キーワード:
効能と安全性の高い農薬/作物保護剤/ケミカルクラス別除草剤/後発農薬/QoI剤/DMI剤/抵抗性管理/植物寄生性線虫/防除スペクトラム/土壌微生物/国際アグリバイオ事業団/クリスパー・キャス9/PAMP誘導免疫/ゲノム創農薬/かび毒生産制御剤/総合的害虫管理
刊行にあたって
世界の人口は2017年に73億人に達し,2050年には97億人まで増加すると予測されている。世界的な人口増加が続く中,安全かつ高品質な食糧の供給は地球的規模の重要課題である。ドイツの科学者Oerekが世界の19の地域別にコムギ,イネ,トウモロコシ,ジャガイモ,ダイズおよびワタに関して実施した調査結果によれば,2001年~2003年における雑草,害虫その他のanimal pests(ダニ,線虫,ネズミ類,ナメクジ,カタツムリ,鳥など)や病害による被害は,世界平均でみると,コムギ,ダイズおよびワタで26~29%,トウモロコシ31%,コメ37%,ジャガイモで40%であった。農業の生産性を安定的に向上させて十分な食糧を確保するためには,病害虫や雑草の防除剤の適切な使用が如何に重要かを如実に示している。優れた農薬の開発は,世界共通の食料問題の解決に直結していると言っても過言ではなく,日夜,新規農薬の創製研究にいそしむ農学,農薬科学研究者の果たす役割は極めて大きい。
本書は各種農薬開発の全般的動向とトピックス,市場動向,登録制度,ゲノム創薬,製剤技術,生物農薬とIPM,構造活性相関,農薬と天然物,遺伝子組換え作物,中国の動向など様々な角度から農薬開発の現状と将来をまとめた。本書が,新規農薬の創製に携わる研究者・技術者および農薬製品の研究開発,マーケッティング担当の方々にお役に立てば幸甚である。
(本書「序章」より抜粋・改変)
著者一覧
梅津憲治 吉備国際大学/OATアグリオ 坂本典保 住友化学 椋本藤夫 住友化学 真鍋明夫 住化技術情報センター 服部光雄 日本曹達 伏木田 地 石原産業 阿部ゆずか 石原産業 諏訪明之 日本農薬 中野元文 日本農薬 藤岡伸祐 日本農薬 堀越 亮 Meiji Seikaファルマ 冨澤元博 東京農業大学 山本敦司 日本曹達 白井裕一 OATアグリオ 玉井龍二 クミアイ化学工業 大野修二 クミアイ化学工業 河合 清 クミアイ化学工業 中谷昌央 クミアイ化学工業 平松基弘 北興化学工業(現OATアグリオ) 滝川浩郷 神戸大学 杉本幸裕 神戸大学 尾山和彦 Meiji Seikaファルマ | 三冨正明 法政大学(元Meiji Seikaファルマ) 三芳秀人 京都大学 高野義孝 京都大学 鳴坂義弘 岡山県農林水産総合センター 本山高幸 (国研)理化学研究所 長田裕之 (国研)理化学研究所 大河内武夫 三井化学アグロ 辻 孝三 製剤技研 小原裕三 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 和田哲夫 アリスタライフサイエンス 里見 純 アリスタライフサイエンス 須藤 修 アリスタライフサイエンス 清田洋正 岡山大学 中川好秋 京都大学 赤松美紀 京都大学 田部井 豊 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 Xusheng Shao East China University of Science and Technology Xuhong Qian East China University of Science and Technology; Chinese Academy of Engineering Xiaoyong Xu East China University of Science and Technology Zhong Li East China University of Science and Technology Philip W. Lee East China University of Science and Technology |
目次 + クリックで目次を表示
第1章 新規農薬の研究開発の世界的動向
1 はじめに
2 作物保護剤,作物保護方法開発の背景
2.1 グローバルな背景
2.2 農薬の規制動向と農薬登録
3 作物保護剤,作物保護方法の研究開発動向
3.1 農薬有効成分の特許出願からみた研究動向
3.2 研究開発投資と商品化の動向
3.3 生物農薬
3.4 非生物的ストレスへの対処
3.5 熱帯感染症への取り組み
3.6 遺伝子組み換え(GM)作物関連
4 企業動向
4.1 農薬研究開発費と新規農薬有効成分発明
4.2 大手6社のM&A
5 おわりに
第2章 世界の農業生産と農薬市場の動向
1 はじめに
2 農業生産の現状と今後
2.1 世界の状況
2.2 日本の状況
3 世界の農薬市場
3.1 世界の市場
3.2 日本の市場
4 おわりに
第3章 国内外の農薬登録制度:最近の動向
1 はじめに
2 日本における農薬登録制度について
2.1 農薬登録制度の変遷
2.2 農薬登録制度・規制の概要
2.3 農薬登録に関する最近の動向
3 ヨーロッパにおける農薬登録制度について
3.1 農薬登録制度の変遷
3.2 農薬登録制度の概要
3.3 Regulation(EC)No.1107/2009の特徴
4 アメリカにおける農薬登録制度について
4.1 農薬登録制度の変遷
4.2 農薬登録制度の概要と特徴
第4章 殺菌剤の開発動向
1 殺菌剤の研究開発の全般的動向
1.1 はじめに
1.2 新規なcomplexⅢ阻害剤
1.3 べと病・疫病防除剤
1.4 新規な灰色かび病・菌核病防除剤
1.5 新規なうどんこ病防除剤
1.6 新規な水稲用殺菌剤
1.7 新規なDMI剤
1.8 その他の開発剤
1.9 殺菌剤耐性菌の出現と,今後有望視される殺菌剤の新規標的
1.10 おわりに
2 SDHI剤の開発動向
2.1 はじめに
2.2 SDHI剤の開発の歴史と構造的特徴
2.3 各薬剤の開発動向
2.4 耐性菌の発生状況
2.5 おわりに
第5章 殺虫剤の開発動向
1 殺虫剤の研究開発の全般的動向
1.1 はじめに
1.2 ネオニコチノイド系剤
1.3 メソイオン系剤
1.4 ジアミド系剤
1.5 フロメトキン(flometoquin)
1.6 フルキサメタミド(fluxametamide)
1.7 ブロフラニリド(broflanilide)
1.8 ベンズピリモキサン(benzpyrimoxan)
1.9 スピロピジオン(spiropidion)
1.10 チクロピラゾフロル(tyclopyrazoflor)
1.11 アフィドピロペン(afidopyropen)
1.12 オキサゾスルフィル(oxazosulfyl)
1.13 おわりに
2 ジアミド系殺虫剤の開発動向
2.1 創製経緯
2.2 作用機構
2.3 作用特性
2.4 抵抗性の現状
2.5 新規剤の開発動向
3 ニコチン性殺虫剤の開発動向
3.1 ニコチン性殺虫剤の歴史的背景
3.2 ネオニコチノイド剤の市場動向
3.3 新規剤の開発状況
3.4 ニコチン性殺虫剤の環境影響
3.5 作用機序
3.6 今後の展望
第6章 殺ダニ剤の開発とハダニ類防除技術の最近の動向
1 はじめに
2 ハダニ類の防除マーケット
3 殺ダニ剤の開発と普及の推移
4 新規の殺ダニ剤と殺ダニ活性を持つ殺虫剤
4.1 ミトコンドリア電子伝達系複合体Ⅱ阻害剤(25A,25B)
4.2 アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤(23)
4.3 フルキサメタミド(NC-515)
4.4 アシノナピル(NA-89)
5 化学合成農薬以外の殺ダニ活性を持つ農薬
5.1 調合油乳剤(サフオイル乳剤Ⓡ)
5.2 ポリグリセリン脂肪酸エステル(フーモンⓇ)
6 最後に―殺ダニ剤抵抗性管理を見据えて―
第7章 殺線虫剤の開発動向
1 はじめに
2 くん蒸剤および非くん蒸剤の変遷
2.1 くん蒸剤
2.2 非くん蒸剤
3 その他の線虫防除技術
3.1 ネコブセンチュウ防除
3.2 ネグサレセンチュウ防除
3.3 シストセンチュウ防除
3.4 対抗植物による防除
4 国内における殺線虫剤の現状
5 最近の殺線虫剤の開発動向
5.1 フルオピラム(Fluopyram)
5.2 チオキサザフェン(Tioxazafen)
5.3 フルエンスルホン(Fluensulfone)
5.4 フルアザインドリジン(Fluazaindolizine)
6 おわりに
第8章 除草剤および植物成長調節剤の開発動向
1 除草剤および植物成長調節剤の開発動向
1.1 はじめに
1.2 アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)阻害型除草剤
1.3 アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害型除草剤
1.4 ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPPD)阻害型除草剤
1.5 プロトポルフィリノーゲン-IXオキシダーゼ(PPO)阻害型除草剤
1.6 超長鎖脂肪酸伸長酵素(VLCFAE)阻害型除草剤
1.7 フィトエンデサチュラーゼ(PDS)阻害型除草剤
1.8 光合成阻害剤
1.9 オーキシン様除草剤
1.10 作用未知の新規剤
1.11 最近の特許化合物
1.12 薬害軽減剤の動向
1.13 植物成長調節剤の動向
2 ピロキサスルホンの開発
2.1 はじめに
2.2 ピロキサスルホンの創製
2.3 ピロキサスルホンの合成
2.4 ピロキサスルホンの物理化学的性状
2.5 ピロキサスルホンの生物活性
2.6 ピロキサスルホンの作用機構
2.7 ピロキサスルホン製品の普及
第9章 天然物由来および天然物関連の農薬開発動向
1 天然物由来農薬の開発の変遷と最近の開発動向
1.1 はじめに
1.2 気門封鎖剤
1.3 植物抽出物の農薬としての利用
1.4 天然物をモデルにした農薬の創製
1.5 抗生物質および抗生物質由来の農薬
1.6 植物の抵抗性誘導物質
1.7 アレロパシー(他感物質)の農薬としての利用
1.8 寄生性植物
1.9 ウィルス防除剤
1.10 鉱物由来の農薬
1.11 おわりに
2 根寄生雑草防除剤の開発研究
2.1 はじめに
2.2 ストライガの生存戦略
2.3 自殺発芽誘導
2.4 ブレイクスルー
2.5 実証試験
2.6 まとめ
3 アフィドピロペンの開発
3.1 アフィドピロペンの創出経緯および開発状況
3.2 殺虫効果の特徴
3.3 作用機作
3.4 作物に対する安全性
3.5 標的外昆虫に対する影響
3.6 おわりに
第10章 ゲノム情報を基にした農薬の創製研究および病害虫防除技術
1 全般的動向
1.1 ゲノム情報を基にした病害虫防除技術
1.2 ゲノム情報を基にした農薬の創製研究
1.3 農薬企業の取り組むべき課題
2 ミトコンドリア膜輸送体を標的とする農薬シーズ化合物の探索
2.1 はじめに
2.2 ミトコンドリア膜輸送体とは
2.3 膜輸送体を阻害する化合物をスクリーニングするアッセイ系の概要
2.4 ミトコンドリア膜輸送体パラログの存在と機能解析
2.5 異種生物の膜輸送体の酵母ミトコンドリアでの機能発現
2.6 リン酸輸送体を生物種選択的に阻害する化合物ML316
2.7 おわりに
3 感染制御型農薬の可能性〜エフェクター分泌阻害剤の開発研究を例に〜
3.1 はじめに
3.2 感染制御剤のメリット
3.3 エフェクターとは
3.4 エフェクター分泌阻害剤のスクリーニング
3.5 病原菌レポーターラインを用いたスクリーニング系の利点と今後の展望
4 植物の抵抗力を利用した病害防除技術
4.1 はじめに
4.2 プラントアクティベーターとは
4.3 植物の抵抗反応を利用した病害防除の試み
4.4 標的分子の設定
4.5 プラントアクティベーター候補のスクリーニング
4.6 今後の展望
第11章 ケミカルバイオロジーによる農薬の創製研究
1 はじめに
2 ケミカルバイオロジー研究基盤
2.1 天然化合物ライブラリー
2.2 化合物アレイ
2.3 プロテオームプロファイリングによる作用標的解析(ChemProteoBase)
3 ケミカルバイオロジー研究基盤を活用した農薬探索研究の例
3.1 かび毒生産制御薬剤
3.2 植物抵抗性誘導薬剤
3.3 アブシジン酸アンタゴニスト
4 天然化合物ライブラリー拡充のための研究
4.1 放線菌からの二次代謝産物発掘
4.2 糸状菌からの二次代謝産物発掘
5 おわりに
第12章 製剤・施用法の基礎とその最新技術動向
1 農薬製剤とは
2 製剤の第1の目的は,農薬を実際に使用できる形にすること
3 農薬製剤の目的の拡大
4 製剤設計の重要性
5 新規製剤の開発
6 安全性の向上
6.1 人畜毒性の低減
6.2 作業者の被曝の低減
6.3 環境負荷の低減
7 省力化技術
7.1 1キロ粒剤
7.2 ジャンボ剤
7.3 豆つぶ剤
7.4 除草剤フロアブル製剤の原液散布
7.5 育苗箱処理
7.6 田植同時処理
7.7 乗用管理機搭載散布機を用いた散布
7.8 航空防除,無人ヘリコプター防除と産業用マルチローター
8 特殊な製剤・施用技術
8.1 土壌くん蒸剤
8.2 静電付加式噴霧機
9 今後の製剤・施用法
第13章 生物農薬とIPM
1 生物農薬とバイオスティミュラントの現状
1.1 生物農薬
1.2 現場における生物農薬の利用状況
1.3 バイオスティミュラントの現状と課題
2 フェロモン剤の動向
2.1 序論:フェロモンの特徴
2.2 フェロモンの農薬利用
2.3 フェロモンの化学構造
2.4 フェロモン製剤
2.5 フェロモン製剤の施用
2.6 おわりに
3 IPMにおける化学農薬の役割
3.1 はじめに
3.2 IPMの定義と化学農薬との係わり
3.3 化学農薬を利用したIPM事例の検証
3.4 IPMならびに化学的防除,生物的防除および物理的防除の市場規模
3.5 おわりに
第14章 農薬の構造活性相関研究―新規農薬の創製を目指して
1 はじめに
2 In silico技術を用いた分子設計
2.1 LBDDとSBDDの応用
2.2 LBDDの応用
2.3 SBDDの応用(ブラシノライド様活性化合物の探索)
3 農薬の動態および毒性の構造活性相関
4 まとめ
第15章 遺伝子組換え作物の動向
1 はじめに
2 遺伝子組換え農作物の栽培と我が国への輸入
2.1 トウモロコシ
2.2 ダイズ
2.3 ナタネ
2.4 ワタ
2.5 アルファルファ
2.6 パパイヤ
2.7 ジャガイモ
2.8 テンサイ
2.9 カーネーション
2.10 バラ
3 遺伝子組換え農作物の開発動向
3.1 害虫抵抗性ナス
3.2 リンゴ
3.3 ゴールデンライス
3.4 機能性作物
4 日本における栽培などの状況
5 新しい育種技術
5.1 ゲノム編集技術
5.2 接ぎ木によるエピゲノム編集バレイショ
5.3 ODMによる除草剤耐性ナタネ
5.4 新しい育種技術に関する規制の国際的動向
6 今後の展望
第16章 中国における農薬創製研究の動向
Progress on the Research and Development of Green Pesticides in China
1 Background
2 Program Introduction
3 Progress for Research and Development of Pesticides
3.1 Main achievements
3.2 Establishment of molecular design for green pesticides
3.3 Plant and animal model of evaluating ecology, environment and bioactivity
3.4 Trace amount, visualization measurement model of the mode of action of pesticides
3.5 Establishment of compared biochemistry and chemical biology
3.6 Research on target differences of different species
3.7 Targets finding based on bioinformatics
4 Research and development of commercialization products
4.1 The research and development of cis-neonicotinoid Cycloxaprid
4.2 The research, development and application of novel plant antiviral agent Dufulin
4.3 The research, development and application of novel fungicide Borrelidin
5 Closing remarks - Future research directions
関連商品
機能性農業用フィルムの開発と市場
価格(税込): 93,500 円
医薬品原薬・中間体製造の開発と市場
価格(税込): 93,500 円
新薬合成マニュアル 2018
価格(税込): 220,000 円
新しい農薬原体・キー中間体の創製2024
価格(税込): 223,300 円
抗菌技術と市場動向 2016
価格(税込): 82,500 円
化学農薬・生物農薬およびバイオスティミュラントの創製研究動向
価格(税込): 132,000 円
この商品を買った人はこちらの商品も購入しています。
機能性アミノ酸・ペプチドの技術と市場
価格(税込): 82,500 円
藻類由来バイオ燃料と有用物質
価格(税込): 81,400 円
不凍タンパク質の機能と応用
価格(税込): 88,000 円
酵素と応用製品の市場2020
価格(税込): 77,000 円
匂いのセンシング技術
価格(税込): 69,300 円
食品用酵素データ集-取り扱い手法と実践-
価格(税込): 70,400 円
人工細胞の創製とその応用
価格(税込): 79,200 円
生物の優れた機能から着想を得た新しいものづくり
価格(税込): 100,100 円