キーワード:
緑茶/紅茶/肝疾患/糖尿病/抗肥満/老化/抗がん/骨再生法/口腔ケア/抗菌/機能性表示食品/トクホ/機能性飲料/メチル化/アシル化/EGCG/ECG/EGC/EC/カテキン/フラバン-3-3オール/ボタニカルドラッグ/テアフラビン/インフルエンザウイルス
刊行にあたって
茶の効能は古くから薬として活用されていたが、生理活性を担う成分とその作用機構に関する研究が開始されたのはわずか四半世紀前である。しかしながらこの間の研究の進展は目覚ましく、体脂肪低減作用、コレステロール低下作用、血圧降下作用、脳卒中予防作用、抗アレルギー作用などの生理作用が緑茶にあることが明らかにされた。また、こうした緑茶の生体調節作用を担う成分を詳らかにするための研究が盛んに行われ、カテキン類をはじめとする茶ポリフェノールが注目されることとなった。
本書は緑茶の多彩な生体調節作用や抗菌作用を担うカテキン類の機能性とその作用発現メカニズムに関する最新の研究成果を提示するよう努めた。また、ストリクチニンといったカテキン以外の茶ポリフェノールの生理作用に関する研究や化学合成によるカテキンの生理活性の増強やカテキン誘導体を化学プローブや医薬品として活用しようとする研究も進展著しく掲載させていただいた。
一方、紅茶由来のポリフェノールはその構造の多様性からカテキンと比較して必ずしも研究が進んでいるとは言い難い面があったが、テアフラビン類や高分子ポリフェノールに新たな生理作用が見出され注目されている。本書ではこうした紅茶由来ポリフェノールに関する最新の研究成果についても取り上げさせていただいた。
幸い、緑茶ポリフェノール/紅茶ポリフェノール研究を第一線で進められている方々に執筆いただくことができた。緑茶カテキンの機能性に関する研究は他のポリフェノールの機能性研究を牽引してきた経緯がある。本書に紹介された内容が今後のポリフェノール研究の一助となれば幸甚である。
(本書「刊行にあたって」より一部抜粋)
著者一覧
仲川清隆 東北大学
小林 誠 ㈱伊藤園
藤村由紀 九州大学
山下修矢 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構
竹下尚男 花王㈱
熊澤茂則 静岡県立大学
海野けい子 静岡県立大学
藍原祥子 神戸大学
熊添基文 九州大学
白上洋平 岐阜大学
清水雅仁 岐阜大学
鈴木拓史 山形大学
三好規之 静岡県立大学
宮本敬久 九州大学
吉富 廉 九州大学
赤川 貢 大阪府立大学
内田浩二 東京大学
川畑球一 甲南女子大学
山本(前田)万里 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構
和才昌史 日本製紙㈱
田村宗明 日本大学
本田義知 大阪歯科大学
田中知成 京都工芸繊維大学
田中浩士 東京工業大学
平井瑞輝 大阪電気通信大学
小堀 亮 大阪電気通信大学
道下 僚 大阪電気通信大学
齊藤安貴子 大阪電気通信大学
福原 潔 昭和大学
水野美麗 昭和大学
原 征彦 茶研究・原事務所㈱
田中 隆 長崎大学
松尾洋介 長崎大学
中山 勉 東京農業大学
奈良井朝子 日本獣医生命科学大学
中山幹男 ㈱バイオメディカル研究所
高見澤菜穂子 早稲田大学
矢澤一良 早稲田大学
竹元万壽美 奥羽大学
武政 徹 筑波大学
西川恵三 大阪大学
目次 + クリックで目次を表示
第1章 基礎
1 緑茶カテキンの吸収と代謝
1.1 緑茶のポリフェノールとカテキン類
1.2 緑茶カテキンの吸収と代謝
1.3 緑茶カテキンの吸収と代謝に関するトピックス
1.4 おわりに
2 緑茶カテキン受容体
2.1 はじめに
2.2 緑茶カテキン受容体としての67 kDaラミニンレセプター
2.3 緑茶カテキン受容体を介したEGCGの抗がん作用
2.4 緑茶カテキン受容体を介したEGCGの抗炎症作用
2.5 緑茶カテキン受容体を介したEGCGの抗アレルギー作用
2.6 食品因子による緑茶カテキン受容体シグナリングの調節
3 緑茶成分のメタボリック・プロファイリング解析
3.1 はじめに
3.2 メタボリック・プロファイリング法
3.3 機能性・品質評価への応用
3.3.1 食品機能性研究における有用性
3.3.2 緑茶品種の機能性評価
3.4 おわりに
4 新規ポリフェノール:ストリクチニン
4.1 ストリクチニンとは
4.2 抗アレルギー作用
4.3 抗ウイルス作用
4.4 G-ストリクチニンを高含有する茶品種
4.5 今後の展望
第2章 機能
1 脂質代謝への効果
1.1 茶カテキンの抗肥満作用の検証
1.1.1 はじめに
1.1.2 生活習慣病の成因
1.1.3 緑茶の健康機能
1.1.4 抗肥満作用に関する基礎的研究
1.1.5 ヒトのエネルギー代謝研究
1.1.6 おわりに
1.2 茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズム
1.2.1 はじめに
1.2.2 NMRによるカテキンと胆汁酸ミセルとの相互作用解析
1.2.3 表面プラズモン共鳴法を用いたカテキンとリン脂質膜との相互作用解析
1.2.4 おわりに
2 脳機能への効果
2.1 緑茶による脳の老化予防ならびにストレス軽減に関する研究
2.2.1 はじめに
2.2.2 カテキンによる脳の老化抑制作用
2.2.3 カテキンのアルツハイマー病に対する作用
2.2.4 緑茶の抗ストレス作用
2.2.5 まとめと今後の展望
2.2 エピガロカテキンガレートによる消化管由来の摂食抑制ホルモン分泌の亢進
2.2.1 はじめに
2.2.2 食品成分による腸管ホルモン分泌のメカニズム
2.2.3 茶カテキンによる腸管ホルモン分泌
2.2.4 おわりに
3 がんへの効果
3.1 緑茶カテキンの抗がん作用メカニズムと活性増強法
3.1.1 緑茶抽出物の抗がん作用in vitroから臨床まで
3.1.2 EGCGは67LRを介して抗がん作用を発揮する
3.1.3 EGCGの67LRを介したがん細胞致死作用誘導メカニズム
3.1.4 EGCGのがん細胞増殖抑制作用
3.1.5 PDE5阻害剤によるEGCGの抗がん作用の増強
3.1.6 PDE3阻害剤によるEGCGの抗がん作用の増強
3.1.7 セラミド代謝関連酵素Sphingosine kinase 1阻害によるEGCGの抗がん作用の増強
3.1.8 柑橘成分によるEGCGの抗がん作用の増強
3.1.9 まとめ
3.2 緑茶カテキンの大腸がん予防作用
3.2.1 はじめに
3.2.2 緑茶カテキンによる受容体型チロシンキナーゼを標的とした大腸がん細胞の増殖抑制
3.2.3 緑茶カテキンによる炎症関連および肥満関連大腸発がんの抑制
3.2.4 緑茶抽出物による大腸腺腫の再発抑制
3.2.5 おわりに
4 その他の特性
4.1 肝疾患予防作用
4.1.1 はじめに
4.1.2 肝疾患とは
4.1.3 肝炎ウイルスの感染と複製に対する緑茶成分の効果
4.1.4 脂肪肝疾患に対する緑茶の影響
4.1.5 疫学研究
4.1.6 おわりに
4.2 糖尿病予防作用
4.2.1 糖尿病の基礎
4.2.2 茶成分の抗糖尿病作用分子機構
4.2.3 緑茶の抗糖尿病作用に関する疫学研究と介入試験
4.3 腸管出血性大腸菌の病原性低減効果
4.3.1 はじめに
4.3.2 カテキン類による腸管出血性大腸菌の生育抑制
4.3.3 カテキン類と他の薬剤との併用による腸管出血性大腸菌の生育抑制
4.3.4 カテキン類のベロ毒素活性阻害
4.3.5 カテキン類のベロ毒素活性阻害機構の推定
4.3.6 まとめ
4.4 マイクロRNA発現調節作用
4.4.1 miRNAとその生理作用
4.4.2 miRNAを介した緑茶ポリフェノールの生理作用
4.4.3 メラノーマ細胞におけるEGCGのmiRNA発現調節作用
4.4.4 EGCGのlet-7bを介したがん遺伝子発現抑制作用
4.4.5 EGCGのlet-7b発現調節メカニズム
4.4.6 おわりに
4.5 化学修飾タンパク質の生成と機能
4.5.1 はじめに
4.5.2 緑茶カテキンの酸化反応
4.5.3 EGCGの酸化を介したタンパク質システイン残基の修飾反応と機能性の発現
4.5.4 酸化EGCGのリジルオキシダーゼ様活性と機能性の発現
4.6 腸内フローラの機能調節作用
4.6.1 腸内フローラと健康
4.6.2 茶ポリフェノールのプレバイオティクス様効果
4.6.3 茶ポリフェノールによる腸内フローラの菌叢変化と健康への応用
4.6.4 茶ポリフェノールによるビフィズス菌の高機能化
第3章 応用・製品編
1 メチル化カテキンを関与成分とする機能性表示食品
1.1 はじめに
1.2 メチル化カテキンとは
1.3 「べにふうき」緑茶の特性
1.4 「べにふうき」緑茶のヒト介入試験による効果検証
1.5 食品開発のための技術開発
1.6 「べにふうき」緑茶の効果を利用した機能性表示食品の開発
1.7 高メチル化カテキン緑茶の脂質代謝改善作用,糖代謝改善作用,血圧上昇抑制作用
1.8 今後の展開
2 緑茶カテキンを関与成分とする機能性表示食品(血糖値上昇抑制)
2.1 はじめに
2.2 臨床試験
2.2.1 対象者
2.2.2 試験食品と負荷食品
2.2.3 試験デザイン(プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験)
2.2.4 結果と結論
2.3 まとめ
3 カテキンジェルの口腔微生物に対する抗菌効果と臨床応用の可能性
3.1 カテキン抗菌効果(in vitro)
3.2 カテキン抗菌効果(in vivo)
4 新規骨再生材料エピガロカテキンガレート結合ゼラチンの開発
4.1 顎顔面領域での骨再生療法の現状
4.2 エピガロカテキンガレート
4.3 EGCG結合ゼラチンの開発経緯
4.4 真空熱処理されたEGCG結合ゼラチンスポンジ
4.5 細胞播種担体としての真空熱処理EGCG結合ゼラチンスポンジ
4.6 再生医療が抱える課題と展望
5 緑茶カテキンをリード化合物とする機能性分子の化学合成
5.1 エピガロカテキンガレート(EGCG)とメチル化EGCG
5.2 天然物をリード化合物とする機能性分子の合成戦略
5.3 固相合成法と流通型反応装置を活用するメチル化EGCGのコンビナトリアル合成
5.4 エピクロロヒドリンをキラルプールとして用いるアシル化カテキンの合成
5.5 イドースの構造を基盤とした二官能性リンカーの開発とEGCGの直接修飾法への応用
5.6 まとめ
6 緑茶カテキン誘導体の合成と構造-活性相関研究
6.1 はじめに
6.2 多くの異性体・誘導体が存在するフラバン-3-オール構造
6.3 ジガロイル誘導体の構造-活性相関研究
6.4 2量体の合成と構造-活性相関研究
6.5 おわりに
7 創薬を目指した天然カテキン構造修飾法の開発
7.1 はじめに
7.2 3-OH位誘導体
7.3 C4位誘導体
7.4 C8位誘導体
7.5 B環の構造修飾:平面型カテキン誘導体
7.5.1 B環の立体構造固定化反応の開発
7.5.2 アルキル基の導入
7.5.3 塩基性アミノ酸の導入
7.5.4 プレニル基の導入
7.5.5 プロシアニジン誘導体
7.6 おわりに
8 茶カテキンの臨床試験と薬剤開発
8.1 はじめに
8.2 カテキンとの関り
8.3 米国に於けるがん抑制(Chemoprevention)プログラムと茶カテキン
8.4 ボタニカルドラッグとは
8.5 FDA認定医薬品“Veregen”ProjectとポリフェノンE製造cGMP施設
8.6 EGCGおよびPolyphenon Eの安全性試験・体内動態試験
8.7 茶カテキン摂取と肝臓毒性問題
8.8 茶カテキンプロジェクトの現状と見通し
8.9 おわりに
【第2編 紅茶ポリフェノール】
第4章 紅茶ポリフェノールの生成機構
1 茶の種類
2 緑茶と紅茶の成分の違い
3 紅茶製造時のカテキン類の酸化機構
4 テアフラビン
5 テアシネンシン
6 テアシトリン
7 テアルビジン
8 カテキン類の酵素酸化と自動酸化の違い
9 まとめ
第5章 紅茶テアフラビン類の機能性と物理化学的性質に関する構造活性相関
1 はじめに
2 テアフラビン類の略称と化学構造との関係
2.1 テアフラビン類の生成反応における二種類のカテキン類の組み合わせと生成物質の化学構造の関係
2.2 略称の系統
2.3 第一系統(TF1,TF2A,TF2B,TF3)の歴史
2.4 第二系統(theaflavin,theaflavin-3-gallate,theaflavin-3’-gallate,theaflavin-3,3’-di-gallate)の歴史
2.5 第三系統(TF1,TF2,TF3,TF4)の歴史
3 テアフラビン類とリン脂質との分子間相互作用
4 テアフラビン類の酸化還元電位
第6章 紅茶のインフルエンザウイルスに対する感染伝播阻止効果
1 前置き
2 インフルエンザウイルスの構造
3 インフルエンザウイルスの感染価の測定方法(プラック法)の原理
3.1 プラック法の概略
3.2 インフルエンザウイルスのプラック写真
4 紅茶のテアフラビンおよび緑茶のエピガロカテキンガレート(EGCg)のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果について
5 産地別紅茶のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果の比較試験
6 紅茶抽出エキスの抗ウイルス効果のメカニズムの解析
6.1 紅茶抽出エキスは,ウイルスの細胞への吸着を阻害するのか?―SEMでの観察方法―
6.2 マウスを用いた感染実験
第7章 紅茶ポリフェノールによる予防医学
1 はじめに
2 栄養素の機能とヘルスフード
3 ヘルスフードの要件
4 予防医学的なヘルスフードの機能
5 紅茶ポリフェノールの食後血糖値上昇抑制効果
6 紅茶ポリフェノールの抗ストレス効果
7 おわりに
第8章 紅茶テアフラビンのメタボリックシンドローム予防効果
1 はじめに
2 紅茶の疫学調査(血清総コレステロール)
3 紅茶の糖分解酵素阻害作用
4 TF1の糖負荷時の血糖値低下作用と抗肥満効果(動物実験)
5 TF1の糖負荷時の血糖値低下作用(ヒト介入試験)
6 紅茶の膵リパーゼ活性抑制作用
7 TF1の全身エネルギー消費量増加作用
8 TFsのトリアシルグリセロール濃度の増加抑制作用
第9章 紅茶由来高分子ポリフェノールMAFによる筋持久力強化および筋肥大促進機構
1 ミトコンドリア活性化因子MAF発見のいきさつ
2 運動生理学(分子筋生理学)研究室の取り組み
3 MAFの持久力増強作用
4 MAFの筋肥大促進作用
5 MAF研究,今後の展開
第10章 テアフラビンによる骨粗鬆症治療~ケミカルエピジェネティクスのアプローチの活用~
1 はじめに
2 破骨細胞分化の制御機構
3 骨粗鬆症と破骨細胞のエピジェネティック制御
4 エピジェネティック制御を標的とした骨粗鬆症治療とテアフラビンの有用性
5 最後に
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