キーワード:
有機・無機・ハイブリッドハードコート/ゾルゲル/UV硬化/真空蒸着/スパッタリング/プラズマCVD/コーティング剤/アクリレート/シルセスキオキサン/表面活性/表面改質/評価/屈折率制御/反射防止膜/防曇/防汚/蛍光機能/特許動向
刊行にあたって
周知のように材料は、おおまかに有機材料、無機材料、金属材料に分類される。とりわけ、有機材料の中心に位置しているプラスチックは、軽量、経済性の高さ、成形の容易さなどの長所により日常生活に不可欠の材料である。
本書は、かかるプラスチックのハードコートに関するものである。ハードコートは、材料的な観点から言うと、機能性コーティング材料の一つということができ、基材であるプラスチックの軽量性、加工性等を損なうことなく表面の硬度を大きくすることにより損傷を受けにくいものにしょうとするものである。また材料の調製法という観点からはメッキや琺瑯と同じく表面改質の一方法である。
表面改質は、基材の表面処理を施すだけでその性能を飛躍的に向上せしめることができるので材料特性の改善上極めて重要である。ハードコートされたプラスチックは、自動車用、OA機器用、眼鏡用等に広汎に使用されており、今日では全てのプラスチック部品がハードコートされていると言っても過言ではない。
本書は7章より構成されており、プラスチックのハードコートに関して基礎から応用まで幅広く言及したものであり、本書によってハードコートの最新技術の全貌を要領良く会得することができると信ずる。進展著しい斯界に本書が些かなりともお役にたてれば幸いである。
(「はじめに」より抜粋)
2008年10月 兵庫県立大学 矢澤哲夫
<普及版の刊行にあたって>
本書は2008年に『プラスチックハードコート材料の最新技術』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
シーエムシー出版 編集部
著者一覧
大幸裕介 兵庫県立大学
角岡正弘 大阪府立大学
蔵岡孝治 神戸大学
中村高之 新中村化学工業(株)
山廣幹夫 チッソ石油化学(株)
金森主祥 京都大学大学院
中西和樹 京都大学大学院
片山真吾 (株)日鉄技術情報センター
畑中秀之 住友スリーエム(株)
角田光雄 文化女子大学 大学院
柳原榮一 神奈川県技術アドバイザー
菅原 實 群馬大学
松岡昭男 群馬大学
山﨑静夫 技術コンサルタント
磯貝尚秀 (株)ニデック
野田和裕 グンゼ(株)
忠永清治 大阪府立大学
吉留博雄(※) 日揮触媒化成(株)西沢技術研究所 代表
村瀬至生 (独)産業技術総合研究所
吾孫子輝一郎 (有)ジェット総合研究所
※注:吉留博雄先生の「吉」字の正しい表記は、「土」に「口」となります。
執筆者の所属表記は、2008年当時のものを使用しております。
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1.はじめに
2.コート剤
1 有機系ハードコート剤
2 無機系ハードコート剤
3 有機無機ハイブリッドハードコート剤
3.コート法
4.基板プラスチックス
1 基板プラスチックスの種類
2 密着性
5.評価法
6.今後の展望
第2章 調整法
1.ゾルゲル法
1 はじめに
2 ゾルゲル法とは
3 ゾルゲル反応
4 加水分解反応速度
5 有機・無機ハイブリッド
6 今後の展望
2.UV硬化法
1 はじめに
2 光源について
3 フォーミュレーション(配合)
1 開始剤と光源
2 モノマーおよびオリゴマー
3 酸素の硬化阻害と対策
4 ハードコート
1 モノマーおよびオリゴマーの構造と硬さ
2 無機・有機ハイブリッド
3 プラスチックとの密着
5 おわりに
3.気相法
1 はじめに
2 真空蒸着法
3 スパッタ法(スパッタリング法)
4 プラズマCVD法
5 おわりに
第3章 コーティング剤
1.アクリル系
1 はじめに
2 アクリル系ハードコート材料の構成
3 アクリル系モノマー
3.1 単官能アクリレート
3.2 2官能アクリレート
3.3 多官能アクリレート
4 アクリル系オリゴマー
4.1 ウレタンアクリレート
4.2 エポキシアクリレート
4.3 ポリエステルアクリレート
5 アクリレート系モノマー、オリゴマーを使用する上での問題点
5.1 硬化収縮
5.2 皮膚刺激性
5.3 酸素阻害
6 ハードコートの機能性付与
6.1 帯電防止機能
6.2 防汚性機能
7 まとめと今後の動向
2.シランカップリング剤を用いた新規ケイ素化合物の創製
1 はじめに
2 新規シルセスキオキサン誘導体の合成
2.1 パーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサン
2.2 ダブルデッカー型フェニルシルセスキオキサン
3 リビングラジカル重合法を用いたシルセスキオキサン含有高分子の合成
3.1 リビングラジカル重合法を用いたパーフルオロアルキル基含有シルセスキオキサン含有高分子の精密合成
3.2 リビングラジカル重合法を用いたダブルデッカー型フェニルシルセスキオキサン含有高分子の精密合成
4 おわりに
3.シルセスキオキサンによる製膜技術
1 シルセスキオキサンとは
2 かご型シルセスキオキサンを利用した製膜事例
3 多孔質ポリシルセスキオキサン膜
3.1 テンプレート法による多孔質ポリシルセスキオキサン膜
3.2 マクロ多孔質膜
3.4 おわりに
4.非シリケート系
1 はじめに
2 ゾル・ゲル法
2.1 金属アルコキシド前駆体を使用するゾル・ゲル法
2.2 金属アルコキシド以外の前駆体を使用するゾル・ゲル法
3 液相析出法
4 酸化物膜の形成におけるエネルギー(反応)アシスト
5 おわりに
5.コーティング剤の分析法畑中秀之
1 はじめに
2 ハードコートコーティング剤の組成分析(成分分析)
3 無機系
4 有機系
4.1 基本構成成分とその役割
4.2 組成分析の流れ
4.3 光重合性オリゴマーの分析
4.4 光重合性モノマーの分析
4.5 光重合開始剤の分析
4.6 添加剤の分析
5 無機・有機ハイブリッド系
6 硬化後のハードコート膜の分析
6.1 (反応)熱分解GC/MS法
6.2 反応熱分解GC/MS法による組成分析
7 原材料(光重合性オリゴマー、および光重合性モノマー)の成分分析
8 おわりに
第4章 プラスチック表面の改質
1.プラスチック表面角田光雄
1 プラスチック表面の改質と表面特性
2 表面活性化層を調べる方法
3 様々な表面活性化層
3.1 表面官能基の形成
3.2 フリーラジカル層の形成
3.3 カーボン層の形成
3.4 表面エネルギーの制御
3.5 表面の親水化
3.6 表面に形成された官能基の定量
3.7 エッチングによる表面構造の観察結果
2.化学的処理
1 はじめに
2 薬品処理
2.1 ポリオレフィン(PE、PP)
2.2 ポリアミド樹脂(PA)
2.3 フッ素樹脂(PTFE、PFAなど)
2.4 PEEK
3 プライマー処理
3.1 ポリオレフィン(PE、PP)
3.2 ポリアミド樹脂(PA)
4 JISの手法
3.放電プラズマを用いたプラスチックの表面改質菅原實、
1 放電プラズマを用いた物理的表面特性の改善
1.1 プラズマ表面改質のねらい
1.2 プラズマを用いて生起する表面特性のいろいろ
2 バリアー放電による素材の表面改質
2.1 コロナ放電を用いて発生するプラズマの形態
2.2 バリアー放電装置
2.3 均一で大面積を持つバリアー放電生成電極
2.4 バリアー放電を用いた表面改質技術
2.5 ガラス板表面の濡れ性改善
3 一気圧グロー放電によるプラスチックの表面改質
3.1 一気圧グロー放電
3.2 一気圧グロー放電を用いたプラスチック薄膜の処理
4 まとめ
第5章 評価法と接着理論
1.評価法概論
1 はじめに
2 コート膜の評価
2.1 硬度と摩耗
2.2 密着性
2.3 柔軟性
2.4 耐熱性
2.5 化学的耐熱性
2.6 耐候性
2.7 膜厚
3 コート液の評価
3.1 粘度
3.2 分子量
2.ATR代替法・FT-IR分析によるプラスチックフィルム表面の分析
1 はじめに
2 ATR代替法・FT-IR分析について
2.1 ATR法と対応不可試料
2.2 ATR代替法FT-IR分析とは
2.3 本法で用いる赤外基板
3 試料変換における実際
3.1 転写
3.2 溶出
3.3 削取
4 分析試料の汚染とその取扱
4.1 試料表面の変化
4.2 試料の保管
4.3 試料の取り扱い
5 ATR代替法・FT-IR分析の事例
5.1 膜単独のATR・差スペクトルが得られない試料(加熱転写・IR分析例)
5.2 差スペクトルの処理が困難な試料(溶解転写・IR分析例)
5.3 ATR結晶との密着性が悪い試料(溶出転写・IR分析例)
5.4 ATR結晶面を汚染する試料(圧着転写・IR分析例)
5.5 ATR結晶面を有効に覆うことができない試料(溶出粒状化・IR分析例)
5.6 ATR感度が不足する試料(削取・IR分析例)
5.7 ATR装置に装着できない試料(応急的IR分析例)
6 おわりに
3.接着機構
1 表面の性質と接着
2 接着性向上の方法を探索するための解析
3 界面相互作用の強化と表面
3.1 全体的な界面相互作用
3.2 界面における結合とぬれ性
3.3 水素結合の形成による接着性
3.4 被着体と接着剤間の接触をよくする
3.5 接着阻害因子となる表面層を除去し、さらに強化する
3.6 表面を粗化して接着性を改善する
3.7 プラズマ処理による各種ポリマーの接着性の改善
3.8 強い接着力を得るために
3.9 接着力向上のためのまとめ
第6章 機能
1.低、高屈折率
1.1 はじめに
1.2 材料の屈折率
1.3 屈折率の制御の事例
1.3.1 低屈折率化の事例
1.3.2 高屈折率化の事例
1.4 おわりに
2.反射防止膜
1 はじめに
2 反射防止膜のあらまし
2.1 基板表面からの光反射低減
2.2 反射防止膜の設計
2.3 反射防止膜の利用
3 反射防止フィルム
3.1 反射防止フィルムに求められる特性
3.2 反射防止フィルムの構成
3.3 反射防止フィルムの製造方法
4 反射防止膜の機能向上
4.1 防眩性―ぎらつき防止―光反射低減の鼎立
4.2 ディスプレイのコントラスト向上
4.3 耐光性の向上
4.4 ガスバリア機能との両立
4.5 広帯域での低反射化
5 おわりに
4.透明ハードコート帯電防止
1 はじめに
2 帯電防止方法と用いられる材料
3 帯電防止ハードコートと透明塗膜
5.ガスバリア性蔵岡孝治
1 はじめに
2 プラスチックフィルムの気体透過性
3 気体透過性の測定方法
4 ガスバリア性コーティング
5 おわりに
6.プラスチック難燃化技術の最新動向
1 はじめに
2 難燃機構と難燃化のコンセプト
3 難燃化技術研究の最新動向
3.1 IFR(Intumeescent系)に対するナノ酸化AL、ナノ酸化Tiの相乗効果に関する研究
3.2 IFRに対する酸化ランターンの難燃効果
3.3 PVAのIFR系(APP+PNOH-2ヒドロキシ5,5’ジメチル2,2’オキソ1,3,2ジオキサフォスフォリン)に対する
金属キレート化合物の難燃効果
3.4 PPのIFR系に対するナノ発泡形状を有するリン酸Ni(VSB-1)の難燃効果
3.5 環状りん化合物の特徴的な難燃効果
3.6 ポリスルフォン、リン酸ポリスルフォンのエポキシ樹脂に対する難燃化技術
3.7 フォスフィネート金属塩とフォスフィネート金属塩-メラミンシアニュレート併用系によるGFPETに対する
難燃機構の研究
4 あとがき
7.蛍光機能
1 はじめに
2 蛍光性半導体ナノ粒子の一般的性質
2.1 物理的および化学的性質
2.2 粒成長メカニズム
3 ナノ粒子の合成
4 シリカ系マトリックスへの分散
4.1 バルク体への分散
4.2 薄膜への分散
5 評価
5.1 発光効率
5.2 分散濃度と濃度消光
5.3 輝度
第7章 プラスチックハードコートの特許動向
1.調査概要
2.調査結果
1 昭和61年から平成19年に至る22年間
2.1.1 出願件数および出願人数
2.1.2 出願人の分布と出願動向
2 平成19年1月から平成20年5月に至る1年5ヶ月間
3.考察
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