キーワード:
高分子設計/易解体性接着/粘着/接合/剥離/分解/界面/評価/分析/シミュレーション/熱可塑性樹脂/ポリマーアロイ/複合材料/マルチマテリアル/発泡剤/熱応答性/自己修復性/バイオミメティック/ラマン分光/X線イメージング/マテリアルズ・インフォマティクス/AI/マイクロ波/セラミック粒子/電気パルス法/フォトクロミズム/5G/6G/自動車/マテリアルリサイクル/ケミカルリサイクル/プラスチックリサイクル/SDGs
刊行にあたって
2006年(平成18年)10月に,『接着とはく離のための高分子-開発と応用-』を刊行させて頂いた。当時は,接着や高分子に関連する分野で,新しい接着技術を志向する研究会が相次いで設立された時代であり(例えば,「解体性接着技術研究会」(平成16年設立,日本接着剤工業会の協力),「次世代接着材料研究会」(平成18年設立,日本接着学会),「精密ネットワークポリマー研究会」(平成19年設立,高分子学会),「易解体材料技術研究会」(平成20年時限付きで発足,化学技術戦略推進機構,JCII(現JACI)など),学会誌や専門雑誌上でも,解体性,接着と剥離をキーワードとする特集が頻繁に組まれていた。上掲の『接着とはく離のための高分子-開発と応用-』では,接着や剥離に関わる高分子材料や技術を中心に,接着・解体の基礎から当時の最先端の材料設計,技術開発などを扱い,基礎,材料開発,手法開発ならびに応用展開の4編構成で,大学,研究所,あるいは企業に所属するそれぞれ専門分野でご活躍しておられる方々に執筆をお願いした。幸いにして好評を得て,2012年には普及版も刊行された。
それから20年近くの時が過ぎ,その間に世の中の風潮はすいぶん様変わりした。界面科学の基礎研究が飛躍的に発展し,さらに科学技術の領域全般で2020年頃から接着がキーワードとして重要視されるようになり,追い風が吹き始めた。その背景には,2015年9月に国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」があり,その中で策定された具体的な17のゴールと169のターゲットからなる持続可能な開発目標(SDGs; Sustainable Development Goals)が大きな推進力となっている。2030年までの短い期間内でこれらの開発目標を達成する必要があり,様々な分野で急ピッチでの研究開発が進められている。丁度同じ頃から,「接着・界面」や「分解・解体」などのキーワードに関連する国内での大型研究プロジェクトが幾つもスタートしている。
十数年前の接着と剥離に関する未解決課題が,現在すべて解決したわけではなく,むしろ地球環境を守りながら,あらゆる問題を新たな技術革新によって乗り越えて行かなければならない時代に突入したことで,課題は質量ともに増大し続けている。そこで,接着と剥離,ならびにそれらに関連する高分子材料や技術の開発についての現時点での最先端の技術開発を取り巻く状況全体を見渡して,今後の新たな方向性を探ることは大いに意義あることだと考えた。
本書では,高分子設計,接着界面の評価・分析・シミュレーション,接着・接合・解体手法開発,応用展開の4編構成(全24章)とし,各テーマに関わる分野におけるそれぞれ第一人者の方々に執筆をお願いしたところ,快くご承諾頂くことができた。そればかりか,皆様大変ご多忙であるにもかかわらず,ごく短期間のうちに原稿をご準備頂き,当初の立案企画からほんの半年あまりという短期間のうちに無事刊行まで辿り着くという恵まれた状況を与えて頂いた。監修者として,執筆者の皆様方に心よりお礼申しあげます。多くの研究者・技術者にとって本書が研究開発の一助となることを切に願っています。
大阪公立大学
松本章一
著者一覧
佐藤絵理子 大阪公立大学
川谷 諒 信州大学 (現所属:徳島大学)
髙坂泰弘 信州大学
伊藤浩志 山形大学
木原伸浩 神奈川大学
細田奈麻絵 (国研)物質・材料研究機構
佐藤千明 東京工業大学
堀内 伸 (国研)産業技術総合研究所
緒方雄大 積水化学工業㈱
松本拓也 神戸大学
武田佳彦 ㈱リガク
森田裕史 (国研)産業技術総合研究所
岩崎富生 ㈱日立製作所
島津 彰 日東電工㈱
島本一正 (国研)産業技術総合研究所
西野 孝 神戸大学
倉敷哲生 大阪大学
所 千晴 早稲田大学
山岡賢司 大阪大学
以倉崚平 大阪大学
銭韵鵬 大阪大学
髙島義徳 大阪大学
近藤瑞穂 兵庫県立大学
川月喜弘 兵庫県立大学
高橋昭雄 横浜国立大学
小林靖之 (地独)大阪産業技術研究所
池田慎吾 (地独)大阪産業技術研究所
市川 功 リンテック㈱
赤石良一 大阪有機化学工業㈱
目次 + クリックで目次を表示
第1章 安定性と分解性を両立する刺激応答型の易解体性接着材料の開発
1 はじめに
2 熱および光応答性接着剤
3 接着と剥離のための外部刺激
4 ポリぺルオキシドを用いる易解体性接着
5 2重保護型アクリル系易解体性接着
6 BOC含有易解体性接着材料
第2章 反応性高分子を用いる易解体性接着材料:高強度化と界面剥離の両立に向けて
1 易解体性接着材料とは
2 硬化型接着剤の界面剥離による解体
3 おわりに
第3章 主鎖にアクリル骨格を導入した不飽和ポリエステルの合成と硬化・分解
1 はじめに
2 メタクリレート型不飽和ポリエステルの合成と硬化・分解
2.1 ジメタクリレートの重縮合による不飽和ポリエステル
2.2 メタクリル酸クロリド型モノマー
3 メタクリル骨格を分散して挿入した不飽和ポリエステル
3.1 非晶性ポリアリレートへのメタクリル骨格の挿入
3.2 全脂肪族/半芳香族ポリエステルへのメタクリル骨格の導入
3.3 リビング開環重合と鎖延長によるメタクリル骨格間距離の精密制御
3.4 開環重合による分解性/硬化性ポリマーの合成
4 おわりに:メタクリル骨格を挿入するモノマーの入手
第4章 タフポリマーを実現する成形加工による高次構造制御
1 はじめに
2 八軸スクリュー混練押出機
3 高せん断加工機
4 破壊挙動解析
5 おわりに
第5章 使用時に高い安定性を持つ易解体性高分子の設計と易解体性接着剤への応用
1 はじめに
2 ジアシルヒドラジンの酸化分解
3 ポリ(ジアシルヒドラジン)の合成と酸化分解
4 酸化分解性エポキシ樹脂
5 酸化分解性架橋体
6 おわりに
第6章 バイオミメティック可逆的インターコネクトデザイン
1 生物接着
1.1 接着タイプの分類
1.2 生物の歩行(一時的な接着)
2 ドライ系の接着
2.1 ヤモリの肢
2.2 接着のメカニズム
2.3 脂質層の存在
2.4 剥離のしくみ
3 ウェット系の接着機構
3.1 接着部の形状
3.2 分泌液
4 バイオミメティクス
4.1 生物の「形」を模倣(接着構造)
4.1.1 接着機構の製造技術(ヤモリタイプ)
4.1.2 人工的な接着機構の評価
4.2 蛹をモデルに作り方を模倣〜発生生物学的バイオミメティクス〜
5 まとめ
第7章 解体性接着剤技術
1 はじめに
2 解体性接着剤の用途,種類および特徴
2.1 熱可塑・ホットメルト接着剤
2.2 発泡剤の混入
2.3 化学的に活性な物質の混入
2.4 界面での電気化学反応を利用したもの
2.5 その他
3 最近のトピックス
4 今後のシーズ
5 結論
【第Ⅱ編 接着界面の評価・分析・シミュレーション】
第1章 電子顕微鏡による接着界面の破壊解析
1 緒言
2 高分解能(低加速)SEMによる高分子/高分子融着界面の破壊メカニズム解析
3 STEM-レプリカによる接着はく離面の3次元解析
4 電子顕微鏡による接着界面破壊のリアルタイム観察
5 最後に
第2章 粘着テープ表面の分析と解析
1 はじめに
1.1 粘着の原理
1.2 粘着剤の種類
2 表面分析
2.1 表面形態
2.2 表面組成
2.3 表面物性
3 事例紹介
3.1 分析対象
3.2 分析結果
3.3 考察
4 まとめ
第3章 ラマン分光による接着界面解析
1 ラマン分光
2 接着とラマン分光評価
3 瞬間接着剤を用いた接着におけるプライマー処理効果の影響
4 ホットメルト系接着剤による接着界面の評価
第4章 3次元X線イメージング
1 はじめに
2 X線イメージング
3 X線Computed Tomography(CT)
4 X線位相イメージング
5 おわりに
第5章 接着界面のマルチスケールシミュレーション解析
1 はじめに
2 接着界面におけるマルチスケールの問題
3 シミュレーション手法の概要
4 接着界面における分子鎖構造
5 メソスケールにおける界面の凹凸の効果
6 界面の剥がれの活用
7 まとめ
第6章 分子シミュレーションとマテリアルズ・インフォマティクスを活用した強接着界面の設計技術
1 はじめに
2 DNAとの接着性に優れたセラミックス材料を設計する解析モデル
3 接着性(密着強度)の高い材料の設計方法
3.1 分子動力学による密着強度(接着性)解析手法
3.2 直交表による支配パラメータ選定方法
3.3 応答曲面法による最適材料設計方法
4 最適設計の結果および考察
4.1 接着性(密着強度)の支配パラメータの選定結果
4.2 最適設計の指針および結果の考察
5 おわりに
第7章 分子シミュレーションで観る接着界面の相互作用と分子の挙動
1 はじめに
2 第一原理計算による接着界面の相互作用シミュレーション
3 全原子系分子動力学法による接着界面剥離挙動のシミュレーション
4 粗視化分子動力学法による接着剤バルク高分子の凝集破壊シミュレーション
5 おわりに
第8章 機械学習を活用した接着接合部の劣化予測
1 はじめに
2 水が接着接合部に与える影響
3 接着剤層への水の拡散
4 実験
4.1 実験手順
4.2 材料
4.3 接着剤硬化物(バルク)試験片
4.4 引張試験およびIR測定
5 実験結果および考察
5.1 引張試験およびIR測定結果
5.2 機械学習によるモデル化
6 おわりに
【第Ⅲ編 接着・接合・解体手法開発】
第1章 マイクロ波照射を利用した解体性接着システムの開発
1 はじめに
2 マイクロ波の利用と接着解体原理
3 マイクロ波を用いた解体―実施例1:SGA+イオン液体―
4 マイクロ波を用いた解体―実施例2:ポリスチレン+イオン液体―
5 マイクロ波を用いた解体―実施例3:フッ素系高分子―
6 おわりに
第2章 セラミックス粒子を用いた易解体性接着接合
1 はじめに
2 解体性接着の現状
3 セラミックス粒子を用いたFRP接着接合
4 Al/GFRP異材接着接手の解体性評価
5 Al/CFRP異材接着接手の解体性評価
6 おわりに
第3章 電気パルス法による接着体解体を志向した易解体構造や易解体接着剤の検討
1 電気パルス法の概要
2 ノッチ導入による易解体構造
3 金属球挿入による易解体構造
4 フィラー添加による易分解接着剤
第4章 可逆性結合・可動性架橋を用いた自己修復性接着システムの構築
1 序論
2 可逆性結合を利用した接着・自己修復材料
2.1 CDのホスト-ゲスト錯体形成からなる自己修復性接着ゲル
2.2 ホスト・ゲストモノマーの共重合体からなる自己修復性エラストマー
2.3 ホスト・ゲストポリマーの混合からなる自己修復性エラストマー
2.4 主鎖にホスト-ゲスト錯体を導入した自己修復性ポリウレタン
2.5 可逆性結合を利用した多機能高分子材料
3 可逆性架橋を利用した異種材料の接着
3.1 ホスト-ゲスト錯体を利用した選択的なガラス基板とヒドロゲルの接着
3.2 外部刺激による接着制御
3.3 自己修復性ゲルを利用した異種材料接着
3.4 非共有結合と共有結合を組み合わせた強固な異種接着界面の形成
4 可動性架橋を有する高靭性材料の力学特性および接着剤としての展望
4.1 可動性架橋と水素結合からなる複合架橋エラストマー
4.2 可動性架橋で異種高分子をつないで複合した材料
4.3 複数の可動性架橋ネットワークを編み込んで複合した材料
4.4 可動性架橋を用いた高耐久接着材料
5 結論
第5章 フォトクロミズムを用いた解体性接着剤
1 はじめに
2 フォトクロミック色素を用いた光解体性接着剤
3 液晶と光相転移
3.1 可塑剤としての利用
3.2 液晶の光相転移を用いた解体性接着剤
3.3 N-ベンジリデンアニリン液晶の光相転移を用いた解体性接着剤
3.4 異方性接着
3.5 液晶エラストマーにおける接着制御
4 おわりに
【第Ⅳ編 応用展開】
第1章 低誘電特性樹脂・積層材料の開発と応用
1 はじめに
2 エレクトロニクス実装
3 高周波対応高分子材料に要求される誘電特性
4 低誘電性高分子材料の技術動向
5 低誘電損失樹脂材料の設計と応用例
6 平滑樹脂面への配線形成
7 今後の展開
第2章 次世代高周波回路基板のためのフッ素系樹脂/金属直接接着技術
1 はじめに
2 フッ素樹脂の表面改質
3 フッ素樹脂のプラズマ表面改質
3.1 プラズマ表面改質時のガス種の影響
3.2 窒素系ガスを用いたプラズマ表面改質の効果
4 フッ素樹脂と銅の直接接着
4.1 接着界面の粗さ
4.2 90°剥離試験による密着強度評価
4.3 プラズマ処理効果の持続性
5 まとめと今後への展望
第3章 相分離構造を利用した高分子材料の機能化と応用
1 緒言
2 エポキシ熱硬化系により設計された高分子材料の相分離現象
3 メソゲン骨格を有する組成物を用いたエポキシ樹脂配合物の相構造と接着物性
4 アクリル共重合体/エポキシ混合系材料の相分離構造と接着特性
5 相分離構造を利用した多孔質炭素フィルムの創製
6 おわりに
第4章 機能性接着用バイオミメティックモノマーの開発
1 はじめに
2 生物多様性における接着機能とそのバイオミメティクス材料
3 L-ドーパに基づく密着性,接着性の研究
4 カテコール,ピロガロール系モノマーの研究
4.1 当社におけるカテコール系アクリルモノマー;ドーパミンアクリルアミドの展開
4.2 プロトカテク酸系メタクリレートの開発
5 用途の提案
6 おわりに
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