キーワード:
積層セラミックコンデンサ/MLCC/チタン酸バリウム/BaTiO3/信頼性/誘電体/絶縁破壊/製造プロセス/小型大容量/固相反応/車載電子機器/内部電極/ニッケル超微粉/磁器構造/薄層化/絶縁劣化/機能性添加剤/湿潤分散剤/市場動向/サイズ別市場/酸化チタン/TiO2/炭酸バリウム/BaCO3/用途別動向/国内メーカー/海外メーカー
刊行にあたって
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は,セラミックが持つ優れた高周波特性などのメリットを活かしながら,小型で大容量を実現できるため,電解コンデンサやタンタルコンデンサからの置き換えも進み,電子回路で広く使われるようになってきた。現在では,雑音を抑制する目的や回路定数を設定するなどの目的で,ほとんどのエレクトロニクス機器に搭載されている。
もともとMLCC は,米国の企業が軍事・航空宇宙向けに開発したものである。日本は後追い開発でスタートしたが,1980 年代には民生機器への応用において米国勢に先んじることに成功した。さらに,内部電極材料をPd(パラジウム)から,米国企業が失敗したNi(ニッケル)に変更することにも成功し,コスト競争力によって強い立場を築けた。現在では,村田製作所,TDK,太陽誘電などの日本メーカーがグローバルで大きな市場シェアを握っている。しかし,最近では韓国Samsung Electro-Mechanics(SEMCO 社)などの海外メーカーも台頭してきた。
現在,車載市場におけるECU(Electronic Control Unit)の小型化の進展に伴って1005 サイズが主流となっている。また0603 サイズも今後着実に増えていくものと思われる。自動車におけるMLCC の使用個数は,近年の環境対応車の普及や,先進運転支援システム(ADAS)の進歩を背景に,1 台当たりの使用数量はかつての数百~3,000 個程度から現在では3,000~6,000 個程度にまで伸びている。さらに,電気自動車であれば,1 台当たり15,000 個以上が使われている。
本書【技術編】では,第一線でご活躍中の専門家の方々にお願いし,MLCC の特性予測,材料・プロセス技術,誘電体材料,薄層大容量化・高信頼性化,車載電子機器,チタン酸バリウム,内部電極,磁器構造設計,絶縁劣化解析,機能性添加剤などについての動向を執筆頂いた。
【市場編】では,MLCCの概要と市場動向,MLCC部材の動向,用途別動向,国内・海外メーカー動向について調べあげた。
本書がMLCC に関する技術開発,製品販売,利用されている方々へ向けて,マーケティング活動の一助となれば幸いである。
(本書「はじめに」)
著者一覧
野村武史 昭栄化学工業㈱(元TDK㈱)
川村知栄 太陽誘電㈱
神谷有弘 ㈱デンソー
和田智志 山梨大学
保科拓也 東京工業大学
堺 英樹 東邦チタニウム㈱
齊藤 敢 JFEミネラル㈱
中村友幸 ㈱村田製作所
井澤一欽 京セラ㈱
吉廣泰男 ビックケミー・ジャパン㈱
目次 + クリックで目次を表示
第1章 現象論的熱力学によるBaTiO3(in MLCC)の特性予測(電気的特性,構造特性),歪工学への適用
1 はじめに
2 現象論的熱力学によるBaTiO3の理論
3 自由エネルギーΔGとBaTiO3結晶構造
4 自由エネルギーと自発分極
5 自由エネルギーの係数
6 自発分極の電界依存性
7 応力分布
8 自発分極Piと応力印加
9 誘電率の計算
10 格子定数の計算
11 結論
第2章 MLCCの高信頼性化と材料及びプロセス技術
1 はじめに
2 積層セラミックコンデンサの歴史
3 MLCCのプロセスと材料
3.1 MLCCの構造
3.2 MLCCの製造プロセス
3.3 MLCCの誘電体材料
4 信頼性と構造欠陥
4.1 絶縁破壊現象
4.2 信頼性試験と故障モード
4.3 構造欠陥の分類
5 製造プロセスと構造欠陥
5.1 積層熱圧着工程
5.2 脱脂焼成工程
5.3 製造工程とMLCCの強度
5.4 環境条件と構造欠陥
5.4.1 熱衝撃クラック
5.4.2 たわみクラック
5.4.3 電歪クラック
6 信頼性と誘電体材料技術
6.1 絶縁劣化
6.2 焼成条件の影響
6.3 ドーピングの影響
6.4 粒界化学の影響
7 残留応力
7.1 MLCCの残留応力
7.2 残留応力と誘電特性
7.3 残留応力と結晶構造
7.4 電歪クラックと残留応力
8 MLCCの今後
9 おわりに
第3章 小型大容量積層セラミックコンデンサ用誘電体材料の固相合成技術とその応用
1 はじめに
2 BaTiO3の固相合成
2.1 BaCO3とTiO2の固相反応過程
2.2 BaCO3とTiO2の均一混合
2.3 固相反応の促進と微粒子BaTiO3の合成
3 おわりに
第4章 車載電子機器におけるMLCCの実装技術と信頼性
1 はじめに
2 クルマの付加価値を高めるための取組み
3 車載電子製品への要求
3.1 小型・軽量化
3.2 信頼性確保
4 車載電子製品の小型実装技術
5 MLCCを用いた小型化検討
6 車載電子製品のMLCCに関する不具合事例
6.1 イオンマイグレーション(ion migration)
6.2 ウィスカ
6.3 はんだクラック
6.4 チップ素体割れ
7 おわりに
第5章 界面制御による高性能誘電材料の開発への挑戦
1 誘電体材料の現状と将来応用における限界
2 界面構造制御による新奇誘電体材料の概念
3 KN/BT界面構造制御セラミックスによる新規誘電体材料の可能性
4 将来の誘電体材料の新展開
第6章 チタン酸バリウムの誘電物性と積層セラミックスコンデンサの課題
1 はじめに
2 チタン酸バリウムの誘電物性
3 チタン酸バリウムのサイズ効果
4 誘電体の絶縁信頼性
第7章 固相法チタン酸バリウム合成用高純度酸化チタン
1 はじめに
2 仮焼粉の微構造変化
2.1 TiO2とBaCO3の固相反応中におけるBT仮焼粉の微構造変化
2.2 焼成雰囲気による仮焼粉の微構造変化
3 原料粉末が仮焼プロセスへ与える影響
3.1 原料粉末の小粒径化
3.2 原料粉末の粒形
4 おわりに
第8章 MLCC内部電極用ニッケル超微粉
1 はじめに
2 MLCC内部電極用金属材料の推移
3 ニッケル超微粉の製造方法
4 ニッケル超微粉の製造に用いられるCVD法
5 塩化ニッケルの水素還元反応
6 ニッケル超微粉用CVD反応装置
7 CVD法で製造したニッケル超微粉の特徴
8 おわりに
第9章 積層セラミックコンデンサの大容量化・高信頼化に向けた磁器構造設計
1 要旨
2 はじめに
3 誘電体素子の薄層化に向けた磁器構造設計
3.1 粒界制御技術
3.2 粒内制御技術
3.3 誘電体素子と内部電極の界面制御技術
4 まとめ
第10章 積層セラミックコンデンサの局所絶縁劣化箇所の解析
1 はじめに
2 MLCC絶縁劣化制御方法
3 誘電体層内の局所劣化箇所の特定
4 局所絶縁劣化誘電体層の抵抗分布可視化
5 おわりに
第11章 MLCC(積層セラミックコンデンサ)向け機能性添加剤
1 はじめに
2 分散安定化のメカニズム
3 各種湿潤分散剤の構造と使い方
4 MLCC向け湿潤分散剤
5 その他
5.1 レオロジーコントロール剤
5.2 表面調剤
5.3 消泡剤
6 おわりに
【市場編】
第1章 積層セラミックコンデンサ(MLCC)の概要と市場動向
1 MLCCとは
2 MLCCの歴史
2.1 セラミックスとファインセラミックス
2.2 セラミックコンデンサの発明
2.3 飛躍的に発展させたチタン酸バリウム
3 MLCCの大容量化と用途拡大
4 小型化や高密度実装化に貢献するチップ型
5 サイズ別市場推移
第2章 MLCC部材の動向
1 酸化チタン(TiO2)の市場動向
2 炭酸バリウム(BaCO3)の市場動向
第3章 用途別動向
1 自動車
2 スマートフォン・携帯電話
3 タブレット端末
4 ノートパソコン・パソコン
5 薄型テレビ
6 デジタルカメラ
7 第5世代移動通信システム(5G)インフラ
8 その他
第4章 国内メーカー動向
1 京セラ
2 太陽誘電
3 TDK
4 トーキン
5 日本ケミコン
6 MARUWA
7 村田製作所
第5章 海外メーカー動向
1 Chaozhou Three-Circle(Group)Co., Ltd(中国)
2 Darfon Electronics Corp.(台湾)
3 Guangdong Fenghua Advanced Technology Holding Co., Ltd.(中国)
4 Holy Stone Enterprise Co., Ltd.(台湾)
5 Johanson Dielectrics, Inc.(アメリカ)
6 KEMET Corporation(アメリカ)
7 Samsung Electro-Mechanics(韓国)
8 Samwha Capacitor Group(韓国)
9 Senzhen Eyang Technology Development Co., Ltd(中国)
10 Visyay Intertechnology, Inc.(アメリカ)
11 Walsin Technology Corporation(台湾)
12 Yageo Corporation(台湾)
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