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最新ミリ波技術《普及版》

Current Millimeter-Wave Technology(Popular Edition)

2015年刊「最新ミリ波技術」の普及版。
回路、アンテナ、トランシーバ、モジュールとデバイス開発の必須情報と近・中距離無線や車載用ミリ波レーダーなどの応用技術も解説している。

商品コード:
B1376
監修:
松澤 昭
発行日:
2022年3月7日
体裁:
B5判・220頁
ISBNコード:
978-4-7813-1630-7
価格(税込):
4,400
ポイント: 40 Pt
関連カテゴリ:
エレクトロニクス
テクニカルライブラリシリーズ(普及版)
エレクトロニクス > 情報通信技術(ICT)・IoT
エレクトロニクス > その他の電子機器・材料

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キーワード:

回路/アンテナ/60GHz帯トランシーバ/ミリ波モジュール/近距離無線伝送装置/中距離無線伝送装置/ミリ波移動体通信システム/車載76G/79GHzミリ波レーダー/ミリ波モバイルカメラ/ミリ波パッシブイメージング装置

刊行にあたって

 波長が1cm以下の電波であるミリ波に関する技術開発は長い歴史を持っているが、車載レーダや固定無線などの一部の用途を除いては未だに大きなマーケットを形成していない。
 その原因は、デバイスが未成熟であったこと、ミリ波は直進性が強くこれまでの無線通信とは異なり自由に接続できないこと、ミリ波通信では数Gbpsの超高速データ伝送が可能だが、コストに見合った用途やコンテンツが未成熟だったことなどが挙げられる。
 初期のミリ波デバイスはインパットダイオードやガンダイオードなどの二端子デバイスであった。私が学生だった時代から使用されていたので、40年以上の歴史がある。しかしながら、二端子デバイスは入出力の分離が困難なため応用分野が限定され、ミリ波帯で広く使用されたのは三端子デバイスであるGaAs化合物半導体トランジスタであった。
 現在では、これを伝送線路などの受動素子と併せて集積化したマイクロ波モノリシック集積回路(MMIC)によりミリ波回路の実用化が図られ、衛星放送の受信機、車載レーダ、固定無線などに用いられている。しかしながら、来たる大量使用に向けてモノリシック集積回路による実現が試みられるようになった。当初はSiGeヘテロ接合トランジスタによる集積回路が開発され、続いて微細化により周波数特性が急激に上昇したCMOS集積回路が開発された。CMOS集積回路の意義は高周波性能が目標に達したということだけではなく、デジタル回路との混載が可能であり、ミスマッチの抑制など様々なデジタル補償を用いることで、システム全体の性能向上、小面積化、低電力化が図り易いことや、将来のベースバンド回路との一体集積が可能となることにある。
 また、最近は変復調の多値化ビット数の向上により、同一周波数帯域を用いてもデータレートを向上できる技術が開発されるようになり、従来に比較して約6倍の速度向上が図られている。このためには位相雑音の低減、周波数特性のフラットネスの向上、ベースバンドを含めた雑音や歪の低減が重要である。更にミリ波の課題である直進性への対応として、電子ビームフォーミング技術の開発が盛んである。また、低電力である程度の距離の通信を可能にするためには高利得アンテナが重要となるが、平面アンテナを中心として各種のアンテナ技術や、アンテナとチップを繋ぐ、低損失のパッケージ技術なども開発が進められている。
新たな市場への対応として、超高速データ伝送特性を用いて短時間のデータ伝送特性を実現する、データキオスクなどの新たな近距離無線技術が実用化されようとしている他、光ファイバーに比べて敷設の自由度が高いミリ波無線ネットワーク、4K・8Kなどの超高精細TVシステムへの適用技術、ミリ波イメージング技術なども開発が進められている。
 以上のようにミリ波技術はデバイス技術だけでなく、回路技術やシステム技術の開発により、その課題を克服し、本来の利点である超高速信号伝送の実現に向けた開発が続けられており、今後の無線通信における通信容量の逼迫を解決する技術としてミリ波技術が実用化される日もそれほど遠くないものと思われる。

松澤昭

本書は2015年に『最新ミリ波技術』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。

著者一覧


松澤 昭   東京工業大学
岡田健一   東京工業大学
藤島 実   広島大学
広川二郎   東京工業大学
張 淼    東京工業大学
滝波浩二   パナソニック㈱
谷口英司   三菱電機㈱
福本 宏   三菱電機㈱
須賀良介   青山学院大学
中野 洋   日本無線㈱
谷口 徹   日本無線㈱

松永高治   日本電気㈱
三友敏也   ㈱東芝
清水雅史   日本電信電話㈱
川崎研一   ソニー㈱
半谷政毅   三菱電機㈱
中山正敏   三菱電機㈱
大橋洋二   ㈱富士通研究所
中川孝之   NHK放送技術研究所
佐藤弘康   東北大学
陳 強    東北大学

執筆者の所属表記は、2015年当時のものを使用しております。

目次 +   クリックで目次を表示

【開発編】
第1章 回路
1 60GHz帯局部発振器
 1.1 60GHz帯局部発振器の課題
 1.2 従来のミリ波帯直交局部発振器の回路構成
 1.3 注入同期型周波数逓倍器
 1.4 60GHz帯局部発振器
 1.5 60GHz帯注入同期型直交局部発振器の設計例
2 テラヘルツCMOS回路の動向と展望
 2.1 はじめに
 2.2 デバイス特性およびモデリング
  2.2.1 ディエンベディング
  2.2.2 非線形トランジスタモデル
  2.2.3 電磁界シミュレーション
 2.3 テラヘルツCMOS回路設計
  2.3.1 増幅回路における利得増強
  2.3.2 テラヘルツ信号の生成
  2.3.3 オンチップ電源デカップリング,平面回路とアンテナ
  2.3.4 送受信回路
 2.4 今後の展望

第2章 アンテナ
1 60GHz帯シリコンチップ厚膜誘電体上高効率パッチアンテナ
 1.1 はじめに
 1.2 アンテナ構造
 1.3 アンテナ試作
 1.4 測定結果
 1.5 リバブレーションチャンバによる放射効率測定
2 38GHz帯中距離伝送システム用平面アンテナ
 2.1 はじめに
 2.2 アンテナ構成
 2.3 アンテナ設計
  2.3.1 放射スロットの設計
  2.3.2 スロット結合器の設計
  2.3.3 H面T分岐との結合
  2.3.4 終端スロット結合器
  2.3.5 アンテナの全構造解析
 2.4 アンテナ試作と評価
 2.5 実用化に向けたアンテナの課題と改良
 2.6 アンテナ試作と評価
  2.6.1 銅薄板の拡散接合によるアンテナ試作
  2.6.2 アルミ薄板の拡散接合によるアンテナ試作
 2.7 まとめ

第3章 60GHz帯トランシーバ
1 60GHz帯ダイレクトコンバージョン送受信機
 1.1 はじめに
 1.2 システムレベル無線機設計
 1.3 無線機の全体設計と回路実装における非理想性の考慮
 1.4 各回路ブロックの設計
  1.4.1 60GHz低雑音増幅器
  1.4.2 60GHz帯差動プリアンプ
  1.4.3 ダウンコンバージョンミキサ
  1.4.4 ベースバンド帯増幅器
  1.4.5 60GHz帯電力増幅器
  1.4.6 アップコンバージョンミキサ
  1.4.7 抵抗帰還型差動増幅回路
 1.5 送受信機の実測評価
  1.5.1 評価ボードおよび測定装置
  1.5.2 測定結果
 1.6 今後の展望
2 IEEE802.11ad/WiGig対応60GHz帯CMOSトランシーバチップセット
 2.1 はじめに
 2.2 IEEE802.11ad/WiGig規格
 2.3 CMOSトランシーバチップセット
  2.3.1 モバイル端末向けチップセット
  2.3.2 ビームフォーミング搭載チップセット
 2.4 まとめ
3 5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFIC
 3.1 はじめに
 3.2 5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応Si-CMOS受信RFICの構成
 3.3 60GHz帯受信フロントエンド部の設計
  3.3.1 60GHz帯カスコード形LNA
  3.3.2 60GHz帯トランジスタペア形偶高調波ミクサ
  3.3.3 60GHz帯受信フロントエンド
 3.4 フリップチップ実装
 3.5 試作結果
  3.5.1 60GHz帯カスコード形LNA
  3.5.2 5GHz/60GHz帯受信フロントエンド
 3.6 まとめ

第4章 ミリ波モジュール
1 アンテナ内蔵ミリ波パッケージ技術
 1.1 はじめに
 1.2 アンテナへの要求特性
 1.3 スラブ導波路付ポスト壁導波路開口アンテナ
  1.3.1 構造
  1.3.2 アンテナ設計
  1.3.3 特性
 1.4 アンテナパッケージ
  1.4.1 アンテナ間に要求されるアイソレーション
  1.4.2 アイソレーション特性の評価
  1.4.3 まとめ
2 ミリ波帯InP低雑音増幅器およびモジュール化
 2.1 はじめに
 2.2 低雑音増幅器に求められる諸特性
 2.3 低雑音増幅器に求められる能動デバイス
 2.4 低雑音増幅器の設計
 2.5 ミリ波デバイスの実装(Flip-chip実装)
 2.6 Flip-chipしたミリ波低雑音増幅器
 2.7 まとめ
3 ミリ波帯RFモジュール技術
 3.1 はじめに
 3.2 38GHz帯 UP Converter MMIC
 3.3 38GHz帯 UP Converterモジュールの基本特性
 3.4 38GHz帯 Down Converter MMIC
 3.5 38GHz帯 Down Converterモジュールの基本特性
 3.6 単板型MMICパッケージ
4 GaNパワーモジュール
 4.1 はじめに
 4.2 GaNのポジショニング
 4.3 ミリ波帯無線通信の進展とGaN_FET技術
 4.4 Si基板上ミリ波帯GaN_FET技術
 4.5 Si基板上GaN_MMIC設計技術
 4.6 小型GaN_MMIC高出力増幅器モジュール技術
 4.7 まとめ

【応用編】
第5章 近距離無線伝送装置
1 近接ミリ波無線
 1.1 はじめに
 1.2 ワンチップミリ波近接無線機
 1.3 アナログ・デジタル混載手法
 1.4 パッケージ内蔵アンテナ
 1.5 高精度温度補償を備えたミリ波増幅回路
 1.6 低損失送受切り替えスイッチ
 1.7 その他アナログ回路
 1.8 ワンチップ無線機測定結果
 1.9 おわりに
2 ミリ波(60GHz)を用いた超高速非接触通信
 2.1 はじめに
 2.2 電波法におけるメリット
 2.3 実際の伝搬条件
 2.4 有効な利用方法
 2.5 ミリ波の新たな利用シーン
3 チップ間近距離無線通信
 3.1 背景
 3.2 ミリ波チップ間近距離通信のコンセプト
  3.2.1 ミリ波帯に変調する利点
 3.3 実装例
  3.3.1 Millimeter-Wave Intra-Connect
  3.3.2 Network-on-Chip
  3.3.3 動作周波数の高周波化
  3.3.4 導波構造の活用
  3.3.5 信号の多重化
 3.4 まとめ

第6章 ミリ波中距離無線伝送装置
1 システム概要
2 無線回路
3 ベースバンド信号処理SoC
4 無線システム性能
5 屋外実運用評価
6 回線不稼働率の実測

第7章 ミリ波帯高速移動体通信システム
1 はじめに
2 機上局装置
 2.1 MMICチップセット
 2.2 ミリ波モジュール
 2.3 分配/合成回路および素子アンテナ
 2.4 アクティブフェーズドアレーアンテナ(APAA)
3 システム試験
4 おわりに

第8章 車載用76G/79GHzミリ波レーダー

第9章 ミリ波モバイルカメラ
1 はじめに
2 ワイヤレスカメラの要求条件
3 放送事業用ミリ波帯周波数
 3.1 電波の特徴
 3.2 広帯域利用
 3.3 無線用送受信機
4 ミリ波モバイルカメラのMIMO伝送方式
5 ミリ波モバイルカメラのシステム構成と諸元
 5.1 システム構成
 5.2 システム諸元
6 42GHz帯高周波部とIF光伝送装置
 6.1 42GHz帯高周波部
 6.2 IF光変換器・光多重装置・光分配装置
7 番組活用例
8 むすび

第10章 ミリ波パッシブイメージング装置
1 背景
2 使用周波数
3 ミリ波帯の熱雑音電力
4 77GHz帯ミリ波パッシブイメージング装置
 4.1 誘電体レンズの設計
 4.2 イメージング素子の設計
 4.3 動画撮像機構
5 セキュリティ用途の応用例
6 まとめ