刊行にあたって
本書は,積層チップ等のコンデンサ,フィルタ等の圧電材料,無線機器等に用いられる高周波部品,半導体の温度センサ等に使われるようなセラミック電子部品とその材料や製造技術等を取り上げ論じております。これらセラミックス電子部品は,不可欠にして有用な回路部品として,次のような新しい応用分野に多用されております。すなわち携帯電話とその展開された無線機器に応用され,次いでテレビ,パソコン等のデジタル電子機器や,さらに自動車のインテリジェント化と高度道路交通システムにいたるまで,応用が拡がっております。セラミック電子部品は,これまで日本企業が技術と生産を主導してきました。日本および米国等の市場を中心に,つまり今日大きく展開する上記3応用分野等の普及度が高い市場に,日本のセラミック電子部品の企業が密着して生産拠点を設けてきました。結果として,日本企業もしくはそれらの提携企業等が世界の中に大きなシェアを得てきております。この状況はまだしばらく続くでしょう。
一方,アジア企業,特に中国,韓国等の企業は日本企業の技術・生産を追随しております。新用途の無線機器とデジタル機器や高度道路交通システムなどの応用分野の産業が,逐次自国をはじめ急速に進展するなど,それに伴って必要とするセラミック電子部品ごとの開発が進行しております。新用途に適応するセラミックの新製品の開発,高機能と高信頼性や低コストを可能にする製造技術が求められております。これらの国々がとる為替の将来の自由化による制約も視野に,こうして日本とアジア諸国の企業間に技術競合状態がやってくることになりますが,その中にあって結果的にはこれまであったような提携が進み,さらに新製品等の開発力に遅れる企業の淘汰もあり得るでしょう。セラミック電子部品は,いまや大学や学会,加えて国公立研究所による支援体制を得ております。本書では,企業技術者だけでなく,一部の大学研究者が基本的技術や応用の観点から執筆されております。
関心をお寄せくださる多くの研究者や技術者,それにマ-ケットの営業や企画関係者の皆さんに本書が大いに参考になればと願っております。
2005年12月 山本 博孝
本書は,2000年に『セラミック電子部品・材料の技術開発』として刊行されました。このたび普及版を刊行するにあたり,記述内容は当時のままであり,何ら手を加えておりませんので,ご了承願います。
2005年12月 (株)シーエムシー出版 編集部
著者一覧
尾崎義治 成蹊大学 工学部 工業化学科 教授
(現)成蹊大学 理工学部 物質生命理工学科 教授
小笠原正 TDK(株) 電子部品事業本部 積層製品部
(現)TDK(株) センサアクチュエータB.Gr. ゼネラルマネージャー
林剛 帝京科学大学 理工学部 環境マテリアル学科 教授
山野隆男 (株)ヒラノテクシード 化工機械部 技術部長
塩嵜忠 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 教授
井手光照 トーキンセラミクス(株) ピエゾアクチュエータ部 部長
(現)NECトーキン兵庫(株) 環境安全部 部長
竹中正 東京理科大学 理工学部 電気工学科 教授
萬代治文 (株)村田製作所 第3コンポーネント事業部 副事業部長
(現)村田製作所 モジュール事業本部 本部長
中井信也 TDK(株) 電子部品事業本部 高周波部品事業部 商品開発部
(現)TDK(株) 電子部品営業グループ 戦略営業統括部 開発部 部長
常野宏 京セラ(株) 部品研究開発本部 総合研究所 電子材料/部品開発部 部責任者
大森秀樹 富士通メディアデバイス(株) ピエゾデバイス事業部 設計部
(現)Fujitsu Microelectronics Europe GmbH
西澤年雄 富士通メディアデバイス(株) ピエゾデバイス事業部 設計部
小森雅基 石塚電子(株) 技術部 技術管理課 課長
石橋啓 北海道松下電器(株) 半導体セラミック部 バリスタ技術課 主任技師
井口喜章 太陽誘電(株) 事業本部 材料技術部 主任研究員
淀川正忠 TDK(株) 基礎材料研究所 主幹研究員
(現)東京大学大学院 新領域創成科学研究科 山本研究室 研究員
永島和郎 昭栄化学工業(株) 開発部 グループリーダー
秋本裕二 昭栄化学工業(株) 取締役開発部長
長谷川永悦 千住金属工業(株) 営業第1部 部長
多田盛 千住金属工業(株) 工法技術部 主事
執筆者の所属は,注記以外は2000年当時のものです。
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はじめに
1. 応用
(1) 移動体通信分野のセラミック電子部品
(2) デジタル電子機器分野のセラミック電子部品
(3) 自動車のインテリジェント化と高度道路交通システム分野のセラミック電子部品
2. 製造技術
(1) 材料
(2) 多層化・積層化
(3) 高機能化
(4) 測定・評価法
おわりに
第1章 コンデンサ
1. 積層コンデンサの技術展開
はじめに
1.1 用途とその展開
1.1.1 小形・大容量
1.1.2 製品展開
1.2 技術開発
(1) 内部電極の卑金属化
(2) 誘電体層の薄層化
(3) 多層化
(4) 新規誘電体材料
(5) 材料の液相法化
おわりに
2. コンデンサ用液相法材料技術の展開
2.1 はじめに
2.2 シュウ酸塩法
2.2.1 合成法
2.2.2 BaTiO(C2O4)2・4H2Oの熱分解
2.2.3 シュウ酸塩法の改良
2.3 クエン酸塩法
2.3.1 合成法
2.3.2 Ba/Tiクエン酸BaTi(C6H6O7)3・6H2Oの熱分解
2.3.3 エチレングリコール改質Ba/Tiクエン酸塩
2.4 金属アルコキシド法
2.4.1 合成法
2.4.2 沈殿の化学組織
2.4.3 改良アルコキシド法
2.5 水熱性
2.6 液相法粉末の粒径と粒径制御
2.7 まとめ
3. これからの誘電体材料
はじめに
(1) 高電圧用セラミックス誘電体材料
(2) 積層コンデンサ用誘電体材料
(3) マイクロ波誘電体材料
おわりに
4. セラミックシート成形用スラリーの調製
4.1 緒言
4.2 原料粉体の解砕
4.3 粉体の溶媒中における分散性
4.4 スラリーの調製
4.5 バインダーの適正添加
5. セラミックシート成型機(ドクターブレード法)
5.1 はじめに
5.2 最近の傾向
5.3 シート成型機
5.3.1 成型部
5.3.2 乾燥部
5.3.3 駆動部
5.4 今後の機械〈R2コーター〉
5.5 おわりに
第2章 圧電材料
1. 圧電セラミックスの応用展開(塩嵜忠)
1.1 はじめに
1.2 弾性表面波フィルタ
1.3 圧電トランス
1.4 インクジェットプリンタの高性能化
1.5 LiNbO3単結晶を用いた圧電トランス
1.6 圧電スピーカー,振動ジャイロ,アクチュエータ
2. 積層圧電アクチュエータ
2.1 はじめに
2.2 構造
2.3 圧電アクチュエータの設計および製造方法
2.3.1 アクチュエータの性能設計
2.3.2 圧電アクチュエータの製造方法
2.4 圧電アクチュエータ特性
2.5 おわりに
3. 非鉛系圧電材料(竹中正)
3.1 非鉛系圧電材料の必要性
3.2 代表的な非鉛系圧電材料
3.3 ペロブスカイト構造非鉛圧電セラミックス
3.3.1 BaTiO3系圧電セラミックス
3.3.2 KNbO3-NaNbO3系圧電セラミックス
3.3.3 (Bi1/2Na1/2)TiO3系圧電セラミックス
3.4 タングステン・ブロンズ型強誘電体セラミックス
3.4.1 (Ba1-xSrx)2NaNb5O15[BSNN]
3.4.2 Ba2Na1-xBix/3Nb5O15[BNBN]
3.5 ビスマス層状構造強誘電体系と粒子配向型圧電セラミックス
3.5.1 ビスマス層状構造強誘電体[BLSF]
3.5.2 粒子配向型ビスマス層状構造強誘電体セラミックス
3.5.3 RTGG法による高配向Bi層状強誘電体セラミックス
3.6 強誘電体単結晶
3.6.1 KNbO3
3.6.2 (Bi1/2Na1/2)TiO3系
3.7 ランガサイト(La3Ga5SiO14)系圧電単結晶
3.8 おわりに
第3章 高周波部品
1. セラミック高周波部品の技術展開
1.1 はじめに
1.2 セラミック材料とプロセス
1.3 高周波デバイス
1.3.1 高周波設計技術
1.3.2 チップLCフィルタ
1.3.3 カプラ,バラン
1.3.4 アンテナスイッチ
1.3.5 チップアンテナ
1.4 今後の展開
1.5 おわりに
2. 携帯電話用積層セラミックス電子部品の技術展開
2.1 はじめに
2.2 積層セラミック技術の特長
2.2.1 工程,材料
2.2.2 デザインルール
2.2.3 今後の方向
2.3 携帯電話に使われる高周波部品
2.3.1 フィルタ,カプラ,バランおよびアンテナスイッチ
2.3.2 フロントエンドモジュール
2.4 おわりに;積層セラミックスへの期待
3. 回路基板の多層化技術(常野宏)
3.1 セラミック多層基板製造技術の概要
3.2 通信機器市場の技術動向と回路基板
3.3 多層化工程における高周波対応技術
4. SAWフィルタの技術展開
4.1 はじめに
4.2 SAWフィルタとは
4.3 SAWフィルタの利用(応用)
4.4 SAWフィルタ用の材料
4.5 SAWフィルタの設計手法
4.6 SAWフィルタの製造プロセス
4.6.1 高精密パターニングプロセスと高周波化
4.7 最新のSAWフィルタの代表特性
4.7.1 ラダー型RF
4.7.2 Double Mode SAW(DMS)型RF
4.7.3 IFフィルタ
4.7.4 高周波フィルタ
4.7.5 小型化の動向
4.8 今後の展開―耐電力,高周波,複合化,そして基本性能の向上
第4章 半導体セラミックス
1. 新規用途を開発するNTCサーミスタ
1.1 はじめに
1.2 NTCサーミスタを用いた新しいセンサ
1.2.1 含水率センサ
1.2.2 霜検知センサ
1.2.3 熱定着用温度センサ
1.3 新しい用途に用いられるサーミスタ
1.3.1 モバイル機器
1.3.2 ハイブリッド車(HEV)と電気自動車(EV)
1.4 まとめ
2. セラミックスバリスタの技術展開
2.1 はじめに
2.2 サージ対策部品に対する市場要求の変遷
2.3 市場要求に対する製品展開
2.3.1 ディスクタイプ
2.3.2 SMD樹脂モールドタイプ
2.3.3 SMD積層タイプ
2.4 おわりに
3. セラミックバリスタ開発と構造解析
3.1 はじめに
3.2 ZnOバリスタ
3.3 SrTiO3バリスタの開発
3.4 SrTiO3バリスタの粒界構造と特性発現機構
3.5 SrTiO3バリスタの特徴および用途
3.6 最近のバリスタ開発動向
4. 半導体セラミックスの技術動向
4.1 NTCサーミスタの技術動向
4.2 PTCサーミスタの技術動向
4.3 バリスタの技術動向
4.3.1 酸化亜鉛バリスタの技術動向
4.3.2 チタン酸ストロンチウム系バリスタの技術動向
第5章 電極・はんだ
1. 電子部品の高性能化を支える電極材料
1.1 はじめに
1.2 MLCCの技術動向
1.3 電極の薄層化
1.4 高積層化のための素材開発
1.4.1 パラジウム内部電極の問題点
1.4.2 単結晶パラジウム粉末
1.5 微量元素ドーピングの効果について
1.6 おわりに―電極材料の技術的展開
2. 鉛フリーはんだとリフローソルダリング
2.1 はじめに
2.2 代表的鉛フリーはんだの特性
2.2.1 SnAgCu系の特長
2.2.2 SnBi系の特長
2.2.3 SnZn系について
2.3 ソルダーペーストに求められる特性
2.4 メタルマスクに求められる性能
2.5 印刷方法
2.6 鉛フリー・リフローソルダリングの課題と対策
2.6.1 リフロー炉の温度バラツキ
2.6.2 鉛の混入
2.6.3 濡れにくさ
2.6.4 チップ立ち
2.6.5 セルフアライメントの低下
2.7 リフロープロファイル
2.8 代表的な鉛フリーはんだ
2.9 おわりに
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