キーワード:
マイクロRNA / miRNA / リキッドバイオプシー / 血液検査 / 尿検査 / 唾液検査 / 疾患予測 / 術後診断 / 核酸医薬 / バイオ医薬品 / マイクロアレイ / 診断チップ / 診断キット / 在宅医療 / POCT
刊行にあたって
マイクロRNA(miRNA)は、約20塩基程度の短いncRNAで、アルゴノート(AGO)蛋白質と結合してmiRNA-induced silencing complex(miRISC)を形成し、AGOをmRNA上の標的部位に誘導する。標的とされたmRNAの蛋白質への翻訳を抑制的に制御することで、蛋白質製造プロセスのタイミングや速度を制御するための重要な役割を果たしている。過去30年間の多くの研究により、miRNAの機能と生合成の分子的な詳細が明らかにされ、miRNAの発現異常は、がんや神経疾患など様々な疾患と関連しており、そのmiRNAの機能に注目することで疾患の診断への応用開発が驚くべきスピードで進捗している。
本書では、各疾患におけるmiRNAに関する研究について第Ⅰ編に、またmiRNA測定技術の開発状況について第Ⅱ編に、当該分野をリードしておられる先生方にご執筆頂いた。本書を通じてmiRNA研究の最先端の興奮を体感していただければ大変幸甚である。
(本書「はじめに」より一部抜粋)
著者一覧
松﨑潤太郎 慶應義塾大学
小方賴昌 日本大学
内田文彦 筑波大学
武川寛樹 筑波大学
浅井俊一 千葉大学
関 直彦 千葉大学
奥田悠介 名古屋市立大学
志村貴也 名古屋市立大学
高丸博之 (国研)国立がん研究センター中央病院
村上善基 朝日大学;東京医科大学
光永修一 国立がん研究センター東病院
笹野哲郎 東京医科歯科大学
尾野 亘 京都大学
清家正博 日本医科大学
千葉義彦 星薬科大学
金子昌平 自治医科大学附属さいたま医療センター
森下義幸 自治医科大学附属さいたま医療センター
吉野裕史 鹿児島大学
榎田英樹 鹿児島大学
占部文彦 東京慈恵会医科大学
伊藤景紀 東京慈恵会医科大学
木村高弘 東京慈恵会医科大学
頴川 晋 東京慈恵会医科大学
横井 暁 名古屋大学
奈須家栄 大分大学
下村昭彦 国立国際医療研究センター病院
山田宏哉 藤田医科大学
渡邉幹夫 大阪大学
中野雄二郎 金沢大学
神人正寿 和歌山県立医科大学
鈴木祥平 慶應義塾大学
三上洋平 慶應義塾大学
重水大智 国立長寿医療研究センター
河野尚平 広島大学
南崎朋子 広島大学
吉子裕二 広島大学
北條浩彦 国立精神・神経医療研究センター
山本佑樹 広島大学
高橋陵宇 広島大学
田原栄俊 広島大学
中道 亮 スクリプス研究所;東京医科歯科大学
千葉朋希 東京医科歯科大学
伊藤義晃 東京医科歯科大学
浅原弘嗣 スクリプス研究所;東京医科歯科大学
小宮 力 東京医科歯科大学
山田哲也 東京医科歯科大学
今野雅允 東京理科大学
野中 謙 ㈱DNAチップ研究所
的場 亮 ㈱DNAチップ研究所
滝澤聡子 東レ㈱
安井隆雄 名古屋大学
竹内七海 東京農工大学
劉 娉 東京農工大学
滝口創太郎 東京農工大学
林 貢平 東京農工大学
川野竜司 東京農工大学
小堀哲生 京都工芸繊維大学
大田信行 Preferred Medicine, Inc. & Preferred Networks America, Inc.,
目次 + クリックで目次を表示
<消化器系>
第1章 歯周病とmiRNA
第2章 口腔がん
1 背景
2 危険因子とmiRNA
3 発がんとmiRNA
4 がん促進型miRNA(Onco-miR)
5 がん抑制型miRNA(Suppressor-miR)
6 腫瘍組織中でのmiRNA
7 唾液中でのmiRNA
8 血漿中でのmiRNA
9 血清中でのmiRNA
10 全血中でのmiRNA
11 局所再発とmiRNA
12 予後とmiRNA
13 治療抵抗性とmiRNA
14 バイオマーカーとしてのmiRNA
15 おわりに
第3章 頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルに基づく,癌抑制型マイクロRNAの探索
1 頭頸部癌について
2 頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイル
3 頭頸部扁平上皮癌・部位型マイクロRNA発現プロファイル
4 頭頸部扁平上皮癌における癌抑制型マイクロRNAの探索
5 新規癌抑制型マイクロRNA(パッセンジャー鎖の同定)
6 おわりに
第4章 食道がん
1 食道がんにおけるmiRNAの異常発現
2 組織
2.1 食道扁平上皮癌
2.2 食道腺癌
3 血液
3.1 食道扁平上皮癌
3.2 食道腺癌
4 尿・唾液
第5章 大腸がん
1 早期発見のためのバイオマーカー
2 リンパ節転移予測のためのバイオマーカー
3 遠隔転移・長期予後・再発のためのバイオマーカー
4 マイクロRNAを臨床応用する際に考慮すべき事項
第6章 慢性肝疾患におけるmiRNA発現の意義
1 肝臓におけるmiRNAの役割
2 肝疾患に関係する代表的なmiRNAの疾患における役割
2.1 miR-122
2.2 miR-194/192
2.3 miR-223
2.4 miR-29
2.5 miR-21
3 循環血中のmiRNAにおける肝疾患診断
4 miRNA/exosomeを用いた核酸創薬の可能性
第7章 膵臓がん・胆道がん
1 膵臓がん・胆道がんの概要
2 膵臓がん・胆道がんの腫瘍マーカー
3 血中マイクロRNAを用いたがん検出検査
4 血中マイクロRNAを用いた膵臓がん・胆道がん診断の現状
5 血清マイクロRNA検査による膵臓がん・胆道がん診断開発への取り組み
<循環器系・生活習慣病>
第8章 不整脈
1 はじめに
2 不整脈基質
3 心房細動
4 心室性不整脈
5 マイクロRNAを不整脈のバイオマーカーとして用いる際の留意点
6 不整脈のリスク評価におけるマイクロRNAの位置づけ
7 結語
第9章 メタボリックシンドローム
1 はじめに
2 肥満とmiRNA
3 脂質異常症とmiRNA
4 高血圧とmiRNA
5 IRとmiRNA
6 おわりに
<呼吸器系>
第10章 肺がん
1 はじめに
2 肺癌におけるmiRNA発現異常
2.1 TS miRNA
2.2 Onco-miRNA
2.3 肺癌の予後に関わるmiRNA
2.4 肺癌患者の血清およびエクソソームmiRNA
2.5 肺癌の薬剤耐性および治療標的miRNA
3 miRNAを用いた肺癌治療
4 今後の展望
第11章 気管支喘息
1 はじめに
2 各種疾患とmiRNA
3 喘息バイオマーカーとしてのmiRNAの可能性
4 気道炎症の指標としての喀痰中miRNAの可能性
5 喘息病態形成因子としてのmiRNAsの役割およびそのバイオマーカーとしての可能性
6 miRNAの喘息治療への応用
7 おわりに
<生殖器・泌尿器系>
第12章 腎疾患とmicroRNA
1 はじめに
2 腎線維化を修飾するmicroRNA
3 糖尿病性腎症を修飾するmicroRNA
4 急性腎障害を修飾するmicroRNA
5 おわりに
第13章 microRNAと膀胱がん
1 概要
2 はじめに
3 膀胱がんにおけるリキッドバイオプシー
4 膀胱がんにおけるmiRNAの発現異常
5 膀胱がんの診断と予後におけるエクソソームのmiRNA
6 おわりに
第14章 前立腺がんに対するmiRNA診断薬の開発の現状
1 はじめに
2 miRNAによる悪性化形質制御
3 核酸医薬の開発
4 分泌型miRNAによる機能
5 バイオマーカーとしての分泌型miRNA
6 おわりに
第15章 卵巣がん臨床におけるマイクロRNAバイオマーカー実現への期待
1 卵巣がん検診?
2 がん診療バイオマーカー
2.1 卵巣がん早期診断を目指した臨床試験
2.2 遺伝子検査としての体外診断用医薬品の保険承認
3 バイオマーカーとしてのマイクロRNA
3.1 早期診断として
3.2 予後予測として
3.3 治療薬奏効率予測として
4 課題と今後の展望
第16章 子宮内膜症の病態形成におけるマイクロRNAの役割
1 はじめに
2 子宮内膜症におけるマイクロRNAの発現異常
3 子宮内膜症において発現が減少しているマイクロRNAとその意義
4 子宮内膜症において発現が増加しているマイクロRNAとその意義
5 マイクロRNAを標的とする薬剤
6 バイオマーカーとしてのマイクロRNA
7 おわりに
<内分泌器系>
第17章 乳がん
1 乳がんにおけるマイクロRNA
2 マイクロRNAの乳がん診断への応用
3 マイクロRNAの乳がん治療への応用
4 展望
第18章 甲状腺疾患におけるマイクロRNAと臨床応用
1 序論
2 MicroRNAと生体試料
3 甲状腺がんとmicroRNA
3.1 腫瘍組織におけるmicroRNA解析
3.2 FNABにおけるmicroRNA解析
3.3 血液におけるmicroRNA解析
4 自己免疫性甲状腺疾患とmicroRNA
5 まとめ
第19章 副腎疾患とマイクロRNA
1 はじめに
2 副腎ホルモン産生腫瘤とマイクロRNA
2.1 アルドステロン産生腫瘍
2.2 コルチゾール
2.3 アドレナリン
3 副腎悪性疾患とマイクロRNA
3.1 副腎皮質癌
3.2 悪性褐色細胞腫
4 バイオマーカーとしての血中マイクロRNA
5 おわりに
<免疫・アレルギー系>
第20章 皮膚疾患
1 乾癬
2 アトピー性皮膚炎
3 薬疹/中毒疹
4 全身強皮症
5 多発筋炎/皮膚筋炎
6 悪性黒色腫
7 有棘細胞癌
第21章 マイクロRNAと炎症性腸疾患
1 はじめに
2 自然免疫制御におけるmiRNAの役割
3 獲得免疫制御におけるmiRNAの役割
4 IBDにおけるmiRNA
5 miRNAの治療応用
6 最後に
<神経・運動器系>
第22章 miRNAと認知症
1 はじめに
2 認知症
3 血液バイオマーカーの探索とレトロスペクティブな発症予測モデルの開発
4 効果的なmiRNAと遺伝子機能アノテーション
5 AD発症・移行を予測するプロスペクティブな予測診断システムの開発
6 データベース構築
7 おわりに
第23章 miRNAと骨代謝
1 はじめに
2 In vivoにおけるmiRNAの骨代謝制御
3 骨粗鬆症
4 転移性骨腫瘍
5 骨折/再生
6 おわりに
第24章 miRNAと筋分化,筋再生,筋萎縮
1 はじめに
2 筋肉に関係する筋肉特異的miRNAと筋肉非特異的miRNA
3 細胞外miRNA
4 老齢の血中で減少する筋分化誘導能をもった細胞外miRNA
5 miR-199-3pの筋分化誘導
6 筋再生におけるmiR-199-3pの効果
7 老齢筋萎縮に対するmiR-199-3pの効果
8 miR-199-3pの筋疾患に対する治療効果
9 おわりに
第25章 老化とmicroRNA
1 細胞老化とは
2 細胞老化に関わる分子とマーカー
3 細胞老化を制御するmiRNA
4 老化制御機構を標的とした治療戦略について
<その他>
第26章 miRNA機能解析技術の進歩
1 miRNAの発現プロファイリング
2 バイオインフォマティクスアルゴリズムによるmiRNAターゲットの予測
3 細胞ベースのレポーターライブラリーアッセイを用いたmiRNAのターゲットスクリーニング
4 CLIPによるmiRNAとターゲットの相互作用
第27章 エクソソームと臓器連関
1 はじめに
2 Exo-miRNA放出器官としての脂肪組織
3 肥満におけるExo-miRNAを介した臓器連関
4 Exo-miRNAによる膵β細胞増殖
5 おわりに
第28章 RNA修飾と疾患
1 はじめに
2 N6-Methyl Adenosine(m6A)修飾酵素と疾患
2.1 Methyltransferase-Like Protein 3(METTL3)
2.2 Fat Mass And Obesity-Associated Protein(FTO)
2.3 Alpha-Ketoglutarate-Dependent Dioxygenase AlkB Homolog 5(ALKBH5)
3 N7-Methyl Guanosine(m7G)修飾酵素と疾患
4 N1-Methyl Guanosine(m1G)修飾酵素と疾患
4.1 tRNA Methyltransferase 10A(TRMT10A)
4.2 tRNA Methyltransferase 10C(TRMT10C)
5 5-Methyl Cytosine(5mC)修飾酵素と疾患
5.1 DNA(cytosine-5-)-Methyltransferase 2(DNMT2)
5.2 NOP2/Sun RNA Methyltransferase 2(NSUN2)
6 N4-Acethyl Cytosine(ac4C)修飾酵素と疾患
7 Pseudo Uridine(ψ)修飾酵素と疾患
8 おわりに
【第Ⅱ編 miRNA検出・診断技術】
第1章 次世代シーケンサーによる細胞外miRNA測定
1 はじめに
2 細胞外解析サンプル
3 細胞外miRNA抽出及びクオリティーチェック
4 細胞外シーケンスライブラリー調整
5 細胞外miRNA-Seqのシーケンスデータ
6 おわりに
第2章 DNAチップによる血漿・血清中miRNA測定
1 はじめに
2 血中miRNAの測定技術の課題
3 血中miRNAの抽出精製技術
4 血中miRNAの測定技術
5 おわりに
第3章 ナノワイヤデバイスによる尿中miRNA測定
1 はじめに
2 リキッドバイオプシーの低侵襲性・簡便性
3 リキッドバイオプシーの網羅性
4 細胞外小胞
5 ナノワイヤの開発
6 ナノワイヤデバイスにより抽出した尿中miRNAの解析
7 ナノワイヤとAIによる尿中miRNA解析と脳腫瘍の早期検知
8 おわりに
第4章 ナノポアテクノロジーによるmiRNAおよびエクソソームの検出
1 はじめに
2 ナノポア技術を用いたmiRNAの直接検出
3 MinIONによるmiRNA検出
4 ナノポア技術によるエクソソームの検出
5 おわりに
第5章 ビーズ濃縮によるmiRNA定量技術
1 はじめに
2 バイオマーカーとしてのマイクロRNA
2.1 マイクロRNAの分子生物学
2.2 物理化学的性質をもとにした他バイオマーカーとの比較
3 測定技術基盤
4 まとめ
第6章 AIを用いたマイクロRNAと診断応用への実際と課題
1 はじめに
2 ゲノム分析からプロテオミックスなどを網羅的に分析するAIを用いたがん診断
3 深層学習の基本特徴
4 AIをがん診断に利用する際の問題点
5 実用化へ向けた転移学習の利用
6 深層学習による学習のプロトコールと実際
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