質ウレタンフォームの難燃化
4 まとめ
【第四編 難燃材料の開発】
第1章 ナノコンポジット難燃材料の開発
1 ナノ材料とは
2 水和金属化合物系
3 クレー系
4 まとめ
第2章 ポリ乳酸系バイオプラスチック難燃材料
1 はじめに
2 難燃性ポリ乳酸複合材の開発
3 水酸化アルミニウムの利用による難燃性以外の特徴の付与
4 社会インフラ機器への展開
5 まとめと今後の展望
第3章 難燃性エンプラ材料の開発
1 火災の原因とプラスチック
2 プラスチックの燃焼メカニズムと難燃化
2.1 プラスチックの種類と燃焼性
2.2 燃焼メカニズム
2.3 難燃剤、難燃システム
3 環境対策、安全問題への対応
4 難燃性エンプラ材料開発
4.1 非強化・難燃・高衝撃PBT樹脂 ジュラネックス®PBT「457EV」
4.2 長期特性改善PBT樹脂 ジュラネックス®PBT「LTシリーズ」
4.3 ノンハロゲン系難燃剤使用 ジュラネックス®PBT「NFシリーズ」
4.4 高GWIT(グローワイヤ特性)PBT樹脂 ジュラネックス®PBT「330GW」
第4章 EM電線、ケーブル材料の現状と最近の進歩
1 はじめに
2 EM電線、ケーブルの要求性能
3 EM材料の研究経過と最近の研究動向
3.1 べース樹脂の選択
3.2 難燃剤としての水酸化Mg選択と改良
3.3 難燃助剤
3.4 EM材料のコンパウンディングと押出加工性の改良
3.5 EM電線、ケーブルのコスト、LCA(塩ビとの比較)
3.6 エコ難燃材料に関する注目される研究例
第5章 難燃触媒による難燃材料の開発
1 はじめに
2 高分子材料の燃焼と難燃理論
3 PLAの触媒(非臭素)による難燃化
3.1 検討対象の樹脂と難燃剤
3.2 燃焼試験法と各種分析法
3.3 触媒混練の結果と考察
3.3.1 垂直小型燃焼実験結果
3.3.2 熱分解分析結果
3.4 他難燃剤との併用による相乗効果の検討
3.4.1 リン系および黒鉛との併用
3.4.2 成型性向上の試み
4 PPE/PSの熱分解に関する考察と難燃化
4.1 PPE/PSの難燃化
4.2 試験結果
5 おわりに
第6章 不燃木材の開発と実用化
1 はじめに
2 防火材料の認定基準
3 スギの不燃化(無垢材・集成材)
4 樹種による比較
5 不燃木材などの使用例
5.1 公共建築物への使用例
5.2 店舗などへの使用例
5.3 鉄道車両への使用例
6 総括
第7章 表面難燃剤固定化フィラーによる難燃化技術
1 はじめに
2 フィラー表面への難燃剤固定化の意義
2.1 難燃剤の問題点
2.2 難燃剤固定化フィラー
3 表面グラフト化の方法
4 ハロゲン系難燃剤固定化フィラー
4.1 シリカ表面へのハロゲン系難燃剤の固定化
4.2 ハロゲン系難燃剤固定化シリカの特性
4.3 難燃剤固定化シリカを充填したエポキシ樹脂からの難燃剤の溶出試験
5 リン系難燃剤固定化フィラー
5.1 シリカ表面へのリン系難燃剤の固定化
5.2 リン系難燃剤固定化シリカの特性
5.3 リン系難燃剤固定化シリカを充填したエポキシ樹脂からの難燃剤の溶出試験
6 おわりに
第8章 難燃化が難しい製品の難燃化技術の現状と課題および今後―透明樹脂、フィルム、Liイオン2次電池電解液―
1 はじめに
2 透明性樹脂の難燃化技術
2.1 樹脂の種類と特徴
2.2 透明性を落とさないで難燃化する技術
2.2.1 液状リン酸エステルによる難燃化技術
2.2.2 水和金属化合物、活性シリカ表面グラフト化無機化合物を利用した難燃化
2.2.3 ナノコンポジット化技術による難燃化
2.2.4 その他の難燃性透明樹脂の研究
3 Liイオン2次電池電解液用難燃化技術の現状と今後
4 難燃性フィルム
第9章 難燃化技術の最近の研究動向―主として文献資料から見た―
1 はじめに
2 難燃規制、難燃化技術および難燃剤のこれまでの動き
3 最近の難燃化技術の研究動向
3.1 相乗効果系および三酸化アンチモン代替化合物に関する研究
3.2 難燃機構に関する研究動向
3.3 高難燃性を特徴とするIFR系(Intumescent)難燃剤の研究
3.4 有機リン系難燃剤による難燃化技術の研究
3.4.1 DOPO-POSS化合物を添加したPC/ABSの難燃機構と難燃化技術
3.4.2 PVAとリン酸メラミン混合物の加工時の熱安定性と難燃性の向上
3.4.3 PLA/リン化合物PEDPPの難燃性向上と耐熱性の付与
3.4.4 APP配合ABSの難燃性、耐熱性へのチャー生成促進剤の効果
3.5 ナノコンポジット系難燃材料の研究
3.6 その他難燃化技術、難燃材料の研究
4 おわりに
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