キーワード:
自動車 / 電動化 / HV / EV / BEV / FCEV / パワーデバイス / パワー半導体 / WBG / ワイドバンドギャップ / 機電一体 / ワイヤレス給電 / モータ / インバータ / 実装 / 放熱 / 絶縁 / 接合材料 / 鉛フリーはんだ / ハーネス / コネクタ / パワーコントロールユニット / PCU / ECU / 信頼性 / 熱設計
刊行にあたって
地球環境への関心の高まりから、電動化の動きが加速している。電動化の流れを作ったのは、1997年の初代プリウスの発売であり、引き続き行われたCOP3での京都議定書の採択であった。その後、自動車におけるハイブリッド制御システムの難しさから、現在ではピュアな電動車両すなわちBEV(Battery Electric Vehicle)にシフトしようとしている。しかし走行時のCO2排出量の面だけをとらえれば、BEVはCO2削減に効果的な手段であるが、根本の電気エネルギーをどのような手段で得るかによって、BEVのCO2削減効果は、その評価が大きく分かれる。よく言われることであるが、Well to Wheelで考えてCO2削減を評価すべきである。そのため、EVシフトが注目されているが、EVの根幹部品であるバッテリーの性能とその材料、更には生産工程まで含めて地球環境に影響を与えないように配慮が必要である。その意味で、2021年のCOP26は石炭火力発電の扱いに関して人々の関心を喚起し、どのように電気エネルギーを生成すべきかを考えさせる結果になったのでないだろうか。
産学官連携による技術開発が推進されて久しいが、それぞれの役割を十分に認識して技術開発が進められる必要がある。学術分野では、より新しい視点での技術の壁突破を目指し、新しい高性能電池開発が進められるべきであるし、政府としては日本のエネルギー政策の確固たる方針を定め、それに向けた新たなる移動社会におけるインフラの在り方・整備を強力に進めるべきである。そのうえで、車両メーカーである産業界は技術の成熟度合い、社会インフラの整備状況ならびに移動に対するニーズにマッチしたタイムリーな自動車の提供という視点から、どのような電動車両を提供すべきかを決めていくべきである。車両メーカーは車両制御の工夫により各分野の技術のばらつきをカバーすることも考えるべきであろう。近江商人の三方よしの状況でなければ、真の電動車両の普及はおぼつかない。
本書では、その意味で将来の市場動向を分析理解し、そこに求められる技術領域を明らかにする。そのうえで、必要となる技術分野に関して各専門家がシステムから要素技術まで、幅広く解説している。今後の動向をみると、いよいよ電動車両も車両の使われ方、利用者ニーズに合わせてそれぞれ最適化されていく動向が見て取れる。本書が電動車両開発にかかわる多くの方々にとって、顧客ニーズを含めた市場分析、システム開発の勘所、さらには信頼性を確保するための要素技術開発のポイントに関する着眼点の助けになることが、執筆陣の願いである。
神谷有弘
本書「はじめに」より抜粋
著者一覧
清水 浩 ㈱e-Gle
河村廣道 ㈱e-Gle
川口正樹 ㈱e-Gle
永田正義 兵庫県立大学
大平 孝 豊橋技術科学大学
水谷 豊 豊橋技術科学大学
遠藤哲夫 大成建設㈱
新藤竹文 大成建設㈱
加地 徹 名古屋大学
水谷美生 ㈱オートネットワーク技術研究所
森本雅之 モリモトラボ
両角 朗 富士電機㈱
塩原和吉 富士電機㈱
山崎智幸 富士電機㈱
杉浦和彦 ㈱ミライズテクノロジーズ
有村英俊 石原ケミカル㈱
竹政 哲 千住金属工業㈱
高明天 太陽インキ製造㈱
向 史博 バンドー化学㈱
目次 + クリックで目次を表示
【車載機器の市場動向 編】
第1章 電動車の市場・メーカー動向
1 電気自動車
1.1 モーター駆動電圧から見たメーカー動向
1.2 各分野の車両の特徴とターゲット市場
1.3 Porche Taycanの挑戦(充電時間短縮)
1.4 Teslaの挑戦(ユーザの期待に応えるアップグレード)
1.5 五菱 宏光MINI EVの挑戦(低価格への挑戦)
2 ハイブリッド車
2.1 シリーズ・ハイブリッドの動向(軽自動車向けの開発動向・市場の反応を含めること)
2.2 シリ・パラ・ハイブリッドの動向
2.3 各種マイルドハイブリッド車の市場における位置づけ
2.4 欧米におけるマイルドハイブリッド車の特徴と動向
2.5 日本におけるマイルドハイブリッド車の特徴と動向
3 プラグインハイブリッド車
3.1 各社のプラグイン対応の違い特徴
3.2 車載充電器(OBC)とバッテリーの組合せの特徴
4 燃料電池自動車
4.1 水素社会と燃料電池自動車(FCEV)の関係
4.2 欧米における水素インフラ整備状況とFCEVの市場評価
4.3 日本における水素インフラ整備状況とFCEVの市場評価
4.4 各地域におけるFCEVの普及状況とその要因
5 水素エンジン自動車
5.1 FCEVとの比較
5.2 水素エンジン自動車の用途領域と市場拡大への課題
第2章 自動車用パワーエレクトロニクス・パワートレイン
1 モーター
2 スイッチング電源
3 インバーター
4 コンバーター
5 パワー半導体
5.1 シリコンMOSFET
5.2 IGBT
5.3 シリコンダイオード
5.4 SiC
5.5 GaN
6 パワーコントロールユニット
7 ECU
8 ハーネス・コネクタ
9 ワイヤレス給電
10 車載充電器(OBC)
11 インフラとしての急速充電器(各種規格と動向・普及状況・政府の対応)
12 家庭・インフラ用一般充電器(各種規格と動向・普及状況・政府の対応)
第3章 車載機器の実装・放熱材料
1 車載用プリント基板
2 パワーデバイス用封止樹脂
2.1 エポキシ樹脂
2.2 シリコーンゲル
3 パワーデバイス用接続材料
3.1 鉛フリーはんだ
3.2 銀系接続材料(焼結材料を含む)
3.3 銅系接続材料(焼結材料を含む)
3.4 TLP材
3.5 鉛入り高温はんだ
4 車載機器用放熱材料
4.1 放熱シート
4.2 放熱グリス
4.3 放熱接着剤
5 車載機器用放熱構造
5.1 間接片面冷却方式における各種構造とその採用割合とその理由
5.2 直接片面冷却方式における各種構造とその採用割合とその理由
5.3 間接両面冷却方式における各種構造とその採用割合とその理由
5.4 直接両面冷却方式における各種構造とその採用割合とその理由
【車載機器の開発動向 編】
第1章 機電一体インホイールモータ
1 はじめに
2 インホイールモータの車載
3 機電一体型インホイールモータの要件と事例
4 機電一体型インホイールモータの構造・要素技術
5 インホイールインバータの要素技術と実装
6 冷却システム
7 まとめ
第2章 車載用モータ・パワーモジュールの高電圧絶縁技術と絶縁性能評価
1 はじめに
2 車載用モータ・パワーモジュールの高電圧絶縁の課題と対策
3 EV高電圧絶縁技術の基礎
3.1 モータ絶縁技術と部分放電発生メカニズム
3.2 パワーモジュールの絶縁技術と部分放電発生メカニズム
3.3 部分放電に影響する環境要因
3.4 部分放電開始電圧の予測
4 モータのインパルス試験と部分放電計測
4.1 インパルス試験の必要性
4.2 インパルス部分放電計測と電源
4.3 実機モータのインパルス絶縁評価試験
5 車載用モータ平角巻線の開発と絶縁評価
6 プリント回路基板の絶縁評価試験
7 まとめと今後の課題
第3章 EV走行中給電のための電化道路と高周波パワエレ
1 まえがき
2 電化の歴史
3 走行中給電の意義
4 連続ワイヤレス給電のしくみ
5 電力伝送効率
6 電界結合ワイヤレス電力伝送
7 高周波インバータ
8 高周波整流回路
9 むすび
第4章 縦型GaNデバイスの自動車への応用
1 はじめに
2 縦型GaNデバイスの特徴
3 GaNの報告例
4 ダイオード
4.1 pnダイオード
4.2 JBSダイオード
5 作製プロセスの現状と課題
5.1 イオン注入
5.2 GaN基板
6 まとめ
第5章 高圧ハーネス・高圧コネクタの技術動向
1 はじめに
2 電気駆動系と高圧ハーネス,高圧コネクタ,及びシールド
3 各種高圧ハーネス,高圧コネクタ
3.1 パイプハーネス
3.2 PNコネクタ
3.3 パワーケーブル
3.4 ダイレクトコネクタ
4 おわりに
第6章 パワーコントロールユニット
1 はじめに
2 パワーコントロールユニットとは
3 インバータ
4 チョッパとDCDCコンバータ
5 パワーコントロールユニットの冷却
6 パワーコントロールユニットの今後の展望
第7章 電子制御装置の動向と信頼性
1 次世代自動車における変化
1.1 自動車の付加価値の変化
1.2 次世代自動車における部品構成の変化
1.3 エネルギーマネジメントの考え方
2 各電子制御製品の概要
2.1 エアコン制御
2.2 ボデー制御
2.3 ブレーキ制御
2.4 自動運転分野の制御
2.5 電動車両分野の制御
3 次世代自動車の電子製品に求められること
3.1 電子製品の小型・軽量化
3.2 熱マネジメント
3.3 品質保証の考え方
4 電子製品の信頼性
4.1 製品開発プロセスと品質
4.2 故障モデル
4.3 加速評価試験
4.4 製品評価のための条件設定
5 まとめ
第8章 車載電子機器の放熱・実装技術動向
1 自動車の電子制御化と電子製品の動向
1.1 自動車の電子制御化
1.2 電子製品と電子プラットフォーム設計
1.3 電子製品への要求
2 小型実装技術と熱設計
2.1 小型実装技術
2.2 熱設計(熱伝達)
2.3 熱設計(熱分離)
3 小型実装技術
3.1 センサー系製品
3.2 ECU系製品
3.3 アクチュエーター系製品
3.4 インバータ
4 熱マネジメント
4.1 熱伝達(放熱)と材料
4.2 熱分離(切換)
4.3 熱分離(熱遮断)
5 まとめ
第9章 電気駆動車用パワー半導体実装における信頼性設計技術
1 はじめに
2 電気駆動車パワートレインの構成
2.1 電気駆動車の構成要素
2.2 PCUの使用環境とパワー半導体モジュールの構造
3 パワー半導体実装における信頼性設計
3.1 パワー半導体モジュールの使用環境と信頼性保証
3.2 パワー半導体モジュールの故障モード
4 おわりに
第10章 WBGパワーデバイスに向けたAg焼結接合材料の熱安定性向上
1 はじめに
2 Ag焼結接合材料の熱安定性向上
2.1 Ag焼結接合材料の課題
2.2 Ag焼結材料中への遷移金属化合物添加効果
3 まとめ
第11章 パワーデバイス向け銅接合材料
1 はじめに
2 Cu接合材の利点と課題
3 Cuナノ粒子の焼成
4 Cu接合材の接合強度と信頼性試験
5 おわりに
第12章 WBGパワーデバイスに対応したはんだ材料
1 緒言
2 はんだの供給形態とそれぞれの利点
3 真空リフロー炉
4 Niボール入りはんだ
5 高信頼性Pbフリーはんだ
6 高耐熱Pbフリーはんだ
7 マイクロAg焼結材料
8 むすび
第13章 車載機器用ソルダーレジストに求められる特性
1 ソルダーレジスト(Solder resist:SR)とは何か
2 車載機器用SR:高信頼性,高耐熱性グレード
3 車載機器用SR:高放熱グレード
第14章 形状異方性フィラーの配向制御を活用した放熱シート
1 はじめに
2 TIMの必要特性と放熱シートの特徴
2.1 TIMの命題
2.2 各製品の特徴
3 高熱伝導率化処方と背反事象
4 h-BN垂直配向シート(HEATEX® TS107)
4.1 狙いとするフィラー充填構造と用いた伝熱フィラー
4.2 放熱シートへの適用効果
4.3 h-BN配向度の熱伝導率への影響
4.4 定常法による熱伝導率の算出
5 導電フィラー垂直配向シート(HEATEX® TS211)
6 おわりに
おわりに
関連商品
次世代パワー半導体の開発動向と応用展開
価格(税込): 73,700 円
先端パワーデバイス実装技術
価格(税込): 73,700 円
電動車・電池構成材料の市場動向
価格(税込): 110,000 円
高熱伝導樹脂の設計・開発《普及版》
価格(税込): 3,520 円
次世代自動車のための熱設計・評価手法と放熱・実装技術
価格(税込): 68,200 円
この商品を買った人はこちらの商品も購入しています。
歯科材料と技術・機器の開発
価格(税込): 5,280 円
[第3版]半導体材料・デバイスの評価
価格(税込): 27,500 円
次世代パワー半導体の開発動向と応用展開
価格(税込): 73,700 円
ワイヤレス電力伝送と5G通信の連携・融合に向けた干渉対策と今後の展望
価格(税込): 69,300 円
電子部品用エポキシ樹脂
価格(税込): 74,800 円
水素エネルギー利用拡大に向けた最新技術動向
価格(税込): 68,200 円
二酸化炭素回収・有効利用の最新動向
価格(税込): 66,000 円
高熱伝導樹脂の設計・開発
価格(税込): 79,200 円