キーワード:
CCS/地球温暖化防止/CO2削減/動向/政策/プロジェクト/分離/化学吸収法/物理吸収法/燃焼前回収/燃焼後回収/膜分離/吸着/酸素燃焼法/膜・吸収ハイブリッド法/ケミカルルーピング法/輸送/貯留メカニズム/モデリング/圧入/モニタリング/挙動シミュレーション/評価/安全性/経済性/技術
刊行にあたって
温暖化は,21世紀に人類が直面するもっとも深刻な地球環境問題だろう。この影響を最小限に抑え込むために,温室効果ガスの大気への排出を出来るだけ抑制する努力が世界各国で行われている。温室効果ガスの中心となるのは,化石燃料の消費に伴って排出される二酸化炭素(CO2)で,世界的にはこれを2050年までに半減しよう,という目標がしばしば取り上げられている。そのため,国際エネルギー機関(IEA)はそれを実現するためのロードマップを描き,これをblue map シナリオと呼んで発表している。それをみると,対策の第一は化石燃料を再生可能エネルギーや原子力という二酸化炭素を排出しないエネルギーへの転換であるが,といって現在エネルギーの主力である化石燃料をただちに止めるわけにはいかない。そこで,それら化石燃料をある程度利用すると同時に,出てきた二酸化炭素を回収し地中等に貯留する技術(CCS)が重要な対策の一つとして大きく取り上げられている。Blue map シナリオでは,二酸化炭素半減努力の19%がCCSによるものとされており,CCSが今後の二酸化炭素の削減には欠くことのできない技術であることが確認されている。
このCCSは天然ガスに随伴して排出されるCO2を回収・地下に貯留する技術として,すでに北海のSleipner天然ガス田をはじめとしていくつかのガス田に適用されている。また,CO2の貯留技術は米国を中心に石油の三次回収方策として多くの油田で利用されている。このような実績をもとにして,今後は火力発電所や製鉄所などの産業における大規模なCO2発生源にCCSを適用していくことが想定されており,IEAのシナリオはその考えを具体的に表現したものと考えてよい。
このように,CCSの将来の重要性は明らかだが,従来その内容を専門的な立場から詳細かつ総合的に扱った書は殆ど存在しなかった。そこで,本書は,CCSについて,特に技術を中心に多面的総合的に解説している。大部分の著者はCCSを専門とした地球環境産業技術研究機構の研究者で実地にCCSを取り扱った経験を持っているので,この書の内容については自信を持って推薦できる。読者も期待をもって読んでいただきたい。
茅 陽一 地球環境産業技術研究機構・副理事長 平成23年11月
著者一覧
茅 陽一 (財)地球環境産業技術研究機構 高木正人 (財)地球環境産業技術研究機構 山地憲治 (財)地球環境産業技術研究機構 秋元圭吾 (財)地球環境産業技術研究機構 佐藤真樹 (財)地球環境産業技術研究機構 清水淳一 (財)地球環境産業技術研究機構 広田 健 (財)地球環境産業技術研究機構 風間伸吾 (財)地球環境産業技術研究機構 東井隆行 (財)地球環境産業技術研究機構 後藤和也 (財)地球環境産業技術研究機構 大野拓也 日揮㈱ 甲斐照彦 (財)地球環境産業技術研究機構 余語克則 (財)地球環境産業技術研究機構 氣駕尚志 ㈱IHI 谷口育雄 (財)地球環境産業技術研究機構 真野 弘 (財)地球環境産業技術研究機構 湯浅城之 (一財)エンジニアリング協会 古川博宣 (一財)エンジニアリング協会 酒見卓也 大成建設㈱ 小嶋令一 大成建設㈱ 石川嘉一 JFEテクノデザイン㈱ | 増井直樹 ㈱大林組 矢野州芳 三菱重工業㈱ 藤田秀雄 三井造船㈱ 村井重夫 (財)地球環境産業技術研究機構 野村 眞 (財)地球環境産業技術研究機構 三戸彩絵子 (財)地球環境産業技術研究機構 千代延俊 (財)地球環境産業技術研究機構 井之脇隆一 日本CCS調査㈱ 薛 自求 (財)地球環境産業技術研究機構 小牧博信 (財)地球環境産業技術研究機構 喜田 潤 (財)地球環境産業技術研究機構 瀧澤孝一 (財)地球環境産業技術研究機構 小出和男 (財)地球環境産業技術研究機構 岩本 力 (財)地球環境産業技術研究機構 本庄孝志 (財)地球環境産業技術研究機構 秦 茂則 経済産業省 佐藤光三 東京大学 中尾真一 工学院大学 松岡俊文 京都大学 阿部正憲 日本CCS調査㈱ |
目次 + クリックで目次を表示
1 はじめに
2 地球温暖化対策の目標
3 地球温暖化対策の基本構造
4 CCSとは
5 温暖化対策シナリオにおけるCCSの役割
【第一編 CCSの国際動向】
第1章 CCSの政策動向
1 CCSの国際的枠組み(G8とMEF)
1.1 G8グレンイーグルズ・サミット
1.2 G8洞爺湖サミットとIEAエネルギー技術見通し
1.3 国際連携機関の設立
1.4 IEA CCSロードマップ
1.5 G8ラクイラ・サミットとMEFの設立
1.6 G8ムスコカ・サミット
2 世界のCCS政策
2.1 政府の財政支援
2.2 法基準類の整備
2.3 キャプチャーレディ
3 日本のCCS政策
3.1 技術戦略マップ
3.2 ロンドン条約と海洋汚染防止法
3.3 Cool Earth-エネルギー革新技術計画
3.4 CCS国内実証試験へ向けた取組み
3.5 エネルギー基本計画
第2章 CCSのプロジェクト動向
1 CCSプロジェクトの現状
1.1 CCSプロジェクト数について
1.2 大規模プロジェクト(LSIPs)について
1.3 大規模プロジェクトへの主要公的資金支援プログラムについて
1.4 CCSプロジェクトキャンセル/遅延の要因について
2 海外CCSプロジェクト
2.1 運転段階にあるプロジェクト
2.2 実行段階にあるプロジェクト
【第二編 CO2回収技術】
第3章 分離回収―全体観と今後の展望―
1 はじめに
2 二酸化炭素(CO2)の物性
3 CO2発生源と回収の最適な組合せ
4 CO2回収技術の現状と課題
4.1 化学吸収:常圧用化学吸収液
4.2 化学吸収:高圧用吸収液
4.3 物理吸収
4.4 膜分離
4.5 吸着(固体吸収材)
4.6 酸素燃焼
5 今後の展望
6 おわりに
第4章 燃焼後回収―化学吸収法を中心に―
1 燃焼後回収技術の概要
2 化学吸収法の国際動向
3 RITE技術の紹介
4 今後の展望
第5章 燃焼前回収―物理吸収法,化学吸収法―
1 燃焼前回収技術の概要
1.1 全般
1.2 物理吸収法
1.3 化学吸収法
1.4 ハイブリッド法(物理吸収・化学吸収混合)
2 世界の動向
3 今後の展望
第6章 膜法
1 膜分離技術の概要
2 CO2分離膜研究開発の国際動向
2.1 高分子膜
2.2 無機膜
2.3 イオン液体膜
2.4 促進輸送膜
3 分子ゲート膜
4 まとめと今後の展望
第7章 吸着法
1 はじめに
2 吸着分離法の概要
2.1 吸着分離とは
2.2 物理吸着法によるCO2分離回収技術
2.3 現行の吸着分離法の課題
3 吸着分離法開発の最新国際動向
3.1 ULCOSプロジェクト
3.2 COURSE50プロジェクト
3.3 米国NETL固体吸収材プロジェクト
4 RITEにおける新規CO2吸着分離技術開発
4.1 アミン修飾メソ多孔体の耐水蒸気型CO2吸着材としての適用
4.2 高圧ガスからのCO2分離用吸着剤
5 今後の展望
第8章 酸素燃焼法
1 概要
2 酸素燃焼法の概要
3 世界の酸素燃焼システムの開発動向
4 カライド(Callide)酸素燃焼プロジェクト
4.1 対象発電所および貯留サイト
4.2 プロジェクトの背景およびスケジュール
4.3 実証運転での確認事項
5 商用化に向けて
5.1 プラント高効率化による効率低下の軽減
5.2 将来の商用化に向けた技術的課題
6 まとめ
第9章 その他回収方法―新規回収法を中心に―
1 はじめに
2 膜・吸収ハイブリッド法
2.1 膜・吸収ハイブリッド法の開発
2.2 膜・吸収ハイブリッド法の概要
2.3 膜・吸収ハイブリッド法の特徴
2.4 膜・吸収ハイブリッド法の適用例と今後の展開
3 ケミカルルーピング法
4 温度スイング昇華法(Thermal Swing Sublimation)
5 深冷分離法
6 ハイドレート法
7 電気スイング吸着法
8 溶融炭酸塩燃料電池による回収法
【第三編 CO2輸送技術】
第10章 CO2輸送技術
1 はじめに
2 CO2輸送システムの概要
3 液化CO2貯蔵タンク(陸上基地,洋上着底基地)
3.1 設計条件
3.2 陸上基地及び洋上着底基地用貯蔵設備(液化CO2タンク)の仕様
3.3 得られた知見と今後の課題
4 液化CO2輸送船
4.1 目的
4.2 液化CO2輸送船の検討内容
4.3 研究の成果
4.4 今後の課題
5 洋上着底基地
5.1 概要
5.2 検討条件の設定
5.3 基本構造及び基礎の選定
5.4 荒天待機の評価
5.5 構築工法の提案
5.6 今後の課題
6 洋上浮体基地
6.1 浮体形式と係留方式
6.2 概念設計の例
6.3 今後の課題
7 CO2ハイドレート船舶輸送
7.1 CGH輸送の基本システムの構築
7.2 CGH輸送のモデルケースの設定(実証機ベース)
7.3 CGH輸送の特徴
7.4 今後の課題
8 パイプライン輸送
8.1 海外の動向
8.2 国内の適用法規
8.3 輸送条件
8.4 パイプ材質と腐食対策
8.5 パイプライン・システム構成
8.6 施工方法
8.7 課題
【第四編 CO2貯留技術】
第11章 CO2地中貯留技術の動向と今後の展望
1 CO2地中貯留技術の概要
2 海外動向
2.1 海外CO2地中貯留プロジェクトの動向
2.2 研究開発動向
3 国内動向
3.1 わが国におけるCO2貯留層調査と貯留ポテンシャルの算出
3.2 長岡プロジェクトの成果と今後
3.3 大規模実証試験の進捗状況
4 CO2地中貯留実用化のための課題と今後の展望
第12章 CO2地中貯留メカニズム
1 はじめに
2 トラップメカニズム
2.1 構造/層位トラップ
2.2 ガストラップならびに残留ガストラップ
2.3 溶解トラップならびにイオン化トラップ
2.4 鉱物トラップ
3 おわりに
第13章 地質モデリング技術
1 はじめに
2 地質モデル構築の流れ
3 地質モデル構築に必要な調査・探査の種類
3.1 地質学的記載
3.2 各種物理検層
3.3 弾性波探査
4 各種探査記録の統合
4.1 時間-深度変換
4.2 主要地層境界面
4.3 対象層準(貯留層)詳細解析
4.4 岩石物性パラメータ設定
5 CO2圧入実証サイトでの地質モデル構築
第14章 CO2圧入技術(掘削関係)
1 掘削技術の現状
2 CO2圧入井の概要
3 大偏距井(ERD)掘削技術について
第15章 CO2モニタリング技術
1 はじめに
2 CO2挙動モニタリング
3 CO2挙動モニタリングの結果
3.1 音波検層
3.2 比抵抗検層
3.3 中性子検層
3.4 坑井間弾性波トモグラフィによる速度異常域の検出
第16章 CO2挙動シミュレーション技術
1 はじめに
2 GEM-GHG
2.1 主な機能の概要
2.2 長岡サイトにおけるCO2圧入実証試験への適用
3 TOUGH2系解析コード
3.1 TOUGH2系解析コードの概要
3.2 貯留層の圧力変化やTOUGH2によるCO2地中挙動解析
4 まとめ
第17章 新CO2貯留技術
1 はじめに
2 CO2マイクロバブル観察実験
3 CO2マイクロバブル観察実験結果
4 まとめ
【第五編 CCSの安全性と経済性】
第18章 地中貯留の安全性評価
1 安全性評価技術の必要性
2 CO2地中貯留に関するリスク評価とリスク管理
2.1 はじめに
2.2 CO2貯留プロジェクトに関するリスク評価と管理のための枠組み
2.3 RITEにおける取り組み
3 環境安全性評価技術,動向
3.1 海底下CCSの環境影響に係る法規制
3.2 CO2漏出事例仮説
3.3 海洋生物に及ぼす高CO2環境の影響
3.4 おわりに
4 CCSの安全な実施に向けた取り組み
5 CCSの社会受容性
第19章 CCSの経済性
1 はじめに
2 CCSの経済性評価
3 各工程別のコスト算出
3.1 CO2の回収
3.2 輸送
3.3 貯留
4 おわりに
座談会 わが国でのCCSの課題と展望
秦 茂則,佐藤光三,中尾真一,松岡俊文,阿部正憲,高木正人,本庄孝志
実学 脱炭素エネルギー基礎講座
価格(税込): 4,400 円
二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の最新動向
価格(税込): 63,800 円
脱炭素と環境浄化に向けた吸着剤・吸着技術の開発動向
価格(税込): 68,200 円
CO2削減に向けてバイオナフサを石油化学プラントに用いた化学製品の価格と競争力比較
価格(税込): 242,000 円