刊行にあたって
プラスチックが工業的に本格的に生産され、人々の暮らしの中に入ってきたのは1950年代からである。それまで人類は、木材、金属、ガラス、陶器、布、紙など様々な素材を利用してきたが、素材ごとに加工性や重量、耐衝撃性、耐水性、耐久性などに難点が存在していた。しかしプラスチックは、軽くて加工しやすく、なおかつ耐久性や耐衝撃性にも優れており、しかも安価な、まさしく人類が追い求めてきた究極の素材であった。そのためプラスチック産業は1970年代から急激な成長を遂げ、1990年には体積ベースでの生産量が鉄を超え、現在は全世界で約4億トンが毎年生産されている。その間プラスチックは加工法の改良や複合材料化によって適用できる製品分野を大きく広げ、従来から最も大量に使用されている容器・包装分野から家電・自動車・家屋内装など、現在は日常生活のあらゆる個所にプラスチック製品が存在している。さらに一般的にはあまり注目されていないが、ガス管や上下水道のパイプやマンホールもプラスチック製品に置き換わりが進められており、電線の被覆なども合わせると、ライフラインそのものがプラスチックによって支えられているといっても過言ではない。
(中略)
プラスチックをMRするということは炭素貯留にもつながり、カーボンニュートラル(Carbon Neutral : CN)的にも非常に意義があるため、今後ますますその必要性は高まることが想定される分野である。この視点で廃棄物処理を考えた場合、生分解プラスチックといえどもそのまま無責任に地球に廃棄物処理をゆだねるのは大きなモラルハザードであり、すべての素材を回収して再利用方法を研究開発することが求められる。積極的な若手研究者のこの分野への参画が望まれる。
(「第1章」より抜粋 監修 八尾 滋)
著者一覧
内藤 稔 エレマ・ジャパン(株)/株式会社湘南貿易
加藤 由章 (株)インテグレーションケイ
佐々木 恵 EEFA(環境省 環境カウンセラー)
辰巳 昌典 (株)プラスチック工学研究所
古屋仲 茂樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所
松林 卓弘 SABICスペシャリティー事業部/SHPPジャパン合同会社
山崎 秀夫 BASFジャパン(株)
井上 智之 ・ 稲垣 陽平 (株)ADEKA
稲垣 京子 東洋紡(株)
渡邉 賢 東北大学
齊田 靖治 コニカミノルタ(株)
原 英和 古河電気工業(株)
加堂 立樹 サントリーホールディングス(株)
髙松 頼信 (株)TBM
加志村 竜彦 (株)リファインバースグループ
佐藤 圭祐 一般財団法人化学研究評価機構 高分子試験・評価センター
髙取 永一 株式会社東ソー分析センター
福井 美悠 株式会社日本政策投資銀行
西 秀樹 西包装専士事務所
土屋 博隆 土屋特許事務所
目次 + クリックで目次を表示
はじめに
1.廃棄プラスチックのリサイクル
2.複合材料のリサイクル
2.1 異種高分子(エラストマーなど)混合系
2.2 フィラー混合系
2.3 繊維混合系
2.4 異種プラスチックフィルム積層系
2.5 複合材料まとめ
おわりに
第2章 環境配慮型設計を見据えた資源プラスチックをめぐる産業界の動向と将来展望
~4R(3R+1R)推進と業界の立場と経済活動~
はじめに
1.今回の法律と従来の3Rとの違いとは?
2.食品包装用プラスチックのリサイクルの現状と問題点
2.1 PETボトルのリサイクル
2.2 その他プラスチック容器のリサイクル
3.PETボトルのリサイクルの動向(各業界の思惑)
3.1 飲料業界の思惑
3.2 リサイクル業界の思惑
4.その他プラスチックのリサイクルの動向
4.1 その他プラスチックに係る業界とは?
4.2 食品用包装が必要とされる機能とは
4.3 リサイクル側から要求される事項とは?
4.4 包装材をリサイクルするうえでの問題点
5.食品包装リサイクルの問題譚解決に向かって
5.1 機械メーカーとして
5.2 材料メーカーとしての取り組み
おわりに
第3章 資源プラスチックの選別システムの最新動向
第1節 軟包材系リサイクル材の選別技術について
はじめに
1.軟包材とは
1.1 軟包材の定義
1.2 成形方法から見た素材
1.3 軟質材の特徴と構造
1.4 軟包材のラミネート方法
2.選別技術の歴史
2.1 選別法の変遷
2.2 比重選別法の普及
2.3 光学選別技術(近赤外線 色識別 X線透過/蛍光 他)の普及
2.4 DI/AI選別技術および小サイズフレーク選別技術
3.軟包材のマテリアルリサイクル ケミカルリサイクルにおける可能性と問題点
おわりに
第2節 センサー選別機と最新プラントビルディング
はじめに
1.センサー選別機とは
1.1 選別とは
1.2 近赤外線(NIR)センサー選別
1.3 選別コンセプトとは
2.最先端プラントビルディングとは
2.1 全てを左右するフローチャート
2.2 開梱・破袋 選別対象物をプラントに適切に投入する
2.3 選別前処理 選別対象物を最適な状態で選別機へ
2.4 欧州のスタンダード、バリスティックセパレーター
2.5 選別機を通ったあと 選別後工程
2.6 モニタリング 工程管理
おわりに
第3節 異物除去技術
はじめに
1.異物除去概要
2.スクリーンチェンジャー
3.レーザーフィルター
おわりに
第4節 AIを用いた廃プラスチックの選別作業
はじめに
1.AI画像認識を用いたロボット選別システムの現況
2.黒色~濃色プラスチック選別へのAI画像認識の適用
2.1 実験試料
2.2 3D特徴量計測による自動識別
2.3 AI画像認識による自動識別
3.リサイクル現場への導入に向けた課題
おわりに
第4章 資源プラスチックの再生に向けた最新技術~品質向上に向けて~
第1節 プラスチック劣化の原因とその対策
はじめに
1.リサイクルプラスチックの力学的な特性の成形条件依存性0
2.物理劣化・物理再生理論
3.力学的な特性と内部構造
3.1 紫外線劣化特性とタイ分子数
3.2 小角X線散乱法による結晶構造解析
おわりに
第2節 廃棄物削減と用途拡大に向けた
再生材を使用した高機能エンジニアリングプラスチックの開発
はじめに
1.サステナビリティの歴史
2.新たなリサイクルの取り組み
3.アップサイクルの取り組み
4.サステナブルなLNP™ VISUALFX™樹脂
5.クローズドループリサイクルのプロジェクト
6.リサイクルプラスチックのサポートサービス
7.将来展望
8.SABICについて
第3節 再生プラスチックの物性を向上させる試み
~メカニカルリサイクル向けの新添加剤「IrgaCycle™」~
はじめに
1.プラスチックリサイクルトレンドと課題
2.プラスチックの劣化
2.1 熱酸化劣化
2.2 光劣化
3.IrgaCycle™のアプローチ
3.1 再生ポリオレフィン硬質用途の添加剤
3.2 再生ポリオレフィン軟包装用途の添加剤
3.3 不純物を含む再生オレフィン用途の添加剤
3.4 屋外用途に再利用される再生ポリオレフィンの耐候性
3.5 高レベル異物混入ポリオレフィンの加工性と長期熱安定性の向上
おわりに
第4節 マテリアルリサイクル向け添加剤パッケージの開発
はじめに
1.リサイクルの種類
1.1 マテリアルリサイクルにおける課題
2.マテリアルリサイクルに効果を発揮する添加剤
2.1 リサイクルプラスチックの熱劣化と酸化劣化機構
2.2 酸化防止剤
2.3 核剤
2.4 その他の添加剤
3.マテリアルリサイクルプラスチック向け製品の開発
3.1 リサイクルプラスチックの分析
3.2 UPRシリーズの特徴
おわりに
第5節 包装におけるプラスチック資源循環のためのモノマテリアル構成材料
はじめに
1.プラスチック廃棄物とその環境影響に配慮する国内外の動向
1.1 国内でのプラスチック廃棄物とその処理状況
1.2 海外でのプラスチック廃棄物対策状況
1.3 廃プラスチックの輸出入とバーゼル条約の改定
1.4 国内でのプラスチック廃棄物対策
1.5 東洋紡での環境に配慮したプラスチックフィルム製品開発
2.モノマテリアル化とその課題
2.1 モノマテリアル化の目的と現状
2.2 物性面における課題
3.モノマテリアル構成の提案
3.1 ポリエステルモノマテリアル
3.2 モノポリプロピレン
4.今後の環境対応への取組み
第6節 プラスチックの高温高圧水中での分解挙動
はじめに
1.高温高圧水中でのプラスチックの分解挙動
1.1 各種プラスチックの高温高圧水中反応における固体重量収率変化
1.2 連続プロセス
1.2.1 二軸押出機プロセス
1.2.2 単軸押出機プロセス
おわりに
第5章 再生プラスチックの応用例
第1節 事務機器におけるマテリアルリサイクル材料の開発と応用例
はじめに
1.プラスチックリサイクルの概要
1.1 プラスチックリサイクルの価値
1.2 プラスチックリサイクルの方法
2.事務機器へのリサイクルプラスチックの適用事例
2.1 リサイクルプラスチック適用の目的
2.2 適用部品の選定
2.3 要求品質を満足するためのリサイクル方法の選定
2.4 リサイクル原料の選定
2.5 アップグレードリサイクルのための技術開発
3.リサイクルプラスチックのアップグレード技術
3.1 リサイクルPC、リサイクルPETの外装部品適用における技術課題
3.2 複合化による材料アップグレード
3.3 リアクティブブレンドを利用した材料アップグレード
3.4 成形技術による材料適用範囲の拡大
おわりに
第2節 メカニカルリサイクル困難なプラスチックごみを身近な製品に再生
~APFU™(Advanced Paper Fibre Upcycling technology)で
複層フィルムを強化プラスチックへ再生~
はじめに
1.プラスチックごみをとりまく状況
2.メカニカルリサイクルが困難なプラスチック;複層フィルム
3.APFU™
3.1 バージンプラスチックへの適用
3.2 ポリアル材への適用
3.3 複層フィルムへの適用
4.APFU™により作製したリサイクル材料の成形例
4.1 グリーントラフ
4.2 ベルマウス
4.3 ボールペン
4.4 ペントレイ
4.5 コースター
4.6 ボトル
4.7 花瓶
おわりに
第3節 PETボトル to PETボトル 水平循環を目指した取り組み
はじめに
1.サントリーのPETボトル戦略
2.PETボトルのメカニカルリサイクル
2.1 取り組みの背景
2.2 開発のポイント
2.3 B to Bメカニカルリサイクルの確立
3.F to Pダイレクトリサイクル
3.1 射出コンプレッション成型方式
3.2 従来のB to Bメカニカルリサイクルからフレークtoプリフォームへの発展
3.3 F to Pダイレクトリサイクル技術の検証ポイント
3.4 今後
4.使用済みプラスチックの再資源化
おわりに
第6章 再生樹脂を用いた新素材
第1節 再生材料を50%以上含む「資源循環を促進する素材」
はじめに
1.再生材料の現状
2.再生材料の循環に求められる回収システム
3.再生材料を50%以上含む素材
おわりに
第2節 廃プラスチックから新素材を開発~資源循環型社会に向けて~
はじめに
1.カーペットタイルリサイクル事業
1.1 リサイクル技術の概要
1.2 再生塩ビ樹脂
2.ナイロンリサイクル事業
2.1 リサイクル技術の概要
2.2 再生ナイロン樹脂
2.2.1 コンパウンド、成形品用途
2.2.2 繊維用途
おわりに
第7章 再生プラスチック評価
第1節 再生ポリプロピレン材料の耐候性評価
はじめに
1.実験概要と手法
2.結果と考察
おわりに
第2節 再生プラスチックの品質評価(劣化に対する評価)
はじめに
1.品質の意味するところ
2.プラスチックの起源
2.1 天然のプラスチック リグニン
2.2 プラスチックの誕生
2.3 プラスチックの処理問題とリサイクル
3.プラスチックの品質の科学的な本質
4.再生により変わらない品質、変わる品質
4.1 プラスチックの規格品質
4.2 溶融状態での品質
4.3 固体状態での品質
4.4 UV照射による検討結果
5.プラスチックの品質差の原因
6.もう一つの再生プラスチックの品質問題
おわりに
第8章 資源プラスチックビジネスの今後の展望
第1節 ESG投資の視点を踏まえたプラスチック資源循環ビジネスの展望
はじめに
1.プラスチック資源循環に取り組む背景と企業がとるべき対応
1.1 国内プラスチック資源循環政策を踏まえて
1.2 EUサーキュラーエコノミー政策、プラスチック戦略等を踏まえて
1.3 2050年カーボンニュートラル実現に向けたグリーン成長戦略を踏まえて
2.ESG投資拡大の背景と企業に求められる非財務情報開示の在り方
2.1 「サーキュラーエコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための
開示・対話ガイダンス」を踏まえた非財務情報開示の着眼点
2.2 ESG投資を巡るEUタクソノミーの動向
おわりに
第2節 中国・ASEANの廃プラスチック類の輸入規制動向と今後の展望
はじめに
1.中国・ASEANの輸入禁止措置
1.1 中国の輸入禁止措置と循環経済対策
2.ASEANの輸入禁止措置と循環経済対策
2.1 輸入禁止措置
2.2 タイ
2.3 べトナム
2.4 マレーシア
2.5 インドネシア
2.6 フィリピン
3.バーゼル条約改正とその影響
3.1 改正の概要
3.2 「特別な考慮」の判断基準(環境省)
3.3 改正の影響
4.廃プラスチックの今後の展望
5.プラスチックリサイクル技術の開発状況
5.1 国の研究(NEDO)
5.2 化学業界のケミカルリサイクル
5.2.1 日本化学工業協会の方針
5.2.2 各社の状況
5.3 軟包装の脱墨・剥離技術
5.4 モノマテリアル化
5.5 マテリアルリサイクル(MR)
5.6 バイオマス化
おわりに
第9章 再生複合材料 特許情報
はじめに
1.特許庁の「プラスチック資源循環」特許技術調査
2.マテリアルリサイクル
3.選別
4.分離
5.添加剤
6.充填材
7.包装
7.1 PETボトル
7.2 プラスチック製容器包装
8.電気製品・事務機
9.建材
10.自動車
おわりに
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