キーワード:
ヘルスケア/ウエアラブル/健康管理/未病/バイオセンサー/生体活動モニタリング/非侵襲/唾液/呼気/尿/在宅診断/生活習慣病/自己血糖測定/血糖値センサー/糖尿病/がん診断/ビッグデータ/電界効果トランジスタ/バイオマーカー/イメージング
刊行にあたって
2010年代に入り、生命や生物現象の解析は、次世代シークエンサーの発展により、ゲノム配列解読のスピードが急上昇し、既読量が膨大化しつつある。これは、半導体などの飛躍的な機能向上によるコンピュータの性能や記憶容量の高度化やクラウドシステムの進化によって、今後、さらなる展開が進むものと考えられている。ゲノム解析技術の進歩に追随するように、モノリスなどの新材料を用いた高性能ナノ分離やイメージングを取り込んだ高度な質量分析など、多くの機器分析も進化してきた。
生命を構成する分子を網羅的に解析する、いわゆるゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスは、個々に進んできたが、今や時代は、これらを統合した「トランスオミクス」時代を迎えつつある。さらに、ゲノム編集技術なども可能になり、ライブ・イメージング、エピジェネテイック解析、インターラクトーム解析やsnRNA解析も加わり、集積データは膨大になり、いわゆる「ビッグデータ」解析時代がやってきている。多種多様な生命分子を分離・同定し定性・定量分析していく技術の高度化(微量化や超高速化も含まれる)に対応して、その分析プロセスを含めて、新しい現象や分子を見極めることが必須である。
ヘルスケア研究は、上記の解析に加えて、「時間」という要素の取り込みにより、これまでの「スナップショット」研究から「動態」研究へのシフトが一段と進むと考えられている。これまで漠然としてとらえどころのなかった「記憶」、「感覚」、「感情」、さらには、「思考」にいたる、いわゆる心理的、哲学的、宗教的、などと、これまで精神的な領域として分類されていた領域にまで、分子レベルでの研究領域が広がってくると考えられる。その先には、ヒト脳機能の分子レベルでの詳細研究へとつながる。すべての分子の動態をまさに、時々刻々と「心電図」のようにとらえて、モバイルを用いて個人個人の「ありのまま」の状態を解析してセルフでヘルスケアしていく社会的要請もすぐ近くまできている。
トランスオミクスからの統合データに起因するビッグデータの統計数理解析力の養成も生命科学の将来の教育と研究にとってその重要性が認識されてくるであろう。さらに、複雑で膨大なデータから得られる研究成果を分かりやすく一般の人々にも伝えていくことにも重要性が増してくる。
このように、バイオ計測によるヘルスケアを「ありのまま」に日常的にリアルタイムに測定して時々刻々自己管理していく近未来予測されてきた絵が実現に近づいてきた。これらの延長に、未病を予知していくヘルスケアの本来あるべき潮流の到来の現実を直視した未来志向の書籍となっている。(本書「はじめに」より抜粋)
本書は2016年に『ヘルスケアを支えるバイオ計測』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
植田充美 京都大学大学院 久保田博南 ケイ・アンド・ケイ ジャパン㈱ 小栗宏次 愛知県立大学 和泉自泰 九州大学 竹田浩章 九州大学 馬場健史 九州大学 有久 亘 浜松医科大学 瀬藤光利 浜松医科大学 和辻 徹 シャープ㈱ 田上信介 シャープ㈱ 民谷栄一 大阪大学 小林大造 立命館大学 服部浩二 立命館大学 小西 聡 立命館大学 高井まどか 東京大学 横山憲二 東京工科大学 岩佐 尚 (国研)産業技術総合研究所 小澤一道 (国研)産業技術総合研究所 佐々木典子 (国研)産業技術総合研究所 平塚淳典 (国研)産業技術総合研究所 池田 丈 広島大学 黒田章夫 広島大学 横山 新 広島大学 秋元卓央 東京工科大学 安田 充 関西学院大学 村上裕二 豊橋技術科学大学 広津崇亮 九州大学 | 遠藤達郎 大阪府立大学大学院 山川考一 (国研)日本原子力研究開発機構 合田達郎 東京医科歯科大学 宮原裕二 東京医科歯科大学 竹岡敬和 名古屋大学 伊藤成史 ㈱タニタ 三宅司郎 (公財)京都高度技術研究所 山崎朋美 (公財)京都高度技術研究所 泊 直宏 (地独)京都市産業技術研究所 山本佳宏 (地独)京都市産業技術研究所 松崎潤太郎 国立がん研究センター研究所 落谷孝広 国立がん研究センター研究所 三林浩二 東京医科歯科大学 芳賀洋一 東北大学 鶴岡典子 東北大学 松永忠雄 東北大学 成瀬 康 (国研)情報通信研究機構 横田悠右 (国研)情報通信研究機構 東 佑一朗 (国研)情報通信研究機構 南 豪 山形大学大学院 南木 創 山形大学大学院 時任静士 山形大学大学院 脇田慎一 (国研)産業技術総合研究所 利川 寶 ㈱タイヨウ 前中一介 兵庫県立大学 小須田 司 セイコーエプソン㈱ |
執筆者の所属表記は、2016年当時のものを使用しております。
目次 + クリックで目次を表示
1 はじめに
2 バイオ計測による分析のデジタル評価へ
3 ビッグデータの集中管理化へ
4 ウエアラブル計測とその将来志向へ
第2章 ヘルスケアを支える生体情報計測
1 はじめに
2 歩数計・活動量計
3 体重計・体脂肪計
4 脈拍計
5 パルスオキシメータ
6 心電図モニタ
7 血圧計
8 スマートフォンとヘルスケア機器との関係
9 これからのヘルスケア機器
10 医療機器とヘルスケア機器
第3章 データの活用
1 状態推定技術が拓く次世代ヘルスケア
1.1 「病気の診断」から「状態の推定」へ
1.2 生体信号のモニタリング
1.3 自動車運転におけるドライバの状態推定
1.4 お化け屋敷における「ビビり度」推定
1.5 カフレス血圧推定技術
1.6 トイレでの状態推定技術
1.7 まとめ
2 超臨界流体抽出分離技術を用いた代謝プロファイリング
2.1 はじめに
2.2 超臨界流体
2.3 超臨界流体抽出
2.4 超臨界流体クロマトグラフィー質量分析
2.5 オンライン超臨界流体抽出―超臨界流体クロマトグラフィー質量分析
2.6 おわりに
3 ヘルスケアのためのイメージング技術
3.1 健康とは
3.2 健康の捉え方
3.3 身体疾患のイメージング
3.3.1 アルツハイマー型認知症
3.3.2 肝細胞がん
3.3.3 アテローム性動脈硬化
3.4 精神疾患・メンタルヘルスのイメージング
3.5 ソーシャルヘルスのイメージング
3.6 ヘルスケアのためのイメージング
4 ビッグデータを活用したデジタルヘルスケアに向けた開発
4.1 はじめに
4.2 実証事業と標準化
4.2.1 実証事業
4.2.2 標準化
4.3 普及に向けた枠組み
4.4 ヘルスケア製品とプロジェクト
4.5 ヘルスケアにおけるビッグデータとビジネスモデル
4.6 今後の進展
第4章 技術開発
1 ヘルスケアモバイルバイオセンサーの開発
1.1 はじめに
1.2 バイオセンサーのモバイル化のための電気化学測定システムの開発
1.3 モバイル型遺伝子センサーとその応用
1.4 モバイル型イムノセンサー
1.5 モバイル型生菌数センサー
1.6 携帯電話―バイオセンサーシステムの開発
1.7 今後の展開
2 血液一滴で高度な診断が可能となるデスクトップ型血液分析装置
2.1 はじめに
2.2 デスクトップ型血液分析装置
2.3 血球/血漿分離デバイス
2.4 オンチップ定量分注デバイス
2.5 吸光光度分析デバイス
2.6 おわりに
3 在宅診断用ヘルスケアチップの開発
3.1 はじめに
3.2 在宅での血液分析を目的とした採血システムの開発
3.3 血液成分分析のための電気化学バイオセンサの開発
3.4 マイクロ流路内壁へのタンパク質および血球付着抑制
3.5 おわりに
4 次世代ヘルスケアのためのバイオセンサー・バイオチップ開発
4.1 はじめに
4.2 酵素電気化学バイオセンサー
4.3 自己血糖測定(SMBG)用バイオセンサー
4.4 好熱性糸状菌由来FADGDH
4.4.1 好熱性糸状菌FADGDH遺伝子の探索
4.4.2 好熱性糸状菌FADGDHの機能解析
4.5 次世代バイオセンサー・バイオチップ展望
5 シリコンリング光共振器をベースとしたバイオセンサーの開発
5.1 半導体をベースとしたバイオセンサー
5.2 シリコンの光学特性
5.3 リング光共振器
5.4 レセプターの固定化
5.5 リング光共振器によるバイオセンシング
5.6 多項目検査への応用
6 蛍光増強効果をもつナノ構造基板を用いたタンパク質の高感度検出
6.1 はじめに
6.2 蛍光増強効果をもつナノ構造基板
6.2.1 高表面積のナノ構造基板
6.2.2 物理現象を利用するナノ構造基板
6.3 薄膜干渉基板を用いた高コントラスト蛍光イメージング
6.3.1 高コントラスト蛍光イメージング技術の開発
6.3.2 高コントラスト蛍光イメージング技術を用いたタンパク質の検出
6.4 おわりに
7 ホールセンサーLSIを用いた非侵襲連続血糖値センサー
7.1 はじめに
7.2 糖尿病と血糖値センサー
7.3 ホールセンサーLSIを用いる「貼る」血糖値センサー
7.4 今後の血糖値や生活習慣病対策センサー開発に向けて
8 線虫嗅覚を用いた高精度がん検出法
8.1 はじめに
8.2 がんの現状
8.3 がんの匂いとがん探知犬
8.4 線虫C. elegansの嗅覚と匂いに対する走性行動
8.5 線虫のがんの匂いに対する反応
8.6 線虫によるがん診断n-noseの精度
8.7 n-noseの利点,欠点
8.8 今後の発展
9 バイオ計測に向けたプリンタブルナノ光学デバイスの開発
9.1 はじめに
9.2 ナノ光学デバイスの創製とバイオ計測への応用
9.2.1 ナノフォトニクス
9.2.2 ナノフォトニクスを基盤技術としたバイオ計測デバイスの開発
9.3 プリンタブルフォトニクスを用いたナノ光学デバイスの開発
9.3.1 ナノインプリントリソグラフィー
9.3.2 プリンタブルフォトニクス
9.3.3 プリンタブルフォトニクスを用いたハイドロゲル製フォトニクス結晶の作製
9.4 おわりに
10 手のひらサイズの非侵襲血糖値センサー
10.1 はじめに
10.2 中赤外レーザーを用いた非侵襲血糖値センサーの開発
10.3 まとめ
11 バイオトランジスタによる生体分子計測
11.1 バイオトランジスタの最新動向
11.2 高集積化MOSトランジスタのバイオ応用
11.2.1 DNAシーケンサー
11.2.2 イオンイメージングセンサー
11.3 有機バイオエレクトロニクス
11.3.1 有機電気化学トランジスタ
11.3.2 有機電気化学イオンポンプ
11.4 まとめ
12 非侵襲的血糖値測定―構造色ゲルを利用したグルコースセンサー
12.1 はじめに
12.2 人工膵臓開発のためのグルコース認識ゲルの研究
12.3 グルコース認識高分子ゲルの非侵襲的血糖値センサーへの利用
12.4 生理条件下で機能するフェニルボロン酸誘導体の開発とその高分子ゲルへの利用
13 尿糖センサー
13.1 はじめに
13.2 尿糖センサーの動作原理と層構造
13.2.1 動作原理
13.2.2 センサーの層構造
13.3 尿糖測定の意義
13.4 ワイドレンジ尿糖計の出現
13.4.1 ワイドレンジ尿糖センサーの開発
13.4.2 SGLT2阻害薬への応用例
13.5 ヘルスケアモニターとしての意義
14 低分子物質に対する抗体開発とバイオセンサーへの応用
14.1 はじめに
14.2 低分子物質とタンパク質との結合
14.2.1 カルボキシ基
14.2.2 アミノ基
14.2.3 ヒドロキシ基
14.2.4 カルボニル基
14.2.5 フェノールのヒドロキシ基
14.3 抗体の作製
14.3.1 モノクローナル抗体
14.3.2 遺伝子組換え抗体
14.4 バイオセンサーへの応用
14.5 まとめ
15 半導体センサーISFETを利用したイムノアッセイ系の開発
15.1 はじめに
15.2 電子デバイスによるバイオ計測:センサーを利用したイオン計測
15.3 半導体イオンセンサー:ISFETの概要
15.4 ISFETによるバイオ計測:酵素反応計測
15.5 ISFETによるイムノアッセイ系の構築
15.5.1 抗体標識用酵素のISFETによる計測
15.5.2 イムノアッセイ系の構築と計測系の検証
15.6 ISFETを利用した迅速イムノアッセイの試み
16 体液中マイクロRNAによる未来型診断とは
16.1 はじめに
16.2 体液中miRNAとは
16.3 体液中miRNA診断の該当疾患
16.4 miRNA測定技術
16.4.1 マイクロアレイ
16.4.2 次世代シークエンサー
16.4.3 定量的RT-PCR法
16.5 おわりに
第5章 「ウエアラブル」への展開
1 キャビタス(体腔)センサ―コンタクトレンズ型バイオセンサ,マウスガード型センサ―
1.1 はじめに
1.2 ソフトコンタクトレンズ(SCL)型グルコースセンサ
1.2.1 SCL型グルコースセンサの作製と特性評価
1.2.2 経口ブドウ糖負荷試験での涙液グルコース計測
1.3 マウスガード型バイオセンサ
1.3.1 マウスガード型グルコースセンサの作製と特性評価
1.3.2 ヒト口腔内環境を模倣したグルコース計測
1.4 おわりに
2 マイクロシステムを用いたウェアラブルヘルスケア機器
2.1 はじめに
2.2 超音波による血管径計測を利用したカフ無し血圧センサ
2.3 体表装着型発汗センサ
2.4 微小循環を用いた皮下生体成分モニタリングシステム
2.5 収束超音波を用いた経穴刺激
2.6 携帯通信端末と通信ネットワークを利用した計測データの有効活用
2.7 おわりに
3 ウェアラブル脳波計の開発
3.1 はじめに
3.2 脳波の原理と限界
3.2.1 脳波の原理
3.2.2 脳波の限界
3.3 簡単に脳波計測が可能なウェアラブル脳波計の開発
3.3.1 一般的な脳波計測手法
3.3.2 導電性ジェルが不要で簡単に脳波が計れる技術の開発
3.3.3 ウェアラブル脳波計のための小型脳波計とヘッドギアの開発
3.3.4 開発したウェアラブル脳波計の評価
3.4 おわりに
4 有機トランジスタ型化学センサの開発動向
4.1 はじめに
4.2 有機トランジスタ型化学センサの構造と動作原理
4.3 免疫センサ
4.4 酵素反応を利用した硝酸イオンおよび乳酸イオンセンサ
4.5 糖センサ
4.6 印刷法を用いたデュアルゲート型有機トランジスタ
4.7 おわりに
5 唾液検査に用いる新規デバイスの開発動向
5.1 はじめに
5.2 唾液検査の対象項目
5.3 新規の研究対象項目
5.4 バイオセンサーとマイクロ流体デバイスの最前線
5.4.1 電位検出型バイオセンサー
5.4.2 電流検出型バイオセンサー
5.4.3 ポンプ送液型マイクロ流体デバイス
5.4.4 電気泳動型マイクロ流体デバイス
5.4.5 遠心送液型マイクロ流体デバイス
5.5 おわりに
6 ヘルスケアを支えるバイオガス計測
6.1 はじめに
6.2 呼気中一酸化炭素(CO)/二酸化炭素(CO2)同時測定システム CARBOLYZER2(mBA-2001)
6.2.1 アプリケーションと臨床使用例
6.3 生体ガス中水素(H2)/メタン(CH4)/一酸化炭素(CO)専用ガスクロマトグラフィ TRIlyzer(mBA-3000)
6.3.1 使用事例
6.4 生体ガス中水素(H2)ガスモニター ハイドライザー(mBA-31)
6.4.1 水蒸気の影響を受けないセンサーの採用
6.4.2 呼気サンプラー部に除湿筒を設置
6.4.3 使用事例
6.5 生体ガス中硫化水素(H2S)/メチルメルカプタン(CH3SH)専用ガスクロマトグラフィ TWIN BREASORⅡ(TB2-14J)
6.6 あとがき
7 絆創膏型生体活動モニタリングシステムの開発
7.1 はじめに
7.2 ウエアラブル生体活動モニタリング
7.3 絆創膏型生体活動モニタリングシステム
7.4 開発例
7.4.1 海外の例
7.4.2 我々の開発例とその詳細
7.5 絆創膏型システムの特性向上
7.5.1 生体信号処理ASIC
7.5.2 コンボセンサと無線内蔵MPU
7.6 まとめ
8 脈拍計測機能付き活動量計「PULSENSE」の開発
8.1 はじめに
8.2 脈拍計測技術の紹介
8.2.1 光学式脈拍計測技術
8.2.2 外来光除去技術
8.2.3 体動ノイズ除去技術
8.3 脈拍計測機能付き活動量計「PULSENSE」の開発
8.3.1 コンシューマー市場におけるウエアラブル活動量計の動向
8.3.2 脈拍計測機能付き活動量計「PULSENSE」の紹介
8.3.3 医療分野への応用の可能性
8.4 まとめ
疾患バイオマーカーとしてのマイクロRNAと診断応用
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