キーワード:
分子構造/HLB値/天然素材/サステナビリティ/自己組織化/増粘/泡/低刺激性/分散/可溶化/乳化/市場動向/アニオン/カチオン/両性/非イオン/海外動向/輸出入動向/食品/化粧品/医薬品/身体洗浄剤/工業用洗浄剤/エラストマー・プラスチック/繊維/コンクリート/塗料/メーカー動向
刊行にあたって
界面活性剤とは、例えば「水と油」のように、そのままでは混ざることのないものを混ぜる働きをする物質のことをいう。液体同士に限らず、固体同士、またはそれぞれ違う形態の物質同士など、各々が接する面(界面)の張力を変化させる物質のことを指している。分子中に疎水基または親油基(油になじみやすい部分)と親水基(水になじみやすい部分)を有しているのが界面活性剤の特徴である。
界面活性剤は、乳化・分散/湿潤・分散/洗浄/起泡・消泡/柔軟・平滑/帯電防止/防錆/均染・固着/殺菌などの作用や機能を有しており、多様な用途に利用されている。各種洗浄用途をはじめ、食品の乳化、繊維用染色助剤、建築分野におけるセメントの流動性向上や濃度を高めることによる強度の向上、医薬・農薬、肥料、ゴム・プラスチック、IT 関連、環境保全関連など、実に幅広い用途に用いられている。
こうした多様な用途があるが、かつては、紡糸、紡績、染色など、繊維産業向けが最大の用途分野であったが、現在は多様なその他の分野に移っている。日本界面活性剤工業会がまとめた2016年の界面活性剤の需要分野別の構成比を見ると、上位に「香粧・医薬」、「土木・建築」、「繊維」、「ゴム・プラスチック」、「生活関連」の5分野がある。それぞれの分野の需要は10%を超えており、合計では全体の61.3%を構成している。
以上のように多様な用途で使われている界面活性剤について、その最新の開発動向と市場動向を簡潔にまとめたいとの考えから、本書は企画された。
本書【開発編】では、第一線でご活躍中の専門家の方々にお願いし、界面活性剤の最近の進歩と展望、界面活性剤開発、機能性高分子界面活性剤、化粧品用界面活性剤、身体用洗浄剤向け界面活性剤、分散・消泡への応用、ポリグリセリン系界面活性剤、繊維用界面活性剤、塗料用界面活性剤、分子シミュレーションなど、界面活性剤開発の最新のトピックスを中心に執筆して頂いた。
【市場編】では、概要・市場動向、種別/機能別概要・市場動向、海外市場動向、輸出入動向、用途別概要・市場動向、国内メーカー動向、海外メーカー動向などの章構成にて、界面活性剤の市場動向、参入メーカーなどについて調べあげた。
本書が界面活性剤の開発、販売、利用されている方々へ向けて、マーケティング活動の一助となれば幸いである。
「はじめに」より
著者一覧
坂井隆也 花王㈱
遊佐真一 兵庫県立大学
中西 睦 三洋化成工業㈱
嶋田昌彦 日油㈱
成見和也 キレスト㈱
樋口智則 太陽化学㈱
齋藤嘉孝 日華化学㈱
竹内斉久 日華化学㈱
久司美登 日本ペイント・オートモーティブコーティングス㈱
島津 彰 日東電工㈱
目次 + クリックで目次を表示
第1章 界面活性剤の最近の進歩と展望
1 はじめに
2 界面活性剤分子の構造要因と機能・作用
2.1 界面活性剤分子中の(親水基/疎水基)比の指標値
2.2 有機概念図法による界面活性剤分子中の(親水基/疎水基)比の指標値
2.3 有機概念図法によるHLB値―拡張HLB値(小田方式)
3 天然素材を原料とした安全性の高いカチオン界面活性剤の開発
3.1 ラノリン脂肪酸四級塩
3.2 ひまし油の四級塩
3.3 ホホバ油(jojoba oil)四級塩誘導体
4 高機能界面活性剤の創製
5 環境保全に向けて
第2章 界面活性剤開発によるサステナビリティへの貢献
1 はじめに
2 界面活性剤開発の歴史とサステナビリティ
3 界面活性剤とその原料の現状
4 界面活性剤のサステナビリティへの動きと課題
5 サステナブル界面活性剤に求められる3つの条件
6 サステナブル界面活性剤の一例:バイオIOS
7 バイオIOSのサステナビリティの可能性
7.1 天然原料由来
7.2 高い界面活性
7.3 高い水溶性
8 おわりに
第3章 機能性高分子界面活性剤
1 はじめに
2 両親媒性ジブロック共重合体の合成
3 水中での会合挙動
4 まとめ
第4章 特長ある化粧品用界面活性剤
1 はじめに
2 両親媒性物質の自己組織化
3 シャンプーにおける自己組織体の活用と応用例
3.1 製剤の増粘
3.2 起泡性・泡安定性の向上
3.3 皮膚残留抑制効果
4 日焼け止めにおける自己組織体の活用
4.1 αゲルを含有する日焼け止め製剤調整方法
4.2 αゲルを含有する日焼け止めの特徴
5 おわりに
第5章 身体用洗浄剤向け低刺激性界面活性剤
1 はじめに
2 身体用洗浄剤に用いられる界面活性剤の現状
2.1 開発の歴史
2.2 規制緩和と全成分表示
3 低刺激性界面活性剤
3.1 石鹸(脂肪酸塩)
3.2 アルキルリン酸塩(MAP)
3.3 アミノ酸系界面活性剤
3.4 アルキルイミノジ酢酸塩
4 サルフェートフリー対策としての界面活性剤
5 おわりに
第6章 界面活性剤の基礎と分散,消泡への応用
1 界面活性剤とは
1.1 界面活性剤の働き
2 分散,消泡を考える時の界面活性剤のキーワード
2.1 表面張力
2.2 ぬれ性(湿潤性)
2.3 ミセル
2.4 HLB
3 分散及び分散の三要素とは
3.1 “分散の三要素”の各要素の考え方
4 粉体の粒子径と分散剤の分子量及び分散剤の添加量の関係
5 粉体の粒子形と凝集性,ぬれ性の関係
6 分散媒の表面張力と被分散体(粉体)のぬれ,分散の関係
7 消泡とは
7.1 泡とは
7.2 泡の生成,安定化と破壊(消泡)
7.3 マランゴニー(Marangoni)効果による泡の安定化
7.4 起泡性と液の表面張力との関係
8 消泡作用と機能,分類について
8.1 消泡剤の種類と組成について
8.2 ハジキとは
8.3 消泡剤の消泡機構
9 まとめ
第7章 ポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化・乳化特性
1 はじめに
2 ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造
3 ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた可溶化特性
3.1 可溶化物の安定性
3.2 両連続型マイクロエマルションや水の可溶化
4 ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた乳化特性
4.1 PGFEの特徴を活かした乳化法
5 おわりに
第8章 繊維用界面活性剤と界面化学
1 はじめに
1.1 繊維加工業界における界面活性剤の用途
2 精練剤
3 ポリエステル用分散均染剤
4 オリゴマー除去剤
5 綿用フィックス剤
6 難燃剤
6.1 カーテンの耐久難燃加工
7 撥水剤
8 耐久吸水加工剤
9 おわりに
第9章 塗料用界面活性剤
1 はじめに
2 塗料に用いられる界面活性剤の種類
2.1 消泡剤
2.2 レベリング剤
2.3 ハジキ防止剤
2.4 増粘剤・粘性制御剤
2.5 色別れ防止剤
3 顔料分散剤
3.1 顔料分散剤とは
3.2 分散剤の構造とはたらき
3.2.1 ぬれ・吸着・安定化と分散剤の分子構造
3.3 分散剤の適用事例
3.3.1 非水系の分散
3.3.2 水系の分散
3.3.3 水系における適当な疎水基の選択
3.3.4 構造制御による高分子分散剤の高機能化
4 複層塗膜層間制御剤(混層防止剤)
4.1 多層構造で保護・美観の機能分担
4.2 多層構造を活用した高意匠開発
4.3 ウェット・オン・ウェット塗装で省工程・省エネルギー化
4.3.1 カルボジイミド変性複層塗膜層間制御剤
5 高分子乳化剤
第10章 分子シミュレーションでみる接着界面の相互作用と分子の動き
1 要旨
2 はじめに
3 界面接着エネルギーの計算
4 接着界面剥離挙動のシミュレーション
5 界面活性剤自己組織化挙動のシミュレーション
6 おわりに
【市場編】
第1章 概要・市場動向
1 概要
第2章 種別/機能別概要・市場動向
1 概要
2 アニオン界面活性剤
2.1 カルボン酸塩(石けんなど)
2.2 スルホン酸塩(LAS,MES,AOS,スルホコハク酸塩など)
2.3 硫酸エステル塩(AS,AESなど)
2.4 その他
3 カチオン界面活性剤
4 両性界面活性剤
5 非イオン(ノニオン)界面活性剤
5.1 エステル型
5.2 エーテル型
5.3 エステル・エーテル型
5.4 その他
6 その他の界面活性剤
第3章 海外市場動向
1 アジア太平洋
1.1 日本
1.2 中国
1.3 韓国
1.4 インド
1.5 マレーシア
1.6 台湾
1.7 その他の国
2 北米・中南米
3 西欧
第4章 輸出入動向
第5章 用途別概要・市場動向
1 概要
1.1 高分子界面活性剤
1.2 シリコーン系界面活性剤
1.3 フッ素系界面活性剤
1.4 バイオサーファクタント
2 市場動向
2.1 食品
2.2 化粧品
2.3 医薬品
2.4 身体洗浄剤
2.4.1 皮膚用洗浄剤
2.4.2 頭髪用洗浄剤
2.5 工業用洗浄剤
2.6 エラストマー・プラスチック
2.6.1 エラストマー
2.6.2 プラスチック
2.7 繊維
2.8 コンクリート
2.8.1 AE剤
2.8.2 減水剤(AE減水剤,高性能減水剤)
2.8.3 高性能AE減水剤
2.9 塗料
2.9.1 顔料の分散と流動
2.9.2 エマルション塗料
第6章 国内メーカー動向
1 青木油脂工業
2 センカ
3 花王
4 共栄社化学
5 三洋化成工業
6 新日本理化
7 第一工業製薬
8 高松油脂
9 竹本油脂
10 テイカ
11 東邦化学工業
12 日油
13 日華化学
14 日本乳化剤
15 松本油脂製薬
16 丸菱油化工業
17 ミヨシ油脂
18 モーリン化学工業
19 泰光油脂化学工業
20 大和化学工業
21 ユシロ化学工業
22 吉村油化学
23 ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ
24 ADEKA
第7章 海外メーカー動向
1 Akzo Nobel N. V.
2 Air Products & Chemicals
3 BASF SE
4 Clariant AG
5 DuPont de Nemours, Inc.
6 Evonik Industries AG
7 Stepan Company
8 Hantsman Corporation
9 The Dow Chemical Company
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