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食品機能評価/マイクロアレイ/トランスクリプトミクス/プロテオミクス/メタボロミクス/大豆イソフラボン/リン/セサミン/カテキン/アスタキサンチン/クリプトキサンチン/ω-3脂肪酸/マグネシウム/乳製品/抗ストレス食品/植物系素材/プロバイオ
刊行にあたって
疾病のリスク低減をはじめ多種多様な機能性を持つ「テーラーメイド食品」開発競争は益々過熱していくと推定されています。このような食品機能評価のためには、最終的にはヒト臨床試験による評価が必要となり、そのためには、簡便な評価システムにより血液や尿中の未病診断バイオマーカーや疾患予防バイオマーカーを検出・定量することで、食と健康の解明のための「分子疫学研究」や「大規模介入研究」への応用も可能となります。これらの研究のためには、疾病に至る前の段階、すなわち、未病診断技術が重要な課題となり、現在、国家的プロジェクトとして全国規模での調査・研究が計画中であり、その目的には、数千人から数万人規模での血液や尿中のバイオマーカーの測定が必要となります。また、「予防医学」や「抗加齢」を目的とした多くの学会や研究プロジェクトがスタートしており、将来的には、「未病診断」や「予防医学」を目的とした診療システムも全国規模で展開されると推定されています。
このような研究アプローチで大きな注目を集めてきているのが、遺伝子解析技術(ゲノミクス)です。ゲノム情報を利用したゲノミクスは、まず、医療の分野で大きく発展しましたが、その背景には、目覚しいバイオテクノロジー研究の発展を基盤とした「DNAマイクロアレイ」技術に関する研究の進展が大きく寄与しています。様々なタイプの「DNAマイクロアレイ」の開発研究は、治療を目的とした医療の分野のみならず、「がん」をはじめ「生活習慣病」とよばれる「疾病」の発症の予防の分野でも大きく注目されてきています。なかでも、各個人の食生活に最適な食品、「テーラーメイド食品」開発が大きな注目を集め、その基盤的研究として欧米で注目を集めたのが「栄養遺伝子学」、いわゆる「ニュートリゲノミクス」の誕生です。日本でも、東京大学に「ニュートリゲノミクス」寄付講座が設立されるなど、企業を含めた多くの研究者が多種多様な「テーラーメイド食品」への応用開発を活発に進めています。しかし、最近の世界的な研究の方向は急展開しており、「ポストゲノム」研究、すなわち解明されたゲノム情報をどのように利用するかが重要な課題となってきています。
「ニュートリゲノミクス」の領域は、当初、ゲノミクス、トランスクリプトミクスを中心とした狭義の「遺伝子栄養学」の概念でしたが、現在では、ゲノミクスからトランスクリプトミクス、プロテオーミクス、メタボロミクスなど、いわゆる、オミクスと総称される「バイオマーカー」を利用した総合的な食品機能評価法の開発に発展しており、今後、益々未病診断や機能性食品評価に重要な役割を果たしつつあります。
そこで、本書では、ニュートリゲノミクスとテーラーメイド食品の分野で多くの研究を主導している静岡県立大学の合田敏尚教授と2人が監修者となって、機能性食品の開発や各疾病におけるバイオマーカーの探索、テーラーメイド食品への応用研究など、この分野では国際的にも評価の高いトップの研究者に執筆をお願いし、専門分野に関連した最新の研究動向をまとめていただきました。その内容は、食品機能学、機能栄養学関連の研究者やメーカー方々から、統合医療、予防医学などの医療関係者の方々にも役立てていただけるものであり、産官学の第一線の研究者にとって必読の書であると確信しております。
2013年9月 大澤俊彦
本書は2013年に『ニュートリゲノミクスを基盤としたバイオマーカーの開発―未病診断とテーラーメイド食品開発に向けて―』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
大澤俊彦 愛知学院大学 合田敏尚 静岡県立大学 津田孝範 中部大学 小田裕昭 名古屋大学 斉藤憲司 東京大学 高橋祥子 東京大学 加藤久典 東京大学 門田幸二 東京大学 内藤裕二 京都府立医科大学 吉川敏一 京都府立医科大学 及川 彰 山形大学 上原万里子 東京農業大学 中井雄治 東京大学 井手 隆 十文字学園女子大学 立花宏文 九州大学 杉浦 実 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 | 小堀真珠子 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 白井展也 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 鈴木和春 東京農業大学 石島(根元)智子 東京大学 松崎広志 東京農業大学 細野 朗 日本大学 武田英二 徳島大学 奥村仙示 徳島大学 中尾真理 徳島大学 竹谷 豊 徳島大学 橘 伸彦 不二製油㈱ 相澤宏一 カゴメ㈱ 堀場太郎 キッコーマン㈱ 本田真一 ㈱カネカ 福井雄一郎 カゴメ㈱ 粂 久枝 ㈱明治 |
執筆者の所属表記は、2013年当時のものを使用しております。
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第1章 ニュートリゲノミクスとテーラーメイド食品
1 はじめに
2 保健の用途に対応した新規バイオマーカーの必要性
3 食後高血糖の履歴を示すバイオマーカーの探索例
4 ヒトにおけるバイオマーカーの妥当性の評価
5 個人の栄養・代謝状態のアセスメントを目的とした実用的なバイオマーカー
6 今後の展望
第2章 未病診断とバイオマーカー
1 はじめに
2 「ニュートリゲノミクス」の登場
3 プロテオミクスへの期待
4 メタボリックシンドロームとバイオマーカー
5 脳内老化とバイオマーカー
6 未病診断バイオマーカーによるデータベースの作製
【第2編 ニュートリゲノミクスと関連手法】
第1章 食品機能評価とニュートリゲノミクス,バイオマーカー
1 はじめに
2 DNAマイクロアレイの原理と技術
2.1 フォトリソグラフ法とジーンチップの概要
2.2 スタンフォード法
3 食品機能評価とDNAマイクロアレイを用いたバイオマーカーの検討
4 おわりに
第2章 マイクロアレー,オミックス生物学の活用法
1 はじめに
2 テーラーメイド食品開発の時代的背景
3 食品栄養学研究へのオミックス生物学の応用
4 オミックス生物学を利用した「逆」食品栄養学研究
5 オミックスの選択
6 オミックス生物学の利用における時間因子の重要性
7 腸内細菌との関わり
8 おわりに
第3章 ニュートリゲノミクス研究を加速するツールの開発
1 はじめに
2 ニュートリゲノミクスデータを可視化するツール
3 データベースによるオミクスデータの活用
第4章 トランスクリプトミクスの推奨データ解析ガイドライン
1 はじめに
2 実験デザイン再確認
3 発現データの数値化(遺伝子発現行列取得)
4 クラスタリング(全体像を眺める)
5 発現変動解析(DEG検出時の注意点)
6 おわりに
第5章 プロテオミクスの応用
1 はじめに
2 脂質過酸化研究の新たな流れ
3 酸化ストレスセンサーとしての各種転写因子
4 酸化ストレスセンサーとしてのNrf2-Keap1システム
5 酸化ストレス誘導タンパク質としてのHO-1
6 おわりに
第6章 メタボロミクスの応用
1 はじめに
2 メタボロミクス
3 ニュートリゲノミクスにおけるメタボロミクス
4 今後の展望
【第3編 ニュートリゲノミクスによる食品解析とバイオマーカーの開発】
第1章 大豆イソフラボンとメタボライト
1 はじめに
2 バイオマーカーとしてのイソフラボンとメタボライト
3 バイオマーカーとしての測定法
4 イソフラボンとメタボライトのニュートリゲノミクス
4.1 トランスクリプトミクス
4.2 プロテオミクス
4.3 メタボロミクス
4.4 エピジェネティクス的制御
5 おわりに
第2章 リン
1 はじめに
2 高リン食摂取の影響に関する従来の知見
3 高リン食摂取がラット腎臓の遺伝子発現に及ぼす影響のニュートリゲノミクスによる評価
4 おわりに
第3章 ゴマリグナン
第4章 緑茶カテキン感知力バイオマーカー
1 はじめに
2 緑茶カテキンEGCG感知レセプター67LR
3 EGCG感知レセプター67LRの発現量調節による緑茶カテキン感知力の制御
4 EGCGのがん細胞増殖抑制活性発現を担う分子
5 EGCGのがん細胞致死活性発現を担う分子
6 EGCGの抗アレルギー活性発現を担う分子
7 EGCGの抗炎症活性発現を担う分子
8 緑茶カテキン感知レセプターの活性化に伴って動く遺伝子
9 おわりに
第5章 アスタキサンチン
1 はじめに
2 アスタキサンチンとは?
3 アスタキサンチンの抗酸化作用
3.1 一重項酸素消去作用
3.1.1 化学反応 Chemical reaction
3.1.2 物理的消去 Physical quenching
3.2 脂質過酸化抑制作用
4 疾病予防,健康増進効果
4.1 抗糖尿病作用
4.2 運動に与える影響
4.3 抗肥満作用
5 おわりに
第6章 β-クリプトキサンチン
1 はじめに
2 β-クリプトキサンチン
3 三ヶ日町研究での知見
3.1 肝機能障害リスクとの関連
3.2 インスリン抵抗性リスクとの関連
3.3 メタボリックシンドロームリスクとの関連
4 トランスクリプトミクスによるβ-クリプトキサンチンの機能性解明
4.1 非アルコール性脂肪肝炎
4.2 β-クリプトキサンチンの非アルコール性脂肪肝炎改善作用
4.3 トランスクリプトミクスによるβ-クリプトキサンチンの非アルコール性脂肪肝炎改善作用の解析
4.4 カスタムアレイによるβ-クリプトキサンチンの非アルコール性脂肪肝炎の評価
5 おわりに
第7章 ω-3脂肪酸
1 はじめに
2 脂質代謝調節機能
3 脳機能
第8章 マグネシウム
1 マグネシウムの生理機能
2 マグネシウムの体内分布とその調節臓器との関係
3 マグネシウム動態と腎臓機能との関係
4 マグネシウム動態と骨代謝
5 Mgトランスポーターについて
6 Mg欠乏ラットのDNAマイクロアレの利用
第9章 乳製品
1 はじめに
2 乳および乳製品の生体調節機能
3 発酵乳に利用される微生物,およびオリゴ糖による宿主への機能についての網羅的解析
4 おわりに
第10章 抗ストレス効果を示す食品・食生活とバイオマーカー
1 はじめに
2 ストレスと代謝反応およびバイオマーカー
2.1 ストレスによる代謝変化
2.2 HPA活性化
2.3 セロトニン代謝
2.4 ストレスとテストステロン
2.5 精神ストレス反応と遺伝子多型
3 食品・食事とストレス
3.1 魚油
3.2 高炭水化物食品
3.3 日本食
3.4 食物繊維
3.5 乳製品
3.6 人参サポニン
4 おわりに
【第4編 企業における研究開発動向】
第1章 植物系食品素材
1 分離大豆タンパク質摂取の脂質代謝への影響
1.1 大豆と大豆タンパク質
1.2 SPI摂取後の肝臓における網羅的遺伝子発現解析
1.3 Post DNA microarray:β-コングリシニンの生理作用解析への応用
1.4 今後の食品素材開発に向けて
2 トマト,赤ピーマン摂取の肝臓遺伝子の発現に与える影響
2.1 はじめに
2.2 トマト,赤ピーマンの体重,血中マーカーへの影響
2.3 トマト,赤ピーマンの摂取が肝臓の遺伝子発現に与える影響
2.4 トマトの摂取が肝臓の糖,脂質に関連する遺伝子に与える影響
2.5 赤ピーマンの摂取が肝臓の糖,脂質に関連する遺伝子に与える影響
2.6 まとめ
3 ナリンゲニンカルコンが脂肪細胞の代謝に及ぼす影響の解析
3.1 はじめに
3.2 ナリンゲニンカルコンのアディポネクチン分泌促進作用
3.3 ナリンゲニンカルコンが脂肪細胞の遺伝子発現プロファイルに及ぼす影響
3.4 おわりに
4 植物抽出素材の生活習慣病予防・改善効果の解析
4.1 はじめに
4.2 甘草グラブラポリフェノール
4.2.1 甘草グラブラポリフェノールとは
4.2.2 甘草グラブラポリフェノールの脂肪低減効果
4.2.3 甘草グラブラポリフェノールのニュートリゲノミクス解析
4.2.4 まとめ
4.3 菊花ポリフェノール
4.3.1 菊花ポリフェノールとは
4.3.2 菊花ポリフェノールの尿酸値上昇抑制効果
4.3.3 菊花ポリフェノールのニュートリゲノミクス解析
4.3.4 まとめ
4.4 おわりに
第2章 プロバイオティクス・乳製品素材
1 Lactobacillus brevis KB290(ラブレ菌)の免疫賦活作用の解析
1.1 はじめに
1.2 Lactobacillus brevis KB290(ラブレ菌)とは
1.3 KB290による細胞傷害活性の上昇作用とそのメカニズム
1.3.1 KB290の細胞傷害活性の上昇作用
1.3.2 DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅的解析
1.3.3 フローサイトメトリーを用いた辺縁帯マクロファージの解析
1.4 おわりに
2 ホエイタンパク質およびホエイペプチドの抗炎症作用―DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析―
2.1 はじめに
2.2 ホエイタンパク質およびホエイペプチドの抗炎症作用
2.2.1 D-ガラクトサミン誘発肝障害モデルでの検討
2.2.2 ConA誘発肝炎モデルでの検討
2.2.3 ラット腸管虚血再灌流モデルおよびマウスLPS誘発敗血症モデルでの検討
2.3 DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析(トランスクリプトーム解析)
2.3.1 精製飼料におけるConA投与前後での遺伝子発現の経時的変化の解析
2.3.2 ホエイタンパク質およびホエイペプチドの作用機構
2.3.3 正常肝臓での遺伝子発現の解析
2.4 ホエイタンパク質およびホエイペプチドの食品への応用
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